2022.06.28
パナソニックの新規事業noifulを強力に推進する クイックでフレキシブルな「全方位対応力」
2022年1月、パナソニック株式会社 くらし事業本部 くらしアプライアンス社(以下、パナソニック)は、賃貸物件のオーナーおよび不動産管理会社向けパナソニック家電のサブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」を開始しました。
電通デジタルは、noifulの構想段階からパートナーとして伴走し、ローンチを経て、現在は商品開発とマーケティングを中心とした運営のご支援をしています。noifulのプロジェクトに参加した経緯、支援体制、業務内容や今後の展望について、電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門(以下、BX部門)の担当者3人に話を聞きました。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
「家電のサブスクリプション」を核に、三方良しを目指した新規事業
noifulとはどういうサービスですか?
望月: 賃貸物件のオーナーや不動産管理会社に対して、パナソニックの先進家電(冷蔵庫・洗濯機・オーブンレンジ、美顔器など)をサブスクリプションで提供するサービスです。2022年1月にパナソニックの新規事業としてローンチしました。
佐々木: noifulには「noiful ROOM」と「noiful LIFE」、2種類のサービスがあります。noiful ROOMは、賃貸物件のオーナーや不動産管理会社に、パナソニックの先進家電をアフターサービス付きのパッケージとして提供するサービス。noiful LIFEは、物件をリノベーションして、そこに家電、収納を含めた生活動線をしっかりデザインしたうえで、くらし空間を提供、更にはその物件の管理・運用まで対応するサービスです。
大豆生田: noifulは「家電のサブスクリプション」を核にして、賃貸物件オーナーや不動産管理会社には「物件価値の向上」を、物件に入居するユーザーには「持たない豊かな住まい方」という新しい価値と利便性を、家電を提供するパナソニックには、「リカーリング型の安定・高収益事業の確立」をもたらす、三方良しを目指した事業と言えます。
noifulというサービスを物件に合わせて企画し、知ってもらい、深く理解してもらう
電通デジタルはnoifulプロジェクトにはいつから関わっていますか?
望月: パナソニックが「家電のサブスク」をテーマに事業構想を練り始めた2019年から、お手伝いしていました。2022年1月にローンチして以降は、noifulチーム内で日々発生するタスクや課題の解決に、一緒に取り組むサポーターとして携わっています。
noifulプロジェクトにおける、電通デジタルのミッションを教えてください。
望月: われわれのミッションをわかりやすく言うと、noifulというサービスを「物件に合わせて企画すること」「多くの人に知ってもらうこと」「深く理解してもらうこと」です。この3つに大別して支援体制を組んでいます。物件に合わせて企画するのは「事業開発チーム」、多くの人に知ってもらうのは「デジタルマーケティングチーム」、深く理解してもらうのは「タッチポイントチーム」が担当しています。
事業開発チームの業務内容を教えてください。
佐々木: 主な業務は、賃貸物件オーナーや不動産管理会社が所有・管理する物件に対して、最適な家電の組み合わせ(パッケージ)を開発・提案することです。シミュレーションで損益分岐点を算出しながら、顧客(入居者)にとって魅力的な家電パッケージを提案できるよう開発しています。
noifulという事業が回り続けるには、種々様々にやらなければならないことが出てきます。それらをピックアップし、優先順位をつけて実施をご支援させていただくのも事業開発チームの役割です。
- 収支のシミュレーション
- 契約書関連の準備や関連法規のリサーチ
- noifulで提供する家電パッケージを掲載したフライヤーや入居者向け資料の作成の制作
- 提携企業向けの営業資料の準備
- 関連の有識者へのへのインタビュー調査
- 導入物件に合わせたパッケージ企画提案
これらを中心に、発生する課題に都度対処し、事業を運営させるために必要なあらゆることを実施しています。
タッチポイントチームの業務内容を教えてください。
大豆生田: 見込み顧客の特にデジタルのタッチポイントに関わるあらゆる業務を行っています。
私はWebサイトの要件定義から関わっており、関連会社と協力しながらワイヤーフレームの制作、実装、Webサイトの構築に取り組んできました。狙うべき顧客にどういうWebサイトを作って、どういう見せ方をしたら問い合わせまでスムーズに行くだろうか、ということを考えながら、Webサイトを分析し、改善を続けています。
Webサイトの制作に際しては、掲載物件の室内撮影にも同行し、実際に撮影もしています。360度カメラで撮影した画像に家電の画像を合成して、その画像をWebサイトに掲載するほか、裏側の CMSの情報更新や、ニュースなどの最新情報を随時更新するお手伝いもしています。
また、Webサイトの集客の進捗が悪かったら、例えば仲介業者と連携してテコ入れを行うなど、発生した課題を解決するための施策を考え、実行するのもタッチポイントチームの業務です。われわれもクライアントも一通りの知識はあるものの、不動産のプロではないので、法務部に確認をしながら動いています。noifulのマーケティングに必要なことをすべて、クライアントと一緒に汗をかいている、という状態です。
「クイックに、フレキシブルに」領域を超えて、全方位に対応する
3人とも非常に業務の範囲が広いのですが、職種名(肩書き)は何になりますか?
望月: 対外的には、私がプロジェクトマネージャー、佐々木と大豆生田がコンサルタントです。ただ、実際のところ、各人の専門性に軸足を置きつつ、全員が互いの守備範囲関係なく動いています。
通常、マーケティング支援会社は、クライアントの商品やサービスがあるところからスタートしますが、noifulプロジェクトはPMF(プロダクトマーケットフィット)を目指した市場創造型の新規事業。「家電メーカーが不動産に関するサービスを作り、たくさんの人に届けたい」からスタートし、われわれに求められているのは、これを売れる形にして、売れるまでを伴走することです。
クライアント企業様からは、ビジネスを成功させるために必要なあらゆる事象に対し、「クイックに、フレキシブルに対応してほしい」と言われています。あらかじめ領域を決めずに、全員が常に全方位にはみ出して対応し、行動することが求められる現場です。
「クイックに、フレキシブルに、対応する」というのは、具体的にはどのようなことをしてきたのでしょうか?
望月: 課題が発生する都度、必要な調査・対策を実施していきます。例えば、外部の企業とタッグを組む必要がありそうだとなれば、そのためのロングリストを作成します。他にも、家賃を決めるための参考資料が必要となれば、周辺地域にある同条件の物件数、平均賃料、価格帯ごとの物件数とその割合などの調査を行ったうえで、最適な価格を提案します。
こうしたことはコンサルティングファームでも行っていますが、電通デジタルには、調査をしたり資料を提示したりするだけでなく、集客に必要なマーケティングまでを一気通貫で行えるケイパビリティがそもそもあります。それによって、noifulが導入されたマンションのデジタル広告や、YouTuberタイアップ企画といった宣伝施策を行い、サイトの流入解析をして施策に反映させるなど専門性が必要な一連の営みをクイックに、フレキシブルに対応することができるのです。
noifulプロジェクトにおいて、大変だと感じた部分はどこですか?
望月: 明確な競合サービスが存在しない点ですね。これまで存在しなかったまったく新しい市場を開拓し、新しく作った商品で事業を展開していく、いわば真のブルーオーシャン戦略。目標にする先行サービスや市場シェアの目安がないという、PMF特有の難しさを実感しています。
現在のターゲットユーザーにしても1つの仮説でしかありません。顕在化しているユーザーだけに固執してしまうと、未知なるユーザーに価値を知ってもらう機会や、潜在的なニーズを切り拓く機会を逃してしまう可能性があります。
まったく新しい事業だからこそ、仮説を複数持ち、アジャイルにPDCAを回す。課題があればまずは打てる施策を実行してみよう、そこから何か得てみよう、次なる施策へつなげよう、というのがこのプロジェクトの基本姿勢です。クライアントからも、こうしたスタートアップ企業のような取り組み方を評価していただいています。
「構想」「実装」だけでなく、「完遂」まで伴走する
noifulプロジェクトの今後の目標を教えてください。
望月: noifulの物件数を増やすこと。かつ、物件の入居率を上げ、できるだけ多くの入居者の方に契約を更新していただくというのが、差し当たってのビジネス目標です。
また、「持たざる暮らし」という新しい文化を普及させることも、目標のひとつです。「noifulが提案するように暮らすことが『ノイフる』と呼ばれるくらいに、くらしの中に浸透していく」ことが、事業を牽引する太田雄策氏(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ハウジングアプライアンス事業推進室室長)をはじめとした事業開発メンバーの夢でもあります[1]。われわれもその理念に賛同し、伴走してまいります。
佐々木: 正式にローンチして約3カ月、オーナー/不動産管理会社と、提携先企業は増加していますが、生活者における認知度獲得はこれからです。ユーザーの受け入れポイントを探り当て、強みとして光らせることで、たくさんのユーザーに届けたいと思います。
大豆生田: 物件オーナー/不動産管理会社、居住者、そしてサービス提供者であるパナソニックが三方良しになれるようなサイクルを、どんどん回していきたいですね。
最後に、DXをベースとした新規事業開発において、電通デジタルの強みは何ですか?
望月: DXの構想やシステム導入・実装を得意とする会社はたくさんありますが、われわれBX部門では、「構想」「実装」だけでなく、その先の「完遂」まで伴走することを目標にしています。
完遂とは、新規ビジネスを開発し、軌道に乗せ、生活者に受け入れられ、顧客を増やし、事業が自走するところまでやりきることです。
電通デジタルには、事業構想からサービス開発、さらには売れるために重要なマーケティングやブランドづくり、コミュニケーションまで、事業の成功に必要な領域すべてにコミットできる人材とノウハウが揃っています。
泥臭い言い方になりますが、「クライアントの事業を成功させる」という大目標に向かって、クライアントと同じ目線で伴走し、現場で一緒に汗をかけることが、われわれの最大のアピールポイントだと思っています。
顧客基点のDXによる新規事業の創造をお考えの際は、まずわれわれにお声がけください。「顧客価値創造型DX」により、ビジネス×顧客体験×ITの全面から支援します。
脚注
- パナソニックが挑む社会課題解決にも貢献する"三方良し"のビジネスモデル". 電通デジタル.(2022年4月12日)2022年5月10日閲覧。
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