2024.08.06

Drupalとは? エンタープライズのWebサイトに活用できるオープンソースCMSの魅力

オープンソースのCMSであるDrupal(ドルーパル)は、大規模なWebサイトを中心に、企業はもちろん、世界各国の政府や公的機関で広く利用されています。この記事では、エンタープライズのWebサイトリニューアルを想定し、Drupalの特徴や選ばれる理由、さらにはじめの一歩をどう踏み出せばよいか。Drupalに対する幅広い支援体制を持つ電通デジタルのテクノロジートランスフォーメーション第2部門 デジタルエクスペリエンスプラットフォーム事業部 兵吾勇貴が解説します。

 

Drupalって何?

Drupalはオープンソース型のCMS(コンテンツ管理システム)です。ソフトウェアプログラマーで、アクイア創業者であるドリス・バイタルト(Dries Buytaert)氏が、大学在学中に開発しました[1]

オープンソースとして公開されたDrupalは、2003年米国大統領選挙での活用やホワイトハウスサイトでの採用を通じて広く活用されるようになり、いまや世界中の開発者・企業によるコミュニティが支える一大プロジェクトになっています。近年では、Webページの管理にとどまらず、顧客のすべてのデジタル体験を管理する基盤であるDXP(Digital Experience Platform)として活用されています。 Drupalを含めたDXPについて広く知りたい方は、DXP連載記事も合わせてご参照ください。

業務でオープンソースソフトウェア(OSS)を活用する理由の1つは、ライセンス費用を抑えたいことかもしれません。しかしながら、Drupalを実際に使ってみると、それ以上に使い続ける理由が見つかる魅力なCMSだと気づかされます。

機能の拡張性と自由度が高い

Drupalでは、CMSの中心となる「コア」に「モジュール」を組み合わせて、多様な機能を追加できます。モジュールはDrupalコントリビューター(貢献者)らによって開発・公開されており、その数は5万を超えています。
Drupalでは、さまざまなモジュールを組み合わせて活用することで、作りたいWebサイトを思いのままに作り出すことができます。
例えば、問い合わせを管理するWebフォームを作ったり、会員限定のコンテンツページを作ったり、ECの機能を追加したりなど、さまざまな目的に合わせたモジュールを見つけられます。また、モジュールをカスタム開発することによって業務システムと連携したり、自社固有の業務に合った機能を開発したりできます。

安定・堅牢なセキュリティの実現

「オープンソース」と聞くとセキュリティが心配だと思う方がいるかもしれません。Drupalは、セキュリティ専任チームが最新のセキュリティパッチを提供し、またコミュニティ全体でもバグや脆弱性の発見と対応が行われています。
Drupalコアでは、毎月のバグ修正/セキュリティリリースが継続して行われています[2]。モジュールについても、セキュリティアドバイザリーが提供され、システム全体を安全な状態に保つことができます。これらの取り組みもあり、Drupalは金融機関、政府、医療等のミッションクリティカルなサイトに選ばれているのです。

先進的なシステム

Drupalコミュニティによる開発は、いくつかのイニシアチブ(グループ)がリードし、先進的な機能やビジョンを実現させています。直近では、Drupalの機能をより使いやすくするために整理統合するRecipe機能の開発イニシアチブ、機能のアップデートを自動化する Automatic Updatesイニシアチブなど、複数の取り組みが進行しています。
それらは、単なる機能開発ではなく、Webをより良くするビジョンも持っています。Drupal 9デザインテーマ開発イニシアチブでは、視覚障害をもつ Rachel Olivero氏の大きなコントリビュートに支えられ、アクセシビリティを重視したモダンで新しいデザインテーマを実現させました[3]
Drupalは、単なる無償利用可能な CMS ではなく、コミュニティ全体で共有・発展していくデジタル公共財として、幅広く活用できます。


どんな理由で選ばれているの?

Drupalは、世界のエンタープライズのWebサイトのうち、8社に1社の割合で使われているほど、その採用事例が多くあります。日本国内では、デジタル庁様が活用されています。また電通デジタルではオムロン電子部品事業部様へのご支援実績等がございます。電通デジタルがご支援する中で、ビジネスの側面から見た Drupalが適している理由を整理してみました。

セキュリティ・信頼性

セキュリティの観点から Drupalが歓迎される事例があります。Drupalは、オープンソースならではの透明性と信頼性、ベンダーロックインの排除といった利点を保ちながら、セキュリティパッチの提供が充実しています。

また、Drupalのホスティングとして Acquia Cloud Platform を併せて導入し、米国連邦政府の調達要件であるFedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)を満たす高いセキュリティ環境を実現されるお客様が多くいらっしゃいます。Acquiaによるホスティングでは、24時間365日のサイト保守運用やディザスタリカバリ要件を満たしており、信頼性の向上を図っています。

多言語・多地域展開

世界各国に拠点を構えていらっしゃるお客様では、Drupalの多言語管理の機能を魅力的に感じるかもしれません。海外拠点の方が、日本で作られたページをもとに現地語のローカルページを作成できるようになります。

Drupalには、 DeepLやGoogle翻訳などの機械翻訳と連携するモジュールがあり、大規模なWebサイトであっても効率的に管理運用することができます。また、単に翻訳を管理するだけでなく、マルチサイト構成と組み合わせることで、多言語対応だけでなく、企業のリージョン戦略に応じたWebサイトのカスタマイズも可能です。

使いやすさ・連携性

DrupalはWeb担当者以外でも使いやすいUIを提供しています。お客様によっては、Web担当者以外の方、例えば、Webには詳しくない製品管理部門の方などが、製品ページを一部修正したり、内容をレビューしたりすることがあります。そうしたケースでも、Drupalは操作しやすい管理画面を提供し、スムーズな業務を実現しています。ユーザー権限の制御や、管理画面のカスタマイズ、お客様の業務システムとの連携など、カスタマイズによって業務をサポートすることも可能です。

DXP によるデジタル体験の向上

デジタルを活用して、企業のブランドやイメージ、メッセージを伝える方法は多様化しています。Webサイトにとどまらず、SNSやメール、近い将来には企業が雇うAIアシスタントも1つの顧客接点になるかもしれません。そうした接点に向けてコンテンツを管理する基盤として Drupalを選ぶお客様も多くいらっしゃいます。

Drupalは、コンテンツを一元管理し、幅広いチャネルに活用できます。ヘッドレスな構成など、Webサイトだけにとどまらない基盤を構築可能です。また Acquia Marketing Cloud製品との連携や、すでに導入済みのマーケティング製品とのつなぎ込みも、多く対応可能できます。


どのように導入を始めるのか?

オープンソースのCMSであるDrupalの導入は、ハードルが高いと感じるかもしれません。次の点をしっかり考慮することで、よりよい活用につなげることができます。

Webサイト戦略の策定とDrupalとのマッチング

Webサイトの位置づけや目的を整理しましょう。ここまでDrupalの利点を多く紹介しましたが、それらはお客様のビジネスへ直接的にアプローチするものではありません。WebサイトのUI/UXや、届けたいメッセージをしっかり計画すれば、Drupalはそれに応えるWebサイトを提供できます。

Webサイト上で対応すべき事項の検討

エンタープライズでWebサイトを活用する際には、データプライバシーへの対応(GDPRやCookie利用の同意管理)、ウェブアクセシビリティにもしっかり配慮し、Webサイトの発信者目線だけでなく、利用者目線でのよりよいWebづくりを目指していきましょう。

Acquia Cloud Platform 等、便利な環境の用意

拡張性やセキュリティを備えた Drupalをより活用するには、Webサイトをホスティングするプラットフォームの選定も重要です。カスタマイズをすぐに確認・反映するCI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery & Deployment)環境や、柔軟なスケーリングは、現在のWebサイトには必須の要件です。Drupalに特化した PaaSであるAcquia Cloud Platform[4]をおすすめしています。


お困りですか?

電通デジタルでは、Drupalを活用したWebサイト構築を多く実施しています。

  • 豊富な経験:電通デジタルは、B2BからB2C、コーポレートサイトやランディングページ、公共プロジェクトまで、さまざまな業種のWebサイトを手掛けてきました
  • 高度なDrupal人材:Acquiaパートナーアワードを受賞し、Drupal有資格者が多数在籍しています。Drupalの勉強会&交流会であるDrupalCampへの協賛やコミュニティ活動も積極的に行っています
  • 強力な社内連携:各種専門メンバーとの社内連携により、Webサイトに限らず包括的なデジタルマーケティングの支援が可能です
  • UI/UXの実現:ブランドに合わせたクリエイティブのご提案・アクセシビリティ対応等を踏まえた制作が可能です
  • Acquia 社とのパートナーシップ:DrupalやAcquia製品を中心としたデジタルマーケティングの支援を行っています

弊社の取り組み事例として、Drupalコミュニティイベントにて発表したアクセシビリティ対応資料についても合わせてご参照ください。
資料ダウンロードはこちら: Drupal開発者必見!電通デジタルのアクセシビリティコンサルティングでウェブを改善


おわりに

この記事では、エンタープライズ向けCMSとしてのDrupalの魅力をご紹介しました。Drupalに関して、電通デジタルは幅広い支援体制を整えており、導入から運用までしっかりとサポートし、御社のビジネス成長に貢献します。Drupalに興味を持っていただけましたら、お気軽にお問い合わせください。


1. ^ “オープンソースCMS、Drupalとは何か?”. Acquia.(2023年4月11日)2024年6月26日閲覧。
2. ^ “Drupal core release schedule”. Acquia.(2024年6月20日)2024年6月26日閲覧。
3. ^ ”Rachel Olivero: Breaking Barriers in Digital Experience”. Acquia.(2023年5月7日)2024年6月26日閲覧。
4. ^ “デジタルホスティング-Acquia Cloud Platform”. Acquia. 2024年6月26日閲覧。

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