EC市場の伸長などにより、D2C(Direct to Consumer)への注目は年々高まっています。一方で、既存システム・業務との共存や、購買データ・顧客データの活用方法など、大企業D2Cならではの課題も顕在化してきました。
本記事では、D2C立ち上げ時の課題に大企業がどのように向き合い、解決すべきかについて、Shopify Japan 梅田志桜里氏、グーグル・クラウド・ジャパン 梅川真人氏、電通デジタル 金本珠枝が解説します。
EC市場の伸長などにより、D2C(Direct to Consumer)への注目は年々高まっています。一方で、既存システム・業務との共存や、購買データ・顧客データの活用方法など、大企業D2Cならではの課題も顕在化してきました。
本記事では、D2C立ち上げ時の課題に大企業がどのように向き合い、解決すべきかについて、Shopify Japan 梅田志桜里氏、グーグル・クラウド・ジャパン 梅川真人氏、電通デジタル 金本珠枝が解説します。
※2022年9月に開催されたウェビナーの内容を採録し、編集した記事です。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
金本珠枝(以下、金本) : 大企業D2Cにおける課題としてまず挙げられるのは、「既存システム、既存EC運用業務との共存」です。具体的には2つあります。
1つ目は「既存システムとのつなぎ込みの難しさ」という課題です。大企業がD2CのためのECサイトを立ち上げる場合、多くはCDP、MA、基幹システムなどの既存システムとの接続が必要ですが、この接続に技術的なハードルがあります。
2つ目は「EC運用業務の立ち上げの難しさ」です。フルフィルメント、CS(カスタマーサポート)といったEC運用業務は業務負荷が高く、立ち上げに時間がかかる上、運用フェーズでも組織間の調整に手間や時間がかかるという課題があります。
これらの課題はどのようにすれば解決できるのでしょうか?
梅田志桜里氏 : D2Cをスピーディに立ち上げるために、まず大事なのは、「作る」から「使う」へ、マインドセットをシフトすることです。
膨大な初期投資をして、ECシステムをゼロから「作る」のではなく、必要最小限の機能で始め、Shopifyのようなプラットフォームが提供する機能やアプリを「使い」ながら構築を進めていくことが有効です。
Shopifyはコマースプラットフォームとして、日進月歩で新たな機能がリリースされています。下図の真ん中がShopifyのプラットフォームです。Shopifyのプラットフォームは、まず機能が充実しています。その周りにさらにShopifyアプリのエコシステムが存在しています。現在、Shopifyのアプリストアでは、8000を超えるShopifyアプリが利用可能です。
Shopifyアプリには、販売チャネル、CS、OMS(注文管理システム)/WMS(在庫管理システム)、ERPなど、EC運用に必要となる代表的なサービスやプラットフォームを網羅しています。これらと連携し、つなぎ込んでいくことにより、簡単に無限に拡張していける、そういった軽やかさや柔軟性がShopifyの強みだと思っています。これらを活用することで、スモールスタートから、必要に応じて容易に拡張していくことができます。
またShopifyでは、アプリのつなぎ込みだけではなく、何千というAPIが提供されています。アプリではできないカスタマイズを行う必要が出てきたフェーズにも対応できることがShopifyの拡張性の高さでもあります。
スタート時は必要最小限の機能を上述したエコシステムから適宜、利用し、成長フェーズにおいて機能をさらにカスタマイズしたいニーズが高まってきたときには、カスタマイズに対応していくのです。
Shopifyでは、流通量が多い事業者またはより高度にカスタマイズされたストアを求める事業者を対象とした最上位プランとして提供するShopify Plusにおいて、経験豊富なコンサルタントがビジネスの成功に向かって伴走することが可能です。
自社ECサイトの立ち上げに必要な要件の作り込み、時間やコスト、ビジネスにとって価値のある要件、機能なのかといったところを天秤にかけて検討していくところから支援し、トライアンドエラーを繰り返して改善していきながら、大きな成長につなげていくことができるのは、Shopifyの強みであると思います。
金本 : 続いての課題は、「データ活用を仕組み化するためのハードル」です。EC事業を行う上では、顧客理解や商品開発にデータの利活用が重要です。これを仕組み化していくにあたり、2つの課題があります。
1つ目は「データのサイロ化によって有効活用ができていない」という課題です。サイロ化には大きく「組織構造によるサイロ化」と「さまざまなツールやシステムにデータが散在していることによるサイロ化」があります。
2つ目は「データマネジメントやレポーティングといった、運用リソースの不足」という課題です。データマネジメントがなかなかできない状態で運用すると、次第にレポーティングが滞り、結果としてスピーディな意思決定ができなくなりがちです。
こういった課題に関し、どういった解決策があるのか、紹介していただけますでしょうか。
梅川真人氏 : データ利活用の2つの課題に関して、Google Cloudが提供しているプラットフォームの観点からお話しします。
Googleの調査によると、データの重要性を認識していながらも、データから計測可能な価値を創出することに成功していない企業は68%に上ります。その理由のひとつが、データのサイロ化です。
エンタープライズ企業における一般的なITプラットフォームというのは、それぞれの用途に最適化された分析ツールや、分析プラットフォームが用意されているのが現状です。
そのため、他の部門が管轄するシステムから、CRM、POS、CDPデータなどを取得する場合、もしパイプラインが全くなければ、データ取得に数カ月を要することも珍しくはありません。結果として、データの利活用や、それに基づいた意思決定がスムーズに進まないという問題が生じます。
もう1つの課題である、「データマネジメントやレポーティングといった、運用リソースの不足」問題があります。例えば、何かしらのレポートを作りたいと思ったときに、自分で管理しているデータであれば、ExcelやBIツールなどを用いて、すぐにレポートを出力することが可能です。
しかし、情報システム部などに依頼して「特定のデータについてのレポートが欲しい」とリクエストした場合、簡単なデータの接続にも数日、数週間かかってしまうというケースがあるでしょう。
Google Cloudでは、こうした課題を解決するために、「Google Cloud Smart Analytics」ソリューションを提供しています。データ量と分析時のコンピューティングリソースに応じた従量課金制で、スピーディに利用開始できるため、スモールスタートが可能です。
このソリューションは、Googleが広告分析やユーザー分析に用いているプラットフォームがベースとなっているため、拡張性も高いのが特徴です。ビジネスがどこまで成長しても、インフラ面の保守、運用を行う必要がほとんどありません。ですから、上述したようなサイロ化したシステム、あらゆる場所に分散したデータを統合していただくことができます。
一方、データを扱うユーザーのスキルセットはバラバラです。こうした問題に対しても、データを1カ所に統合管理しておけば、ユーザーそれぞれのスキルセットに合わせたツールを使うことができます。
もちろんSQLが使えるユーザーであれば、SQLでもアクセスできますし、さらにはAPIを使って、アプリケーションからデータを利活用したいというユースケースに対しても、われわれのプラットフォームからAPI経由で集計したデータを抜き出していただくことができます。
これにより、データを使いたいのに非常に時間がかかるとか、コストがかかるという課題を解決することが可能です。
金本 : 実際に電通デジタルにおいて、ShopifyやGCPを活用した解決事例を紹介します。
電通デジタルでは、「Commerce Data Hub」という購買分析ツールを独自開発しました。これは、EC関連の各種データソースを定型化し、統合処理を行うツールです。そして、その先の施策へつなげるためのレポーティングも行えます。
「Commerce Data Hub」は、データの取得・集計・統合を行うデータプラットフォームとしてGCPを活用しています。また、レポーティングに関してはTableauを使って出力することが可能です。ShopifyやShopify Plusとも連携していますので、Shopifyを使って立ち上げたECサイトのデータも、Commerce Data Hubを使って活用することが可能です。
使用可能なレポートとしては、KPI Summaryやトランザクション、商品分析、顧客分析などが用意されています。
Commerce Data Hubの1つ目の活用事例は、商品カテゴリー別の売上構成比のレポートです。例えば、メルマガやSNSなどのように、流入経路別の売上構成比を可視化することが可能です。これにより、商品や商品カテゴリーと、その流入経路の親和性を把握した上で、各媒体の商品の露出の最適化につなげることができます。さらに、もっともLTVが高くなるような「ゴールデンルート」を導く示唆を得ることも可能です。
2つ目の活用事例は商品分析です。Commerce Data Hubは、顧客分析だけでなく商品分析に強みを持っています。特に、大量のSKU(Stock keeping Unit:受発注や在庫管理上の最小単位)を扱うようなECサイトで力を発揮します。
例えば、商品やカテゴリーごとに併売商品を可視化し、Lift値を算出することで、正確な併売傾向が把握できるようになります。その先には、レコメンド施策設計につなげることも可能です。
電通デジタルでは、Commerce Data Hubの導入はもちろん、レポーティングやデータを活用したマーケティング戦略の立案、施策の実行に至るまでワンストップで支援します。D2C事業の立ち上げ、Shopifyを活用した自社ECサイトの構築、GCPによるデータインフラ構築、EC戦略の策定、事業開始後の運用について、お困りのことがあれば、ご相談ください。
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