2022.09.15

商品の強みを伝えるための基本のマーケティングフレームワークとは?

どのようなすばらしい商品やサービスも、正しいマーケティングコミュニケーションなくしては市場に伝わりません。逆にマーケティングコミュニケーションがうまくいけば、自社の強みを伝えることができ、さらなる成長につながります。
自社のソリューションのターゲットの定め方、ターゲットに対してどのような提供価値を定義し、伝えるのかについて、電通デジタル 住岡洋光が解説します。

マーケティング課題の解決には、適切なコミュニケーションが必要

どのような企業であれ、事業を成長させていくにあたり、一番の課題となるのが「営業・販売」です。

中小企業庁の調査[1]でも、創業期から安定・拡大期に至る各段階で、40~60%程度が「営業・販売ができる人材」を必要としていると回答しており、重要な課題であることがうかがえます。

また、同じ調査で販路拡大における課題を尋ねたところ、「市場・顧客ニーズの把握」「新規顧客へのアプローチ」など、マーケティングに関する課題が多く挙がっています。

営業・販売を含めたマーケティングの課題を解決するには、適切なコミュニケーションが必要です。

良いコミュニケーションとはどのようなものか、自動車を例に考えてみましょう。

自動車の価値は「A地点からB地点まで移動できること」です。移動するだけならば軽自動車でも十分ですが、なぜ高額な高級車を買う人がいるのでしょうか?

高級車に対して、ステータス、高品質、安全性、快適性、アフターサービスの充実などの価値を感じる人もいます。つまり、「移動できること」という価値に、個別のブランドが持つプラスアルファの価値が加わっているのです。コミュニケーションのヒントはここにあります。

「人々は0.25インチのドリルが欲しいのではない。0.25インチの穴が欲しいのだ」というハーバード大学のTheodore Levitt教授の有名な言葉があります[2]。生活者はドリルではなく、穴が掘れることに価値を感じているということです。

良いコミュニケーションをとるには、顧客が真に求めている価値にフォーカスを当てる必要があります。そのためにはマーケティングコミュニケーションフレームワークの活用が効果的です。

フレームワークの構成要素は、「WHO(誰に)」「WHAT(何を)」「HOW(どのように)」の3つ。本記事では「WHO(誰に)」と「WHAT(何を)」の2つに絞って説明します。

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WHO:戦略的ターゲットを絞り込む

「WHO(誰に)」は、経営資源を投下する目標となる生活者です。「すべての生活者」から「戦略的ターゲット(ST:Strategic Target)」を絞り込み、STのうち購買の可能性が高い生活者を「もっとも可能性のあるターゲット(PP:Prime Prospect)」として設定します。

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STは、ブランドがリソースを投下する最も大きなくくりです。マスマーケティングのターゲットとほぼ等しく、長期的に定義します。頻繁に変わることはありません。

STを設定するときの注意点は、目標に対して小さすぎないこと。STとST以外の違いが何なのかを明確にしておくこと。そして、「20代」「女性」などのデモグラフィックではなく、ニーズ(○○がしたい、○○が欲しい)で定義することです。

PPは、マーケティング予算を集中投下するくくりです。目的により変わるので、STとは異なり、複数あっても構いません。マスマーケティングに加えて、よりターゲットを絞り込んだマーケティング施策が組まれます。このターゲット設定を活かすには、「インサイト」と呼ばれる深い生活者理解が必要です。

前職のテーマパークでは、私が在籍していたときは、STを「テーマパークが好きな人」、その時々で変わるPPは「4~11歳の子どもがいるファミリー」と設定していました。


感情や意識を動かすのはインサイト

先ほど言及した「インサイト」について、少し補足します。

インサイトと似たような言葉に、「ニーズ(needs)」と「ウォンツ(wants)」があります。

「ニーズ」とは、「生活上必要なある充足状況が奪われている状態」を指します。「ウォンツ」とは「そのニーズを満たす(特定の)ものが欲しいという欲望」です。

具体的な例では、「ニーズ」は「喉が渇いた」、「ウォンツ」は「ジュースが飲みたい」となります。

マーケティングコミュニケーションとは、「ニーズ」がある人に「ジュースが飲みたい」と思わせる活動です。「ジュースが飲みたい」と思っている人に「ウーロン茶、いかがですか?」とコミュニケーションしても買ってくれません。

喉が渇いている状態(ニーズ)で、まだ何が欲しいのか(ウォンツ)が決まっていないときに「ウーロン茶が飲みたい」と思わせることが、マーケティングコミュニケーションの大前提です。

それではインサイトとは何でしょうか?

インサイトとは「隠れた心理」「深層心理」です。

先ほどのニーズと違い、生活者は気がついていないかもしれませんし、気がついていても考えないようにしていることもあります。

そのため、インサイトを突かれると感情や意識が大きく動きます。HOW(どのように)のジャンプ台にもなります。


WHAT:生活者が商品を買う理由

「WHAT(何を)」とは提供価値、つまりブランドエクイティ(ブランドが持つ資産価値)において根源的な便益部分です。製品は「WHAT(何を)」ではありません。先述の0.25インチのドリルの例で、生活者が欲しているのは穴(提供価値)であってドリル(製品)ではないという部分です。

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ブランドエクイティについても補足します。ブランドエクイティとは、ブランドの製品に製品以上の価値があると感じさせている生活者の頭の中の一定の認識のことです。製品にブランドエクイティを足すと「商品」になります。

ボトルに入った水(製品)にブランドエクイティを足すとブランドAのミネラルウォーター(商品)に、スニーカー(製品)にブランドエクイティを足すとブランドBのスニーカー(商品)になります。

なぜ「WHAT(何を)」が大切かというと、生活者が商品を買う本当の理由だからです。「WHAT(何を)」を見誤ってしまうと、「HOW(どうやって)」が弱くなってしまいます。


クリエイティブブリーフの作成ポイント

正しい「WHO(誰に)」を設定し、正しい「WHAT(何を)」を作成したら、クリエイティブブリーフを作成します。

クリエイティブブリーフとは、広告やキャンペーンといったマーケティングコミュニケーションを実施するにあたり、必要事項をまとめた資料のことです。

ここではクリエイティブブリーフを書くときのポイントをお伝えします。

クリエイティブブリーフの項目は、「目的」「目標」「ターゲット」「ターゲットインサイト」「戦略ベネフィット」「RTB(Reason to Believe)」、そして「メインメッセージ」と進めます。

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最後の「メインメッセージ」は、プロであるクリエイティブディレクターに考えてもらう部分なので、書く必要はありません。RTB(Reason to Believe)までをしっかり固めます。

項目の中で、「ターゲット」「ターゲットインサイト」については「WHO(誰に)」にあたり、「戦略ベネフィット」は「WHAT(何を)」の提供価値にあたります。では、RTBとは何でしょうか?

RTB、Reason to Believeとは、直訳すると「信じるに足る理由」です。提供価値、つまり「戦略ベネフィット」を支える根拠やファクトと考えるとわかりやすいでしょう。提供価値だけではなく、根拠で下支えすることで、コミュニケーションが強くなります。その役割を果たすのがRTBです。

このクリエイティブブリーフは、ターゲットに態度変容を起こす説得プロセスでもあります。リアルもデジタルも基本的には同じロジックです。


まとめ:WHOとWHATを明確にしてからHOWへ

マーケティングコミュニケーションは奥が深く、お客様は多様なコンタクトポイント、多様なルートでブランドに接しています。

Webサイトを作るとなっても、「自社ブランドのターゲットは誰か?」だけでなく、

・認知から購入までのパーチェスフローはどうなっているか?

・パーチェスフローと各チャネルにおけるメッセージは?

など、多くのことを考えて設計する必要があります。「WHO(誰に)」と「WHAT(何を)」を明らかにしたうえで、各種の「HOW(どのように)」を組み立てていく流れが重要です。

電通デジタルでは、ランディングページ作成やメルマガ配信をしたいというご依頼をいただききます。その際は、まずWHOとWHATをしっかり作り込み、正しいチャネル設計をするというお手伝いをしています。マーケティング戦略を組み立てるためのフレームワークと流れについてのノウハウもたくさんありますので、ぜひお気軽にご相談ください。


●脚注(出典)

1. ^ 中小企業庁委託「起業・創業の実態に関する調査」(2016年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))

2. ^ Theodore Levitt. The Marketing Mode: Pathways to Corporate Growth(McGraw-Hill, 1969)

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