2024.05.16

クロスメディア・プランナーにXを搭載! X広告を活用したメディアプランニングはどのように変わるのか?

電通の「テレビ×デジタル」広告出稿最適化ツール「クロスメディア・プランナー」に、Xの予約型メニューのデータが新たに搭載されました。これにより、メディアプランニングにおいて、どのようなことが実現できるようになるのでしょうか。X社 小泉増良氏(執行役員 広告代理店事業本部 兼 広告事業本部 本部長)、志賀玲子氏(Director, Head of JAPAC Ads Research, MI&A)、電通デジタル 荻島裕樹(プラットフォーム部門 部門長)、杉本晃一(ストラテジー部門 部門長)に話を聞きました。

Xは動画ファーストなニュースメディアである

――Twitterは運営会社が変更になり、名称もTwitterからXに変わりました。Xがこれからどうなるのか、何を目指しているのか、関心が非常に高まっています。そこでまず、Xとはどのようなメディアであるのか、御社内での認識をお聞かせいただけますか。

X社・小泉増良氏:Twitterは、テキストを中心とした情報が行き交うプラットフォームでした。そのコアアセットは引き継ぎながら、ユーザーの日常生活の中で様々な機能を通じて接点を増やすことで「Everything App」にシフトすることを目指しています。昨年1年間はそうした機能を導入するための基礎固めの1年でした。今年は飛躍の1年にしていこうと考えています。

――Xになってから立て続けに動画機能が強化されていますが、その点はいかがですか?

小泉:おっしゃるとおりで、昨年から動画ファーストなUIを作り始め、関連する機能の開発も進めています。例えば、フルスクリーン型の縦型動画フォーマットや、ライブストリーミング再生のフォーマット機能を強化し、最大で長さ4時間の動画をアップロードできるようになり(プレミアムサブスクライバーのみ)、短尺に加え長尺の動画もカバーできるようになりました。

結果として、Xの総利用時間は前年比で17%増加、動画再生回数は前年比で35%増加しました。特に、縦型フルスクリーンフォーマット動画の視聴時間が動画視聴時間全体の20%を占めるまでに至っています。

コンテンツに関しても、広告売り上げの収益を還元するプログラムを開始し、著名なインフルエンサーの方から収益性のあるリターンが得られたという報告もあります。今後、ますます良質なコンテンツが拡充されることで、動画メディアとしてのポジションが確固たるものになるように期待しています。

もう一つ、Xにはリアルタイム性という強みがあり、情報が届くスピードが最大の売りの一つです。実際、App​ ​Storeの中では「ニュース」に分類されていて、その中ではダウンロード数No.2です(日本とアメリカ。2024年3月14日時点)。「Xは動画×ニュースのメディアである」という認識をさらに強化していきたいと考えています。

――TwitterからXに変わったことによって、広告メニューはどのように変化しましたか?

​​小泉:​動画、パフォーマンス、ブランドセーフティを柱に、フルファネル広告のラインナップを強化しています。以前より人気の検索面トップに24時間1社限定で動画を掲載するトレンドテイクオーバーに加えて、メディアビューアー機能において全画面表示かつ音声ありの広告枠としてご利用いただけるバーティカルビデオ広告、プレロール動画広告の拡充等、動画広告に力を注いでいます。​​

――SNSを使用しながらテレビを楽しむ視聴スタイルが、若年世代を中心に定着しています。TwitterがXに変わって以降も、テレビCMとの同時出稿のニーズは依然として大きいのでしょうか?

電通デジタル・荻島:以前と変わらずニーズは大きいです。「ユーザーが自ら拡散し、話題が広がりやすいメディアである 」というのが、Xの大きな価値であり、魅力です。キャンペーンの立ち上げのタイミングで、テレビや他メディアとの同時出稿ニーズは大きいですし、リーチ獲得の効果も大きいと考えています。


メディアプランニングの課題を解決するクロスメディア・プランナー

――テレビCMとデジタル広告の同時出稿など、複数のメディアを同時に利用する昨今のメディアプランニングにおいて、課題は何でしょうか?

電通デジタル・杉本:次々と新たなプラットフォームやメディアが登場し、生活者接点が多様化しています。その多様化を踏まえた広告予算配分の最適化問題 、効果予測・分析を行うプロセスが複雑になってきている中で、いかにスピード感を持って効果的かつ効率的なメディアプランニングを行えるかが課題になっています。

――そうしたメディアプランニングの課題を解決するクロスメディア・プランナーとは、どのようなツールなのでしょうか?

杉本:クロスメディア・プランナーは、「テレビ×デジタル」広告の出稿を最適化するプランニングツールです。対象となるユーザーの条件や予算に合わせて、統合/重複リーチや、「広告認知」「キャンペーン認知」「ブランド認知」「購入意向」といった各態度変容指標(KPI)を最大化する最適なプラン・予算配分を自動生成できます。

2015年に電通が開発して以降、広告メニューや出稿デバイスの拡充、顧客企業の多様なニーズに応える機能拡張を続けてきました。

また、シミュレーションの元となる各種データには、電通の独自調査に加え、各プラットフォーム事業者から統計加工された提供データを活用しており、各プラットフォーム事業者との連携を進めて、データ更新や機能改善、対象メニュー拡大などを実施しています。


クロスメディア・プランナーにXを搭載することで、実現できること

――クロスメディア・プランナーにXの予約型メニューを搭載しました。搭載の背景や目的をお聞かせいただけますか。

小泉:従来、Xの予約型広告を他のメディアと同時出稿したときに、どれぐらいリーチの獲得に寄与しているのか、定量的な数値として示すのが難しい部分がありました。クロスメディア・プランナーにXのデータを搭載し、リーチという文脈での価値が定量的に可視化できるようになることは、電通および電通デジタルにとっても、我々にとっても、双方良しの取り組みであると考えました。

――クロスメディア・プランナーにX予約型メニューを搭載するにあたり、X社内ではどのような調整が必要だったのでしょうか?

X社・志賀玲子氏:個人情報の取り扱いに関して、XはGDPR(EU一般データ保護規則)に対応した厳格なプライバシーポリシーを定めています。そのため個人レベルのデータをお渡しできるパートナーが限られており、データセキュリティも厳しいものになっています。クロスメディア・プランナー用のデータを集計パートナーに渡すにあたり、第三者機関にセキュリティレビューしてもらう必要があり、その過程に時間を要しました。

それと並行して、高い精度でシミュレーションを行うために、元となるデータの選定にも十分な時間をかけました。元データとして適切なキャンペーンの選定にあたり、実際のキャンペーンの出稿規模、ターゲティング、期間、オブジェクティブなどの集約を国内電通グループ(dentsu Japan)の皆さまに協力していただきました。

――クロスメディア・プランナーにX予約型メニューを搭載することで、どのようなことが実現できるようになりますか?

小泉:予約型はリーチの垂直立ち上げに有効なメニューです。新商品キャンペーンの垂直立ち上げなどの際に、リーチの効果を予測数値としてお伝えできるようになります。これにより、クライアント企業の課題解決につながるプランニングが可能になることを期待しています。

志賀:杉本様からもお話がありましたが、昨今キャンペーンを単一メディアで行うことは少なくなっています。これまで同一の環境でシミュレーションできなかったメニューのKPIや指標に関して、定量的な予測が可能になることで、テレビとXなど、複数のメディアを統合的に活用するメディアプランニングの提案がしやすくなりますし、私たちとしてはXの良さを知っていただく機会が増えることを期待しています。「X Data Hub Omusubi」(以下、Omusubi)で定量的な評価をすることで、プランニングからレビューまで一貫して実施することが可能となります。​​

――今回のX搭載により、電通および電通デジタルとX社が連携することで発揮される強みは何でしょうか?

小泉:現在、Xには6700万人のMAU(月間アクティブユーザー)、4000万人のDAU(デイリーアクティブユーザー)がいます。今回クロスメディア・プランナーにXを搭載したことで、実際どれぐらいのユーザーにリーチできるのか、シミュレーションによりお伝えできるようになったことが最大の強みです。

荻島:テレビCMの取り扱いが非常に多いdentsu Japanには、テレビCMとX予約型広告の相乗効果の販売知見があります。クロスメディア・プランナーを使うことでそうした強みをさらに強化して、クライアント企業のmarketing ROIに貢献したいと思っています。

杉本:電通とXで構築したOmusubiというデータクリーンルームでは、検証や分析ができるようになっています。具体的には、テレビとXの統合リーチの実績値を検証可能ですし、広告が実購買にどのように貢献したかも検証できます。それらを基にマーケティングROIを最大化できるようなプランニングや、マーケティング予算最適化ができるのは、両社が連携することによる強みだと認識しています。


あらゆるプランニングのシミュレーションに活用してほしい

――現場のプランナーの方々に、どのように使ってほしいとお考えでしょうか?

杉本:まずはテイクオーバー広告を含めたプランニングのシミュレーションに使っていただきたいですね。垂直立ち上げキャンペーンと相性がいいのは、これまでのプランニング実績から実証済みです。ここをどのようにリーチ拡大できるか、それがコア部分になります。

​​タイムラインリーチ​は、15〜29歳の約25%、全世代(15〜69歳)の約10%にリーチできます。タイムラインテイクオーバーとトレンドテイクオーバープラスは、15~29歳の約50%、全世代(15〜69歳)の約25%にリーチできます。TVヘビーユーザーのプランニングでも、タイムラインテイクオーバーとトレンドテイクオーバープラスは、約10%のインクリメントリーチを生み出せることが分かっています。[注1]

小泉:普段私たちはXの広告メニューの提案をする際に、ティザー・ローンチ・サステインという3段活用のフレームワークを勧めています。ティザーはキャンペーン前、ローンチはキャンペーン、サステインがキャンペーン後です。キャンペーン前後の期間に運用型広告のメニューをミックスすることで、ローンチ前のユーザーの期待感を醸成したり、ローンチ後の商品理解、態度変容を促したりすることが可能です。プランニングの際にはこのようなフレームワークを取り入れて、柔軟な発想で活用を推進していただければと考えています。


強力なパートナーシップで機能強化に取り組む

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

志賀:将来的にはブランディングKPIや、現在まだ対応していないセグメントのリーチデータなどにも対応して、dentsu Japanのプランナーの方やクライアント企業にさらに使っていただきやすくなるように拡充していきたいです。また、Xと共同で構築したデータクリーンルームOmusubiは、数年にわたって機能を拡充し、プランニングから検証までに対応する環境を整備してきました。今後も両社の強力なパートナーシップのもと、機能強化に取り組んでいきたいと思っています。

杉本:メディア環境が多様化する中、最適なメディアプランニングを実施して、ROIを最大化することが我々のミッションの一つです。今回のクロスメディア・プランナーのアップデートを通して、最適なメディア投資が可能な基盤を構築することで、今後もクライアント企業の事業成長に貢献していきたいと考えています。


注釈

1.  現状のクロスメディア・プランナーによるシミュレーションの結果

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