2022.11.17

顧客と直接つながる時代に求められるCDPのあるべき姿

電通デジタルが提案する顧客エンゲージメントの高め方

デジタルトランスフォーメーション(DX)における最大の目標がCX(Customer Experience:顧客体験)の向上である。そのために顧客に関するデータを統合するCDP(Customer Data Platform:顧客情報基盤)を構築・整備する動きが高まっている。しかし、電通デジタルのアカウントイノベーション部門でコンサルタントを務める高橋 司 氏は「単にデータを収集・統合しただけでは、CX向上に寄与するCDPにはならない」と指摘する。CXを高めるためには、どんな取り組みが重要で、どのようなCDPが求められるのかについて、高橋氏に聞いた。

※「デジタルクロス」(2022年10月20日公開)に掲載された広告を転載

 CX(Customer Experience:顧客体験)を高めることへの関心が、従来に増して高まっている。その理由を、電通デジタル アカウントイノベーション部門 アカウントディベロップメント部 コンサルタントの高橋 司 氏は、次のように説明する。

 「コロナ禍での対面販売の制限や回避もあり、消費者の購買行動はオンライン中心へと急激にシフトしたためです。そのことは同時に、企業が顧客に関する行動データを大量に取得できるようにもしました。結果、マーケティング活動も、顧客1人ひとりの嗜好やタイミングなどに応じて最適な情報を提供したいというニーズが、これまでになく高まっています。リアルな店舗を含めて、メールやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など複数のチャネルを使った双方向の関係を作り出し顧客に良質な購買体験を提供することが企業の生命線になりつつあるのです」


メーカー自身によるブランディング強化が新たなCXを求める

 CX向上への関心が高まる、もう1つの理由として高橋氏は、「購買行動のオンラインシフトによりメーカー自身による直販ビジネスの立ち上げやブランディング活動の強化があります」と指摘する。具体的には、自動車メーカーが、クルマを月額利用料型で提供するサブスクリプション(購読型)サービスを展開したり、衣料メーカーが直販専用ブランドを立ち上げ自社のWebサイトでブランドイメージや世界観を発信したりするなどだ。そこでは、「ブランドへの共感を創出し、顧客との新たな関係やコミュニティを作るのが狙い」(高橋氏)になる(図1)。

図1:メーカーと小売店/販売代理店の間で顧客との新たな関係構築が模索されている
Zoom

 オンラインシフトが進んだとはいえ、消費財の購買行動の中心はリアルな店舗である。CXを高めるための顧客接点では、小売業の影響力の大きさは変わらない。小売業自身、スマートフォン用アプリケーションを開発・提供するなどで顧客との関係強化に取り組むほか、低価格あるいは健康志向などをうたうプライベートブランド(PB)商品の開発に乗り出すなどメーカー的な側面を強めつつある。「メーカーと小売業者が顧客データや購買データを共有する動きもあるものの、CXを高めるためにメーカー自らが顧客データを取得し、商品開発やブランディングに活用する動きが強まるのは間違いありません」と語る。

 さらに高橋氏は、「世の中のSDGs(持続可能な開発目標)の浸透を受け、サスティナビリティ(持続可能性)を考慮した、ものづくりが求められるなかで、メーカーによるブランディング活動は、ますます重要になってきます」とも言う。

 例えば、米国のあるアパレルブランドは、これまでも自然環境の保護・保全に向けた募金活動などを打ち出したブランディングを展開してきた。それが最近は、「商品を、より長く愛用してもらうためのメンテナンス情報を提供したり、リサイクル商品の環境負荷の低さを訴えると同時に回収活動への参加を促したりと、商品を購入した後の顧客との継続的な関係構築に力を入れてきています」(高橋氏)

 すなわち、これまでのマーケティング活動が、顧客が商品を購入するまでに焦点が当たっていたのに対し、これからのマーケティング活動では、「ブランド認知から検討、購入を経て、その商品を使い、メンテナンス・廃棄し、さらに再生品を買い替えるまで、いかに関係性をつなげていくか。商品の購買には直結しない情報の提供を含め、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を高めるかを強く意識する必要があります」と高橋氏は強調する。


顧客に向けた施策の内容がCDPの設計図になる

 購買行動のオンライン化や、メーカーと小売業者それぞれのブランディング強化などを背景に、各社が本格化させているのが顧客データを蓄積・分析するためのCDP(Customer Data Platform:顧客情報基盤)の構築・整備である。顧客関連データに関しては、「世界的に個人情報やプライバシーを保護するための仕組みを整備する動きが加速しており、他社が保有するデータに頼ることが難しくなってきているだけに、自社で顧客データを収集・分析するためのCDPはマーケティング活動の“要”ともいうべき存在になってきています」(高橋氏)

 にも関わらず、「CX向上という本来の目的達成に向けて十分に機能していないCDPが少なくないのが実状です」と高橋氏は指摘する。「本来であれば各社が、提供したいCXを軸にCDPおよび周辺の仕組みを構築・運用しなければならないのに、それができていない状況が散見されるのです」(同)

 CDPが十分に機能を発揮しない最大の理由は、「データを何に、どう使うのかを具体的に落とし込めないままに、ツールありきでCDPの実装が目的化してしまうことがあります」と高橋氏は指摘する。「とにかくデータを集めれば顧客が見えるというのは大きな間違いです。まずは自社が提供したいCXをデザインし、そのためにどんな活動を実施するのか。その活動に対し、顧客とのエンゲージメントを高めるためには何を分析し、どんなデータを集めるべきかを考えなければなりません」(同)

 例えば、先の米アパレルブランドではCDPに、顧客ごとの購入履歴はもとより、メルマガへの反応、実際に読んだ記事、メンテナンスサービスの利用回数、同ブランド主催のイベントへの参加回数なども取り込んでいるという。「従来、顧客ロイヤルティを測るランク付けでは、購買金額が指標でした。しかし、より長期の顧客エンゲージメントを考えれば、自社にとっての『本当の顧客』をとらえるためには、必要なデータや、それを取得するための施策を含めて設計する必要があるのです」と高橋氏は強調する。

 そうした考えの元、電通デジタルではCDPの構築に際し、CXや顧客エンゲージメントに関するコンサルティングから戦略の設計、実際の広告施策、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)/CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムとの連携まで、周辺施策を含めた実行策全般を支援する(図2)。個人情報の取り扱いに対し顧客の同意状況を管理するCMP(Contents Management Platform:同意管理基盤)連携にも対応する。

図2:マーケティング施策側から使用用途を想定したCDPの構築など電通デジタルが提供するサービスの範囲
Zoom

 CDPを軸に、その前後の施策を含めて支援する理由を高橋氏は、「CDPの構築では、マーケティング施策を実施するためのデータ活用を可能にするための設計が不可欠です。そのためには、マーケティング部門が実行したい施策から逆算し、必要なデータを収集・統合する仕組みを決めるほうが効果的です」と説明する。 さらに高橋氏は、「世の中のSDGs(持続可能な開発目標)の浸透を受け、サスティナビリティ(持続可能性)を考慮した、ものづくりが求められるなかで、メーカーによるブランディング活動は、ますます重要になってきます」とも言う。

 例えば、米国のあるアパレルブランドは、これまでも自然環境の保護・保全に向けた募金活動などを打ち出したブランディングを展開してきた。それが最近は、「商品を、より長く愛用してもらうためのメンテナンス情報を提供したり、リサイクル商品の環境負荷の低さを訴えると同時に回収活動への参加を促したりと、商品を購入した後の顧客との継続的な関係構築に力を入れてきています」(高橋氏)

 すなわち、これまでのマーケティング活動が、顧客が商品を購入するまでに焦点が当たっていたのに対し、これからのマーケティング活動では、「ブランド認知から検討、購入を経て、その商品を使い、メンテナンス・廃棄し、さらに再生品を買い替えるまで、いかに関係性をつなげていくか。商品の購買には直結しない情報の提供を含め、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を高めるかを強く意識する必要があります」と高橋氏は強調する。


CX向上に取り組む企業の課題を解決できるパートナー企業に

 CX向上に寄与するCDPの実現を阻害する別の要因として高橋氏は、「強力な推進役がいないことと、部門間連携ができていないこと」を指摘する。CDPの構築には、「社内の関係部門をまたいだ業務設計が不可欠であり、各部門が個別に保管しがちなデータを統合する必要がある」(同)からだ。

 欧米では強力な推進役をCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)が担うことも多い。日本でも同等の決済権を持つ人が先頭に立つケースも出始めてもいる。高橋氏は、「たとえ、そうした役割の人が不在であっても、マーケティングの責任者が役員を説得しつつ、情報システム部門に実行部隊としての参画をうながし、施策と必要なデータを紐付けていけば、有効なCDPを構築・運用できるはずです」とアドバイスする。

 「すでに消費はモノからコトへと変わってきています。多くの企業が、そのことに気付き、CXを軸にした新しいビジネスモデルの構築に取り組もうとしています。電通デジタルは今後も、マーケティングや広告の領域だけでなく、事業計画を練る経営層とともにコミュニケーションを図りながら、顧客エンゲージメントを高めたい企業にとってのパートナーとしての役割を果たしていきます」と高橋氏は力を込める。 例えば、米国のあるアパレルブランドは、これまでも自然環境の保護・保全に向けた募金活動などを打ち出したブランディングを展開してきた。それが最近は、「商品を、より長く愛用してもらうためのメンテナンス情報を提供したり、リサイクル商品の環境負荷の低さを訴えると同時に回収活動への参加を促したりと、商品を購入した後の顧客との継続的な関係構築に力を入れてきています」(高橋氏)

 すなわち、これまでのマーケティング活動が、顧客が商品を購入するまでに焦点が当たっていたのに対し、これからのマーケティング活動では、「ブランド認知から検討、購入を経て、その商品を使い、メンテナンス・廃棄し、さらに再生品を買い替えるまで、いかに関係性をつなげていくか。商品の購買には直結しない情報の提供を含め、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を高めるかを強く意識する必要があります」と高橋氏は強調する。

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