2022.09.09

サステナブル社会に向けた新規事業開発を支援する「Sustainable Future Designプログラム」とは?

電通デジタルは2022年7月、クライアント企業のSDGs事業開発を支援する「Sustainable Future Design(サステナブルフューチャーデザイン)プログラム」を提供開始しました[1]
これからのサステナブルな社会に対応した新規事業開発を成功させるには、さまざまな課題を克服しなくてはなりません。「社会課題の解決」「事業性との両立」「生活者にとって魅力的なサービスや体験」といった課題を克服し、新規事業を推進するために必要なことは何か?「Sustainable Future Designプログラム」を開発した担当者3人に聞きました。

※役職や肩書は記事公開時点のものです。

新規事業開発に”サステナブルな視点”が欠かせない3つの理由

──なぜこれからの新規事業開発にサステナブルな視点が必要なのでしょうか?

松崎 裕太(以下、松崎) : 1つ目はグローバル社会からの要請です。2015年に国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)はそのアジェンダで定められた目標です。これにより、地球規模でSDGs達成に向けた取り組みが求められています。

2つ目は経済界における動向です。国連のSDGs採択を踏まえ、経団連をはじめとした経済団体も、サステナブルな資本主義を確立する方向で一致しています。SDGs関連ビジネスの市場規模は約70~800兆円ほどと推計されており、かなり大きな市場になると予測されています[2]

3つ目は、生活者の意識の変化です。SDGsというキーワードは、中高生の授業でも扱われるなど、若年層を中心に生活者に広く認知されています。商品/サービスを選択する際にSDGsを意識する生活者も増え始めていて、サステナブルな社会に配慮している商品・サービスかどうかは、今後スタンダードな基準になっていくと考えられます。

この3点から、今後はサステナブルな視点を取り込んだ新規事業開発が一般的になっていくと私たちは考えています。

松崎 裕太(電通デジタル)

──サステナビリティに関する企業の反応はいかがですか?

中溝 由里絵(以下、中溝) : 私が所属するサービスイノベーション事業部では、企業からさまざまなテーマで新規事業開発の相談をいただいています。近年は特に、SDGsやサステナビリティというキーワードが増えてきました。

事業テーマとしてのサステナビリティに加え、企業やブランド自体のサステナビリティにも関心が集まっています。これから立ち上げる新規事業は、変化の激しい未来においても持続可能なビジネスが可能なのか? ということが問われています。

今までのビジネスのやり方をガラッと変えないといけない。多くの企業がそのことを認識しつつあるのが、現状だと思っています。

中溝 由里絵(電通デジタル)

──サステナビリティをテーマとした新規事業開発の難しさはどこにありますか?

松崎 : SDGsは17の目標・169のターゲットで構成されています[3]。その中からどの社会課題に取り組むべきか、まずその選択自体に難しさがあります。自社の経営課題に関連し、アセットを活用して取り組める社会課題を探すのは、案外大変です。

その上、取り組むべき社会課題を見つけたとしても、特にtoCの事業の場合には、それが自社のターゲットとする生活者のニーズに合致しているかを検討しなくてはなりません。

たとえば、SDGsのゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とゴール13「気候変動に具体的な対策を」に関わるカーボンニュートラルに取り組もうとすると、最終的な目標は「脱炭素/低炭素社会への移行」となります。

ただ、そのためには生活者へ暮らしの変化を求めることになる一方で、ベネフィット(利益)は提示しづらい。カーボンニュートラル自体は、企業として取り組まざるを得ない社会課題の1つですが、そこに生活者をどう巻き込めばいいか、という点はかなり難しいと言えます。

難しい一方で「生活者にとって魅力的なサービスや体験」と「事業性との両立」のみならず、加えて「社会課題の解決」も合わせた3つの要素を両立させた持続可能なビジネスを展開することこそ、これからのサステナブルな社会に求められている事業であるとも、私たちは考えています。

そのような事業を実現するためにも、取り組むべき社会課題を発見し、社会課題と生活者ニーズを上手にマッチングする必要があると考え、今回新たに「Sustainable Future Designプログラム」を開発しました。


SDGs事業を構想から実装まで支援する「Sustainable Future Design プログラム」とは?

──「Sustainable Future Designプログラム」とはどのようなものですか?

松崎 : 一言で言うと、サステナブルな社会の実現に向けて、クライアント企業のSDGs事業開発を構想から実装まで、生活者視点と未来志向で支援するプログラムです。

──「Sustainable Future Designプログラム」の特長を教えてください。

中溝 : 「Sustainable Future Designプログラム」は、事業テーマとしてのサステナビリティと、事業モデル自体のサステナビリティ、この2点の課題を見据えて設計されています。社会課題とユーザーニーズのマッチングを土台としつつ、収益性にもフォーカスしているのが特長です。

松崎 : もう1点、サステナブルな消費行動を生活者が自然に取り入れられるように、生活者の行動変容をデザインしようと設計されている点も特長です。SDGs関連商品/サービスには、価格が高い、手間がかかる、というイメージをお持ちの方も少なくありません。それらの背景にある生活者のインサイトを理解し、ペインを解消する仕組みをデザインできれば、より効率的にサービスの普及を促せると考えています。

実際に先行事例を研究していると、公的機関やNPO/NGOと組んで、新たな習慣を普及させることで市場創造にチャレンジしている事例や、今までとは異なるビジネスモデルを採用することで、価格が高いというペインを解消した事例など、サステナブルな消費行動を普及させる新たなパターンも見られました。それらの事例研究結果も事業開発に生かしていければと考え、そのためのツールも開発しています。

勝谷さや香(以下、勝谷) : 新規事業開発ではステークホルダーの理解を促すこともも重要な要素です。「Sustainable Future Designプログラム」のために、さまざまなツールを開発しているのですが、そのツールは事業開発と並行してステークホルダー理解を強力に推進する役割も担っています。その中の1つが、「サステナブルフューチャーナビ」です。

「サステナブルフューチャーナビ」は、70のSDGsビジネスの先行事例を分析し、「サステナブルな社会でのスタンダード(未来の兆し)」の発見を支援するツールです。アイディエーション、サービスの精緻化、ビジネスデザインのブラッシュアップにご活用いただけます。

勝谷 さや香(電通デジタル)
Zoom

松崎 : 「サステナブルフューチャーナビ」には、実現可能性を意識した4つの要素を盛り込んでいます。

1つ目はサステナブルにまつわる生活者ニーズ。2つ目はパートナーの選び方。3つ目は共感されるパーパスを作るための着想ポイント。4つ目はサステナブルな事業におけるキーサクセスファクター(KSF)です。

サステナブルフューチャーナビ
Zoom

──「サステナブルフューチャーナビ」はどのように使うのですか?

勝谷 : まずは、「未来・社会の変化理解」です。SDGsの基礎知識やトレンド、欧米企業を中心とした先進事例、生活者の生の声、それに対する国内外の企業や自治体の取り組み例など、SDGsの17のゴールごとに、押さえておくべき情報を、網羅的かつクイックにインプットしていただきます。

次に、「ユーザーペインの発見・策定」です。SDGsのゴールを生活者目線で捉え直すことで、サステナビリティに関するテーマを身近なものとして実感していただきます。たとえば、SDGsのゴール1は「貧困をなくそう」ですが、日本で普通に暮らしている人にとっては想像しにくい話でもあります。しかし、より細分化して見れば、最近大きく社会問題化した「生理の貧困」のように、意外に近くにある課題でもあるのです。

さらに「アイディエーション」では、事業自体のサステナビリティも大事です。社会性×継続性を両立した事業を立案するにはどの点に注目すべきか、その具体的なポイントもまとめています。サステナブルな新規事業開発の第一歩として、しっかり実感値を持っていただくためにも活用していただけます。

松崎 : 加えて、サステナブルな新規事業開発の第一歩として、SDGsが目標達成を目指している2030年時点でスタンダードになっているであろう行動や、新たな価値観の「兆し」を発見し、それらの要素を取り入れた事業アイデアを検討することも重要だと考えています。そのアイデアをどのように事業化し、育てていけば、会社としてサステナブルな社会に貢献できるのか。サステナブルな社会におけるスタンダードから逆算(バックキャスト)して事業開発を進めるには、どのような課題を解決すべきか。それらの検討に役立つツールとしてご活用いただけます。

「Sustainable Future Design プログラム」概要図
Zoom

顧客基点で「半歩先の未来」を読み解く力と「生活者インサイト」で新規事業開発を支援

──新規事業開発支援を行う会社として、電通デジタルの強みはどこにありますか?

中溝 : クライアント企業の悩みを顧客基点で解くことです。クライアント企業の強み/アセットに、私たちの持つ「半歩先の未来」を読み解く力と「生活者インサイト」を見抜く力を掛け合わせることで、各社の強みを最大限に活かした新規事業を提案できるところが、大きな強みだと思っています。

電通デジタルのビジネストランスフォーメーション部門には、さまざまな領域の高度な専門性を有するメンバーが揃っています。ビジネスコンサルタント、サービスデザイナー、データサイエンティスト、ITエンジニアなどが1つのチームとして動くことで、構想から、PoC、開発、実装、展開まで、一気通貫で対応できるのも、他社にはない大きな強みです。

松崎 : また、電通グループには、SDGsの知見をまとめている「TeamSDGs」[4]というグループ横断組織があり、私も所属しながら、まさに電通デジタルとしても連携しています。今後は、電通グループ全体の知見も取り入れ、協力しながら、サステナブルな社会に向けて、プロジェクトを推進していきたいと考えています。

──これからSDGs、サステナビリティを意識した新規事業開発を進めたい企業の担当者、経営層に向けてメッセージをお願いします。

中溝 : 新規事業開発のご相談をいただく際、クライアント企業と議論を深めていくとSDGsをテーマにした事業構想に落ち着くことが増えてきています。新規事業=サステナブルな事業であることが必然となる時代において、「Sustainable Future Designプログラム」は多くの企業のお役に立てるプログラムだと思っています。

勝谷 : 歴史ある事業を展開されてきた企業にとって、サステナブルな時代に合わせて企業文化やパーパスをアップデートしていくというのは、とても大変です。しかし、社会が地球規模で変化しようとしている今のタイミングは、企業として未来にどうコミットしていくのかを考え直す良い機会でもあります。

サステナブルな新規事業が社会に与えるインパクトや、生活者のニーズとのマッチング、会社の売り上げへの貢献度なども含めた、多面的な視点を必要とする難易度の高いチャレンジに、ぜひ伴走させていただきたいです。

松崎 : これまでSDGsやサステナビリティというテーマは、広報担当者やサステナビリティ担当者だけが取り組むCSR的なものという認識が一般的でした。しかし今後は、企業やブランド、事業自体がサステナブルな要素を持っていなければ、社会に必要とされなくなり、売り上げにも影響が出てくる、という時代になっていきます。サステナビリティは、会社全体で取り組むべきテーマとなっているのです。

SDGsやサステナビリティにフォーカスした「Sustainable Future Designプログラム」は、次世代の事業開発のスタンダードだという意識で開発しました。ご興味をお持ちのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。


●脚注(出典)

1. ^  "企業のSDGs事業開発を支援する「Sustainable Future Design プログラム」を提供開始". 電通デジタル.(2022年7月27日)2022年9月1日閲覧。

2. ^ "SDGs関連ビジネスの世界市場規模を目標ごとに約70~800兆円と試算". デロイトトーマツ(2018年4月23日)2022年8月8日閲覧。

3. ^  "SDGs17の目標". 日本ユニセフ協会. 2022年8月8日閲覧。

4. ^  "電通Team SDGs". 電通. 2022年8月8日閲覧。

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