2025.09.09

生成エンジン最適化(GEO)とは? デジタルマーケティングの新たな潮流を解説

生成AIの台頭により、検索行動の選択肢の一つとして生成AI検索が台頭してきました。Google検索でも「AIによる概要(AI Overviews)」が導入され、アメリカ、イギリス、インドで提供中の「AI モード」が日本でも提供開始されました。こうした変化の中で注目されているのが、生成エンジン最適化(GEO)です。本記事では、GEOが重視される背景や今取り組むメリットについて、電通デジタルのGEOコンサルティング担当者が解説します。

GEOとは「AI検索にブランドが適切に取り上げられるようにする手法」

――GEOとは何ですか?

地元:GEOは、「Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化(以下、GEO)」の略で、生成AIがユーザーに対して行う回答に、企業のブランドや商品を言及させるために必要な手法のことです。

大きく2つの軸で考えており、ひとつはLLM(大規模言語モデル)起点のChatGPT、Gemini、Perplexityといったサービス、もうひとつは検索キーワード起点であるGoogleのAI Overviewsを想定しています。

もちろん他にもMicrosoft CopilotやGensparkなど多くの生成エンジンがありますが、まずは最初のスコープとして、この4つに絞って取り組んでいます。

四本松:GEOとは、端的に言えば、「ユーザーが投げかけた問いに対するAIの回答において、ブランドが適切に語られるようにすること」です。

たとえばメーカーであれば、ユーザーが関連する質問をAIにしたり、キーワードを検索した際に、自社の商品が回答の中でしっかり言及されるようにするイメージです。

「GEOを強化すると、自社サイトのコンテンツをAIにただ学習されるだけでは?」と懸念する方もいるかもしれません。それに対して、私たちは、生成AIにおける「言及」と「引用」をきちんと定義し、明確に区別することが大切だと考えています。

稲垣:「AI検索において、ブランドが適切に取り上げられるようにする手法」を何と呼ぶかは、まだ業界全体で定まった用語はありません。電通デジタルを含む電通グループでは、GEOという呼び方を使っていますが、LLMO(大規模言語モデル最適化)やAIO(生成AI最適化)と呼んでいる会社もあります。それぞれの用語が何を指すのかは、各社の定義を確認するようにしてください。

稲垣 昌輝 (電通デジタル エクスペリエンス&コマース第1部門 オウンドメディア第2事業部 SEOグループ)

GEOが注目される2つの理由

――なぜ今、GEOが注目されているのでしょうか?

稲垣:背景には大きく2つの理由があります。

  1. ユーザーの検索行動の変化

    AIの登場により、ユーザーのWeb検索の仕方も多様化しつつあります。「Google検索を使う頻度が減り、ChatGPTで情報収集を行う」という人もいます。

    また、Google検索の画面上部に「AIによる概要(AI Overviews)」が表示されるようになり、これだけで検索目的を果たし、検索結果に出てきたページをクリックしないというケースも一部の検索キーワードでは発生しています。

  2. Googleの動向

    Googleは、日本でも「AIモード」の提供を開始するなど、検索プラットフォーム側の進化も激しい状況です。


先に動いたブランドが有利になる可能性も

――GEOに今取り組むメリットを教えてください。

地元:正直に言えば、現時点で確立されたGEOの正解手法はありません。しかし、AI検索の浸透に伴い「自然検索の流入が減っている」と感じている企業も多いはずです。だからこそ、まずは自社の現状を正しく把握することが重要です。

初期分析を通じて、生成AI検索やAI Overviewsにおける自社サイトや自社ブランドの立ち位置を理解しておくことが大きなメリットになります。さらに、多くの企業がまだGEOに本格着手していない今だからこそ、先行者の優位性を得られる点も見逃せません。

四本松:検索というプラットフォームでユーザーが享受する検索体験が少なからず変わる中で、自社ブランドやサービスがどのように扱われるのかを今からウォッチしていくことは重要だと思います。

稲垣:もちろん、焦って取り組む必要はありません。ただ、先に動ければAI検索の登場から現在までどのように変遷をたどったのかを把握できるので、世間一般で言われる打ち手中心の発想ではなく、本質的なユーザー視点から現在取り組んでいる施策に一工夫できるなどのメリットはあるかもしれません。

地元:株式会社 電通の調査では、生成AIを日常的に使うユーザーは「知らないことを教えてほしい」「アイデアを出してほしい」「相談に乗ってほしい」といったニーズを持っています。10代や20代では、気軽に感情を共有できる相手として親友や母親と並んで生成AIがランクインするほど[注1] で、その浸透の速さと行動変容の大きさが際立ちます。

今後は、アメリカで見られるように「検索するAI」と「購入するAI」が連携し、購買行動が完結するエージェントtoエージェントの世界が日本にも到来するでしょう。その時にユーザーに選ばれるためには、AIに「この商品・サービスは信頼できる」と認知してもらうことが不可欠です。その意味で、GEOへの早期着手は将来に向けた大きな先行投資になると考えています。

地元 昇太(電通デジタル データ&AI部門 AIイノベーション事業部 プロデュースグループ グループマネージャー)

GEOはSEOとどう違うのか?

――GEOは、SEOの延長で実施できるのでしょうか?

稲垣:私は、現時点ではSEOの延長による部分が大きいと捉えています。SEOで重要な要素をしっかり実践していれば、結果的に生成AIにも最適化されやすくなると考えています。どちらもベースにあるのは「検索ユーザーにとって役立つ良質なコンテンツを作ること」です。ただし決定的に違うのは、Webサイトに訪れるユーザーの前知識の有無です。

  • 従来のWeb検索から来るユーザーは、予備知識なしに直接サイトを訪れるケースが多い
  • 一方、AIから推薦を受けたり、AI Overviewsを見た後に来たりするユーザーは、すでにある程度の知識を持っている

この違いにより、ユーザーが求めるコンテンツの構成や内容、情報の詳しさが変わってくるのです。したがって、その前提に応じた設計が必要になります。

内容については、一般論に始まり一般論で終わるような作り手にとって低コストなコンテンツは淘汰されていくと考えています。一般論は AI Overviewsが生成してくれるので、AIがどの要素を「良い」と判断し、どの部分を抽出するのか、生成の過程で何を重視するのかは理解しておいて損はないかと思います。


電通デジタルのGEOコンサルティングサービス

――電通デジタルでは今年5月にGEOコンサルティングサービスをリリースしました。支援内容を教えてください。

四本松:本サービスでは、生成AIが参照する情報源や出力ロジックを、お客様にとって最適なかたちで提供します。

大きな特徴は、「施策ありき」ではなく、まず現状をしっかり可視化することから始める点です。初期分析プランを通じて、

  • どういうプロンプト、キーワードで検索されると引用されやすいのか
  • どのようなサイトやページタイプがAIに参照されやすいのか

といった点を徹底的に分析・可視化します。その結果を踏まえて、クライアントごとの状況に応じた最適な施策を検討し、提案していきます。

特に施策という点でいうと、自社サイトの最適化だけに留まらずPRなどの施策を通じて、ブランド認知を高めることがますます重要になってきていることも感じており、その点は電通グループが持つあらゆるアセットが大きな強みになるのでという手ごたえを感じています。

稲垣:ソリューションを担うのは、SEOに強みを持つ私たちのチームと、AIを専門とする地元のチームです。加えて、生成AI開発に強いエンジニアを多く抱える電通データアーティストモンゴル(DDAM)とも連携しています。DDAMの力を生かし、専用ダッシュボードを開発して詳細なデータ分析を行えるのも大きな強みです。

さらに、提案の打ち手についてはSEOの延長で検索体験を整えるだけにとどまりません。当社内や電通グループ内のPRやマーケティングの専門チームとも連携し、より精度の高いアウトプットを実現できる点も、当社ならではのメリットだと考えています。

――リリース後の反響はいかがでしょうか?

地元:これまでに50社以上の企業からお問い合わせやご相談をいただき、潜在的な関心の高さを実感しています。SEOを担当される情報感度の高い方々からのご連絡はもちろん、GoogleのAIモードに関する海外ニュースを目にして影響を懸念された企業からのご相談も多く寄せられています。

稲垣:すでにいくつかの導入事例も生まれています。たとえば、介護転職サイトを運営するクライアントのケースでは、転職希望者が検索に使うプロンプトやキーワードを当社の分析ツールに登録し、データを解析しました。その結果、AIが参照するデータの約9割が記事コンテンツからであることが判明しました。

その分析をもとに、オウンドメディアの記事品質の強化、自社サイト以外でポジティブに取り上げてもらう取り組み、ブランド認知を高めるデジタルPR施策などを組み合わせて実施しています。多角的な打ち手を一貫して提供できるのは、電通グループならではの強みだと考えています。

そのほかにも、音楽会社、金融会社、飲料メーカーなど、多様な業種の企業が、それぞれの状況や目的に合わせてGEOに取り組み始めています。

四本松 太郎(電通デジタル エクスペリエンス&コマース第1部門 オウンドメディア第2事業部 SEOグループ グループマネージャー)

最初にやるべきは、生成AI視点での自社サイト分析

――いつから、どのようにGEOに取り組むべきか、検討中の企業のマーケティング担当者に向けて、メッセージをお願いします。

地元:GEOについては解説記事も多く、不安をあおられるような情報も少なくありません。大切なのは、まず自社の現在地を正しく知ることです。私たちの初期分析プランを気軽に活用していただき、現状把握から始めていただければと思います。

稲垣:AI検索はゼロから答えを生み出しているのではなく、必ず既存の情報を参照しています。AIが何を信用し、どこからデータを取ってきているのかを理解することで、今取り組むべきことが見えてきます。実データを基に今何が起きているのかを把握することが、最初の一歩として極めて重要です。そのお手伝いを私たちは得意としていますので、ぜひご相談ください。

四本松:まずはさまざまな生成AIサービスを実際に使い、AI検索の肌感をつかむことから始めてみてください。そのうえで、より専門的な分析が必要になってきた際には、ぜひ私たちにお声がけいただければと思います。大量のデータ分析に基づき、多様な切り口で示唆を提示できますので、是非お役に立てればと思います。

GEOコンサルティングサービスについて詳しく知りたい方はこちら


脚注(出典)

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