2023.09.28

クリエイティブを諦めないアクセシビリティの確保へ

植木真氏と業務提携し、ウェブアクセシビリティプロジェクトが始動

電通デジタルは、2023年7月、デジタルにおけるインクルージョン実現を目指す「ウェブアクセシビリティプロジェクト」を始動、ウェブアクセシビリティコンサルティングサービスの提供を開始しました。そして、ウェブアクセシビリティのコンサルティング会社である株式会社インフォアクシアと業務提携し、支援体制を強化しました[1]。プロジェクト立ち上げの背景と目的、展望について、インフォアクシア 代表 植木真氏と電通デジタル 千葉順子に聞きました。 

アクセシビリティ対応は障害者の方だけのものではない

――本プロジェクトの立ち上げの経緯を教えてください。 

千葉:昨年、あるクライアント企業から「誰一人取り残さないためのサイト改善」を目的としたウェブアクセシビリティ対応のご依頼をいただきました。 その際、改めてアクセシビリティについてどのような対応をする必要があるのか、調べるようになったことがきっかけです。

調べている中で、一番私の心に響いたのが、「アクセシビリティ対応は障害者の方だけのものではない」ということです。現在健康な人でも、病気、けが、状況によって、一時的に障害を持った状態になる場合があります。アクセシビリティの確保は特定の人のためだけではなく、すべての人に必要な対応であると知りました。

その後、改めてさまざまなウェブサイトを見てみると、ウェブアクセシビリティに力を入れている民間企業はまだまだ多くなく、我々がやるべきことはまだまだたくさんあることを痛感しました。

当時、高齢化やDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン) の推進といった社会課題の解決のために、我々の仕事の中でできることはないか、模索しているところでした。自分たちの知見や経験を活かすのであれば、本格的にウェブアクセシビリティに取り組むべきだと思いました。

2024年4月から、障害者差別解消法の改正により、民間事業者も当事者からの求めがあった際には合理的配慮の提供が義務化されます。企業からの問い合わせが増えてきている中、正しい判断や回答をするためにも、改めてしっかり学んで備えていく必要があると感じ、プロジェクトを立ち上げました。

千葉順子(電通デジタル)


経験・実績豊富なインフォアクシアとの業務提携

――インフォアクシアの植木さんと業務提携に至った経緯を教えてください。

千葉:プロジェクトを立ち上げようと思った昨年時点では、まだまだ我々には知見が不足している状況でした。ウェブアクセシビリティに関する知識を習得するため、経験豊富な方に師事したいと思い、植木さんにお声がけしました。

実際にお会いして、我々の課題や問題意識、取り組みたい内容をお話ししたところ、しっかりと受け止めていただき、的確なアドバイスをいただきました。その打ち合わせが終わる頃には、「植木さん以外にはいない」と心が決まり、業務提携を打診しました。

植木:私はこれまで約20年間、コンサルタントとして、主に企業サイトのアクセシビリティに関するコンサルティングや、日本産業規格 「JIS X 8341-3」、 W3Cのガイドライン「WCAG」 などの標準化活動に取り組んできました。その間、培ってきた知見や経験を多くの人と共有し、もっと広げていきたいと常々考えていて、そういう機会があればいいなとずっと思っていました。

千葉さんからのお話はまさに渡りに船で、「自分でよければ、喜んで自分が持っているモノをすべて共有します」とお伝えしました。

株式会社インフォアクシア 代表取締役
植木真氏
2004年、インフォアクシアを設立。サイト診断、ユーザビリティテスト、ガイドライン作成、教育・研修などのサービスを通じて、主に企業ウェブサイトのアクセシビリティ向上をサポートしている。

――日本におけるウェブアクセシビリティの取り組みに関して、どのような印象を持っていますか?

植木:10年前ぐらいから、ウェブ制作者、開発者の間で関心が高まり、取り組む事業者も増えてきていますが、全体から見ると、まだまだほんの一握りです。とはいえ、業種に関係なく、企業サイトやアプリでアクセシビリティを高める取り組みが着実に広がってきていると感じています。


最新の知見に基づいた学びとコンサルティングを提供

――ウェブアクセシビリティプロジェクトの具体的な活動内容を教えてください。

千葉:植木さんを講師に招き、毎週2時間の社内勉強会を継続して行っています。勉強会では、ウェブアクセシビリティの概論、ガイドライン、最新の事例、ウェブサイトのチェック方法、具体的な対処方法などを学んでいます。

ウェブアクセシビリティコンサルティングとして提供可能なサービスは、主に4つのメニューがあります。

  • 診断コース
  • ユーザー検証コース
  • 主要ページ改善コース
  • 大規模リニューアルコース

ウェブアクセシビリティは、サイトによって対応状況や目指すところが異なるので、上記のメニューにとらわれないご相談も受け付けています。

社内勉強会の様子


アクセシビリティを高めることは、とてもクリエイティブな仕事

――ウェブアクセシビリティプロジェクトで、電通デジタルの強みはどう発揮できますか? 

千葉:本プロジェクトは、ウェブプロデューサー、制作ディレクター、デザイナー、コーダーなど、さまざまな職種のメンバーで構成されています。それぞれのメンバーの知見と植木さんの豊富な経験や知識を合わせることにより、画面設計、デザイン、実装、どの工程においてもしっかりと対応できる体制があるところが強みです。

また、クリエイティブに強みを持つ電通デジタルだからこそ、クリエイティブを諦めないアクセシビリティの確保と向上へのサポートも強みになるのではないかと考えています。

我々はこれまでも多くの企業のウェブサイト制作・運用に関わらせていただいてきました。我々だからこそできるアプローチがあると思っています。

植木:アクセシビリティを高めていくことは、ものすごくクリエイティブな仕事です。さまざまな利用環境で、より多くのユーザーに使ってもらえるようにするのは、クリエイティブ以外の何物でもありません。

まずは、ユーザーを知ることが不可欠なので、さまざまな障害の種類や異なる利用環境のユーザーと接する機会も作っていきます。そして、検証だけではなく、設計やデザイン、実装などのフェーズで、ユーザーの皆さんにも参加してもらえるような体制も作っていきたいです。


誰にとっても使いやすいウェブサイトが当たり前の世の中に

――今後はどういったサービスを提供していこうと考えていますか? 

千葉:電通デジタルが手がけているウェブサイトだけでなく、今後より多くのウェブサイトでアクセシビリティが確保され、誰にとっても使いやすいウェブサイトが世の中に増えていけばよいと思っています。

そのためにこのプロジェクトも社内に閉じるのではなく、社内外に向けた勉強会や相談会、活動内容の公開などを通して、多くの企業や制作会社、デザイン会社と知見を共有していく予定です。

また、アクセシビリティに関わるすべての企業とコミュニケーションをとって、協力し合えるような活動を活発に行っていきたいと考えています。

植木:より多くの企業がアクセシビリティを高めることに関心を持ち、実際に取り組み始めれば、日本のウェブ全体のアクセシビリティも向上していきます。そういう意味では、このプロジェクトに参画できることをすごく楽しみにしています。

――ウェブアクセシビリティ対応を検討している企業の担当者に向けてメッセージをお願いします。 

植木:「アクセシビリティ対応は、何か特別なことをやらなければいけない」「手間やコストがかかりそうだし、難しそう」といった先入観や固定観念を持って、身構えたり、敬遠したりしているウェブ担当者の方も、少なくないと思います。

しかし、実際にウェブサイトで見つかるアクセシビリティ上の問題点のほとんどは、ウェブデザインやコーディングの基本中の基本ばかりです。例えば、画像の代替テキスト、文字色と背景色のコントラスト、見出しのマークアップ、キーボード操作などに集中しています。

食わず嫌いでアクセシビリティをやらずに、ユーザーが使いたくても使えないでいたり、使いづらくてストレスを感じていたりしたら、とてももったいないことです。「もしかして私も食わず嫌いかも」と思ったら、まずは連絡してください。一緒に色々なお話をしましょう。

千葉:電通デジタルのウェブアクセシビリティサービスの提供は、比較的後発だと思っています。だからこそ、後発ならではの強みを活かして、他社よりも懇切丁寧で、きめ細やかな対応ができるようにしていきたいと思っています。

メニューの枠にとらわれず、「困った」「どうしたらいいのかわからない」といった悩みをお持ちであれば、お気軽にご相談いただければと思います。


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