2021年04月27日

エクスペリエンス

コラム

資生堂クレ・ド・ポー ボーテにロイヤルティプログラムを導入

※所属は記事公開当時のものです。

顧客のロイヤルティ向上とライフタイムバリュー(以下、LTV)向上は、どのような企業やブランドにとっても重要な課題です。

ロイヤルティプログラムはそうした目的で検討されるマーケティング施策の一つですが、グローバル展開を視野に入れているブランドの場合、ツールの選定や、戦略策定・開発・運用に携わるパートナー企業の選定に頭を悩ませることが多いのではないでしょうか。

電通デジタルは、電通グループのデータマーケティング企業Merkle(マークル)と協業し、資生堂クレ・ド・ポー ボーテへのロイヤルティプログラム導入にあたり、戦略・開発・運用に携わりました。

海外企業と連携して、戦略、開発から運用までをワンストップでスムーズに実現したプロジェクト体制とはどのようなものだったのか、電通デジタルの担当者2名に聞きました。

LTV向上のためにロイヤルティプログラムの導入を模索

――クレ・ド・ポー ボーテは、資生堂の中で、どういう位置付けのブランドですか? また、本ブランドはどういった課題をお持ちでしたか?

八十島クレ・ド・ポー ボーテは、スキンケア、カラーメイクアップ、ベースメイクアップの商品を提供する最高峰のラグジュアリーブランドです。

現在、世界16の国と地域にブランドサイトを展開していて、多くのお客さまにご愛用いただいていますが、ブランドの維持・拡大のために、ブランドイメージの理解・浸透と、継続的な購入によるLTVの向上を必要としていました。

その手段の一つとして、クレ・ド・ポー ボーテ専用のロイヤルティプログラムを導入できないか、資生堂さまからご相談をいただきました。

クレ・ド・ポー
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――ロイヤルティプログラムとは?

八十島ブランドに愛着を抱き、継続的に利用してくださるロイヤルカスタマーを維持・育成するための仕組みのことです。クレ・ド・ポー ボーテはグローバルブランドなので、グローバルで統一したブランド体験を提供する必要があります。そのためにも、ブランドとして一貫性のある戦略が求められました。

――今回のプロジェクトで構築したクレ・ド・ポー ボーテのロイヤルティプログラムの概要を教えてください。

八十島「クレ・ド・ポー ボーテ メンバーシッププログラム」という名称で、公式アプリ、公式LINEアカウント、公式Webサイトのメンバー登録ページから登録してご参加いただきます。

実店舗/オンラインショップでの商品の購入、サロンでの施術に応じて、100円(税抜)につき1ポイントの「ラディアンスギフトポイント(以下、ポイント)」が付与されます。このポイントは、クーポンやお金への交換はできません。「ラディアンスギフト」との引き換えにのみ使われます。

「ラディアンスギフト」はこのプログラム専用の特別な記念品で、毎年テーマを設定し、パッケージも含めてクレ・ド・ポー ボーテの世界観を表現したオリジナルなものが作られます。ここでしか手に入らない「ギフト」がブランドとお客さまをつなぎ、一人ひとりにラグジュアリーなブランド体験を提供します。

ロイヤルティプログラム概要
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――本プロジェクトは、電通グループのMerkle(マークル)と協業していますが、その経緯を教えてください。

八十島ロイヤルティプログラムの構築にあたり、Merkleが自社開発したロイヤルティプログラムソリューション「LoyaltyPlus(ロイヤルティプラス)」導入を検討したいということで、資生堂さまからご相談をいただいたのがきっかけです。

LoyaltyPlusは世界45ヵ国での導入実績があり、サムスン、スターバックスといったグローバルブランドの事例が多数あります。ただ、日本市場への導入は今回が初めてだったため、資生堂さまとしては、海外製プロダクトの導入に関するさまざまな懸念をお持ちでした。

そこで本プロジェクトでは、電通デジタルとMerkleが協同で専任のプロジェクトチームを組み、ロイヤルティプログラムの戦略策定から構築、運用までをワンストップで実施することになったのです。

八十島慶子(電通デジタル)

八十島慶子(電通デジタル)

世界有数のデータマーケティング会社Merkleとは?

――Merkleは日本ではまだあまり知名度が高くないと思いますが、どのような会社なのでしょうか?

八十島Merkleは1971年に創業、アメリカ・メリーランド州に本社を持つ世界有数のデータマーケティング会社です。2016年にDentsu International(旧電通イージスネットワーク。電通グループの海外事業を統括・支援する会社)にグループ入りし、電通グループの一員となりました。People-Based Marketingをベースとした、幅広いデータ活用型マーケティングを統合的に提供できる会社です。

現在は、アメリカ、アジア、ヨーロッパを中心に50以上の拠点を持ち、12,000名以上のスペシャリストが所属しています。テクノロジー領域とデータ領域の人材が全社員の過半数を占めるというユニークな組織体制で、プロジェクトごとに最適なメンバーを配置してチームを編成するという特色があります。

特にブランドロイヤルティを高める顧客リレーション構築を得意としており、戦略設計からシステム構築、クリエーティブサービス、プロモーションの実施まで、end-to-endで、ロイヤルティマーケティングソリューションを提供できるのが強みです。

ロイヤルティプログラム導入のプロジェクトスケジュール

――今回のプロジェクトはどのようなスケジュールで実施されたのでしょうか?

八十島今回は全体スケジュールを、戦略フェーズ、開発フェーズ、運用フェーズの3つに分けて進めました。

プロジェクトスケジュールと体制
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【戦略フェーズ】

  • ロイヤルティプログラムの全体戦略を構築

  • 検討事項の洗い出し

  • ブランド会員の具体的な参加方法を決定

  • ポイントプログラムの設計

  • ステージの定義

  • アワードの策定

【開発フェーズ】

  • LoyaltyPlusのシステム構築

  • 資生堂さまの既存システムとのデータ連携

  • LoyaltyPlusの管理画面での各ステージやポイントプログラムの構成

  • ボーナスなどのプロモーション設定

  • フロントエンド開発(ブランド会員向けのマイページ設計やマイクロサイトの制作)

【運用フェーズ】

  • ロイヤルティプログラムの運用サポート

  • システム保守

戦略フェーズはアメリカにいるMerkleのストラテジーチーム中心で進行。開発フェーズのうち、システム構築はMerkleのエンジニアチームが、フロントエンド開発は電通デジタルが行いました。

戦略フェーズから開発フェーズの前半は主にMerkleが担当し、開発フェーズの後半から運用フェーズに向けて徐々に電通デジタルの役割が大きくなるような体制にしています。徐々に役割分担を移行していくことで、海外製プロダクト導入にありがちなトラブルも少なく、スムーズにプロジェクトを進行できました。

実際のプロジェクト体制図
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――各フェーズにおける電通デジタルの役割を教えてください。

八十島戦略フェーズでは、Merkleのメンバーを中心とし、Merkleが作成したロイヤルティプログラムのフレームワークを基にしながら、ワークショップなどを通じてロイヤルティプログラムの内容を構築していきました。電通デジタルでは内容をキャッチアップしつつ、開発フェーズに向けてのアサイン準備等を行いました。

開発フェーズでは、フロントエンドの開発に加え、LoyaltyPlusの実装を担当したMerkleのチームと、資生堂さま関係者(PMO、カスタマーサービスの担当者のほか、資生堂さまが別途契約している外部パートナーなど)と密にコミュニケーションをとりながら、全体の進行管理を行いました。

運用フェーズでは運用サポートを担当しています。電通デジタルから直接システム内のデータにアクセスすることはほぼなく、システム保守を担当するMerkleをディレクションするという形で運用しています。

――戦略策定開始から実際に運用するまで、どれくらい時間がかかりましたか?

八十島戦略フェーズは約6ヵ月、開発フェーズは約9ヵ月です。日本市場をターゲットとしたロイヤルティプログラムの場合は、これくらいが上限の目安になるのではないでしょうか。

さまざまなツールと容易に連携できるLoyaltyPlus

――LoyaltyPlusとは、どのようなプラットフォームですか?

八十島Merkleが自社開発したロイヤルティプログラムプラットフォームで、各種デジタルマーケティングツールとAPI連携が可能です。ロイヤルティプログラムを実施するためのさまざまな機能が標準で搭載されており、おもな標準機能(以下の表を参照)だけでもさまざまなキャンペーンを設定できます。

本プロジェクトの開発フェーズでは、各種データとの連携のほか、マイページ、MAツール、アプリとの連携を行いました。

ロイヤルティプラットフォーム
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ルール設定に基づくロイヤルティ管理
オファーとプロモーション オファー、ディール、ボーナスポイントなどのプロモーション設定、カスタム設定、リアルタイムトラッキング
リワード設定 デジタルクーポンとオファーコードの設定/配信、自動化または会員意向に沿ったリワードの償還、リワード内容管理
アクティブエンゲージメント メンバー階層/バッジ管理、ソーシャルリスニングとアワーディング、階層別/セグメント別アクティビティ管理、プロモーションとの連携
会員とのコミュニケーション EメールとESPの統合機能、メンバーのジャーニーをトリガーにしたコミュニケーション、パーソナライズされたメッセージング、Eメール/SMS/アプリ内プッシュ
オムニチャネル統合 APIを介したあらゆるシステムとの接続、60以上のプラットフォームと統合済み、RESTful API、監査可能なデータフィード
メンバー管理 会員のロイヤルティ活動の履歴管理、メンバーアカウントの変更/統合/削除などの管理、エンゲージメント起点のCTA管理
プログラムレポーティング プログラムトラッキングダッシュボード、カスタムレポートと分析、会員行動管理、償還リワード管理、不正防止管理、負債管理
セキュリティ/スケール グローバルAWSインフラのリーディングカンパニー、12ヵ月のアップタイム100%、SOC1 TypeⅡ準拠、SOC2準拠、GDPR準拠、PCI準拠

スムーズな開発・運用を可能にしたMerkleとの協業体制

――海外製プロダクトを導入する際には、日本市場特有の難しさがあると言われていますが、本案件ではいかがでしたか?

井須グローバル展開のプロジェクトでは、フェーズごとに担当する会社やメンバーが完全に入れ替わるのが一般的です。前フェーズでの実施内容や知見が引き継がれないことも頻発し、開発や運用に支障をきたすことが多いのですが、Merkleとの協業プロジェクトでは、そういったことがまったくなかったので、非常に運用しやすいです。

インシデントは、基本的にMerkleのエンジニアチームが対応しています。Merkle社内での連携もうまく機能しており、さまざまな場面で助けられています。

運用フェーズ
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八十島運用のしやすさの要因は、開発メンバーが引き続いて運用サポートを担当する体制であることが大きいと思います。それがMerkleの特徴でもありますが、グローバル展開しているプロジェクトとしては、そうした体制は非常に珍しいです。開発チームが運用もサポートしてくれるというのは、発注する側の日本企業の視点で見たときには、とても心強いのではないでしょうか。

井須インシデントの対応や、クライアント企業からの依頼などは、基本的にMerkleのチームと電通デジタルが一緒に行っていますが、ほぼリアルタイムにきめ細やかな対応が可能な点は、クライアントからも高評価でした。Merkleは世界中をカバーできるタイムゾーンごとに開発拠点があるので、このように時差を考慮した体制づくりが可能な点も好感ポイントのひとつですね。

井須弘恵(電通デジタル)

井須弘恵(電通デジタル)

――これまでLoyaltyPlusを活用したロイヤルティプログラムでは、どういった施策・キャンペーンを行いましたか?

井須年度ごとにクライアントから企画をいただいており、これまでに数回キャンペーンを実施しました。

「指定商品の購入や組み合わせでの購入でボーナスポイント付与」といった購入を促すためのキャンペーンのほか、「2回目の購入でボーナスポイント付与」といったリピート施策、「お誕生日月の購入でプレゼントとしてポイントを付与」「一定期間購入がないお客さまを対象にして、指定期間に商品を購入いただくとボーナスポイントを付与」といった離脱防止のためのキャンペーンなど、さまざまな目的に応じたキャンペーンを実施してきました。

キャンペーンは、店舗でもECサイト上でもお客様が同じ体験ができることが大切なポイントです。LoyaltyPlusではさまざまなキャンペーンやプロモーションを比較的簡単に設定することができますが、本来オンライン/オフラインをまたいだキャンペーンは、LoyaltyPlusの標準機能ではありません。企画に合わせMerkleのメンバーに専用のスクリプトを組んでもらうことで実現しています。企画に合わせて標準機能を使ったり、新たに開発したり融通がきく点はとても助かっています。

――本プロジェクトに対して、クライアント企業からの評価はいかがですか?

井須クレ・ド・ポー ボーテ公式サイトの運用は、電通デジタルの別のチームが担当しています。その担当者にも本プロジェクトに参加してもらっており、フロントエンドの開発力の高さ、開発と運用でシームレスな体制が作れた点は、特にご評価いただきました。

また、今回のロイヤルティプログラムに関係することはすべて、電通デジタルのプロジェクトマネジメントチームに集約する体制を作らせていただきました。アプリ開発、CRM、個別のコンサルティングやキャンペーンを担当する企業など、電通デジタル以外の各社ともコミュニケーションをとりながら運用していることで、インシデントマネジメントがスムーズに行えた点も、ご評価いただけたのではないかと思います。

グローバルでワンストップのデジタルマーケティングが提供可能に

――本プロジェクトでMerkleと協業したことにより、新たに見えてきた電通デジタルの強みというものはありますか?

井須電通デジタルはこれまでに、自動車や金融などを中心に、CRM、リード獲得、リードナーチャリング、購入後のリテンションまで、データ活用のデジタルマーケティングに関して豊富な経験を持っています。ただ、戦略策定の部分に関しては、自社開発のシステムを持っていなかったということもあって、十分に取り組めていませんでした。

本プロジェクトを通じてMerkleとの協業体制が確立したことで、グローバルな視点に基づいた戦略策定の部分が強化されました。今後はCRMやSalesforce開発などの領域での協業も予定しており、本当の意味でのワンストップなデジタルマーケティングが提供できる体制が整ったと言えます。

八十島電通デジタルには、その前身の電通イーマーケティングワン時代を含めると10年以上にわたり、CRM領域のグローバル案件に対応してきたノウハウの蓄積があります。海外製プロダクトを日本に導入するローカライズ案件、日本から海外マーケットに各国展開するグローバル案件、両方の経験を豊富に持つのは強みだと思います。

2021年7月には電通アイソバーと合併します。CXやグローバルでの強みを有するアイソバーとの連携により、さらに強力なワンストップのプロジェクト体制を組むことができるはずで、大きなクライアントメリットだと考えています。

――最後に、ロイヤルティプログラムの導入を検討している企業やブランドのCRM担当者へ向けて、ひと言お願いします。

井須LoyaltyPlusは既存のマーケティングツールと連携しやすい点が最大の魅力です。ロイヤルティプログラム開発をご検討の際には、選択肢の一つとしてお考えください。

また、電通デジタルとMerkleは、LoyaltyPlus以外のソリューションにおいても今回同様の協業体制でサポートさせていただきますので、グローバル展開を検討されているようでしたら、お気軽にご相談ください。

八十島コロナ禍を経て、単なる金銭的価値提供にとどまらないLTV向上や顧客とのリレーション強化はあらゆる企業で課題となっていますが、なかなか簡単なことではありません。そういった部分でお困りの場合には、最適なサポートをご提供いたします。