顧客接点が多様化し、パーソナライズされた体験の重要性が高まっている今、企業は顧客に対して、より魅力的な体験を提供する必要に迫られています。そうした中、注目を集めているのが、デジタルエクスペリエンスプラットフォーム( Digital eXperience Platform)です。DXPと生成AIを活用し効率性を高めたSitecoreの魅力について、電通デジタルの大和田麻美とサイトコアの原水真一氏が紹介します。
※本記事は、2024年8月5日に開催されたセミナーの内容を採録し、再構成したものです。
顧客体験における3つのトレンド
大和田:スマートフォンの登場やSNSの台頭など、技術の進化に伴って顧客体験は大きく変化してきました。次の3つのテーマに分けて、顧客体験がどのように変化してきたのか、そのトレンドを具体的に見ていきましょう。
①顧客接点の急激な進化
1つ目のトレンドは「顧客接点の急激な進化」です。SNS、スマートフォン、モバイル決済は日常生活に欠かせない存在となり、ユーザーはいつでもどこでも情報にアクセスできるようになりました。また、特に進化が著しいのがAIの活用です。チャットボットによるカスタマーサポートの自動化、一人ひとりの好みに合わせたサービスの提供など、AI活用の裾野がどんどん広がっています。
テクノロジーの進化
1.ソーシャルメディアの台頭 | リアルタイムでのコミュニケーションや口コミ・レビューなどを見ることで、早く信頼性の高い情報を得ることが可能 |
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2.モバイルテクノロジーの進化 | スマートフォンやタブレットが普及し、ユーザーはいつでもどこでも商品やサービスにアクセス可能 |
3.モバイル決済の普及 | スマートフォンを使って、簡単に素早く、安全に支払うことが可能 |
4.AI・機械学習の活用拡大 | チャットボットなどの自動化されたカスタマーサポート、一人一人の好みに合わせたサービス、音声アシスタントや指紋認証によるスマートフォン操作など、生活の中の様々な場面で利便性が向上 |
それに伴い、ユーザーのライフスタイルも大きく変化しました。特にZ世代を中心に、「タイパ」や「タグる」などの新しい言葉が普及し、オンラインで完結するライフスタイルが日常化しています。パーソナライゼーションなど、膨大な情報から自分に最適なものを迅速に見つけることが、より重要視されるようになりました。
ライフスタイルの変化
1.パーソナライゼーションの重視 | 時間が貴重な資源となっている現代人にとって、膨大な情報や多数の選択肢の中から自分に合う最適なものを迅速に見つけることが重要 |
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2.ソーシャルメディアの影響 | ソーシャルメディアの口コミやレビューは、サービスや商品を購入する際の安心感や信頼性をもたらす |
3.デジタルシフト | 新型コロナウイルスの影響で、リモートワークやオンラインショッピングの増加が顧客接点のデジタルシフトを加速 その結果、オンラインでのコミュニケーションや消費行動が当たり前に |
そのため現代においては、時間をかけて大規模システムサービスを作り込むというよりも、顧客のニーズを迅速に把握し、必要なサービスを必要な時に提供するということが求められています。こうしたさまざまな変化に即応するためには、デジタルソリューションを活用し、迅速にユーザーへ価値を提供し続ける柔軟なプラットフォームの構築が不可欠です。
さらに詳細を知りたい場合は、こちらの記事もおすすめです。
DXP連載第3回:モノリシックDXPかコンポーザブルDXPか、選択する際のポイントとは?
②マルチチャネルからオムニチャネルへ
顧客接点の多様化・複雑化により、カスタマー・ジャーニーも複雑化しています。SNS、店舗、オンラインストアなど、複数のチャネルを行き来するプロセスが一般的になる中、一貫した情報やサービスを提供するためには、チャネルを横断したデータの活用が非常に重要になってきます。
つまり、各チャネルが独立して情報を提供する「マルチチャネル」ではなく、ユーザーデータを統合し、一貫性のあるメッセージやサービスを提供できる「オムニチャネル」が、今は求められているのです。
一貫した顧客体験提供の重要性
1.顧客満足度の向上 | 顧客接点を増やすことで、顧客一人ひとりのニーズに迅速かつ適切に対応でき、満足度が上がる |
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2.売上・ブランドイメージの向上 | 一貫性のある体験はブランドの信頼性を高め、顧客からの信頼、売り上げの拡大につながる |
3.顧客ニーズの把握 | 顧客接点を強化し、複数の顧客接点を設けることで、顧客の行動や嗜好など様々な顧客のニーズを把握できる |
③パーソナライゼーションの進化
昨今、ユーザーが日常的に接するデータ量は爆発的に増加しています。その結果、ユーザーは自分の興味・関心に応じた情報を迅速に手に入れたいと考えるようになり、パーソナライゼーションの重要性がますます高まっています。
アメリカのコミュニケーションプラットフォーム企業Twilioの調査[1]では、パーソナライズされた体験によって、ユーザーは様々なメリットを感じ、購買行動にポジティブな影響を与えているという結果が出ています。
また最近では、さらに進化したリアルタイムのパーソナライズが求められるようになりました。これを実現するためには、膨大なデータからユーザーの行動を予測する必要があり、AIの活用が重要な役割を果たすことになります。
AIはコンテンツ作成やキュレーションを自動化し、リアルタイムに個別の顧客に最適なコンテンツを提供することができます。その結果として、マーケターはより多くの時間を戦略的業務に費やすことができるようになるのです。
良質な顧客体験を提供できるプラットフォーム「DXP」とは?
こうした一貫した優れたデジタル体験を顧客に提供するために求められているのが、「デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)」です。
ウェブサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディア、メールなどのデジタルチャネルに加え、実店舗やイベント、カスタマーサポートなどのフィジカルチャネルも含めたハイブリッドな体験を管理・最適化する機能が備わっています。
DXPの代表的な機能
- CMS( コンテンツ管理)機能
- パーソナライゼーション機能
- MA(マーケティングオートメーション)機能
- CRM(顧客関係管理)機能
- DAM(デジタルアセット管理)機能
- 分析、レポート機能
DXPは、単なるコンテンツ管理システム(CMS)やEコマースプラットフォームを超えて、パーソナライゼーション、データ分析、顧客管理などを組み合わせ、ユーザーの行動やニーズに基づいて体験を個別化することを目指しています。これにより、企業はユーザーの期待に応じた適切な情報やサービスを提供し、ブランドへの信頼や関係性を強化することができるのです。
さらに詳細を知りたい場合は、こちらの記事もおすすめです。
DXP連載第1回:最近よく目にする「DXP」とは何か?
DXPには、様々な製品が存在しますが、その中でも「Sitecore」は有力な選択肢の一つと言えるでしょう。次に、サイトコア社の原水真一氏より、その強みや特徴を語っていただきます。
サイトコアのAIに関する取り組み
原水:マーケターの皆さんは、コンテンツを作成し、それを顧客体験として提供するという無限ループを日々の業務としてやられていると思います。いかに最適なコンテンツを作り、スピード感を持って顧客に届けられるかという点で欠かせないのがAIです。
最近では生成AIによって、与えられたデータから最適なコンテンツを自動で生成するということが可能になってきています。コンテンツ生成とエクスペリエンス提供の中心にあるのが、まさにAIなのです。
AI活用においては、次の3つの軸があると考えています。
1つ目は「コンテンツ」。記事のタイトルや概要、SEOに必要なディスクリプションなどを生成するのが、AIは非常に得意です。
そして2つ目は、「デジタルアセット」。企業が持つ膨大な画像や動画は、検索がしづらく活用が難しいものでした。しかし、AIが自動でメタデータを付けてくれることで、デジタル資産の管理が容易となります。現在のAIのタグ付正答率は95%以上となっており、一つの素材でも、再利用しながら効果的に活用することができるようになってきています。
そして最後が、「エクスペリエンス」。HTMLやReactなどのコンポーネントをAIが自動で作ってくれるので、パーソナライズされたダイナミックなページの生成が可能となり、ユーザーの体験を向上させることができるのです。
こうしたAIを活用する際に、当社が重視しているのは、企業が使うDXPとしてガバナンスを効かせなければならないという点です。安心して誰もがクリエイティブに関わっていくことができる製品作りを目指しています。
課題に合わせてコンポーザブルに製品をお届けする
次にDXジャーニーの例を見てみましょう。最初にアイデアを出し、制作をスタートします。AIによってタグづけされたデジタルアセットを活用し、海外向け資料であれば、自動翻訳も可能です。また、コンテンツの表示や検索結果においても、パーソナライズすることができます。
Sitecoreでは、こうしたジャーニーの各ステージに合わせて、いくつかの製品を組み合わせて問題解決ができるようになっています。つまり、お客様の課題に合わせて、コンポーザブル(組合せ可能)に製品をお届けするという考え方です。
ここで一つご紹介したいのが、アイデアやコンテンツ制作をサポートする機能です。最初にイベントの名前を入れると、「その目的は何か」「どんな内容か」などと、AIが質問をしてくれます。すると、「会場を決める」、「ランディングページを作る」、「ユーザーにメールを配信する」など、次のアクションをAIが提案してくれます。そうしたタスクに対し、メンバーをアサインし指示出すところまで管理できるのです。こうした制作のオペレーション管理まで生成AIが支援してくれるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。
Sitecoreは、こうした様々な機能をレゴのように組み合わせて活用できる「Composable DXP」という考え方で設計されています。アイデア生成支援、コンテンツ生成、デジタル資産管理、コンポーネント生成、検索、パーソナライゼーション、レコメンデーションなど、多くの製品を有しています。これらを、お客様のビジネスに合わせて、必要な製品を組み合わせてご利用いただけるのです。
すべての製品をSaaSで提供、セキュリティにも配慮
Sitecoreの中核となる、コンテンツマネージメントシステム「XM Cloud」をはじめ、こうした製品群はすべてSaaS(Software as a Service)として提供されています。新しい機能も自動で提供されるため、導入後も長くご利用いただける製品となっています。また、SaaSサービスベンダーとして必要とされる「ISO27001(ISMS 認証)」や「クラウドセキュリティアライアンス(CSA)」などといった認証もしっかりと取得しているため、安心してご利用いただけます。
最近、お客様からよくお問合せいただくキーワードとしては、次の3つが挙げられるでしょう。
1つ目が「ヘッドレス」です。フロントエンドとバックエンドが完全に切り離されており、ウェブやモバイル、アプリ、その他のサービスとのデータ連携がしやすいCMSを求めているお客様が増えています。
2つ目は「プライバシー」です。フォームやクッキーなどの個人情報をどう扱っていくべきか。また、パーソナライズについてもプライバシーの要素が含まれており、多くのお客様が気にされています。
そして3つ目が「SaaS」です。かつてはパッケージのCMSばかりでしたが、最近では、SaaS型のCMSも増えています。製品のライフサイクルや今後のトレンドの変化なども考えると、SaaS型に注目が集まるのは当然かもしれません。
DXPの真の効果を発揮すべく、一気通貫で支援
大和田:デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)は、企業が競争力を維持し、顧客から選ばれ続けるために不可欠なツールです。顧客の期待が高まる中で、企業は一貫性があり、パーソナライズされた体験を提供することが求められており、DXPはその実現を支える強力な戦略的プラットフォームとして機能します。
しかし、DXPが真の効果を発揮するには、単なるシステム導入にとどまらず、中長期的な視点での戦略立案、コンサルティング、そして運用設計が不可欠です。DXPの機能を深く理解し、自社のビジネスゴールや既存システムとの整合性を考慮した上で、導入後の影響を慎重に評価する必要があります。これには、導入前の計画策定から運用開始後の継続的な最適化まで、幅広い準備と調整が求められます。
電通デジタルは、多くの企業に対してDXPソリューションの導入を支援しており、導入からカスタマイズ、運用支援、自立的な運用のサポートまで、包括的なサービスを提供しています。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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脚注
1. 顧客エンゲージメント最新動向 2024". Twilio 2024年8月22日閲覧。
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