2022.07.14

Google Cloud+GA+GTMで作る、ITP対策も可能な簡易CDP「X-Stack Connect」

2022年4⽉19⽇〜22日、26日~28日、Google Cloud が開催したデジタル カンファレンス 「Google Cloud Day: Digital ’22」 に、電通デジタルがゴールドスポンサーとして協賛し、スポンサーセッションにて、テクノロジートランスフォーメーション部門の小山千春が講演しました。

3rdパーティCookie規制により、リターゲティング広告配信などに利用していたDMP(データ管理基盤)が使いにくくなりつつあります。

その代替ツールとして、CDP(顧客データ基盤)の導入を検討している企業も多いことでしょう。しかし、CDPの導入には、複数部署の調整、百万単位の予算、年単位の期間が必要になることが往々にしてあります。

電通デジタルでは、初期導入スコープを広告計測のプライバシー対策に絞り、Googleプロダクトを活用してミニマムに始められる簡易CDP「X-Stack Connect(クロススタック・コネクト)」を2021年7月から提供開始しました[1]

本稿では、X-Stack Connectの特長である、低コスト、短期間での導入はなぜ可能なのか、どのような仕組みでプライバシー対応を実現しているのかについて、小山が講演した内容を再編集してお届けします。

※所属は記事公開当時のものです。

電通デジタル
テクノロジートランスフォーメーション部門
データマネジメント第2事業部
統合データプラットフォームグループ
グループマネージャー

小山千春

なぜ今CDPの注目度が増しているのか?

CDPとは、1stパーティデータを収集・整形し、広告、CRM(顧客関係管理)、BI(ビジネスインテリジェンス)などに活用するためのデータ基盤です。

以前は、3rdパーティCookieを介して複数のWebサイトから横断的にデータを収集するDMPを導入する企業も多く見られました。CDPは、近年の個人情報保護の潮流に伴い、1stパーティデータの重要性が注目されるようになったことで、改めて注目度が増しています。

CDP導入時にありがちな4つの課題

CDPの導入にはさまざまな課題があることも事実です。ここでは代表的な4つの課題を紹介します。

費用と工数がかさむ

CDPを最初から「完璧に理想の状態」で実装しようとすると、プロジェクト期間が年単位、費用が数百万円単位でかかることもあります(完璧に理想の状態だと最低でも数千万円)。CDPを構築する際には、多くの場合、さまざまなデータソース、連携先、用途に応じた技術的要件に対応する必要があります。そのため、要件定義、関係部署への調整対応の工数が非常に多くかかり、費用がかさんでしまうのです。

コネクタはあるが接続が複雑になる

どのベンダーのCDPであっても、データ収集ツールからの接続はできます。しかし、CDPと収集ツールの相性が悪ければ、いくつもデータを経由させなければならず、非効率な接続になることもあります。

リアルタイムの接続が難しい

CDPをBIツールや広告プラットフォームに連携する際、リアルタイムでの接続が求められることも多いです。しかし、CDPとツールの相性によっては、どうしても日次連携(1日に1回)しかできないというケースもあります。

目的が多すぎて要件整理に時間がかかる

費用のところでも述べたように、CDPはさまざまなことができるために、導入目的のスコープが広がりすぎてしまいがちです。そのため、実際の活用にそぐわない要件を追加してしまい、要件整理に時間がかかってしまうという事態は多々見られます。

スモールスタートが可能なCDP「X-Stack Connect」とは

こうしたCDP導入時の課題をクリアし、スモールスタートに対応しているのが、電通デジタルのCDP「X-Stack Connect」です。

X-Stack Connectは、サーバーコンテナ(以下、sGTM)とGoogle アナリティクス 4(以下、GA4)で収集したデータをBigQueryに溜めて、Google Cloudで整形、そこから媒体計測系のAPIにデータを送信するという構成になっています。

もともとはITP(AppleがSafariに搭載しているトラッキング防止機能)などのプライバシー保護機能に対応するために、各種媒体へのAPI接続用の環境をパッケージ化したものです。

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X-Stack Connectの開発は3rdパーティCookie規制がきっかけ

X-Stack Connectを開発した一番大きな理由は、個人情報保護意識の高まりにより、3rdパーティCookieの規制が進んだことです。

かつては3rdパーティCookieを用いてサイト横断計測をすることで、CV(コンバージョン)計測、リターゲティング広告配信のための自動最適化学習などを行っていました。しかし、プライバシー意識の高まりや法規制の整備に伴い、現在は3rdパーティCookieを活用した計測は、ほぼできなくなりつつあります。

その課題に対応するために採用したのがサーバー計測です。サーバーに一度データを格納することで、許諾の有無や、ユーザーのプライバシーに配慮しつつ、識別子をサイト運営者側で選択して送信することができます。これを実現しているのが、Googleの各種プロダクトをパッケージ化したX-Stack Connectです。

X-Stack Connectの特長は、sGTM、GA4、BigQueryの活用

X-Stack Connectの一番の特長は、GA4とBigQueryの連携です。これを活用することで、ミニマムな費用でWebサイトのアクセスログを収集・蓄積することができます。

もうひとつの特徴が、sGTMの活用です。サーバー発行の1stパーティCookieを使うことができるため、ITPなどの計測規制にも耐える状態を作り出せます。

なお、X-Stack ConnectからGoogle、Metaなど主な媒体への接続に関しては、実装をほぼ定型化しており、ゼロから検討する必要がありません。そのため、他のCDPと比較して、スピーディに、かつ費用を抑えて実装できるという特長があります。

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初期の実装スコープは「プライバシーに対応した広告計測基盤」

われわれはX-Stack Connectを「簡易CDP」という言い方で説明しています。ここで言う「簡易」とは、「初期の実装スコープを絞り込んでいる」という意味です。通常のCDPと比べて機能が劣るという意味ではありません。

X-Stack Connectの初期の実装スコープは、「プライバシーに対応した広告計測基盤」です。スコープを絞り込むことで、通常のCDP構築と比べて、要件定義などにかかる工数がぐっと少なくなります。初期段階からクライアント全社を巻き込んだアクションをすることなく、ミニマムに動いていけるのは、大きなメリットです。

さらに、作業の多くがすでに定型化されているため、より早く実装を完了させることができます。工数と実装期間の短縮化は、初期実装費用を抑えることにもつながります。sGTM、GA4、BigQuery、Google Cloud、タグやCV情報が揃っていればという条件はつきますが、初期費用は100万円を切る価格で、かつ1カ月弱で実装完了することも可能です。

X-Stack Connectの拡張性

X-Stack Connectには、初期機能だけに閉じない拡張性もあります。GA4やBigQueryを活用しているため、そこからさまざまなソリューションへの接続も比較的簡単に対応できます。初期導入時からすべてのスコープを盛り込んだ形で導入することもできます。どのようなスコープで導入するのがベストなのかというご提案から対応します。最後に、X-Stack Connectの拡張例について、ソリューションごとにご紹介します。

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BIとの連携

X-Stack Connectでは、Looker、Tableau、Domo、Power BIといった主要BIとの連携が可能です。電通デジタルのBI専門チームのアサインも可能です。また、Google データポータルとコネクテッドシートへ接続することで、簡易的にBI接続を行うことが可能になりました。

CRMとの連携

X-Stack Connectを導入すれば、Webサイトのアクセスログなどを併せて活用できるため、ユーザーのステータスをより精緻に理解し、施策の実施から精度検証までを行えるようになります。

CRO(コンバージョン率最適化)との連携

GA4無償版でもBigQueryにエクスポートして、データ連携することができるようになったので、以前は有償版でなければできなかった高度な施策も、X-Stack Connectを通して実装できます。

X-Stackとの連携

電通デジタルのソリューション「X-Stack」との連携も可能です[2]。X-Stackとは、オンライン・オフラインのデータを統合したマーケティングデータを構築したうえで、機械学習によって予測LTV(顧客生涯価値)を算出し、LTV向上に直結したマーケティング施策を最適化するソリューションです。

X-Stack Connectを通して溜めたデータを用いてX-Stackでモデルを作成し、そのモデルをもとにWebコンバージョンしたユーザーのLTV(顧客生涯価値)や事業成果の予測スコアを算出します。その予測スコアを、X-Stack Connectを通じて、各種媒体やCRMに連携することができます。

Data Clean Roomとの連携

Data Clean Roomとは、プラットフォーム側が用意したクラウド環境上で、各プラットフォームの広告配信ログデータを、ユーザーのプライバシーに配慮して一定の条件の下で自由に集計したり、自社データを掛け合わせて分析/集計したりできる仕組みのことです。プラットフォームごとに独自のData Clean Roomがあります。これらとX-Stack Connectのデータをつなぎ合わせて、広告接触から実店舗のデータまでをカバーすることができます。

まずは最小スコープのプライバシー対策から導入を

ちなみに電通デジタルは、今日お話ししたような小さいスコープで明確に成果が出やすい部分から始めることも、顧客の体験設計、DX、実装初期からの各施策の接続等を考慮しながら、スコープの広い実装をすることもどちらも柔軟に対応することが可能です。本日のお話を聞いていただき、少しでもX-Stack Connect や Google Cloud を活用したCDP 構築に興味をお持ちになれば、ぜひご連絡をいただければと存じます。


脚注

1. ^ "Cookieフリー時代の新計測基盤「X-Stack Connect」を本格提供開始". 電通デジタル(2021年7月14日)2022年5月16日閲覧。
2. ^ "デジタル広告運用において、データ統合×AIで事業成果を最大化する「X-Stack」の本格提供開始". 電通デジタル(2020年7月6日)2022年5月16日閲覧。

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