2018年12月07日

デジタルトランスフォーメーション

コラム

電通デジタルは2018年11月22日、「デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2 ~デジタル変革を事業成長につなぐビジョン・組織・人づくりとは?~」と題し、セミナーを開催しました。

2018年9月時点の調査によると、「デジタルトランスフォーメーション(DX)に着手済み」の会社は全体の63%、計画予定中が13%でした。昨年行われた同様の調査と比較すると、すでに導入中の企業が約10%も増え、まさに企業の皆さまがデジタルトランスフォーメーションに「取り組むべきか否か」から「どう取り組むべきか」の段階に移行したことを裏付ける結果となりました。

セミナーに先立ち、電通デジタル 執行役員 デジタルトランスフォーメーション部門 部門長 八木克全より、企業の経営層と実務担当者ではデジタルトランスフォーメーション推進についての課題認識が異なる問題を提起しました。経営層はコストやセキュリティーリスク、体制、人材不足を課題と捉える一方、実務レベルでは組織の連携や業務プロセスの設計、実行に課題を感じていたのです。

4部構成セミナーのうち、最初の1部、2部ではアフラック生命保険や三井住友トラストクラブといった大手企業におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組み事例を紹介。続く3部、4部ではデジタルネイティブ世代が活躍する企業での取り組みをお伝えしました。

デジトラ戦略を掲げるだけではもったいない。実行レベルに落とし、戦略、運用に拡散させていく

第1部 セッション

Digital Innovation - The Aflac Way ~アフラック式デジタルイノベーションの起こし方~

  • アフラック生命保険株式会社 執行役員 / チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)ブルース・アップルビー氏

  • 株式会社電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 ビジネス/UXデザイン事業部 部長 桑山晃一

アフラック生命保険のアップルビー氏登壇前に、電通デジタルの桑山が「大企業におけるデジタルイノベーションの『壁』」と題したイントロダクションを行いました。「スタートアップ企業とのコラボレーション」するもプロジェクトがスケールしない。「業務に『アジャイル』を取り入れる」もIT部署以外に波及しない。「デジタル専門部署の設立」をするも、ビジネス・インパクトの出づらいトライアルに終始しがち。以上のような3つの壁が大手企業には存在すると、桑山は問題提起します。

これらの大企業課題を解決したのが、アフラック生命保険です。アップルビー氏は「アフラック式デジタルイノベーションの起こし方」と冠して、3つの施策を紹介しました。「カスタマージャーニーとアジャイル」は、徹底的に顧客視点に立ったカスタマージャーニーとサブジャーニーを定義することで、部署間でこぼれ落ちた問題をアジャイル手法で解決するもの。2つめの「デジタルUI/UXガイドライン」は、企業としてデジタル上の顧客体験を統一するルールがないことを是正しました。3つめは「データドリブンPDCA」。各部署に格納されているデータを企業のビッグデータとして使えるよう整備し、専任チームをつくり、データを有効活用できるようにしました。これらの施策をアフラック生命保険が行ったのは、たったの1年。スピード感を持って、イノベーションを成し遂げたのです。

第2部 セッション

マーケティング高度化と組織改革 ~ダイナースクラブカードの実践事例~

  • 三井住友トラストクラブ株式会社 マーケティング本部 副本部長 井上聡氏

  • 三井住友トラストクラブ株式会社 マーケティング本部 マーケティング第2部 部長 團野弘祥氏

  • 株式会社電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスマーケティング事業部 グループマネージャー 外山遊己

  • 左から三井住友トラストクラブ井上氏、團野氏、電通デジタル外山

第2部は電通デジタルの外山を聞き手とし、三井住友トラストクラブの井上氏と團野氏を招いて行われました。「顧客視点」を基にマーケティング戦略を刷新し、組織改革まで踏み切った三井住友トラストクラブ。登壇した井上氏と團野氏は「我が社のデジタルメディアの対応は遅れている」「徹底した顧客目線でモノを考えるにあたって、社内の人間だけでは実現できないと思い、他社との協業に踏み切った」と、冷静に振り返ります。

「認知獲得・ブランディング」「申し込み獲得」に特化した顧客とのコミュニケーションを目的に据えた三井住友トラストクラブは、3ヶ月間で顧客体験上の課題とその改善施策の実行に必要なマーケティング・プロセスや体制を設計。経営陣から出ていた指示は「立案した戦略を絵に描いた餅にせず、実行に移すこと」でした。しかしファネルごとに担当部署が異なり、KPIも異なるようでは改革が難しいと判断。そこで、ファネル間を横断する共通KPIを設定しました。改めて顧客視点で現状のチャネル・接点を再評価し、顧客体験上の課題と改善施策の実行に必要なマーケティング・プロセスや体制を設計したのです。

第3部 セッション

デジタルトランスフォーメーション 何を軸に進めていくべき?

  • LINE株式会社 CRMSソリューション室 チーフ 泉貴文氏

  • 株式会社電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスプロセスデザイン事業部 シニア・プランナー 神戸純

第3部は、前半に電通デジタルの神戸が、後半にLINEの泉氏が登壇する形で行われました。2人はともに2018年10月に上海へ中国企業などの視察に行った仲。まず神戸が「生活が変わるレベルのことが起こり始めている」と題し、中国企業のデジタルトランスフォーメーションを紹介しました。支持される中国企業は「顧客が使い続けたい自社らしい理由がある」と神戸は言います。さらにその理由を紐解くと「業種として提供する根源的な価値」「いま自社が存在する基盤」「自社の行動様式≒ブランド」「つながるべき顧客の未来」があり、これらを仮説的に組みあわせながら正解を探すことで、「自社らしい軸」は導出しうると説きました。

次にLINEの泉氏が登壇しました。LINEは2011年6月にローンチ。東日本大震災直後で、メッセージの発信側が自分の送ったものを読んでもらえたのかをわかるようにしたいという要望から、「既読」サービスをつけたと言います。国内利用者数が7800万人を超えたLINEの、主な収入は広告です。

しかし顧客視点に立つと「LINEは『ウザい広告』になってはいないか?」と泉氏は疑問を挟みます。そこで今後は広告に頼らず、LINE自体が「便利な情報やサービスが受け取れるプラットフォーム」を目指す。ユーザーが意識しなくても、欲しい情報を受け取ることのできる状態が、LINEの志す目標なのです。

第4部 パネルディスカッション

サービスグロースハックを支えるデジタル組織の作り方

  • 左からMoonshot菅原氏、メルカリ樫田氏、ディー・エヌ・エー小東氏、電通デジタル高木
  • Moonshot 代表取締役 CEO 菅原健一氏

  • メルカリ データアナリスト/マネージャ 樫田光氏

  • ディー・エヌ・エー ゲームサービス事業部 分析部 部長 兼ゲームサービス事業部 第一ゲームサービス部 部長 小東祥氏

  • 電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 デジタルコンサルティング事業部 グループマネージャー 高木僚平

パネルディスカッションで話し合われたのは、デジタルネイティブ企業に必要なデータや組織の活用、カルチャー、人材について。会場からオンライン質問投稿・回答サービス「Sli.do」で質問を随時受け付け、気になる質問をパネラーが回答するフランクなセッションとなりました。

セッションの冒頭、高木が問いを立てます。「データ分析がビジネスに直結する組織と、直結しない組織では何が違うのか」。そこに菅原氏が、「企業が成果を出すには、目標ではなく目的管理が不可欠です。『ヒト』『モノ』『カネ』は企業の限りある3資源。目的のはっきりしない軸のぶれた経営判断で資源を利用すると、成果は出にくい」と呼応しました。

次に樫田氏が「目的をただ『顧客のサービス環境を快適にする』と言語化しただけでは、皆を同じ方向に向かわせることができません。そのための目標として必要なのが数値です」と菅原氏の言葉に続けます。『顧客の継続率を2倍する』など、具体的な数値と内容を目標に落とすことが重要と語りました。

さらに話は、デジタルネイティブ企業の「マインド採用」にも及びました。「ディー・エヌ・エーっぽいマインドを持たない人は採用しない」と明言する小東氏は、採用したい人材を次のように語ります。「事業を伸ばしたい、その手段として分析がしたいというように、ベクトルが事業に向いている人がいい」。逆に「自分の市場価値を高めることが最優先など、モチベーションが自分自身に向きすぎている人はディー・エヌ・エーの分析チームには合わない」とも付け加えました。

最後は来場者からのオンライン質問に答えながら、各企業、個人の目的意識の徹底を求め、セッションを終了しました。

第4部の終了後に、電通デジタル 執行役員 デジタルトランスフォーメーション部門 部門長の八木がセミナーの掉尾を飾りました。

「トップバッターのアフラック様から始まり、三井住友トラストクラブ様、LINE様、そして最後のデジタルネイティブの皆さんのお話を伺って感じましたのは、皆さん『実行』をカギとしていることです。スピード感のある『実行』を『戦略』『運用』の範囲にまで広げている。これは非常に大きな学びでした。」

次回からは、第1~3部の内容と、第4部パネルディスカッションのより詳細なレポートをお伝えします。