2023.02.14

アサヒビールがジョイントベンチャー・スマドリ(株)で目指すこと

電通デジタルとアサヒビールは、2022年1月、お酒を飲む人・飲まない人がお互いに尊重し合える社会の実現を目指し、スマドリ株式会社を設立しました[1]

飲料大手企業が電通デジタルをパートナーに選び、合弁会社を作った背景、意図、戦略、そしてスマドリ(株)の今後の展望を、スマドリ株式会社 代表取締役社長 梶浦瑞穂氏に聞きました。聞き手は電通 外山遊己(ウェビナー開催当時は電通デジタルに出向)です。

※2022年9月に開催されたウェビナーを採録し、編集した記事です。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

スマドリ(株)の挑戦

──「スマドリ」という言葉が何を意味しているのか、教えていただけますか?

梶浦 : 「スマドリ」は、アサヒビールが提案する新しい飲み方である「スマートドリンキング」の略です。

お酒を飲む人、飲まない人、飲めない人が、自分の体調、体質、気分、シーンに合わせて、適切なお酒やノンアルコールドリンクを選んで飲むことを意味しています。

飲める人、飲めない人、双方が楽しめるような商品や価値を提供して、人生が豊かになるような状況をつくりたいと思い、「スマドリ」という名前を冠した会社を立ち上げました。

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──会社を立ち上げるパートナーとして、なぜアサヒビールは電通デジタルを選んだのでしょうか?

梶浦:  アサヒビールはお酒の会社。社員の大半はお酒が飲めるので、飲めない人の気持ちが分かりません。お酒を飲めない人を対象にスピーディに事業を展開するには、飲めない人の気持ちが分かる社外の人が必要だと考えました。

また、Z世代を中心とした若い世代をターゲットにしているため、デジタルが必須だと考え、電通デジタルとパートナーを組ませていただきました。

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——スマドリ(株)がターゲットとする「飲まない人」とはどのような人ですか?

梶浦 : 日本の飲酒可能人口(20~60代)約8,000万人のうち、お酒を飲まない人が約4,000万人。このうちの、「お酒を飲みたいけれど飲めない」という人と、「お酒は飲めるけれどあえて飲まない」という人たちに、私たちは新しい価値を提供していきたいと考えています。

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——ソフトドリンクとは違う形で、市場を攻めていくのでしょうか?

梶浦 : お酒には、「酔う」以外にも、コミュニケーションを促進したり、リラックスしたりできる機能があります。ただそれは、アルコールがなくても提供できるかもしれません。ノンアルコールドリンクや、ローアルコールドリンクで、そうした便益を提供できるような場や商品をつくっているところです。


スマドリ(株)の戦略

——「飲まない人」に対して、どのようなアプローチをしていますか?

梶浦 : まずは、20代のZ世代を中心として、デジタルネイティブ世代の「飲まない人」のインサイトを深く理解しようとしています。

SNSの声を分析していると、「もうお酒は要らない」という人もいますが、「本当は飲みたい」「飲んでいる人楽しそうだよね」「飲みの場は好き」「居酒屋やつまみは好き」「量は飲めないから良質な酔いを楽しみたい」というような声も多いことが分かりました。

昔からお酒は、人と会って食事をする場を楽しくする飲み物でした。お酒やノンアルコールというカテゴリーに接し始める20代のうちに、飲まない人にも「やっぱり楽しいよね」と感じてもらうためには、どのようなローアルコールドリンク、ノンアルコールドリンク商品を提供すればいいのか、今いろいろ試行錯誤しています。

——2022年6月30日に、「SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)」をオープンされました。オンラインではなく、あえてリアルな場であるバーを作った目的は何ですか?

梶浦 : 大きな理由は2つあります。

1つ目は、どのようにすれば、飲めない人にノンアルコール、ローアルコールを楽しんでいただけるのか。マーケティングの人間としてそれをつかむために、リアルな場が必要だと考えました。

2つ目は、飲める人と飲めない人が分け隔てなく楽しめる場をつくって、世の中の人に知ってもらうPRの場としたため、若者の多い渋谷に店を開きました。スマドリに触れるシチュエーションを制限したくないので、正午から営業しています。

——スマドリバーの特長や、分析から分かってきたことがあれば教えてください。

梶浦 : スマドリバーは、デジタルネイティブ世代に対応し、決済はすべてモバイルオーダーで完結します。また、グループのデータではなく、お客様個人ごとの基本属性、飲酒に対する意識、注文データを取得できる点が特長です。

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このバーでは100種類以上のドリンクメニューを揃えていて、同じメニューでもアルコール度数を0.00%、0.5%、3%から選んでいただけます。これにより、好みや体質に合った飲み物を楽しめますし、体質によって選ぶアルコール度数や注文する食事の傾向が分かります。度数別の注文データを見ると、0~0.5%の微アルコールが54%で、低い度数ほど、女性の構成比が高い傾向にあります。

——年代別のフードとメニューのオーダー傾向も分析できるのですね。

梶浦 : 世代で全然違います。20代は、お酒っぽくないもの、お酒のつまみではないものがランクインしています。対して20代以外では、お酒っぽいものや塩辛いつまみが上がってきます。

オープンから3カ月で、1万人ぐらいの方に来店していただきました。こういうデータを積み上げ、分析し、最終的には商品開発に生かしたり、飲食店へのご提案に生かしたりしたいと思っています。


スマドリ(株)のこれから

——これからの展開として、どのようなことを考えていますか?

梶浦 : スマドリ(株)は、ノンアルコール、ローアルコールを起点として社会課題を解決したいという想いで立ち上げました。さまざまな会社や自治体とパートナーを組み、課題に向き合い、お客様に幸せを提供する活動を広げていきたいと思っています。

取り組みの一環として、2022年6月、「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」を発足しました。大きな繁華街を抱える渋谷区では、路上飲酒によるマナーの悪化や迷惑行為が問題になっていました。スマドリバーのある渋谷という街で、「スマドリ」という概念を浸透させ、安全安心できれいなまちづくりに貢献したいというのが目的です。

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データ分析を生かして事業を進める一方で、大学や自治体、企業、団体など、多くの方とアライアンスを組んで、世の中が楽しくなるような、課題が解決できるようなことをどんどんやっていきたいと考えています。

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——最後に、これから新規事業や新規サービスに挑戦する方々に、メッセージをいただけますか?

梶浦 : 人生は一回きり。新しいことにチャレンジし、お客様に喜んでいただくことはとても価値のあることです。私たちもまだ始めたばかりですが、そういう仲間がどんどん増えてほしいと思っています。


脚注

1. ^ "電通デジタルとアサヒビールが合弁会社「スマドリ株式会社」を設立". 電通デジタル(2022年1月6日)2023年1月11日閲覧。

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