2023.02.07

「受動的なコンタクトセンター」から「CXセンター」へ 変革はどのように進めれば良いのか?

企業において顧客体験(以下、CX)が重要となる中、コンタクトセンターは「CXセンター(=顧客接点のチャネル拠点)」への進化が求められています。本記事では、コンタクトセンターの動向・将来像を見据えながら、コンタクトセンターの変革ポイントと、変革を成功させるための進め方、変革をサポートするソリューションをご紹介します。

顧客は企業のCX改善に期待している

電通デジタル 松井崇司(以下、松井) : グローバルのCX調査を見ると、80%の経営者が「自社で最高のエクスペリエンスを提供している」と回答したのに対し、「最高のエクスペリエンスを受けた」と回答した消費者は8%にとどまります。このデータから、エクスペリエンスを提供する側と体験する側に、大きな溝が生まれているのが分かります。

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また、企業が改善すべき点として、顧客が求めている項目には、「価格・料金」に次いで「カスタマーサービスとサポート」が入っており、顧客がこの領域にとても期待していることも分かります。

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次に、国内のCXプロジェクトの状況も見ておきます。「必要だが未検討/進捗が遅い」(31%)がボリュームゾーンです。いまだに日本企業においては、CXプロジェクトの進捗は芳しくありません。

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これらのCX動向を踏まえ、コンタクトセンターはどのような変遷をたどっているのか、あるべき姿はどういうものかについて、株式会社NeoContact代表取締役 出水啓一朗氏さんに説明していただきます。


コンタクトセンターは2.0から3.0へ

出水 : コンタクトセンターの発展は、成熟度に従って4つの段階に分けられます。現在、私たちは、「2.0(丸ごと依存モデル)」から「3.0(自立自走モデル)」への移行期にいます。

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1.0(自給自足モデル)は、いわゆるコールセンターです。商品・サービスへの問い合わせ、注文を行い、企業の窓口としての役割を果たしてきました。社員がお客様と向き合うという点では、現在のCXの原点とも言えます。

2.0(丸ごと依存モデル)は、企業がコールセンター業務を専業とするBPOコールベンダーに顧客応対業務をすべて一括で委託している形態です。窓口への期待が高まる中で、顧客側には、一貫したサポート体験が得られないという不満が生まれました。

そして現在、私たちが目指しているのが、コンタクトセンター3.0です。企業が一人ひとりの顧客と向き合い、顧客のインサイトを把握し、お客様が「この企業は私のことを分かっている」と思う、そういう関係性を作ることが求められています。


コンタクトセンター3.0を実現するCRM活用のポイント

出水 : コンタクトセンター3.0を実現するコアテクノロジーはCRMです。ここで、世界最大のCRMプラットフォームを販売しているセールスフォース・ジャパンの谷川尚之氏に、どのようにCRMを活用すべきか、解説していただきます。

谷川 : CRMを使ってお客様のCXを向上させ、コンタクトセンター2.0を3.0へ進化させるには、受動的な対応から能動的なアプローチへシフトしていく必要性があります。例えば、お問い合わせの内容だけを解決するだけではなく、企業側から直接アクセスをして「こういうことに困っていませんか」というように、能動的にアプローチしていきます。こうした体験の積み重ねによって、ロイヤルティを高める環境が実現できます。

では、どのようにして、このような対応が可能な環境を整備していけばいいのか。私どもセールスフォース・ジャパンは3つの観点を持っています。

1つ目は、お客様とつながるタッチポイントを充実させることです。1つでも多くチャネルを増やして、お客様をいつでも迎えられる環境を作っていくことが大事です。

2つ目は、パーソナライズです。お客様ごとの情報を蓄積し、状況を適切に把握することで、先回りして予測した解決を提案できるようになります。

3つ目は、効率化です。AIなどを使ってプロセスを自動化することで、カスタマーセンターのオペレーターの方、エージェントの方を支え、お客様にスピーディに対応できるような仕組みが必要です。

私たちセールスフォース・ジャパンは、この3つの観点からコンタクトセンター3.0への進化を支援しています。


先進事例から学ぶ、顧客接点改革

松井 : 国内のCX先進企業では、コンタクトセンター3.0への取り組みが進められています。ここで、コンタクトセンター3.0を具現化した事例として、株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ(以下、SPCC)代表取締役社長 新巻康彦氏に、SPCCの顧客接点改革の取り組みについて紹介していただきます。

新巻 : SPCCは、スカパーJSAT株式会社の100%子会社です。すでに二十数年、スカパーのコンタクトセンターを運営し、最近では外販事業も展開しています。

2010年当時、ベンダーにコンタクトセンター業務を委託していたSPCCは、コンタクトセンター2.0の段階にありました。さまざまな問題を抱えており、「業務構造改革」「DX推進」「CX向上(顧客接点改革)」という3つの大きな改革を重ねてきました。ここではその3つのうち、「CX向上(顧客接点改革)」の方針と取り組み内容に絞って説明します。

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○CXコンセプトの明確化と浸透

まず1つ目は「CXコンセプトの明確化と浸透」です。CX向上は一過性の取り組みではなく、継続進化させていくべきものです。そのために、まずはどのようなCXを目指すのかを定義し、組織で共有し、進めていくことが非常に重要です。

弊社のCXコンセプトは、「エフォートレス&カスタマーサクセス」。これを両立できれば、CX向上と効率化、収益性の向上を実現できると考えています。

この2つの体験価値を、顧客接点の違いやお客様の違いによって使い分けていくのですが、その背景には、お客様をしっかり理解することが必要です。「体験価値の使い分け」と「顧客理解」を組織全体で追求しています。

○現場実践知とHQ機能による共創プロセス

2つ目は、CXの磨き込みです。このプロセスを主導するのはヘッドクォーター(HQ)です。HQが現場の実践知・ノウハウ・知恵を集約し、実践しながら学習サイクルを回し、CXを磨き込んでいくことが非常に重要です。

SPCCでは、毎月すべてのコンタクトセンターの管理者が一同に集まる業務報告会を開催し、業務の報告以外にも、気づきや改善事例、HQへの提案を積極的に出してもらっています。全センターから集まっているので、学習サイクルのスピードが速まります。また、HQにトライアルセンターを併設し、PoCがいつでも機動的に行える体制を整えています。

○安易に「丸投げ」しない人財づくり

3つ目は、人財づくりです。SPCCの改革は、外部委託から脱却し、内製化していくことを重視した業務の推進を行っています。

コンタクトセンター改革には、システムが大きく関わってくることが多く、業務知識、システム知識、データ知識、BIツールのようなツールを使える人財は、非常に重要です。

2016年、スマートコンタクトセンターを立ち上げたプロジェクトでは、SIerを介さず、自社の社員が二十数社のベンダーとコミュニケーションを取りながら、プロジェクトを推進しました。非常に苦労も多かったのですが、そのプロセスでシステム人財、DX人財が多く育ちました。


次世代コンタクトセンター変革プログラム

松井 : こうした取り組みを行ってきたSPCCに、電通デジタル、NeoContactを加えた3社は、2022 年10月、コンタクトセンターをCX起点で改革する「コンタクトセンター変革プログラム」の提供を開始しました。このプログラムについて、電通デジタル 市橋敦が紹介します。

市橋 : 「次世代コンタクトセンター変革プログラム」は、3社が協力し、皆様の会社の経営から現場レベルまで、各領域のプロフェッショナルが入り込んで指導・支援し、コンタクトセンター変革を実現させる取り組みです。

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電通デジタルは、CX、DX領域における多数の実績を生かし、プロジェクトのリードを担当します。

SPCCは、同社が保有する国内最先端のコンタクトセンターの構築・運営の実績に基づき、実務レベルの知識や経験を提供し、支援・指導を行います。

NeoContactは、コンタクトセンター変革のコンサルを多数行ってきた実績を生かし、経営視点から組織改革を指導・支援します。

コンタクトセンター変革には、多数の課題がありますが、まず着手すべきことは、自社での自立自走化を進め、課題解決ができる状態を作り上げることです。全体のスケジュールは、以下の図のとおりです。

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○方針・体制づくり

方針と体制づくりでは、経営レイヤーの方に対し、方針の策定および組織の設計をサポートします。現状の課題や社会背景を正しく理解し、自社のあるべき姿とやるべきことを設定します。次に、変革の鍵を握っている「CX中核組織」の立ち上げを支援していきます。CX中核組織の運営を担う中核メンバーの育成・教育・指導を進めます。

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○体験設計・業務設計

体験設計では、顧客や従業員の体験を整理し、実現手段を設定します。業務設計では、現状を把握してKPIを設定し、業務フローやスクリプトなど実務設計を行います。

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○運用・品質の改善

運用・品質の改善では、改善のPDCAサイクルが機能する組織への変革を目指していきます。並行して、これらを回す人財の教育支援を行います。

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○進行管理・実証(PoC)

進行管理では、PMOとしてプロジェクト進行をサポートします。実証(PoC)では、再設計された運用モデルを実施し、効果の確認と評価を支援します。PoCは、既設の環境を想定していますが、別途PoC環境の提供も可能です。

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「コンタクトセンター変革プログラム」は、実務レベルに入り込んでサポートし、皆さまの本質的課題を解決するプログラムです。ご興味を持たれましたら、お気軽にお問い合わせください。

(本記事は、2022年10月に開催されたウェビナーの内容を採録し、再構成したものです)

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