2022.06.21

AIで人の心を揺さぶるようなクリエイティブの可能性を追求したい――2021年「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」メダリスト受賞者・石川隆一に聞く

アドバンストクリエイティブセンター(ACRC)のAIクリエイティブ・エンジニア/プランナーの石川隆一が、2021年「クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞」のメダリストを受賞しました。

クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞(主催:一般社団法人日本広告業協会)は、1989年に設立されたクリエイター個人を対象にした賞。企業の課題解決を促す施策の実施を牽引し、広告会社の価値向上に貢献した優れたクリエイティブを1年間に複数生み出したクリエイターを表彰するものです。

AIクリエイティブ・エンジニア/プランナーという立場では珍しい受賞となり、受賞を記念して、ACRCが設立当初から掲げている「AIとクリエイティビティの融合」を体現するひとりである石川に、これからの「AI×クリエイティブ」について聞きました。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター AIクリエイティブ事業部

石川 隆一

AI ×クリエイティブの先見性を評価していただいた

クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリストの受賞、おめでとうございます。まずは感想をお聞かせください。

石川: 実績のある一流のクリエイターが受賞しているという印象が強く、憧れていた賞だったので、とても嬉しいです。

どのような点が評価されたのでしょうか?

石川: 今後への期待も込めて、AI ×クリエイティブの先見性ではないでしょうか。今回、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」を手掛けた山﨑博司氏がクリエイター・オブ・ザ・イヤーに選ばれたように、近年クリエイティブではデジタルの表現も評価されるようになってきていて、その波に乗れたのかもしれません。

受賞対象となったクリエイティブを教えてください。

石川: 「"名画になった"海 展」[1]「TEHAI[2]「電笑戦」[3]の3つで応募しました。

クリエイティブを制作するうえで、石川さんが心がけていることは?

石川: 「人を傷つけるような表現はしない」ということです。

AIには人間と同じような倫理観がないので、何にも囚われない自由なアウトプットができます。それが良さではありますが、そのまますべてをクリエイティブに使うのが難しいです。

たとえば「電笑戦」は、AIが人間を超える笑いを作り出せるのかを競うイベントです。ただ、AIが作るネタの中には、少し倫理的に問題のある「笑えない」ネタもあります。なぜダメなのか、人間にはすぐわかるのですが、AIにはわからない。今はまだ最後に人がふるいにかけていますが、将来的には「笑える/笑えない」の基準をAIが判断できるようにしたいです。


論文を読み、コンペに出場して技術力を高めている

石川さんの普段の業務内容を教えてください。

石川: エンジニアとクリエイティブの仕事が半々です。エンジニアの業務では、バナー広告やリスティング広告の効果を予測するAIを作ったりしています。

クリエイティブに関しては、クライアントワークのほか、ACRC内でのコンペに取り組んでいます。このコンペで社会課題を解決する企画を考えたことが、「"名画になった"海 展」や「TEHAI」につながりました。

どのようにしてAIの技術力を磨いていますか?

石川: 大事なのは最新の論文をきちんと読むこと。それに加えて、Kaggleのようなコンペに出場して、自分の技術力を確かめたり、新しい手法を試したりする形で、キャッチアップしています[4]

これってすごく大事なことで、同じことばかりをしていると技術が停滞してしまうんですね。常にさまざまなことに興味を持って、最新情報をキャッチアップできる体制をキープするよう心掛けています。


強い感情を引き起こすクリエイティブを作るには?

アイデアや発想力はどのように鍛えていますか?

石川: おもしろいクリエイティブを作るには、あらゆる事柄に興味を持つことがスタートです。そのためには、多趣味であることが大切かなと思っています。

私自身、食が好き、お酒が好き、将棋、ボードゲーム、コンピューターゲーム、サッカー観戦、野球観戦、アニメ、漫画など、かなり多趣味です。自分が「おもしろさ」に熱中することで、普遍的に人が「おもしろい」と思うポイントがわかるようになっている気がします。

「おもしろい」「感動した」のような、記憶に残る強い感情は、予想外なことが起きたときに湧き上がってくるもので、その強さは想定とのズレの大きさに比例します。

「"名画になった"海 展」では、「きれいな海」という記憶のイメージと「現実はゴミが溢れかえっている海」とのズレが強いインパクトを生み出し、印象に残るクリエイティブになりました。そういったズレを意識し、どのように作るのかを考えています。


幅広い分野の専門家とコラボできるACRCの大きな可能性

良いクリエイティブを生み出すための環境という点で、ACRCの強みはどこにありますか?

石川: 各分野の専門家が多数在籍していることです。「AIで新しいものを創る」には、常に平均点で仕事をこなせる人で構成されるチームよりも、多様な分野の尖った専門家がたくさんいるチームのほうが良いクリエイティブが作れると思っています。

幸い電通デジタルには、ACRC以外にも幅広い分野の専門家が社内にたくさんおり、連携が容易です。AIに特化したチームや会社よりも、より新しいものを生み出せる可能性に満ちています。

また、自発的に取り組みたい研究やテーマがあれば背中を押してくれる社風ですし、希望に寄り添うような社内制度も整備されています。常に自分がおもしろいと思えることにチャレンジできるので、いつもワクワクしていたいAIエンジニアにとっては理想的な環境ではないでしょうか。


人の心を揺さぶるようなクリエイティブの可能性を追求したい

石川さんの個人的な今後の目標は何でしょうか?

石川: もっとデジタル広告を盛り上げていきたいですね。デジタル広告の主流はまだダイレクトレスポンス広告で、効率や効果を上げるにはクリエイティブに「送料無料」「今ならタダ」「あと何日」のようなコピーが良い、と考える人も多いと感じています。そういうクリエイティブももちろん必要ですが、もっと人の心を揺さぶるようなクリエイティブの可能性を追求したいという思いがあります。

デジタルやデータを安易に使うと、どんどん単純化・最適化が進み、最終的には最適解のクリエイティブに収斂して、表現の幅が狭まってしまう可能性もあります。そうした状況を打開して、おもしろいもの、新しい表現で成果を生み出すのが、これからのクリエイターの役割なのではないでしょうか。

AIはまだ発展途上の領域です。過去の成果や実績に縛られず、新しい取り組みにどんどんチャレンジしていかなくてはいけません。そうしたチャレンジの先に、まだ人間もAIも見つけられていないおもしろい表現が見つけられるはずだと思っています。


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