「メタバースってバズワード的に最近よく聞くけど、何がすごいのか、どんな可能性があるのか、正直よく分からない」。そんな方も多いのではないでしょうか。本記事では、メタバースの中でタレントとしても活躍する「Mr.にゃーん」こと株式会社Gugenka 荻谷 哲氏と電通デジタル 喜々津良が、メタバースの真の体験価値と可能性をお伝えします。ファシリテーターは、電通デジタル 泰良文彦です。
※本記事は、2022年12月に開催されたウェビナーを採録し、編集したものです。
※所属・役職は記事公開時点のものです。
メタバースの楽しいところはどこか?
泰良 : 2022年9月に開催された「TOKYO GAME SHOW 2022」は、特設ワールド(バーチャル空間)のクオリティが非常に高く、ゲームの世界に没入できる体験になっていました。あれほど高いクオリティだと、思い出や体験を誰かに伝えたくなります。
リアルであれば、旅行に行って写真や動画で楽しい思い出を残しておくのは普通のこと。それと同じように、今回はたくさんの人がSNSやYouTubeに体験動画や記念撮影の画像をアップし、シェアしています。体験として思い出に残るというのは、アプリやWebサイトとは違った、メタバース特有の楽しさだと思います。
荻谷 : リアルでは自撮りをしない人も、バーチャルではどんどん撮りますね。思い出を残したいから撮りたくなるし、見てもらいたいから拡散したくなる。そういうバーチャルならではの要素がうまく盛り込まれていました。
喜々津 : 楽しかった体験のポイントは、以下の3つです。
- クエストを一緒にクリアする
- 驚きや感想のリアルタイム共有
- アバターを着せ替える
クエストをクリアして写真を撮ると着せ替えアイテムがもらえて、シャツを着替えたり、うさ耳をつけたり、自分がなりたい姿にカスタマイズできます。他の人が「そのシャツいいね。自分も取りに行こう」と反応したり、感想をリアルタイムで共有したり、アイテム越しにコミュニケーションをとる体験がすごく楽しかったです。
BIRD部門 クリエイティブプランニング゙第1事業部 Xクリエイショングループ
喜々津 良
クリエイティブストラテジスト、R&DプロジェクトXRLABリーダー。先端技術領域でプランニングやディレクション業務を行う。XR関連の登壇・セミナー開催多数。
泰良 : 荻谷さんは「UXが優れていた」とおっしゃっていましたが、それを感じたポイントはどこですか?
荻谷 : 2つあって、1つは動線設計がすばらしかった。メタバースによくありがちなのは、だだっ広くて、何からどう見て回ればいいか分からなくて、つまらなくてやめたというケース。TOKYO GAME SHOWは、動線がしっかりしていて、迷わずに巡れました。ユーザーに負荷がない動線は重要です。
もう1つは、エンタメのリアルな興奮をうまく落とし込めていました。クエスト達成感というゲーム要素もそうですし、エレベーターで降りていって物語が始まる演出も、ロールプレイングの経験がある人はぐっと引き込まれます。
ボートレースは、乗った瞬間にモードが切り変わって、遊園地のアトラクションのようになり、エンタメとしてすごく楽しかったです。これも、遊園地で経験があることなので、楽しかったという感覚になるのだと思います。
バーチャルだからといって、バーチャル独特の体験を持ち込み過ぎると、逆に良くない。リアルの体験での感動をどう盛り込むかは、重要な気がします。
株式会社Gugenka
取締役マネージャー
Mr.にゃーんこと荻谷 哲
Gugenkaにてメタバース関連のプランニングに従事。さまざまXR事業に関する新規事業及びイベント等のプロデュースに関わる一方、バーチャル上での司会業なども兼務。
泰良 : 「メタバースをやってみたけれど、面白くなかった」という方がまだ多いようです。これについてはどう思っていますか?
喜々津 : 今までのメタバースは、1人用のソフトや、ただ会話するだけのSNSが多かった。今後、ゲームのマルチプレイやNPC(Non-player character:プレイヤーが操作しないキャラクターのこと)の反応を楽しむような体験が進歩すれば、空間内での楽しみ方が進化していくと思います。
荻谷 : 僕はメタバースを仕事にしているのでだんだん分かってきましたが、1人で入るよりも複数で入った方が、ワイワイ話したり、相談したりできるし、圧倒的に楽しい。例えば、「絶対に1人では入らないでください」というお化け屋敷のように、縛りを作るのはありかもしれません。
泰良 : 全体としては、「のめり込めるような面白いコンテンツがある」「他の人とコミュニケーションをとって楽しめる場になっている」「空間的にどちらへ行けばいいか直感的に分かる」、この3つ全部が揃っていれば、楽しめるということですね。
BIRD部門 クリエイションプランニング第1事業部
事業部長
泰良 文彦
クリエイティブディレクター。XRクリエイティブギルド、XRX Studioなど電通グループXR組織の電通デジタル責任者。
アバターで別の人格になる楽しさ
泰良 : 荻谷さんは、普段はXR制作会社の役員で、成人男性として生活されていますが、メタバースワールドの中では猫(Mr.にゃーん)になって、司会をしたりユーザーとして活動したりしています。猫になってみて気づいたことはありますか?
荻谷 : 実は、猫になりたかったわけではなく、いろいろな要因があって猫になりました。だから、「猫になったらどういう反応なんだろう?」とこわごわ始めましたが、いいことしかない。猫として見てくれるので、リアルな自分には絶対起きないことを体験したのがすごく良かった。
この、おまんじゅうのような猫の見た目だと、皆さんからかわいがってもらえるんです。「なでていいですか」なんて言われます。現実ではまず言われません。その時には自分も猫に引っ張られて、なでられればゴロゴロ言う。もうひとつの人格が生まれるので、得している気分になります。
泰良 : アバターだと、普段できない姿になれます。 VRチャットで異性のアバターを使うと、すごく丁寧に接してくれたり、逆にハラスメントともとれる不快な言動を受けたりといったように、現実世界における男性としての自分では遭遇しないような言動を体験することがあります。いろいろな姿を経験すると、いろいろな立場の人の気持ちが分かる社会になっていく可能性はあると思います。
荻谷 : リアルに近い姿になりたい人もいれば、動物や非生物のような絶対になれないものになりたい人もいる。選択肢がたくさんあるのがメタバースです。そういうところを楽しんでいただきたいなと思います。
喜々津 : アバターの方が過ごしやすい人もいれば、リアルの姿の方が過ごしやすい人もいる。「会社の会議にどちらで参加してもいい」という世界になれば、本当に多様性のあるすてきな社会だと思います。
泰良 : メタバースのCGやプログラミングを学べる新しい学校では、学生は全てアバター姿でバーチャルキャンパスに集まるのだそうです。「学び直したいけど、若い人の中に入っていくのはちょっとハードルが高い」という中高年の人も、バーチャルキャンパスでアバター姿なら、あまり抵抗感はないでしょう。アバターには、見た目や属性から解放された、新たな人生の楽しみ方があるのではないかと思います。
デジタル世界も日常という世代が増える
泰良 : 「デジタルアセットを持って何が楽しいの?」とよく聞かれます。そのあたりの可能性についてはどう思っていますか?
喜々津 : スマホゲームのガチャは、やっていると欲しくなって、現実に形のないものなのに何万円も使ってしまう。やっている人にとってはそれが日常で、手に入れることが楽しい。そういうデジタルアセットの価値は、これからどんどん高まるのでは。
荻谷 : 知り合いのお子さんは、「友だちがこのスキン持っているから欲しい」と親にねだったり、おこづかいを使ったりしています。その子たちにとっては「デジタルかどうかなんて関係ない。欲しいから欲しい」ということでしょう。
メタバースの中で過ごす時間が増え、経済活動ができると、デジタルもリアルの一部になる。すると、デジタルアセットがリアルでも価値を持つようになってくると思います。
泰良 : 私はナイキのスニーカーが好きなのですが、ナイキは、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)のバーチャルシューズを販売し始めていて、けっこう人気です。バーチャルだからこそ、例えばスモークが出るなど、現実にないデザインができます。
コレクトアイテムになっているスニーカーがNFT化すると、バーチャルの世界で履いて自慢する楽しみが生まれます。リアルで履くと汚れて価値がなくなるけれど、デジタルならどんどん履ける。違う良さが発見されるかもしれません。お二人は、Web3.0とメタバースの関係性については、どのようにお考えですか?
喜々津 : ブロックチェーンに登録すれば履歴が残るので、自分の前に有名人が持っていたなどの来歴も分かる。すごく面白いと思います。
荻谷 : 決済の仕組みにブロックチェーンが使われていることもあり、メタバースとWeb3.0の仕組みはすごく相性が良いです。ただ、現段階でブロックチェーンとかNFTと聞くと、投機的でうさんくさいと思う人の方が多い。また、一度登録されると偽物も本物と証明されてしまうという問題はあります。それが解決した仕組みが構築されれば、メタバースの価値が広がると思います。
泰良 : では最後に、メタバースの一番好きなところを教えてください。
喜々津 : AIやIoTなど、いろいろなテクノロジーと組み合わせることで、どんどん可能性が広がるので、メタバースには無限の可能性を感じます。そこが大好きです。
荻谷 : リアル以外にもうひとつアイデンティティが持てるのは素晴らしい。人生が豊かになる。皆さんにぜひ体験してほしいです。
泰良 : リアルだけでは出会えなかった楽しみ方に会える可能性が最大の魅力ですし、発展途上な面白さもあります。クリエイターとして、ぜひその過程に立ち会って、目撃してほしいと思います。
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