デジタル変革(DX)が企業の競争力に直結する時代において、単なる技術導入にとどまらず、その活用を社内に定着させる「手の内化」が重要視されています。ノバルティスファーマの平井香氏と、電通デジタルの桑山晃一・亀和田慧太が、それぞれの知見や実体験をもとに、DX推進にまつわる組織変革と人材育成の要点を解説します。
DX成功のカギは「組織と人材の両輪」
桑山晃一(電通デジタル):DXは単なる技術の導入ではなく、組織の在り方や人材育成といった要素と密接に結びついています。多くの企業では、DX推進をリードするために「センター・オブ・エクセレンス(CoE)」という専門組織を設け、そこに集まった専門スキルを持つ人材が、社内の各部門へと展開していくような仕組みを整えています。
DXを成功させるためには、経営層の強いコミットメントが欠かせません。単発のプロジェクト支援にとどまらず、企業全体の組織変革へと昇華させることが必要だと考えています。
こうした実践的な取り組みの一例として、平井香様から、ノバルティスファーマで推進しているマーケティング人材育成プログラム「マーケティングアカデミー」についてご紹介いただきます。
ノバルティスファーマのマーケティングアカデミー
平井香氏(ノバルティスファーマ株式会社):「マーケティングアカデミー」は、ノバルティスファーマが、社内のマーケティング人材を育成するだけでなく、組織全体のマーケティング思考を醸成することを目的としたプログラムです。以下にて、「マーケティングアカデミー」の3つの主要な取り組みを紹介します。
1. 戦略に関わる全員がマーケティング思考を持つ組織へ
マーケティングアカデミーでは、マーケティング部門だけでなく、メディカル、広報、ファイナンスなどの多岐にわたる職種の社員が参加しています。マーケティング戦略が組織全体の協力によって初めて効果を発揮するという考えに基づき、各部門の社員がマーケティングの基本原則や戦略策定のプロセスを学ぶことで、部門間の連携を強化することを狙いとしています。
例えば、広報部門がマーケティング戦略を理解することで、一貫性のあるメッセージ発信が実現します。また、ファイナンス部門がマーケティング戦略を理解することで、より精度の高い売上を予測することが可能になります。各部門がマーケティング視点を共有することで、組織全体の成果向上につながります。
2. アジャイル型のプログラム開発
マーケティングアカデミーのカリキュラムは、固定的なものではなく、最新のビジネストレンドや企業の課題に応じて柔軟に調整されています。環境変化の激しい現代において、画一的なプログラムを一律に適用するのではなく、受講者の進捗や市場の変化に応じた学習機会を提供することが重要視されています。
例えば、戦略フレームワークの理解が進んだ受講者に対しては、次のステップとして顧客セグメンテーションや製品ポジショニングなどより深いコアマーケティングスキルの習得や、医療エコシステムの視点に基づく戦略策定のスキル習得に焦点を移すといった調整が行われます。これにより、社員は常に最新の知識とスキルを身につけ、組織全体のマーケティング力向上に寄与することができます。
3. CX視点の戦略立案ワークショップ
マーケティングアカデミーでは、顧客中心の思考を持つマーケターを育成するため、ワークショップ形式の学習を重視しています。参加者は実際のビジネス課題をテーマに戦略を立案し、シニアマネジメントに対してプレゼンテーションを行います。
このプロセスを通じて、理論だけでなく実践的なスキルを習得し、プレゼンテーションを通じて上層部からのフィードバックを受けることで、戦略の精度を高めることができます。さらに、顧客体験(CX)の視点を取り入れることで、顧客満足度の向上やブランドロイヤリティの強化につながる戦略立案が可能となります。
これらの取り組みを通じて、ノバルティスファーマは組織全体でマーケティング思考を共有し、迅速かつ柔軟に市場の変化に対応できる体制を築いています。こうした施策が、ノバルティスファーマの競争力強化に大きく貢献していると実感しています。
電通デジタルの組織開発支援
亀和田慧太(電通デジタル):ノバルティスファーマの「マーケティングアカデミー」のように、組織全体にマーケティング思考を浸透させる取り組みは、DXを成功させるうえで非常に重要だと私は考えています。しかし実際には、多くの企業にとっての課題は、単にデジタルツールを導入することではなく、それを真に活用できる組織と人材をどう育成するかという点にあります。
この点で、私たち電通デジタルは、DX推進に関する専門知識と豊富な支援実績を生かしながら、企業の組織開発と人材育成の支援に取り組んでいます。私は、DXを本当に定着させるためには「手の内化」、すなわちデジタル活用を自社の競争力に変えていくことが不可欠であり、そのためには組織文化そのものを変革していく必要があると強く感じています。
電通デジタルがDX組織開発を支援できる背景には、長年にわたるマーケティング領域やCX領域での知見と、企業のデジタル変革を成功に導いてきた実績があります。企業のDXを単なるシステム導入に終わらせず、DX組織の変革から、DX組織のブランディング、仕組み化、人材育成、業務標準化に至るまで、総合的な支援を提供しています。
これにより、DXが一部の専門部門だけでなく、企業全体で活用されるような仕組み作りを支援しています。
DX組織診断サービス「DX組織力クイックスキャン」
亀和田:電通デジタルの組織開発支援は、単なる研修やツール導入にとどまらず、企業ごとの課題に応じた包括的なアプローチを取っています。その代表的なサービスの一つが「DX組織力クイックスキャン」です。このサービスでは、企業のDX推進状況を診断し、組織の強みと弱みを明確化した上で、最適な組織設計や人材育成プランを提案します。
例えば、DXが進んでいる企業では、部門間の連携や経営層のコミットメントが高い傾向があります。その一方で、DXの成果が出ていない企業では、デジタルスキルを持つ人材が一部に偏在していたり、データ活用の仕組みが十分に機能していなかったりすることが多く見られます。電通デジタルは、こうした課題を分析し、専門組織の立ち上げやデジタル人材の育成プログラムを提供することで、企業が自律的にDXを推進できる体制を整える支援を行っています。
DXの成功には、適切なツールの導入だけでなく、それを使いこなす「人」と、それを支える「組織」の在り方が不可欠です。電通デジタルは、企業ごとの課題に合わせた伴走型の支援を行うことで、DXの「手の内化」を実現し、持続的な成長をサポートしています。
DX推進のポイント:手の内化を成功させるために
桑山:企業がDXを推進するためには、「技術」だけでなく「人と組織」に着目し、マーケティング思考やCX視点を取り入れながら、アジャイル型で変革を進めることが不可欠です。そして、DXを真に「手の内化」していくためには、外部の専門的な支援もうまく活用しつつ、自社の課題を明確にし、継続的に組織と人材の成長を促していくことが、非常に重要なポイントだと思っています。
私たち電通デジタルは、DXやマーケティング、CXの知見を生かしながら、企業の変革パートナーとして並走していくことを大切にしています。技術の導入にとどまらず、組織と人の力を引き出し、持続的な成長へとつなげていく。そうした取り組みを進めていくパートナーをお探しであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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