2024.07.23

Owned Human が実現する次世代の顧客体験とは?

究極のコンシェルジュに進化したオウンドメディア「Owned Human」とは?

――2024年3月に発表したOwned Humanの取り組みについて、概要と特徴を教えてくだい。

矢野:AIを搭載した対話型のオウンドメディアで、主な特徴は2つあります。

 1つ目は「知りたいことは話して手に入れる」というインタラクティブなコミュニケーションを提供することです。2つ目は「声で指示すればUIが切り替わる」という快適な操作性を提供することです。

よく、「Owned Humanってオウンドメディアにバーチャルヒューマンを搭載するサービスですよね」と言われるのですが、そうではありません。「これは便利!」という感動をユーザーに提供するためには、自分の声でUIが切り替わるという視覚的連動性をもった体験がとても大事だと考えています。 Owned Humanはまだデモレベルの体験ですが、非常に快適です。

Zoom

――Owned Humanについて、構想時期や開発した目的、背景について教えてください。

矢野:私はこれまで企業のオウンドメディアを対象に集客やコンバージョン率を改善するコンサルティングに従事してきたのですが、昨今のSNSを中心としたユーザーの情報収集行動の変化において、従来のアプローチに限界を感じていました。

 具体的な考察はここでは避けますが、今のオウンドメディアは、調べたいことが決まっていて、じっくり情報収集したいユーザーには最適化されていると思います。ただ、普段の情報収集を動画メディアやSNSを活用し、直観性やタイパを重視しながら情報収集するユーザーにとってはシンプルに「取っ付きにくい」のではないかという課題感です。

そんな中、昨年初めにchat GPTを搭載したキャラクターがまるで人間のように会話する映像を見て衝撃を受けました。また、同時期にゼロからリアルなバーチャルヒューマンが生成され、ChatGPTを組み込むことで人間同様の応答ができるのを見て「これでオウンドメディアの存在価値は劇的に変わる!」と、とても興奮しました。そして、すぐに企画書をつくり社内外の方々と意見交換を始めました。


「対話連動でUIを切り替える」最新技術を活用した次世代UXへの挑戦

上司、役員をはじめ多くの関係者の賛同と協力もあり、PR動画の製作、プレスリリースの準備が急ピッチで進行していたのですが、「構想は素敵だけど、本当に快適な体験になるのか、技術的にどこまで可能なのか?」といった声も聞こえてきました。

そこで2024年1月からMicrosoft様と連携し、約3ヶ月にわたって、Owned Humanのデモを制作してきました。このデモの制作に協力してもらったのが、池田裕悟(テクニカルディレクター)、大和田卓(アートディレクター)、佐藤勇気(UXデザイナー)、折出夕佳(Webディレクター)の4名です。

矢野英一(エクスペリエンステクノロジー部門 オウンドグローステック事業部 事業部長)

――今回制作したデモはどのようなものですか?

矢野:架空の自動車販売会社のショールームを想定しました。クルマの購入を検討している人がバーチャルヒューマンと対話しながら、いっさい手を使わずに、会話だけでインターフェースが切り替わっていき、知りたい情報が得られて、最後に試乗予約ができるという世界観を具現化しました。

4月のウェビナーでデモを公開したのですが、ウェビナー後のアンケートでは「デモを見たことで、具体的な活用がイメージできた」「通常の対人営業とは違った価値を生み出せるのは、新たな発見だった」といったコメントをいただきました。


生成AIの価値を最大化するには、体験設計におけるバランスが重要

――Owned Humanのデモ開発にあたり、描いたターゲットの顧客像やインサイトを教えてください。

佐藤:Owned Humanとの親和性が高いと思われる自動車業界を想定しました。ただ、現時点では、AIと対話をしてクルマを買う人はまだ実在していません。そのため「クルマを買う」という体験に重点を置いて、その中のペインポイントを見て、インサイトを考察しました。

例えばクルマの購入において、ディーラーに行くことは心理的ハードルが高く、ある種のペインポイントと言える点ですが、Owned Humanは実在の人ではないので、気兼ねなく何でも話せます。このように対話することで、解消できるペインポイントを意識しながら体験設計を行いました。

――デモ開発の過程で苦労したことや難しかったことは何でしょうか?

池田:Webサイトは、ユーザーがリンクやボタンをクリックすることで、ページが遷移していきます。これに対し、Owned Humanのデモでは音声入力を軸にした「脱クリック」の考え方で、どのような技術を使って開発を進めるかが大変でした。

大和田:デモ開発が始まった2024年3月時点で、AIの技術で何ができるのかが定まっていませんでした。そのような状況で、その時点のAIで技術的にできそうなことの可能性を考慮して、コンセプトイメージや世界観を作りました。それがアートディレクションを進める上でのポイントでした。

折出:今回のデモにおいて、生成AIに関してはMicrosoft様にご協力いただきました。掲載内容が決まっている従来のオウンドサイトと異なり、生成AIによる回答は毎回異なります。生成AIにより情報が勝手に補完されて完全に誤った回答が出てしまう事象も発生し、デモ制作の期間が1~2ヶ月しかなく、Microsoft担当者の工数が決まっている中で、デモでは何を優先してAIのチューニングを行っていただくか、その調整に苦労しました。

 

佐藤勇気(トランスフォーメーション部門 トランスフォーメーション事業部 クリエイティブプランナー)
大和田卓(ブランドエクスペリエンスクリエイティブ部門 エクスペリエンスデザイン第3事業部 アートディレクター)

――工夫点、チャレンジした点はありますか?

佐藤:UX的な視点では、軸となるシナリオですね。今回のデモではAIを相手に自由に会話ができますが、話をどう進めるかの流れを作っておかないと、デモが終わらないんです。なので、Owned Humanをクライアントに提案する場において、Owned Humanの価値を実感できるシナリオは何なのかを考えて体験設計をしたのは、かなり工夫した点です。

矢野:当初は、生成AIの醍醐味を活かすためには、人為的な体験設計や一辺倒のカスタマージャーニーを描く必要性は薄まるのではないかと想像していたのですが、まったくの見当違いでした。「さぁ、自由に話して」となっても、人は意外と話せないものです。一方でシナリオをガチガチに設計すると、生成AIの醍醐味を享受できない。このあたりの匙加減をつかめたことは大きな成果です。UXデザインを得意とする電通デジタルの強みを活かせそうだということがわかりました。Owned Humanを実用化するにあたって、何が重要で何が大変か、今回のデモを制作する過程でそうした体験や知見を得られたことは、今後に活かせる資産となりました。


複数の専門領域を有機的につなげるプロジェクトマネジメントが電通デジタルの強み

――本プロジェクトは部門を超えたものになりましたが、電通デジタルの強みはどう発揮されましたか?

大和田:業務内容として新しい領域だったので、各領域の専門性が高いメンバーからの意見や気づきなど、プロジェクトを進めていく中で、学ぶことは多かったです。

佐藤:今回は役割が明確に分かれていたことが、良い方向に働きました。自分が大変そうだと思ったことも、他のメンバーにとっては意外と難しくなかった ということも多かったので、領域が異なるメンバーが協力し合えるところは強みに感じました。

池田:各領域で長い業務経験があるメンバーばかりだったので、コミュニケーションはとにかくスムーズでした。担当する範囲がしっかりと決まっていたので、自分の担当だけこなしていれば取りこぼしの心配がない点も、心理的に楽でした。

折出:何か取りこぼしがあると、完成に間に合わないギリギリの日程でしたが、今回のプロジェクトメンバーは全員有志ということもあり熱量がとても高く、各工程の完成度も高かったので、未知のことが多い生成AIを使ったプロジェクトでも、デモの完成に漕ぎつけることができたのだと思います。

矢野:Owned HumanはリアルなバーチャルヒューマンとLLM次第というような単純なものではありません。やはり体験設計、テクノロジーの選定、シナリオ設計、エンジニアリングが必要ですし、それらを有機的につなげるプロジェクトマネジメントは電通デジタルの強みであることを、改めて認識できました。

池田裕悟(ブランドエクスペリエンスクリエイティブ部門 エクスペリエンスデザイン第3事業部 テクニカルディレクター)
折出夕佳(オウンドメディアエクスペリエンス部門 オウンドメディアプランニング事業部 Webディレクター)

生活者に寄り添い、ロイヤルティを高めていけるコンシェルジュとして

――Owned Humanを通して、企業や生活者に何を提供したいと考えていますか?

佐藤:現代は物や情報が溢れていて、本当に欲しいものは何なのか、なかなか気づきにくい時代です。Owned Humanとは概念でもあり、サービスでもあり、対話を通じて、自分が「何が欲しいか」「なぜ必要か」を言語化していく新しい体験です。自分が欲しいものは何なのか、気づけるきっかけになると良いですし、それがビジネスに結び付けば、企業としても様々な活用の可能性があるのではないかと思います。

矢野:構想のコンセプトに「対話の可能性を広げたい」ということがありました。

ユーザーは知りたいことをその道のプロに気軽に話しかけて納得いくまで会話することができます。企業はユーザーのパーソナルなコンシェルジュとしてロイヤルティを継続的に高めていく役割を担えるではないかと考えています。


デモ制作で培った知見をもとに、Owned Humanが実装された世界観を描く

――今後の展望を教えてください。

矢野:AIの進化はこれまでの当たり前を一瞬で古いものにし、既存の行為をストレスな体験に変えてしまいます。例えば、今回のデモを通して、音声でUIが切り替わる体験に慣れたら、マウスやタップ操作はきっと大きなストレスになるだろうと感じました。

 「試着イメージみせて」「シミュレーションしてみて」「2ページ前に戻って」と声で指示したことが即座に画面に表示されて、納得いく情報に出会えたら心地よいですよね、きっと。そんな新しい顧客体験がこれからたくさん作れるんじゃないかと、とてもワクワクしています。

――生成AIの導入や、Owned Humanに関心を持っている企業の担当者に向けて、メッセージをお願いします。

矢野:私たちは今回のデモ制作で、バーチャルヒューマンを活用するにあたり、生成AIのモデルの進化には左右されないUIの開発スキームを獲得しました。これを利用すれば、アップデートされていく生成AI技術と、UI/UXの開発を切り分けてプロジェクトを進めることができます。現在、最小限のコストとリスクでPoCに着手できるようなOwned Humanのメニューもご用意しています。Owned Humanに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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