2021.09.02

顧客体験のアップデートがこれからの企業の成長を生む~Afterワクチンの消費者ニーズはデジタルとリアルの融合〜

世界中で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、消費者の意識は今後どのように変化していくのか? Afterワクチンに生まれる新しいニーズに対して企業はどのように対処すべきなのか? データとコンテンツを活用した顧客体験ソリューションを展開するアドビの安西敬介氏と、ソリューションパートナーである電通デジタルの小林大介氏が語り合った。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

副社長執行役員

小林 大介

顧客データ管理とデジタルアセット管理で シームレスな顧客体験を

――新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が世界中で本格化し、国によっては日常が戻りつつあります。日本でも現在、ワクチン接種が進んでいますが、Afterワクチンの消費行動にはどのような変化があるとお考えでしょうか。

電通デジタル 小林大介(以下、小林):COVID-19の拡大が消費のデジタル化を促進させたことは間違いありませんが、だからといってリアルでの消費行動がなくなるわけではないと思います。なぜなら、「モノ」を買うだけならECサイトで良くても、デートや家族サービスといった、実際にリアルの店舗に行ってこそ体験できる「コト」を消費に求めているからです。これからの消費者は、デジタルの利便性とリアルの体験がシームレスにつながったサービスを求めるのではないでしょうか。

アドビ株式会社 安西敬介氏(以下、安西):当社が行った消費行動の調査でも、最初の外出自粛をきっかけにオンラインで購買した商品についてCOVID-19収束後にオンラインでの購入を継続するという人は36%でしたが、オンラインと実店舗を組み合わせて購入するという人は過半数の54%、結果として何かしらオンラインでの利用継続は9割となっています。検索や注文をデジタルで行い、商品は店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)などはその典型ですね。これからは、デジタルとリアルが役割分担しつつも、一貫した体験を消費者に提供できるかどうかが重要なカギになってくると思います。

――消費者のシームレスな体験を、企業はどのように受け止め、どのような対応をすれば良いのでしょうか。

小林:消費者にとって、商品やサービスとの接点は、店舗、ECサイト、SNS、アプリなど、多様化していますよね。一貫した体験というのは、まさにこうしたマルチな接点を横断した形で体験を提供することです。では、体験を生み出すのは何かというと、コンテンツです。従来は、接点ごとにコンテンツが管理されていましたが、これでは情報のリンクやメッセージの統一が図れず、一貫した体験の提供が難しい状態です。そこで、コンテンツをアセットとして一元管理し、接点やデバイスに最適化した形で横断的に活用し、シームレスな体験を提供する「ヘッドレス」な仕組みを構築する必要が出てきています。日本企業にとって、これからの数年は、デジタルアセット管理が課題であり、投資のポイントになってくるでしょう。

安西:今はデジタルやモバイルが当たり前ですから、例えば来店客に自動的にデジタルクーポンを配信したり、パーソナライズされた情報をサイネージでレコメンドしたりといったこともできます。こうした最適なコンテンツが提供できるのも、デジタルアセット管理ができていることが前提となるわけです。

それからもう一つ、顧客データについても課題があります。多くの企業は、CRMなどを活用して顧客の属性データは持っていますが、これだけでは不十分で、直近の行動や購買傾向の変化、さらにはそれを補完するAIの活用など、データによる顧客のコンテクストの解像度を上げる必要があります。ちょうどサードパーティーCookieの利用が非常に難しくなるタイミングや改正個人情報保護法の施行の予定などもあることを考え合わせると、顧客情報のブラッシュアップは企業にとって急務ですし、優れた顧客体験を提供するためには、プライバシーに配慮しながら顧客データの解像度向上とデジタルアセット管理を両輪として実現することが必須なのです。


パートナーシップを発揮して新しい顧客体験の実現に取り組む

――アドビと電通デジタルはパートナーシップを組み、ここまでご説明いただいた消費行動の変化に対応した顧客体験の提供に取り組んでおられます。それぞれの強みを活かす形でのパートナーシップだと思いますが、まずはアドビプロダクトについて解説をお願いします。

安西:もともと数年前まで「Adobe Marketing Cloud」というサービスを提供していましたが、顧客体験の重要性が高まってきたことを受けて、CXM(顧客体験管理)が今後どうあるべきかを検討し、新たなプラットフォームとして「Adobe Experience Cloud」へとブランドを昇格しました。「Adobe Experience Cloud」は、コンテンツ管理とユーザーデータ管理の両方が統合されている点が最大の強みです。アドビにはPhotoshopを筆頭とするクリエイティブツールがそろっているので、コンテンツ制作のスピード化やAPIで連携し画像の自動生成なども可能ですし、データを基にコンテンツを配信するシームレスなフローも提供できます。また、先進的なプラットフォームとして、AIや機械学習への対応やエコシステムとしての機能、さらにはプライバシーに関するガバナンスの強化なども考慮した設計となっています。

小林:クリエイティブも含めたソリューションが提供できるという点で、アドビさんは唯一無二といっていい存在ですよね。また、単なるテクノロジーではなく、ビジョナリーな世界観があるとも思っています。先頭に立って顧客体験の転換を牽引されているので、私たち電通デジタルも刺激を受けています。

――続いて、アドビとパートナーシップを組むうえでの電通デジタルの強みについてお願いします。

小林:電通デジタルがアドビさんとパートナーシップを組むに当たっての強みという意味では、SIerやITコンサル会社とは異なり、クライアント企業のマーケティングや広告などのコミュニケーション分野を手掛けてきたという点が挙げられます。ペイドメディア活用も含め、コンテンツによる顧客体験づくりを得意としているので、アドビプロダクトとの相性も良いのだと思います。

また電通デジタルは、アドビプロダクトの中ではコンテンツ管理ソリューション(Adobe Experience Cloud)や分析ソリューション(Adobe Analyticsなど)を得意としてきましたが、コマースソリューション(Adobe Commerce、旧Magento)を得意とする電通アイソバーと2021年7月に合併したことで、包括的にアドビプロダクトを提供できる日本随一のプレーヤーになったと自負しています。

安西:当社が主催するカンファレンス「Adobe Summit 2021」でも、日本及びアジア太平洋地域における「Digital Experience Solution Partner of the Year」として国内電通グループさんを選出させていただくなど、日本だけでなくグローバル市場でも国内電通グループさんとは早くからパートナーシップを組ませていただいています。これは今後も協力関係をお願いしますというラブコールでもありますが(笑)。

COVID-19の拡大による消費行動の変化を受け、Afterワクチンの顧客体験を実現するためには、マルチ接点でのシームレスな体験を実現するヘッドレス対応に加え、顧客データやデジタルアセットの管理が必須。アドビプロダクトの進化と電通デジタルの強みの相乗効果が、次世代の顧客体験を生む。
Zoom

必要なデータを理解するためには体験を設計することが先決

――両社のパートナーシップの相性の良さを先ほどお伺いしましたが、どのような役割分担なのでしょうか。

安西:アドビプロダクトはあくまでプラットフォームですから、これを武器としてどう効果的に使うかが重要です。一言で「Afterワクチンの消費行動に対応した、最適な顧客体験」と言っても、それは企業ごと、さらには一人ひとりの顧客ごとに異なるわけで、ツールやソリューションを導入すればそれで万事解決というわけではないんですね。最適な顧客体験を提供するために、どのようなデータが必要で、どのようなコンテンツを作って、どのように運営するかという「絵」を描くことが必要なのです。この部分を戦略構築力に長けている電通デジタルさんにサポートいただくことで、当社のプロダクトもより良い形で活用されると考えています。

小林:今後はオムニチャネルに対応するため、個人データとデジタルアセット、それぞれのマネジメントが必須になってきます。アドビプロダクトは、こうしたビジョンをベースに、クリエイティブ制作からコンテンツ配信までを一気通貫で提供できる強みがあるので、私たちにとっても、絵を描きやすいんです。

――両社の連携でどのような顧客体験を実現できるとお考えでしょうか。今後の展望なども含めてお話しください。

小林:リアルとデジタルの融合はあくまでも手段であり、重要なのは「顧客にとって価値のある体験になっているかどうか」です。例えば、アパレルブランドの会員が既にサイト上で自分のサイズを記入しているなら、店舗でそのデータを基に接客をしてもらうことが価値になりますし、直近の消費行動の情報が反映されていれば、満足度はさらに上がります。

安西:BOPISの例としては、位置情報を使って顧客の来店時間を予測し、お渡しする商品を準備しておくといったことが既に実現していますし、私たちの調査では、顧客の側も、データを使ってより良い体験を提供してほしいと考えている、という結果が出ています。つまり、まずは絵を描く、つまり体験を設計することが先決なのです。そこで初めて必要なデータが分かってくる。過去のマーケティングでは、設計がないままデータを集めていたので、解像度の低い活用がしにくいデータばかりになってしまいがちでしたが、必要なデータを管理することで、こうした課題も解決できます。

小林:顧客接点横断での体験を提供できるかどうかというのは本当に重要で、この部分をアップデートできていないと、顧客の支持を失いかねません。企業の成長を支える新しい経営イシューになり得るポイントだと思います。

安西:私も同じ考えです。企業の差別化は、以前は売っているモノ自体でしたが、そこにサービスが付加され、さらに現在は顧客体験が重要な要素になりました。電通デジタルさんとのパートナーシップで、日本企業のアップデートに貢献できればと思っています。

アドビ株式会社 DX GTM・ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 兼 エバンジェリスト
安西 敬介氏
2001年より国内大手航空会社にてWeb解析やデジタルマーケティングを担当後、2008年にオムニチュア株式会社へ入社。2009年の買収によりアドビシステムズ株式会社へ。エンドユーザーとしての経験を活かし、解析・パーソナライゼーション・デジタルCoEなどのコンサルティングを実施。2017年3月より製品エバンジェリストとして従事。

日経BPの許可により「日経クロストレンド Special」2021年7月30日公開に掲載された広告から抜粋したものです。
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