電通デジタルは、東京海上ホールディングスのグローバルサイトのリニューアルを担当しました。株主・投資家向けのウェブサイトから、幅広いステークホルダーとつながるコミュニケーションハブへ刷新し、JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに配慮したウェブサイトを制作しました。グローバルサイトは2024年の「第12回 Webグランプリ」で、企業グランプリ部門アクセシビリティ賞優秀賞を受賞しています。今回は、プロジェクトを支えた電通デジタルの担当者3名に話を伺いました。
創業145周年に合わせ、グローバルサイトをコミュニケーションハブにリニューアル
――東京海上ホールディングスのグローバルサイトリニューアルについて、概要を教えてください。
中村:プロジェクトがスタートしたのは2023年10月です。これまで株主・投資家向けの情報発信が中心だったウェブサイトを、顧客、株主・投資家、メディア、国内外のグループ社員など、多様なステークホルダーに向けた「コミュニケーションハブ」としてリニューアルするのが目的でした。公開のタイミングは、創業145周年となる2024年8月1日を目指しました。
――リニューアル前のウェブサイトの課題は何でしたか?
中村:東京海上ホールディングスのプロジェクト推進チームの皆様とのディスカッションを通じて、大きく3つの課題が見えてきました。
1つ目は、株主・投資家向けの情報を中心に内容は充実していたものの、東京海グループの会社自体について知れる情報が少なかったことです。たとえば、「東京海上グループがどのような会社なのか」「どのようなパーパスやビジョンを掲げているのか」「どのような強みやビジネスソリューションを持っているのか」といった情報が不足していました。
2つ目は、内容は充実していたものの、導線設計が十分でなく、ユーザーが欲しい情報にたどり着きにくかった点です。また、多種多様なステークホルダーの関心に応えるコンテンツも不足しており、情報の鮮度や更新性も低いことに課題がありました。そのため、 ウェブサイト全体の構造や導線を見直し、新たなコンテンツの追加が必要だと考えました。
3つ目は、日本語サイトと英語サイトの間に大きな情報格差があったことです。
これらの課題を解決することが、今回のプロジェクトの中心となりました。プロジェクト当初からユーザー視点にこだわり、「誰にとっても必要な情報がひとつにまとまり、ここを見れば東京海上グループ全体が理解できるウェブサイトにしたい」という、プロジェクト推進チームの皆さんの強いご要望がありました。
そこで私たちは、東京海上グループのブランドを社内外に発信する基盤として「ステークホルダーとの関係を加速させるコミュニケーションハブ」というコンセプトを掲げました。単に情報が置かれた「来て終わり」のウェブサイトではなく、ステークホルダーが東京海上グループをより「知って、関係を深めて」いけるような体験を目指しました。
現状分析と戦略策定から、コンテンツ制作やデザイン・UIの開発まで
――電通デジタルが実際に行った支援内容を教えてください。
中村:プロジェクトはフェーズ1(2023年10〜12月)とフェーズ2(2024年1〜7月)に分けて進行しました。
フェーズ1では現状分析と戦略策定を行い、フェーズ2でコンテンツ制作やデザイン・UIの開発に着手しました。
フェーズ1の現状分析では、まずユーザー課題を把握するために、アクセス解析や第三者機関による評価、競合比較、社内外のステークホルダーへのインタビューを実施。特に、社員やメディア、海外のグループ会社の声を丁寧に拾い、幅広いニーズを把握しました。これをもとに、ウェブサイトの体験コンセプトや新規コンテンツ案、情報設計を行い、東京海上ホールディングスのプロジェクト推進チームとのワークショップを通じて戦略の策定を行いました。
フェーズ2では、東京海上ホールディングスの各部署と連携しながらコンテンツ制作を進行しました。グローバルの広報タスクフォースである「コミュニケーションリーダーズ」とも連携し、国内外の関係者と複数回のワークショップを重ね、内容や構成を調整しました。
宮﨑:中村さんが話された戦略策定から設計・デザインまでは電通デジタルが担当し、ウェブサイトの実装はミツエーリンクスが担当しています。フロントエンドの設計は、デジタルとグローバルに特化した専門チーム「Dentsu Digital Global Center(DDGC)」が担い、実際の制作作業は我々のクリエイティブチームが担当しました。
タイトなスケジュールで「グローバル対応」「コンポーネント設計」「アクセシビリティ向上」を実現
――リニューアルの規模から見ると、非常にタイトなスケジュールだったように思えます。特に意識したことがあれば教えてください。
宮﨑:今回のプロジェクトでは、「グローバル対応」「コンポーネント設計」「アクセシビリティ向上」という3つの大きなテーマがありました。それぞれの分野に強みを持つ専門チームが密に連携し、スケジュールどおりにプロジェクトを進行できたのは大きな成果だと思います。
たとえば、グローバル対応については、DDGCが中心となって推進し、それをクリエイティブチームがしっかりと受け継ぎ、各自の専門性を生かして制作に取り組みました。海外からの閲覧が多いウェブサイトでは、グローバルのUIスタンダードを抑えることが重要なため、DDGC在籍の米国人デザイナーを起用し、情報設計やUIデザインを行いました。また、JIS X 8341-3:2016適合レベルAAの達成基準を満たすために、アクセシビリティの専門知識を持ったデザイナーやテクニカルディレクターが中心となって制作を進めたことで、効率的に進行できました。こうした役割分担と連携の体制こそが、電通デジタルの大きな強みだと感じています。
さらに、短期間でのリリースを実現できた背景には、東京海上ホールディングスのご担当者様とのこまめなコミュニケーションもあります。最初は週1回の定例ミーティングだけでしたが、必要に応じて分科会や臨時の打ち合わせを柔軟に追加し、関係者との認識のズレを早期に解消しながら進めることができました。
常和:限られた期間でアクセシビリティプロジェクトを進めるには、各制作チームがワンチームとして連携することが特に重要となります。
電通デジタルでは多様なバックグラウンドを持つクリエーターがいるため、制作前段階でアクセシビリティやコンポーネント設計に関する専門的な勉強会を行い、各制作チームの知識レベルを揃えました。制作開始後も毎日UX/UIのチェックを行い、 JIS X 8341-3:2016 の達成基準に加えてWCAG 2.2を用いたアクセシビリティの達成基準を満たしているか監修し、必要に応じて制作チーム全体でアイデア出し合い問題解決を繰り返しました。
こうして連携力の強いワンチーム体制をすることができ、クリエイティブとアクセシビリティを両立することができ、結果的にアクセシビリティ賞優秀賞を受賞することができたのだと思います。
中村:コンテンツ制作面では、東京海上ホールディングスの皆様の協力が不可欠でした。多くの関係者に日英の原稿執筆や写真撮影、チェックなどをお願いし、それらのスケジュール管理を綿密に行いました。こうした密なコミュニケーションを日頃から大切にしてきたことが、成功につながったと感じています。地道なプロジェクトマネジメントこそ、電通デジタルらしさの象徴だと思います。
アクセシビリティ賞優秀賞を受賞。専門家や当事者からも高い評価
――グローバルサイトは、「第12回Webグランプリ(2024年)」のアクセシビリティ賞優秀賞を受賞されました。
中村:はい、とても光栄なことです。電通デジタルでは初めての受賞となりました。「Webグランプリ」の賞は、基本的には応募企業同士で評価し合う形式なのですが、アクセシビリティ賞だけは特別で、専門の審査員や実際の当事者の方がウェブサイトを操作しながら評価します。そうした方々に実際の使いやすさが認められたという意味で、非常に価値のある賞だと感じています。
常和:電通デジタルの「ウェブアクセシビリティプロジェクト」において監修をいただいている株式会社インフォアクシアの植木真氏には、案件進行中に適宜ご相談を行ってきました。アワード受賞の報告をした際に、ウェブアクセシビリティならではの“エンジニアスキルのある人が伴走しながら監修する”進め方についても、好意的なご意見をいただきました。
ウェブサイトにおけるアクセシビリティは色コントラストなどのデザイン問題と捉えられがちですが、「画面設計からデザイン、実装に至るすべてがアクセシビリティの品質基準を満たすこと」が最も重要です。テクニカルディレクターとしてアクセシビリティ専用のソースコードまで意識してUX/UIを監修し、専門知識を持ったメンバーと連携できたことで、成果として評価されたことは、大変意義深く感じています。
宮﨑:誰一人取り残されない、サステナブルなウェブサイト作りを実現した結果、このようなアワードという形で評価いただけて、非常に良かったなと感じています。 ウェブアクセシビリティ向上はグローバルスタンダードになりつつありますが、日本ではまだまだのところが多いのが現状です。今回のような大規模なウェブサイト制作で JIS X 8341-3:2016のレベルAAに適合でき、さらにそれをリードすることができるチームがいることは、他社と比べて電通デジタルの強みになるポイントです。
社内外への発信力を高めるパーパス特設サイトも追加で制作
――並行して制作されたパーパス特設サイトについて教えてください。
中村:この特設サイトは当初の計画にはなかった追加のご依頼でした。創業145周年という節目をきっかけに、グループ全体で創業当時から変わらないパーパスへの理解を深め、その実現に向けた国内外のグループ各社の取り組みや社員一人ひとりの思いを社内外に発信し、グループ会社の認知度とプレゼンス向上を目指していきたいという想いから、パーパスに特化した特設サイトを作ることになりました。
宮﨑:対象ユーザーが海外を含む全グループ社員の方々だったため、伝え方やストーリーテリングを特に重視しました。そこで、クリエイティブディレクターやUXデザイナーが最初から一緒にストーリーと体験を同時にデザインし、さらにその設計段階で仮のデザインをあてながら進めるという、通常とは異なる柔軟な進行方法を取りました。東京海上ホールディングスご担当者様からのデザイン要望も多かったため、早い段階でイメージを共有しながら進めることで、完成度を高めることができ、電通デジタルのクリエイティブチームの柔軟性と対応力の広さが大きな強みとして発揮されました。
常和:テクニカルディレクションの目線で見てもスピード感と連携力に驚きました。短期間でパートナー企業やデザイナー、設計担当者などが適切に配置され、体制が一気に整いローンチに至ったのは、電通デジタルならではのネットワーク力とアサイン力の賜物だと感じました。
グローバルサイトや大規模プロジェクトにもワンチームで対応
――今後、ウェブサイト制作を電通デジタルに依頼したいと考えている方へメッセージをお願いします。
中村:ウェブサイトのリニューアルには、企業によって異なるさまざまな目的や課題があります。私たち電通デジタルは、そうした多様なニーズにしっかり対応できる体制を整えています。戦略立案からデザイン、フロントエンド開発まで、各分野の専門チームが密に連携し、ひとつのチームとして一貫したサービスを提供できるのが私たちの強みです。
今回のように、グローバル対応が求められるケースや、国内外のグループ会社や経営層、そして複数のステークホルダーが関わる大規模プロジェクトにも柔軟に対応可能です。特に、1000ページを超える大規模サイトを短期間で構築し、かつ品質も妥協しないという実績を持つ会社は、国内でも限られていると思います。
私たちは、制作パートナーに留まらず、課題を一緒に見つけ、最適な解決策をともに考えながら、ゴールまで伴走する存在でありたいと考えています。ウェブサイトに関するどんな課題でも、まずはお気軽にご相談いただければと思います。期待にしっかり応えるチームでお待ちしています。
グローバルサイトの制作・リニューアルに関するお問い合わせはこちらから
お問い合わせ詳細欄に「Dentsu Digital Global Center宛」と記載してください。
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