電通デジタルは、デジタル広告のオンラインダッシュボードサービス「MIERO Digital」に、新たに生成AIを使ってデータを読み取り、要約コメントを自動で作成する機能を搭載しました。今回は、この新機能の開発背景や目的、今後の展開について、担当者3名に話を聞きました。
要約コメント自動生成とは?
――MIEROとはどういうサービスですか?
大橋:MIEROは、電通デジタルと電通が2021年から提供している統合マーケティングダッシュボードサービスです。データの可視化基盤を提供することにより、クライアント企業がデータドリブンな意思決定をすることが可能になります。
MIEROには、「MIERO Digital」と「MIERO Premium」の2ラインナップがあり、MIERO Digitalはデジタル広告の定型ダッシュボードを無償で提供しています。一方のMIERO Premiumは、MIERO Digitalの上位版という位置づけではなく、企業ごとの要望に応じて搭載データ、画面UIなどを個別にカスタマイズすることが可能な有償サービスです。
――今回MIERO Digitalに追加された「要約コメント自動生成」とはどのような機能ですか?
大橋:この機能は、ダッシュボードに表示されている各指標について、「前週との比較」と「前月との比較」という2つの観点からデータの変化を自動的に要約し、コメントとして表示するものです。
中﨑:「全体の傾向」をまとめるだけでなく、「メディアごとの変化」や「キャンペーンごとの変化」といった、より細かいレベルでの要約も可能です。あらかじめ指定した条件に基づいて自動でまとめてくれるので、毎回それぞれの指標ページを自分で確認する手間が省け、とても便利です。
生成AIで、ダッシュボードをより手軽に、使いやすく
――今回の機能の開発には、どのような背景がありますか?
毛利:マーケティングの複雑化が加速し、法規制の強化でデータ活用が難しくなる中でも、データの活用が競争優位を築く重要な要素であることに変わりはありません。
クライアント企業からも、「自社内でデータの利活用や運用を行いたい」という声が多く寄せられるようになっていますが、昨今様々なプラットフォーマーの台頭により、情報の分断や顧客行動の把握が難しくなっています。その結果、データ分析や改善業務は高度化・属人化しています。
こうした課題に対応するため、MIERO Digitalの「要約コメント自動生成」機能を開発しました。
中﨑:プロダクト開発の視点からは、「生成AIを活用してMIEROをさらに進化させられないか?」という問題意識からスタートしました。
また、ダッシュボード上で指標を読み取ることは、慣れていない方にとっては難しい場合もあります。そういった方でも使いやすくするにはどうすればいいか。この点も以前からの課題として考えてきました。
――どのような利用者を想定していますか?
毛利:主にクライアント企業のマーケターの皆様を想定しています。広告に関わる部署に所属している方、その運用を担当されている方など、幅広い方々に活用していただきたいと考えています。
大橋:初心者の方はもちろん、広告配信の実績や成果データをもとに上司や関係者に説明する機会が多い方も想定しています。
たとえ自分がダッシュボードに慣れていても、使い慣れていない人に画面の見方を説明するのは意外と手間がかかります。そのため、自分でレポートを作成している方も多いと思いますが、今回の機能がその負担を減らす助けになればと考えています。
――要約コメント自動生成機能の開発で、特に苦労した点はどこですか?
中﨑:今回の開発では、MIERO Digitalに不慣れなビギナーの方でも、簡単な操作で要約コメントを自動表示できることを目指しました。すべての操作をMIERO Digitalの画面上で完結させる設計にするのが技術的に難しいポイントでした。
大橋:実装したのは「要約コメント自動生成機能」だけですが、そこに至るまでにはさまざまな検討がありました。理想としては、要因分析や改善提案まで自動で行えるようにしたいと考えていましたが、汎用的なサービスであるMIERO Digitalに、それらを高精度で搭載するのは現段階では難しいという課題がありました。そのため、どこまでの機能を盛り込むのが最適か、何度も議論を重ねながら今回の形に落ち着きました。
――リリース後の反応はいかがですか?
大橋:この機能は4月22日にリリースしたばかりなので、クライアント企業や電通デジタル社内からの具体的なフィードバックはこれから収集させていただく予定です。ただ、生成AIを活用した機能ということもあり、社内では非常に好意的な反応があり、期待も高まっています。
毛利:この要約コメント自動生成機能は、「誰が使っても高品質なアウトプットが得られること」を目指して開発しました。その点については、ぜひご期待いただければと思います。
改善提案や要因分析、AIエージェント化も予定
――今後の展開やバージョンアップについて教えてください。
大橋:今回リリースした機能は、生成AIを活用した第一歩です。将来的には要因分析や改善提案もできるようにしたいと考えています。まずは要因分析に注力し、MIERO Premiumでの展開を検討しています。
MIERO Premiumでは、広告データだけでなく、1st Partyデータや他ツールで収集したデータとも連携するダッシュボードを構築しています。今後はより多くのデータを用いて深い分析をすることで、要因分析をできるようにしたいです。
また、私たちの部門では「∞AI MC Planning」という、広告配信におけるメディアプランニングや広告コピーの企画・効果予測などをAIエージェントで一括支援するソリューションも開発しています。将来的にはこのソリューションにも今回の技術を組み込む予定です。
中﨑:チャット機能の追加も計画しています。要約コメントが生成された後、チャットボットがユーザーの質問に応じてより詳しい分析をサポートします。
たとえば「こういう使い方をしたいけど、どう分析すればいい?」と質問すると、最終的にデータの可視化まで提案できる仕組みを目指しています。チャットボットが利用するデータはMIEROのダッシュボード上のデータなので、ユーザーが直感的に利用することができます。
毛利:将来的にはAIエージェント化も視野に入れており、対話形式で運用改善や予算アロケーション、メディアプラン改善まで相談し課題解決できる、単なるダッシュボードを超えたビジネスパートナーのような存在にしたいと考えています。AIと人が協力しながらマーケティング業務の効率化だけでなく、新たな価値創造も目指します。
さらに、CRO(コンバージョン率最適化)の統合も検討しています。1st Partyデータと連携させて効果を高め、それを可視化してフィードバックを繰り返すことで、MIERO Digital上で一連のPDCAサイクルを回せるようにしたいと考えています。
――最後に、MIEROをご利用いただいているクライアント企業の皆様へメッセージをお願いします。
大橋:今後、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用して、MIEROをさらに進化させていく予定です。まずは今回の要約コメント自動生成機能をぜひ積極的に使ってみてください。そして、「こんなことはできないか?」というご要望があれば、遠慮なくお知らせいただけると嬉しいです。
中﨑:皆さまからの改善アイデアは本当にありがたいです。今回はまず要約コメント自動生成機能に絞ってリリースしましたが、次回のアップデートはさらに良いものになると感じています。ぜひご期待ください。
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