2022.05.10

HAKONIWAを活用したPayPayキャンペーン分析事例 経済圏データの活用で何ができるのか?

近年デジタル化の一つとして、販促キャンペーンのデジタル化が進んできています。

販促キャンペーンのフローは、ユーザーにとっての利便性からデジタル化が定着してきていますが、昨今重要視されているデータ活用という部分では、まだまだ購買データの取得や効果検証分析が難しいケースが多く、課題となっています。

ヤフーは2020年に、販促ソリューションであるYahoo!セールスプロモーション PayPayギフト(以下、PayPayギフト)の提供を開始しました。このソリューションによりキャンペーンのPayPay決済による購買データを活用することができるようになりました。

また、ヤフーと電通/電通デジタルは2019年に「HAKONIWA」という共同分析プロジェクトを立ち上げ、さまざまなデータや分析手法を使ったソリューションを開発しています。このHAKONIWAの分析ソリューションを使い、購買データとYahoo! JAPANのデータを掛け合わせた分析をすることで、販促効果の可視化や購買者像の分析ができるようになってきています。

販促キャンペーンにおいて、PayPayギフトとHAKONIWAを使って分析するとどのようなことがわかるのか、2つの事例をもとに、電通デジタルの新川祥史に解説してもらいました。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

株式会社電通デジタル

新川祥史

販促プラットフォームを活用したデジタル販促

――販促施策には、現在はどのような課題がありますか?

新川 販促の領域は本格的なデジタル化がまだ始まったばかりです。業務レベルでの具体的な課題を挙げればキリがないのですが、例えば以下のような課題があります。

  • 設計する要素が多く、手間がかかる
  • デジタル化しにくい「店頭」が含まれ、データも取得しづらい
  • 効果測定や要因の特定がしづらい
  • 事例や知見の蓄積が体系的になされていない
  • 結果やデータの活用が難しく、PDCAが回しづらい

特に効果測定やデータ活用の課題に対する1つの解が、販促プラットフォームを使ったデジタル販促です。販促プラットフォームを活用することで、「キャンペーンの実施」「購買データの取得」「データの蓄積」「データの分析」「データの活用/配信」のサイクルをつなげて回すことができるようになります。

――「販促プラットフォーム」とはどういったサービスを指すのでしょうか?

新川 明確に定義されているわけではありませんが、販促キャンペーンを実施するための機能が仕組み化されているプラットフォームのことです。大手企業で言えば、PayPay、LINE、楽天などが代表的です。販促プラットフォームを活用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 一定の型化がされているため、設計の手間やキャンペーン費用が圧縮できる
  • キャンペーン結果の蓄積が容易
  • 経済圏のユーザーにアプローチできる
  • 経済圏データと掛け合わせた分析ができる
  • 広告配信面を使い、ユーザーへの再アプローチができる

社会全体のデジタル化が進む中で、ユーザー利便性の観点からも販促のデジタル化は必須であり、データの活用も欠かせません。

現在、電通/電通デジタルでは、ヤフーとの共同分析プロジェクト「HAKONIWA」を活用して、PayPayのデジタル販促におけるデータ活用スキームを開発しています。

デプスインタビューは、登録企業を規模(大/小)と活用ニーズ(発注/受注)で4象限に分け、各象限から1社ずつ、休眠(登録後何も行動を起こしていない)ユーザーから1社、計5企業に対して各1回、60分程度のインタビューを実践しました。選定企業は各象限内で特徴的ではない一般的な企業にすることで、n=1の意見が特殊な回答にならないよう留意しました。

ヤフーと電通/電通デジタルの共同分析プロジェクト「HAKONIWA」

――HAKONIWAとはどのようなものですか?

新川 HAKONIWAは、2019年に発足したヤフーと電通/電通デジタルの共同分析プロジェクトの名称であり、その分析基盤やソリューションのことを指します。

HAKONIWA環境には広告データだけでなく、検索データやYahoo!ショッピングの購買データなどヤフーが展開している多数のサービスデータがあるため、ユーザー行動の傾向を分析することが可能です。これに電通/電通デジタルのプランニング手法を掛け合わせることで、クライアントの課題に応じたカスタムな分析を実行しています。

現在、電通/電通デジタルでは、HAKONIWAを用いて様々なテーマでの分析をしていますが、そのうちの1つが、「PayPayギフトキャンペーンで取得した購買者/参加者データの分析と活用」です。

Yahoo! JAPANのデータを使った分析に加えて、電通のPeople Driven Marketing®(以下、PDM)データも掛け合わせて、さらに詳細な分析ができます。

キャンペーンの新規率と継続購買の可視化

――HAKONIWAを使った具体的な事例にはどのようなものがありますか?

新川 ヤフーが保有するデータの豊富さと、カスタムな分析が可能という有用性から、多種多様な案件への活用をしていますが、今回は販促キャンペーンにおける代表的な2つの事例を紹介します。

1つ目は、大手食品メーカーによるPayPayギフト 決済連動型キャンペーンです。コンビニで商品(菓子)を買った人は、PayPayポイントがもらえるというキャンペーンです。

――キャンペーンにはどのような成果がありましたか?

新川 応募者の購買個数は550%の純増という、キャンペーンによる直接的な購買増加もあったのですが、その内訳を新規ユーザーと既存ユーザーに分けて分析したところ、エントリーしたユーザーのうち新規層は90%(既存層は10%)、購入したユーザーのうち新規層は65%(既存層は35%)でした。このように新規/既存の割合を可視化できたことは成果の1つです。

また、キャンペーン後のユーザー動向も分析しました。キャンペーンが終了してからも、応募者の購買個数が120%純増していたことがデータによって明らかになり、キャンペーンは終了後にもその効果が持続していることが可視化できました。その純増個数をさらに深掘りして分析した結果、94%が新規層による購買でした。

分析結果から新規層の取り込みに大きな効果があったことが実際の購買データによって可視化でき、次回の方針に活用できます。

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複数ドラッグストア横断でPayPayポイント付与キャンペーン。ユーザー像を詳細に可視化

――もう1つの事例はどのようなキャンペーンでしたか?

新川 ドラッグストアにてPayPay決済で商品(健康食品)を購入すると、PayPayポイントが付与されるというPayPayギフト 決済連動型キャンペーンです。複数のドラッグストアチェーン横断で実施し、エントリー不要にすることでユーザーにとっても参加しやすい設計にしました。

――キャンペーンにはどのような成果がありましたか?

新川 複数のドラッグチェーンを対象に実施して購買サンプル数を担保できたことで、Yahoo! JAPANのデータを掛け合わせて、より詳細な購買者分析が可能になりました。また、流通ごとの購買データを収集できたことで、各流通での購買特性も見ることができました。

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キャンペーン告知には、Yahoo! JAPANの興味関心、購買、検索等のデータをフル活用してターゲットセグメントを10以上設計し、メッセージ(広告の告知文)も10パターン以上作成しました。このセグメントとメッセージを掛け合わせて、クリック率やWebコンバージョン等の中間KPIではなく、実際の購買率を検証したことで、どのセグメントにどのメッセージを届けることが実購買に対して最適なのかが明らかになりました。

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流通横断/流通個別に可視化されたユーザー像は、クライアントの広告宣伝担当だけでなく、営業やさらにその先の流通にもフィードバックして活用いただくことができると思います。

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こうした成果は、次回以降のPayPayギフトキャンペーンで活用することはもちろん、データがつながらないPayPay以外のマーケティングや販促施策の設計にも、ここで得た示唆が利用できます。

キャンペーン成果と事後活用の両方を目的とする

――紹介していただいた2つの事例を踏まえて、販促プラットフォームを活用したデジタル販促を成功させるためのポイントは?

新川 キャンペーンの成果のみを目指すだけでも、事後のデータ活用のみを目指すだけでもなく、その両方を目的とすることです。キャンペーンの成果が良くても、その要因が分からないと次回につながりません。一方で、データを取得して分析をメインの目的とすると、店頭で良好な施策連携ができず、キャンペーンの成果が伸び悩むことが多いです。ただ一口に言っていますが、これは簡単に実現できることではないと思っています。

もう1つは、デジタル化やデータを使って、ユーザー体験をより向上させることです。キャンペーンは魅力的なインセンティブ等があったとしても、参加ハードルが高いとユーザーが離脱してしまうことが多いと思います。例えばエントリーやクーポン提示等のハードルをいっさい設けず、PayPayで支払うだけという参加方法もそうですし、データでよりユーザーを理解して次回の設計につなげることが重要です。

――2021年3月にZホールディングスとLINEの経営統合が完了しました。販促プラットフォームを活用したデジタル販促にはどのような影響があると考えていますか?

新川 当然ながら経済圏内でヤフー、PayPayとLINEの連携が期待されます。またこの連携を実現するための適切なユーザー同意の取得や、ユーザー体験を向上させるサービス展開も進んでいくのではないでしょうか。

例えば、PayPayキャンペーンでの購買者/応募者をYahoo! JAPANのデータで分析し、同意が取得できているユーザーに関してはヤフーとPayPayの面へ配信に加えてLINEで個別アプローチも行うということも可能になるかもしれません。1つのプラットフォームの中で、広告や販促だけでなく、LTVを高めていくCRMコミュニケーションまで可能になり、購買起点での施策が拡大していくのではないでしょうか。

IDでつながったヤフー、PayPay、LINEを1つのプラットフォームとして捉え、その中の行動を体系的に蓄積する。過去の多数の事例を分析すれば、これまで属人的な知見の蓄積に留まりがちであった販促キャンペーンが、過去の結果やデータに基づいて、よりユーザーを動かすことができるキャンペーン設計が可能になると考えています。

われわれはプラットフォーマーとともに、収集/蓄積したデータの分析、打ち手も含めたソリューション開発協業を、中長期を見据えて取り組みたいと思っています。

――最後に、経済圏データを活用したデジタル販促キャンペーンの採用/実施に興味があるクライアント担当者にメッセージをお願いします。

新川 事例に挙げさせていただいたように、販促のデジタル化や経済圏データ活用は確実に進んできています。まだ業界としても開発中の段階のため、思い描いたとおりにデータ活用する理想の形まではたどり着いていないかもしれませんが、結果の蓄積と購買データ活用は開始している状況であり、今後は購買データを軸にしたマーケティングや販促のPDCAスキームやCRMへの連携がより発展していくと予想されます。

電通/電通デジタルは、これまでプラットフォーマーとともに蓄積してきたソリューションや知見を使いつつ、さらに進化させていくことで、販促領域の社会変化への対応や変革に向けて並走していきたいと思います。

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