2022.09.30

効果測定から顧客の理解へ~Adobeソリューションならここまでできる~

【第1回】 改善効果を高める「顧客理解」のデータ活用

デジタルマーケティングにおいて、顧客とのコミュニケーションを円滑に行うために、様々な施策を実施している企業が多いと思います。

オンライン/オフラインを問わず、企業が多くのデータを収集し分析を進める目的は、データから得られる知見を用いて顧客との関係を良好なものに改善し、提供する商品やサービスを選択・利用してもらうことです。

本連載では、「顧客行動を理解するためのデータの活用」への取り組みや運用のための考え方、実践方法について、Adobe Analyticsを中心としたAdobeソリューション群を例に、マーケティングで事業の推進に取り組む方々に向けて全3回にわたってご紹介します。

初回は「顧客理解のデータ活用」と題して、マーケティングに活きるデータを取得するためにどのような点に留意して考えていけばよいのか、顧客理解に有効なデータの作り方や利用方法についてご紹介します。

企業目標や事業KPIだけを指針にデータを活用していないか?

マーケティングを実践する中で、企業は売上や利益の目標数値を基に事業KPIを設定し、それを業務のゴールとして計画を立て、施策の検討や運営を行います。

担当者は自社で運営するWebサイトやアプリを対象に、広告からの集客数やランディングページのページビュー数、コンバージョン数(会員登録数や購入回数)といった数値の集計結果を定期的に確認しながら、コンテンツへの反応やUIの改善を考え、KPIを超える数値結果を追い求めています。

例として挙げたWebサイトやアプリの集客数やコンバージョン数は「結果」を確認するためのものであり、次の一手への改善策もだんだんとパターン化され、効果的な改善方法を検討することが難しくなってきます。

改めて、事業成果を高め、KPIを達成していくために大切なことは何なのかを考えてみます。

事業にとってもっとも大切なのは、顧客との関係性をより良いものとし、関心を高め、高いロイヤルティを持ってもらうことです。これが実践できれば、顧客は商品やサービスの購入を継続し、利用体験を好意的に発信するといった重要なマーケティング活動の派生も期待できます。

だからこそ、最近では「顧客理解」が重要視され、顧客をより良く知るために、企業が保有するデータを活用することが求められています。

顧客を理解するためにNPS評価などの定期的な調査を実施し、その結果を事業評価の指標の一つとして意識している企業も多いでしょう。では、そこで得た調査結果を顧客理解につなげ、Webサイトやアプリで実施される施策や事業課題改善に活かすことができているでしょうか?

これまでマーケティング分野でデジタルソリューションの導入は急速に進んできました。

どの企業でもWebサイトやアプリの顧客行動をデータとして収集し、マーケティングや営業活動に活用するための用意はすでに行われています。定期的な集計数値をレポートとしてまとめ、社内で共有しながら改善の検討を行っていますが、売上や利益の目標、事業KPIを達成するために考えられる手法は次第に同じような方法の繰り返しに陥ってしまいがちです。

現状集めているデータには必ず顧客を理解するためのヒントが隠れています。データの扱い方を見直すだけで、「結果」の把握から「顧客を理解する」ためのデータとして活用の幅を変えることができるようになるのです。


実はここまでできる!Adobe Analyticsによる顧客理解の考え方と実例

では、現状収集しているWebサイトやアプリの顧客利用状況を示すデータをどのように工夫すれば、「顧客理解」につながるのでしょうか?

取得しているデータの各項目が持つ定義やその意味を見直してみることで、顧客行動の背景にある気持ちの変化や行動の理由を分析し、顧客一人ひとりにパーソナライズしたコミュニケーションに活かす、すなわちCXの改善に活かしていくことができます。

ページではなく顧客(人)を軸とした流れを整理しよう
Zoom

ここからはAdobe Analyticsで設計・取得するWebサイトやアプリのデータを例に、顧客を理解するためのデータ利用の視点や工夫についてご紹介します。

現在もデジタルマーケティングは日々進化を遂げています。その中で市場の変化やそれに伴う顧客の行動パターンの変化を取り入れ、Adobe Analyticsも進化に応じた改善や機能追加が行われ、より顧客の行動をデータとして捉えるための工夫が施されています。少し前まではWebサイトで取得するデータと、アプリのデータは分断されたデータとして収集されてきました。いまでは別の環境として考える必要はなく顧客の利用行動をデータ化し、マーケティングに活かしていくことができるようになっています。

このような新しい機能や改善に託された意図を理解することで、それを有効に活用し顧客理解を進めるマーケティング活動に反映することができるのです。ツールの機能を使いこなす、習熟することも必要ですが、機能に託された目的を正しく理解し、適切な社内外の協力を得て実践に活かすことが重要です。Adobe Analyticsに用意されているいくつかの機能を例に、取得したデータがどのように顧客理解に活きるのかを見ていきましょう。顧客体験をより良くする改善を考える際、2つの方向性が必要です。一つは画面やデザイン、操作性などのUIを評価し改善すること、もう一つは顧客行動を把握し理解することです。

①UIの改善:Webサイトやアプリを利用するときのストレスを軽減し、使いやすく親しみある環境に向上させていくために便利な機能は何なのか?

②顧客行動の把握:顧客一人ひとりの行動をデータで捉えるために、どのような視点でデータを集計し、検討すればよいのか?


[UIの改善]長い間かけて進化してきたUI評価のための分析機能

まずはUIの改善に役立つデータ項目について考えます。Adobe AnalyticsにはUIの課題仮説を見つけ出すためのデータ取得機能が揃っています。例えば、以下のような機能があります。

①スクロール計測

②顧客がアクションしたページ内のエリア計測

③動画計測

④ヒートマップ

これらの機能については、すでに多くの方が使っているかもしれません。実際に顧客行動の意図や背景を理解するために、どう活用すればよいでしょうか?

①スクロール計測

スクロール計測で取得したデータは、単に「指定したページをどこまで閲覧したか?」を見るためのものではありません。

・スクロールされたページがWebサイトやアプリのどの階層や位置に置かれていたか?

・スクロールされたページに掲載されたコンテンツの顧客提供の意図はどのようなものだったのか?

といったコンテンツ提供の環境、構成の意図、役割を踏まえ、顧客に伝えたい情報群が充分に顧客に伝わったか?という視点でデータを見ることが必要です。このようにWebサイトやアプリの顧客への提供目的に沿った「構造の把握」がUI改善のためのデータ活用においては重要な指針となります。

コンテンツの読了は間接的にコンバージョンに貢献しているのか?(数値はサンプルです)
Zoom

②顧客がアクションしたページ内のエリア計測

「ページ内のエリア計測」とは、例えばトップページの中段にキャンペーンなどの告知を掲出していた場合、そのエリアの表示頻度やマウスオーバーされた(=関心を引いた)形跡がどのくらいあるか?などをデバイスごとに計測する機能です。

デバイスごとのUIの改善を考える際に、エリア計測のデータを分析することで、それぞれのデバイス形状の特性を踏まえて顧客行動を推察し、改善仮説を検討することができます。さらに言えば、単純にPCとスマホといったデバイスごとの関心の高さを数値の大小で捉えるに留まらず、Webサイトやアプリの中で顧客に提示した意図と重ね合わせてデータを見ることで理解が深まります。

③動画計測

多くの顧客が動画を再生していても、継続した視聴が5%しかないのであれば、顧客にとって有益な情報ではありません。その動画のタイトル、内容、長さ、配置した階層、ページや位置など、伝えたい情報を込めた動画の有効な活用方法を、動画計測データ(動画再生や終了などの計測)から検討できます。

Adobe Analyticsの動画計測にはいくつかの計測方法があります。そのため、何が知りたいのかを最初に定義することが大事です。

視聴行動を再生開始と終了という「点」で捉えるのか? 動画をどの程度まで視聴したかという「線」で捉えるのか? これに加え、閲覧中にミュートした、などの詳細なアクションも取得も可能です。「何を知りたいのか」によって得られる知見は変わります。動画は顧客に提供するためのインフラやプラットフォームの選択も多様です。Webサイトやアプリを通じて動画を提供する意図を踏まえて、どのような項目のデータで何を理解したいのかを考え、内外の協力者に実装方法やデータ取得の方法を相談し、取得するデータの定義を固めることが重要です。

④ヒートマップ

Adobe Analyticsを導入済みの企業でも、マーケティング関係者以外の社内のステークホルダーとの共通理解を深めるために、ヒートマップツールを導入したり検討したりする企業も多いでしょう。

Adobe Analyticsには「Activity Map」という機能があります。これは任意のページ上のリンクのクリック集計数値を画面上の該当箇所に重ねて表示する機能です。別途ヒートマップツールを導入することなく、クリックしたという顧客の興味、関心行動を視覚的に見ることができます。

Adobe Analytics上で作成したセグメントも適用でき、「サービス理解のコンテンツを閲覧」有無の比較などが可能。例の場合、サービス理解コンテンツを閲覧している人たち(上図右)は、閲覧していない人たち(上図左)に比べて、グローバルナビゲーションのタグを使って他のコンテンツにも回遊している傾向が見える(数値はサンプルです)
Zoom

このように「コンテンツの環境、構造、提供意図」と「顧客行動の傾向を示すデータ」を重ね合わせて見ていくことで、顧客理解はより深まり、UIの改善を通じて顧客との良好な関係作りに役立っていきます。


[顧客行動の把握]Webサイトの利用で顧客はどう変わったのか?

UI関連のデータ項目と同様に重要なのが「顧客一人ひとりの行動」を把握し、理解するためのデータ項目の取得や機能です。

Adobe Analyticsはデータ項目の設計の自由度が高く必要なデータを取得できますし、行動データを把握するための分析機能やレポートのビジュアライズ機能も豊富に揃っています。

これらは必要なカスタム変数を設定し、セグメント機能や分析機能を使いこなすことで利用することができますが、大切なのは「行動の経過や変化」によって顧客行動の理由や背景を推察し、企業として顧客に望む行動を実現してくれるセグメントを発見することにあります。

顧客一人ひとりの行動を通じて、セグメントを発見していくために有効ないくつかの分析項目や考え方は、

・シーケンス(期間や時間の流れ)

・コホート(共通した因子を持つグループ)

・リテンション(継続、維持)

といったものが主な例となりますが、Adobe Analyticsの分析ワークスペースを活用することで、これらのデータ項目の集計や分析を容易に行うことができるようになります。

シーケンスを意識した分析は、例えば、「広告から流入した潜在顧客が入口からどのようにWebサイトやアプリ内を遷移し提供するコンテンツや情報に接触するか?」を理解するために重要です。

広告をきっかけにキャンペーン告知ページに訪問した潜在顧客を、「キャンペーンの応募ページまで行った場合」と「応募ページまで行かなかった場合」をそれぞれシーケンス機能を使ってセグメントを作成します。セグメントごとにサイト内回遊や離脱ページを確認することで、キャンペーンに参加した潜在顧客がその後、他のコンテンツや情報に興味関心を持てたのかを知ることができます。

データから具体的なキャンペーンページ内のクリック箇所や遷移が多かったページが分かれば、どのようなコンテンツを提供することがキャンペーン後の関心につながるのかといった仮説が考えられます。またキャンペーン参加せずに、他のページに遷移したセグメントを見れば、広告をきっかけとしながら、本当はどのようなことが知りたかったのか?関心があったのか?といった仮説を検討することができ、次の施策の参考になります。

Adobe Analyticsのコホート分析機能は、特定の顧客行動をグループとして捉え、その後の行動経過をデータから可視化することができます。

「デバイスごとに顧客をグルーピングして利用経過の違いを把握する」「予算をかけて行ったキャンペーンに反応したグループと反応がなかったグループのサイト訪問の状況を比較する」といった使い方もできますし、チャーン(解約)の可能性をセグメントごとに確認するといった使い方も、代表的な利用例としてテーブル化しています。

例のチャネルから新規訪問すると、その後の理解が深まるのか?
Zoom

コホートでも良く使われるリテンション分析も、一定以上の期間にわたって顧客の行動を把握することが重要になりますが、Adobe AnalyticsのeVar変数をカスタム設定すれば、初回訪問(ファーストタッチ:顧客の初回訪問に紐づくデータ)からコンバージョンまでの行動経過を理解することが可能になります。

リテンション分析を通じて顧客行動を理解するためには、「いつ、どこから来て、何をしたか?」を訪問の頻度や間隔、行動結果を踏まえて読み取る必要があります。

また、マーケティングに携わる方々にとっては、Cookieの使用が難しくなっていく現状を踏まえると、Adobe AnalyticsやAdobe Experience Platformといったツールを「ソリューション」として利活用して、ブラウザやアプリを横断したプロファイル統合をすることで、顧客行動をより明確にデータで把握することが可能となり、顧客との良好な関係の継続を図るLTVや、施策に直接的に活かしやすいコンバージョンまでの行動経緯といったデータを取得し理解することができます。

UI、そして顧客行動のデータ化を行う際に大切なのが、顧客に提供するWebサイトやアプリの構造を俯瞰で見て、「どこから来て、どこを見て、何をしたか」の顧客行動の背景となる環境を整理・理解することです。

顧客が訪れ、利用するページの機能や意図にデータを重ね合わせて読み取ることで、顧客行動に込められた行動変化の意味、気持ちの変化のポイントをデータからより明確に把握することができるのです。

指標が表す顧客の行動や気持ちの変化をデータで可視化する
Zoom

データから顧客を理解し、施策に活かす

本記事では、「どのようなデータ項目や指標を追加すれば、さらにデータから顧客理解を深めることができるか?」について、Adobe Analyticsを例にご紹介してきました。データ収集のための新たなツールを導入しなくても、集めるデータの項目ごとの利活用意図、定義を把握し見直すことで、充分に現在蓄積しているデータの活用度を上げることも可能です。

集めたデータはレポートを作ることが目的ではありません。マーケティングに携わる皆さんを中心に、企業の中で様々な役割を担うステークホルダーの方たちと議論や意見の交換を経て、顧客理解を続けていくために使うことが重要です。そういった意見交換や検討を経て得た仮説が、Adobe Analyticsのさらなる利活用に転じていくための原資となります。

・得た仮説から事業のKPI達成や売上向上に寄与するセグメントを発見する

・事業にとって重要な顧客となるセグメントに対してターゲティングを行い、より使いやすいWebサイトやアプリに改善する

・企業が管理するIDを使ったデバイスを横断したプロファイルの把握を実現する

・顧客行動データやターゲティングの結果を踏まえて、レコメンドやMAと連動したプッシュ施策を展開する

こういった段階を積み上げながら顧客とのコミュニケーションを進めていくことで、CXのいっそうの改善が行われ、顧客一人ひとりの企業に対するロイヤルティの向上やLTVの継続が実現していくのです。


今回は本連載の第1回として、顧客行動を理解するためのデータ活用の考え方やツール活用、施策に活きるデータの取得の方法をお伝えしました。

次回は、マーケティング活動の日常で多くの時間を費やしていると思われるレポート作成や分析について、Adobe Analyticsの機能を活用した効率的で効果的な方法について解説します。

電通デジタルでは、皆さまの事業にデータをより活かしていただくための支援を広く行っています。データの活用について、事業課題の解決へのご相談から実際のソリューション導入の支援まで、一気通貫で対応を行います。ご相談やお問い合わせは、本記事下の「お問い合わせ」ボタンからお寄せください。

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