2022.11.10

データドリブンマーケティングを実現するデータ分析プラットフォームを構築

ベビー・キッズ向けギフトブランド「MARLMARL(マールマール)」を展開するYom(ヨム)。データドリブンマーケティングを推進するべく、電通デジタルと共に、データ分析プラットフォーム「Yomポータル」を構築した。Yomのフィロソフィーを深く理解し、全体最適を目指したシステム開発の取り組みを紹介していく。 

「日経ビジネス電子版Special」(2022年10月27日公開)に掲載された広告を転載
禁無断転載©日経BP 

部分最適から全体最適へ顧客目線のシナリオを設計

——Yomがデータドリブンマーケティングの推進に至った経緯について、貴社の事業内容も含め教えてください。

Yom・深澤和弥氏(以下、深澤) 私たちは「MARLMARL」ブランドを通じて、ベビー・キッズ向けのギフト市場に質の高い情報やサービスを提供している会社です。「子育てにワクワクを!」というパーパスを掲げており、大変な子育ての中でも、少しでも楽しめるような、幸せな気持ちを醸成してあげたいと考えながら事業を進めています。

 ただかわいいだけでなく、どうすれば子育てがもっと楽しくなるかを見つけ、それを解決する機能をデザインに乗せるものづくりが、私たちの製品の特徴と言えるでしょう。 

Yomでは、スタイやお食事エプロンなどを中心とした出産祝いのギフトブランド「MARLMARL」を展開。ブランドの世界観・商品を通じて、子供が生まれたときの幸せな気持ちやワクワクを提供している
Zoom

 データドリブンマーケティングに興味を持ったのは、2019年に中国に行った体験が大きいです。アリババに約3000億円で買収された銀泰百貨店が、テクノロジーによってどう変化したのか見たかったのです。人々の活力にも圧倒されましたが、ARの鏡で化粧品を試せたり、顔認証だけで入店できたりするなど、日本との大きな差を感じて刺激を受けました。

 またちょうどそのころ、「米投資会社がD2CブランドをM&Aする6つの条件」という記事を拝見し、その中に「顧客のデータを直接取得でき、AIによって長期改善が見込める」というものがありました。6つの条件の中で、これだけが我々はできていないと思ったのです。これこそが、未来に向けて成長するための絶対条件だと考えました。

——データドリブンマーケティングを進めるにあたって、電通デジタルをパートナーに選ばれました。その経緯を教えてください。

深澤 これまでは、そのときそのときの課題に対し、最適なソリューションを見つけて対応してきたこともあって、いつの間にかシステムが膨大になり部分最適になっていました。これを全体最適にしなければいけません。数社と話をさせていただく中で、私たちの話を深く理解してくれたのが電通デジタルでした。データへの高いリテラシーがありながらも、我々に目線を合わせたシナリオを設計し、全体の構想から要件定義、開発に至るまで一気通貫で見てくれるに違いないと確信しました。

深澤 和弥氏
株式会社Yom 代表取締役
文化服装学院卒業後、小売企業やメーカーにてMDとしての経験を経て、2012年にYomを創業。理想のアパレル業態を目指し、ベビー・キッズ向けギフトブランド「MARLMARL」を立ち上げる。現在では、他業種のブランド事業も展開。ペアレンツ向け雑貨ブランド「MATO by MARLMARL」やベビー・キッズ向けフォトスタジオ「STUDIO MARLMARL」、フラワー事業「CADO MARLMARL」などを手掛ける。

大木 我々のクライアント企業様からいただく声で多いのは、人間中心のマーケティングを志向していく上で、データをハブとした組織づくりの課題意識です。とある打ち合わせでは、「全員が腹落ちするマーケティングの文化づくりをしたい」というコメントがありました。「モノからコト」へと一般的に言われている中、現場がモノ売りの発想から抜けるのはそう簡単ではありません。電通デジタルでは、データドリブン環境を構築し分析からビジネスの可視化ができる方と、事業に貢献する戦略を描ける方が正しく活躍できるマーケティング組織作りのお手伝いができないかと日々考えています。

恩藏 アメリカのビジネススクールの博士コースでは、心理学や社会学をベースにマーケティングを学ぶのか、機械学習やAIなどの数学や経済学をベースにマーケティングを学ぶのかで、コースが大きく分かれています。この両方ができれば理想ですが、最先端の研究活動として専門性を追求するとなると、特化せざるを得ないのです。では、日本はどうなっているかというと、明確に分かれていない。守備範囲が広いことは悪くはありませんが、専門性が低いと先端部分の競争でどうしても遅れてしまう。ビジネスの世界でも同じようなことが起きているようです。企業におけるAIの導入状況を調べたある調査で、主要7カ国の中で日本が最下位だったのはショックでした。我々は本当に危機感を持たなければならないと思います。

——こうしたYomの課題や目標に対して、電通デジタルではどのようなアプローチを取ったのでしょうか。

電通デジタル・高木浩氏(以下、高木) 最初に、どんなデータやシステムがあるのか、全体の棚卸しを行いました。その中で、目の前で困っている課題をいくつか絞り、優先的に対応するものを議論して決めていきました。例えば、在庫管理データを見える化し、他店舗に電話する必要をなくすといったものです。社員の皆さんにも、その効果を実感してもらえたと思います。

電通デジタル・黒田正臣氏(以下、黒田) システム面では、これまで散らばっていたデータをどう取りまとめていくかが課題でした。デジタル会員証の導入をお願いしたところ、すぐに対応いただき、ECと店舗の顧客データのひも付けができるようになったのは大きかったですね。

 またソリューションの選定においても、データの中身や量、社員の皆さんの負荷をいかに下げるかを考慮し、最適なものを提案させていただきました。


3つのステップでデータ分析プラットフォームを構築

——データドリブンマーケティングの基幹システム「Yomポータル」を構築する上で、どのようなことに注力されたのでしょうか。

黒田 一気に施策を進めるのは難しいため、3つのステップに分けて行うことにしました。ステップ1は「情報の収集とデータの可視化」です。まず、データを集めるCDP(Customer Data Platform)を入れた後、「顧客ダッシュボード」「在庫ダッシュボード」「マーケティング効果ダッシュボード」「売上ダッシュボード」の4軸で可視化しました。

 「顧客ダッシュボード」では、ECと店舗の顧客データを統合し一元的に確認できるようにしました。また、「在庫ダッシュボード」は、倉庫や他店舗の在庫数を確認でき、業務の効率化を実現。「マーケティング効果ダッシュボード」では、会員数の推移の他、ECのデータやSNSのデータを可視化し、マーケティング施策のPDCAを回してもらう材料として活用いただいています。そして、最後の「売上ダッシュボード」では、全体の売上はもちろんのこと、店舗別、商品別、ブランド別などいろいろな切り口で、売上を確認できるようになっています。これらは、今後のYom様全体の戦略を立てる上で、非常に重要なデータとなってくるでしょう。

 次のステップ2では、「コミュニケーション施策の効率化・最大化」。今まさに、ここの要件定義を進めており、現状のYom様のコミュニケーション施策やKPIを整理し、その優先度をつけているところです。ステップ1で可視化したデータを基に、各施策のセグメントボリュームや実現可能性なども考慮し、最大の効果を出すべく検討しています。リピート率をいかに上げるか、デジタル会員をどう増やしていくかなどの施策に重点を置いて進めていく予定です。

黒田 正臣
株式会社電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門 デジタルインテグレーション事業部 プラットフォームインテグレーショングループ グループマネージャー
大手外資系SIerにて、システム開発プロジェクトのプロジェクト管理業務やコンサルティング業務に従事。要件定義から設計、開発、テスト、保守まで全フェーズを経験し、プログラム開発からインフラまで技術的な部分の経験も豊富。2019年に電通デジタルに入社し、現在は、デジタルマーケティング業務に関わるコンサルタント業に従事している。

高木 浩
株式会社電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門 カスタマーサクセス第2事業部
グランドデザイン第2グループ グループマネージャー
通信会社、コンサルティング会社等を経て、電通デジタルに入社。航空業界、電機メーカー、金融機関、公的機関等の幅広い業界へのクラウド基盤の戦略立案、設計、構築、運用とバリューチェーンの川上から川下まで様々な業務に従事。現在はデジタルマーケティング戦略の立案や導入支援、データを中心とした基盤全体の最適化、アーキテクチャ検討を行う。

——ここまでの取り組みにおいて、電通デジタルの強みを発揮する上でも、どのようなことを意識していたのでしょうか。

高木 絵に描いた餅にならないよう、Yomの皆さんが実行可能な形にしなければならないというのは強く意識しました。ただツールを導入すればいいという話ではなく、やる・やらないを明確にして全体をうまくカスタマイズできたと思います。

 我々は、Yom様のフィロソフィーをかなり読み込み、どうすれば価値が出せるのか、どうすればお役に立てるのかをすごく考えましたね。 

——プロジェクトを進める中で、印象的だったエピソードはありますか。

深澤 今回のプロジェクトでは、私も要件定義に参加し、多くの議論を重ねてきました。その中で、電通デジタルはいつも目的を明確にし、我々に意識を合わせた提案をしてくれました。

 今、デジタル会員向け施策の要件定義を進めているのですが、当初は、マーケティングオートメーションまで含めて考えていました。しかし、デジタル会員証ができてから1年、今の会員数でどのくらいの効果が出るのか、様々なシナリオを考えてもらったところ、あまりいい結論に至らなかったのです。そこで、マーケティングオートメーションを1年延期してほしいとお話ししました。

 すると、電通デジタルはここで終わりにせず、未来の自動化の効果を最大限に発揮するための、手動配信でできるシナリオ設計を持ってきてくれたのです。延期をマイナスではなくプラスとして受け取れるような提案で、すごく助かりました。

高木このタイミングでやるべきことは何かを一緒に考えていく中で、チーム内では将来につなげられるよう前向きに捉えていこうという話をしていました。こう言っていただけるとうれしいですね。


継続的なデータ分析で新たな価値の創出を目指す

——現在、ステップ2まで進められていますが、今後の取り組みであるステップ3について教えてください。 

高木 ステップ3は「分析や購買予測、データに基づく商品・サービス企画の展開」です。今後、データがたまってくる中で、目に見えない変化をデータから把握し、戦略の先回りをしたり、顧客に変化が起きたときに、それが本当なのかデータで確認したりするということが起きると思います。

 まだ具体的には言えませんが、このステップ3が実現することで、Yom様はデータ分析を生かした商品開発やサービス開発ができる、より強い会社になっていくと考えています。

黒田 データを集めて機械学習にかけることで、顧客の何かしらのインサイトが得られるようになると思います。そして、そこから新しい施策を打っていく。どんなことが実現できるのか、また一緒に考えていきたいですね。

全体を3つのステップに分け、Yomポータルの構築を推進。ステップ1は、顧客データの統合、データの可視化。現在進行中のステップ2では、データ分析環境の構築、データの有効活用。そして、ステップ3では今後、データ分析の高度化を目指していくという
Zoom

——今後の展望についてお聞かせください。

深澤 ステップ3で期待しているのは、まずは、需要予測です。今は、製品の発注量や在庫数をYom独自のロジックを作って決めていますが、これが正解かは誰も判断できていません。この需要予測の精度が上がれば、経営がだいぶ楽になるだろうと期待しています。

 また、その先の新しいプロダクト作りや価値の創出においては、アパレル事業会社としての知見が生きてくると思っています。データを分析する人と、その分析を基にアウトプットする人が掛け合わさることで、本当の価値が生まれてくる。これを電通デジタルと一緒に実現していきたいですね。

 現在、我々はギフトに特化していますが、今後はスキンケアなど、お客様とのタッチポイントを増やせる商材を開発しようと考えています。新しいマーケットに飛び込んでいくことになるため、今後ともデータ分析の面で、ぜひご協力をお願いできればと思っています。

高木 需要予測や新規ビジネス創出などのDXのサポートは今後も継続しながらも、メタバースやWeb3といった新しいテクノロジーについても、アドバイスができればと思っています。

 今回のYom様のように、全体を最適化するようなシステムの構築には、リーダーの強い意志が必要です。やり切る意志がないと、プロジェクトが途中で終わってしまい、誰も幸せにならないというケースも多々あります。

 ビジネスを理解した上で、統合的なシステム開発の提案をできるのが我々の強みだと思っていますので、一緒に考えてくれる人が欲しいという経営者の方がいれば、ぜひお声がけいただければと思います。

黒田 こうしたマーケティングのDXを進める上では、継続的にやっていくことが非常に大切です。そのためには、システム人材とマーケティング人材の両方が必要になってくると思います。その足りない部分を我々が一緒に伴走していくことで、お互いの価値をより高められるようにしていきたいです。

PROFILE

プロフィール

この記事・サービスに関するお問い合わせはこちらから

EVENT & SEMINAR

イベント&セミナー

ご案内

FOR MORE INFO

資料ダウンロード

電通デジタルが提供するホワイトペーパーや調査資料をダウンロードいただけます

メールマガジン登録

電通デジタルのセミナー開催情報、最新ソリューション情報をお届けします

お問い合わせ

電通デジタルへの各種お問い合わせはこちらからどうぞ