2023.08.01

Web3を「自分ゴト」にしてもらうための研修を開催

新入社員が考えたNFT活用のアイデアとは

2023年6月2日、新卒社員に向けたWeb3講座が開催されました。Web3の基礎を学ぶ座学の後、入社式で配布されたNFT入社証[1]をどう活用するかを考えるワークショップも実施。新卒社員からは、どのようなアイデアが飛び出したのでしょうか。講師は岡田宣之、豊沢拓真、内海竜太の3人が務めました。その詳細をレポートします。

※トランスフォーメーション/テクノロジートランスフォーメーション領域に配属された新卒社員

Web3をどうビジネスにつなげるかの研修を実施

入社式でNFT入社証を配布する際、登壇者が「ウォレット(暗号資産を管理するお財布)をすでに持っている人はいますか」と聞いたところ、意外にも手を挙げた人は一人もいませんでした。新卒社員にとっても、Web3という新しいテクノロジーには、まだまだ馴染みがないようです。

今回の研修の目的は、そんな新卒社員に、Web3を「自分ゴト」にしてもらうこと。Web3が今後社会に浸透していけば、私たちの生活や価値観が大きく変わる可能性があります。それをいかに「自分ゴト」として捉え、ビジネスに接続させていくかが、これからの電通デジタルで仕事をしていく上で、重要な視点となるからです。

前半の座学でWeb3の基礎を学び、後半では、「もっとワクワク働くために、どんなNFT入社証(社員証)の活用方法があるか」というテーマでワークショップを開催しました。自ら考え、アウトプットする体験を通して、Web3に興味や関心を持ってもらうことを目指します。ワークショップで出た面白そうなアイデアは、積極的に実装していく予定です。発案者にはそのプロジェクトメンバーにジョインしてもらうことになるでしょう。


座学:Web3で何が変わるのか、基礎的な考え方を学ぶ

Web3というだけに、Web1.0とWeb2.0が存在します。その概念の経過を見てみましょう。Web1.0は、インターネットが登場したばかりの時代です。ホームページが数多く作られ、URLでアクセスすると情報が得られるという概念が浸透していきました。Web2.0ではSNSが登場します。個人が情報を発信する時代の到来です。「 Web1.0の時は、たかが『いいねボタン』で人々の自律的なアクションを促したり、コミュニティが生成されたりするなんて考えられなかったと思います。Web3も同じで、Web2.0にいる私たちにはまだまだ想像もできないことが必ず起こります。なので、私たちは来たるWeb3時代に向けて、どのような新しい体験が生まれるのかを考えていかなければなりません」と豊沢は語ります。

電通デジタル BIRD部門 クリエイティブプランニング第2事業部 豊沢拓真

Web3では、ブロックチェーン技術を基盤とした、まったく新しい概念が生まれようとしています。データを改ざんできない、分散してデータが保存されるなどといったテクノロジーにより、個人が自分の情報を管理する非中央集権の世界が実現しつつあるのです。

「これからは『個の尊重』と『多様性』がより進む時代になるでしょう。Web1.0の初期のころ、誰もメールアドレスを持っていなかったように、今、Web3でウォレットを持っている人はまだ世界で数%しかいないと言われています。では、ウォレットが全人類に浸透したら、ビジネスをどう変えていけるでしょうか。それをみなさんと考えるのがこの研修の趣旨の一つです」と豊沢。

個人が主役になるWeb3。そのことで、どのような変化が社会に起きるのでしょうか。岡田は3つのポイントを挙げます。1つ目が「生活者個人が社会を動かす力を持つようになる」です。過疎が進む新潟県・山古志村がNFTを用いたDAO(分散型自立組織)を立ち上げ、さまざまな個人を巻き込み、村おこしを活性化させた取り組みを紹介。「サービスをただ受けるだけでなく、主体的に活動に参加してくれる個人をいかに巻き込んでいくかが重要になります」と岡田は語ります。

そして2つ目が、「生活者と企業の関係が従来の枠組みを超える」です。Jリーグのプロサッカーチーム「アビスパ福岡」が立ち上げた「Sports Innovation DAO」では、NFTを持つファンがクラブ運営に参画、イノベーションを共創しようとしています。ブランドのファンをエンパワーメントするようなコンセプト設定が鍵を握るでしょう。

そして3つ目に挙げたのが「複数社で課題を解決するための実行力が強化される」です。複数社で不動産の契約情報を共有し、入居後に必要な引越しや電気、ガス等の手続きを簡略化する「NEXCHAIN」を例として紹介し、岡田は次のように語ります。「不動産入居後の手続きは、多くの人が面倒に感じています。そうした、大勢のペインを解決し、企業間連携もしやすいテーマを設定することが大切になってきます」。

Web1.0時代のマーケティングは「マスマーケティング」でした。良いものを作り、あまねく市場に伝えていけば、モノが売れた時代です。Web2.0時代になり、SNSなどで人と人がつながる「パーソナライズマーケティング」が広がりました。友人がお薦めしてくれたり、インフルエンサーがレビューしてくれたりするような「良いつながり」が生まれる場を提供することで、サービスや商品が選ばれるのです。それが今の時代だと言えるでしょう。では、Web3時代のマーケティングは、どのように変化するのでしょうか。

「『良い問い』を設定し共創することが重要になってきます。我々はこれを『イシューマーケティング』と呼んでいます。Web3は共創のプラットフォームなのです」。生活者と企業が同じ方向を向いて取り組めるイシューやビジョンをどのように設定するかが、これからのマーケティングの考え方になると、岡田は語ります。

電通デジタル トランスフォーメーションリードルーム Web3ルーム マネージャー 岡田宣之

ここで、ワークショップに取り組むためのヒントとして、NFTが持つ3つの機能を岡田が解説しました。まず挙げられるのが「デジタルグッズ」としての機能です。NFTそのものが商材となり、価値を持つというケース。次が「行動の証明」です。NFTは改ざんができないからこそ、半永久的に履歴を残すことができます。イベントの参加や資格の修了などの行動を証明することができるのです。そして最後が、「トークンゲーティング」。NFTを持つ人だけが閲覧できるコンテンツや招待されるイベントなどに、アクセスするキーとして機能します。

「ただ、既存アセットとこうしたNFTの機能を足しただけでは、価値は生まれにくいです。アセットにクリエイティビティやテクノロジーなどで何かを掛け合わせると、NFTを付与するに値する価値が生まれます。それが何かを考えることが最も重要なのです」と豊沢は説きます。


ワークショップ:キーワードは「エレベーター」?斬新なアイデアが飛び出す

ここからは、新卒社員が5つのグループに分かれて、NFTの活用方法を考えるワークショップに入ります。内海がワークショップのルールを説明しました。活用するのはNFTのどの「機能」か。電通デジタルの社員がワクワク働くためにはどんな「環境」が必要なのか。それを実現するためのNFT社員証の「活用法」は何か。これらをワークシートに書き出し、それによって「期待できる効果」をまとめます。

電通デジタル BIRD部門 サービスイノベーション事業部 内海竜太

オンラインホワイトボードを使い、メンバーと共に、熱い議論が交わされました。そして、最終的に一つのアイデアにまとめ、発表します。それぞれのグループが、どのような活用方法を考えたのか、ご紹介しましょう。

グループワークの様子。講師が各グループを回り、アドバイスを行う場面もあった

なんと5つのグループ中、3つのグループがエレベーターでNFT社員証を活用するというものでした。電通本社ビルは地上48階まであり、社員と乗り合わせる場面もよくあります。エレベーターという狭い空間で先輩社員と一緒になったときの気まずい数十秒間が、新卒社員にとっては最大の悩みのようです。

エレベーターで乗り合わせた社員の仕事のノウハウや趣味などの情報をNFTの「証明書」機能で共有し、先輩社員とのコミュニケーションのきっかけ作りに活用するというアイデアや、仕事の取り組みなどを数値化してNFTに記録し、それに基づきスピードやパワーを育成。エレベーターに乗り合わせた社員同士のNFTがモニターでバトルを始めるというアイデアなど、気まずいエレベーターの時間が有意義になるような、面白い活用法が飛び出しました。

エレベーターでの活用法以外にも、競合プレゼンなど大事な仕事の予定をNFTに登録しておき、その日に出社してゲートを通るとロッキーのテーマ曲が流れ、それを聴いた他の社員に応援してもらうことで、モチベーションも上がるという斬新なアイデア。「DDコイン×期待値ランキング×NFT」といった一定のポイントを「DDコイン」として社員に付与するアイデアでは、「コーヒーをよく飲む人」「睡眠をしっかりとっている人」など、シーズンごとにテーマを決めて付与したり、ゴミを拾った人やエレベーターで待ってくれた人など、ちょっといいことをしてくれた人に対しても付与したりします。部署をまたいだ社員同士の理解の促進が期待できるといいます。

各グループ発表の様子。入社後に得た経験から斬新なアイデアが生まれた

新卒社員だからこそ生まれた斬新なアイデアが発表されたワークショップ後、座学の講師を担当した、豊沢と岡田が総評を語りました。

「まずは、エレベーターでの皆さんの体験をなんとかしないといけないですね(笑)」と語った豊沢。「座学での学びを、この短時間で一つのアイデアに絞ってアウトプットできたのは、全チーム素晴らしかったと思います。入社して2カ月で得た経験や自分の生活の中から見る、私たちとはまったく違った視点のアイデアでした」

そして、岡田は次のように振り返ります。「座学で話した、アセットにどうクリエイティブを結びつけるかという点が、どのグループもきちんと反映されていたかと思います。我々は、Web3がWeb3であるうちはダメだと常々話をしています。アイデアやクリエイティブで、ユーザーにいかに心地良い体験や面白い体験が提供できるか。そこまで昇華させて、Web3と意識せずに使われるようになることが重要なのです。今回の経験を、今後の仕事にも生かしてもらえればと思います」。

Web3は、まだまだ社会に浸透し始めたばかり。新卒社員の新しい視点が、これまでにない価値を生み出してくれるに違いありません。


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