2022.11.08

効果測定から顧客の理解へ~Adobeソリューションならここまでできる~

【第2回】改善課題を発見するための分析ワーク

本連載では、「顧客行動を理解するためのデータの活用」への取り組みや運用のための考え方、実践方法について、Adobe Analyticsを中心としたAdobeソリューション群を例に、マーケティングで事業の推進に取り組む方々に向けて全3回にわたってご紹介します。

第1回は、企業が運営するWebサイトやアプリを利用する顧客の行動をデータから理解し、改善施策に活かすためにどのような準備や工夫ができるのか?について、Adobe Analyticsの活用を例にご紹介しました。

今回は、顧客理解のために収集したデータを、改善課題発見に活かすための分析手法やコツについてご紹介します。

分析の目的は「レポートを作ること」ではない!

マーケティングを担当する部門では、自社で管理しているデータを自部門で活用したり、社内の各部門へ共有したりするために、定期的に集計分析し、レポートを作成しています。定期的な集計のほかにも、社内の関連部門からの相談や要望に応じて、暫定的に分析作業を行う場合もあります。

最近ではレポートをダッシュボード化し、作業の効率化を図っている場合も多いですが、これらの集計分析やレポート作成、ダッシュボードのメンテナンスといった作業は、意外と業務担当者の負荷となりがちです。もちろん、どれも顧客の行動を数値で把握するために重要な作業なのですが、作成したレポート群やダッシュボードは、実際に業務の現場で効力を発揮しているのでしょうか?

マーケティングにおけるデータの活用は、前回ご紹介したように、顧客を理解するために大切な業務となりました。そのためには、顧客を理解するための視点、すなわちどの項目のデータを数値化し、顧客行動を評価するかを考慮したデータ活用設計が大事です。そしてその設計やレポート化は、マーケティングというコミュニケーションを主体としたデータの活用だけでなく、自社の事業モデルによって、製品やサービスの向上に寄与するものでもあり、さまざまな視点で検討され、組み立てられる必要があります。

(1)ダッシュボード:広く浅く全体を把握

今回お話ししているダッシュボードや、定量的な集計レポートは、日次、週次、月次と定期的な期間での変化を把握する「基本数値レポート」であることが多く、毎回レポート作成と確認に時間を費やすものの、数値の増減に一喜一憂するだけで、日々の業務か改善につながらないことが多々あります。

どのような目的で活用し、どのようなサイクルで確認・検討するのか?それがきちんと設計できていれば、分析目的に応じた無駄のないレポート設計や、その結果整理されたデータを取得するための自動化や効率化も可能になります。さらに目的を持ってすでに集計されている数値をチェックすることで、分析作業も進めやすくなります。もちろん、事業目標やKPIの変化に応じた更新や定期的な指標の見直しも重要です。

そのため、定量的なレポートを作成する場合、マーケティングを統括する部門主導の設計に留まることなく、社内ステークホルダーの要望や課題感を理解した準備を行うと良いでしょう。

(2)深掘りレポート:自部門用には深掘りし、仮説検証や課題の要因を発見

もう一つ重要なのが、数値からの気づきをもとに、分析担当者が課題や要因を深掘りしていくためのアクションです。

(1)のダッシュボードは広く浅く理解するためのレポートであって、結果や成果を確かめたり、異常値などの発生を見つけるには良いのですが、その「要因」を調べるためのディメンションや指標などの切り口を変えながら探索的に狭く深く調べる分析も必要です。

分析ワークスペースで作成したプロジェクト上のレポートは、社内での議論に活用することはもちろん、マーケティング担当者や分析の担当者が数値から得た気づきを思いつくままに探索していくことができます。作成したレポートにもっと知りたい、確かめたいと思い立った点があれば、それを分析するために、その場で計算指標を使った新しい基準となる指標を取り入れてみたり、データの動きを細かく確認するために期間を「月→週→日」とドリルダウンして行ったり、ディメンションの中身を粒度がより細かいディメンションで分類したりと、数値から得た疑問や気づきの要因を追いかけていくことが容易です。

これらの集計したデータに基づく分析業務は、事業を推進・発展させる「顧客を理解する」行動に寄与し、さまざまな課題に気づく機会を生み出していきます。

データから見えてくる顧客像をもとに、企業として働きかける「セグメント」を定め、顧客体験を改善していくための施策仮説を発見することが、レポートやダッシュボード作成の目的です。作成する作業は目的のためのプロセスに過ぎないことを改めて確認しましょう。

ダッシュボードにベン図など使うと、セグメントの重複や規模がわかりやすい
Zoom

定量的な基本指標レポートは、効率的に作ろう!

全社で活用するレポートやダッシュボードは、

  • 定期的に集計し、サイトのアクセス状況を共有する
  • 広告やマーケティング施策の費用効果を共有する
  • 訪問者の流入経路や滞在状況を確認する
  • よく読まれたコンテンツや情報を確認する
  • 購入や申し込みなどのコンバージョンを確認する

などが主な内容となる場合が多いです。こういったレポートを効率的に作成するためには、

  • 社内ステークホルダーの意見を踏まえた最大公約数となる分析項目を揃える
  • 詳細な事項にこだわるより定期的な数値の変化を把握しやすいアウトプットを考える

といった事項を踏まえて作業を行うことが重要です。

上記を踏まえてダッシュボードやレポートを作成するためには、準備として、ステークホルダーからヒアリングした要望や情報を整理し、どんなディメンションや指標が定期的な数値確認に必要なのかを決めます。そこからレポートのアウトプットのイメージ作りを始めると良いです。

ここで集計分析の設計図を作り上げておくことで、社内ステークホルダーに活用を促す際に、使用方法の説明が容易になりますし、各データ項目の定義も適切に解説することができます。

アウトプットのイメージはマーケティング部門内で作成するものなので、きっちりきれいに作る必要はありません。使い慣れたExcelでディメンションと指標の組み合わせを検討し、知りたいこと、定量的に確認していきたいデータ集計結果の見取り図を作り上げていきます。

Adobe Analyticsを使えば、ドラッグ&ドロップで簡単にレポートが作成できます。Excelを介さず、直接レポートを作りながら試行錯誤してみるのも良いでしょう。

Excelで作るレポート設計書のイメージ。皆がイメージできるような簡単なもので良い
Zoom

分析ワークスペースの機能を活用して社内全体で使えるレポートへ!

(1)目的ごとに「プロジェクト」単位にまとめる

前段の方法に従うと、集計分析のレポート図がいくつか出来上がります。それらを以下のような基本となる理解目的ごとに、Adobe Analyticsの「プロジェクト」単位でまとめていきます。

  • Webサイトのアプリの規模や利用状況がわかるもの
  • 顧客の流入経路や訪問時の滞在概要がわかるもの
  • コンテンツや情報への接触度合いがわかるもの
  • 売り上げやコンバージョンの状態が確認できるもの
  • 行った施策の結果や状況を把握するもの
設計した複数のレポートを一つのプロジェクトにまとめて共有する。会議などでは必要なレポートのみ開き、他は閉じて閲覧することも可能(数値はサンプル)
Zoom

このように目的ごとのプロジェクトを用意すれば、これらのまとめをダッシュボードとして活用することができます。Adobe Analyticsでは他にダッシュボードとなるツールを導入しなくても、目的ごとのプロジェクトを社内ステークホルダーの需要や期間に合わせて更新して、PDFファイルをメールで定期送信したり、必要な項目だけをステークホルダーの担当者が指標変更や追加を行えるように権限を細かく設定して共有したりすることも簡単です。

(2)テキストビジュアライゼーションで考察や意見を残す

Adobe Analyticsでは、テキストメモをレポート内に挿入することが可能です。それがプロジェクトを構成するビジュアライゼーションの項目の一つ「テキスト」です。機能としては非常にシンプルなものなのですが、意外と知られていません。

「テキスト」を使えば、レポートを更新し、分析を進める中で気づいたことや気になったこと、変化の兆しなどを直接メモとして書き記せます。その上で社内のステークホルダーに共有すれば、集計分析データを用意する意味や意義が明確になります。前段でも書いたように、データから読み取れる顧客行動の変化や心理変容を見つけ出していくことがレポート作成の目的です。分析作業を通じて得られた気づきは、自部門メンバーだけでなく、積極的に社内で共有していきましょう。

テキストビジュアライゼーションを情報共有ツールとして活用
Zoom

Adobe Analyticsの分析ワークスペースは2015年にリリースされ、細やかな機能改良が続いています。上図で示すように、成果に紐づく顧客行動を理解するための代表的な分析例であるアトリビューション分析も簡単に作成できるだけでなく、分析を進める中で見つけた課題仮説をもとに、必要だと思いついた指標を計算指標機能で作成し、レポートに反映させることが可能です。


デスクの前に座って考えるマーケティングから、議論を通じて行動するマーケティングへ

これまで、デジタル分野に関わらず、マーケティングと聞くとデータを作ったり集計したり、統計手法を駆使して分析を進めたりと、デスクの前に座って専用のツールを使いこなして、そこから分析結果を提供することが主な業務のように思われていた方も多いかもしれません。

しかしこれからは、ただ考えたり、分析結果を提供したりするだけでなく、もっと他部署に積極的に働きかけ、顧客理解を深め、議論を通じて行動を促していくマーケティングへと進化していかないといけません。そのためには、Adobe Analyticsの分析ワークスペースがとても役に立ちます。

分析ワークスペースを使えば、会議の議題や目的に応じたレポートとそこに記されたメモを画面共有し、議論のたたき台として活用できます。レポートを見ながら、顧客行動の背景や事業の期間目標のためにどのような活動ができるかを議論し、気づいたポイントを確認したり、その場で指標を加えたり、期間ごとのブレイクダウンの粒度を変えたり、行動仮説に基づく顧客セグメントを作ってデータに重ねたりすることで、議論はより発展し、課題改善のために、具体性の高い施策案が生み出されていくはずです。

会議後は、これら一緒に分析を行ったレポートのリンクを生成して、他のアカウントのユーザーに簡単に共有することができます。後で「あのレポートどこ?」「PowerPointに直して渡す」などの手間をかける必要はありません。


顧客を理解するための分析で、社内のつながりを大事にしましょう!

このように利用目的に応じて設計されたレポート群をAdobe Analyticsのプロジェクト上に組み上げ、社内共有を行っても、分析作業はマーケティング部門内の担当者の作業と考えていませんか?

多少準備に手間は掛かっても、目的ごとに組み立てられたレポート群があり、定期的な更新も容易にできる状態になったからこそ、マーケティング部門がリードしてこれらのデータ群とプロジェクト内の記載した気づきのメモを元に社内で相談や議論の場を持つことで、多様な視点で顧客の理解を深めることが可能となります。

統計のような専門的な手法を導入した分析も事業状態や顧客行動を理解するために必要な場面は多々あります。機械学習の登場によって、Adobeソリューション群の中にも機械学習の機能は数多く取り入れられていますし、これからもっと活用の場面は増えていくでしょう。

しかし、顧客を理解し、より良い関係を作り上げていくためには企業の事業に携わる各部門の担当者の日頃の考えや気づきを重ね合わせ議論を進めていくことが必要です。

時には自分自身も一人の消費者であり顧客であることを思いながら、データが教えてくれる顧客行動変化のポイントを確認し、どんなコミュニケーションやサービスを提供することが自社の製品やサービスの理解、企業への信頼の向上に寄与するのか?すなわち有効な課題仮説を生み出せるのか?このことに取り組むことこそがマーケティング活用の主題になります。

今回はレポート作成や分析業務の効率化や有用性を考えながら、Adobe Analyticsの大小の機能を上手く使って議論や会話を生む方法をご紹介しました。ここまで進むと次に気になるのは、データ活用のスケール化です。

次回はデータから発見した顧客行動の変化を施策に活かすためのソリューション活用やデータ統合についてご紹介します。

電通デジタルでは、皆さんの事業にデータをより活かしていただくための支援を広く行っています。データの活用について、事業課題の解決へのご相談から実際のソリューション導入の支援まで一気通貫で対応を行います。ご相談やお問い合わせは、本記事下の「お問い合わせ」ボタンからお寄せください。

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https://business.adobe.com/jp/products/analytics/adobe-analytics.html

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