2022.09.01

「そのXにはTがいる。」さまざまなトランスフォーメーションにおけるTwitterの価値とは何か

2022年6月、Twitter Japanと電通デジタルが共催する、広告主および電通グループ社員を対象としたオンラインイベント「#Twitter4Dentsu2022」[1]が開催されました。本記事では、初日に行われた基調講演「T4D2022開催!そのXにはTがいる。~X(トランスフォーメーション)におけるTwitterの価値とは~」の内容を採録して紹介します。

トランスフォーメーションとは

基調講演に登壇したのは、永妻玲子氏(Twitter Japan株式会社 代表取締役社長)、佐々木康晴氏(株式会社電通 執行役員 チーフ・クリエーティブ・オフィサー)、谷内宏行氏(株式会社電通 ソリューションクリエーションセンター クリエーティブ&マーケティング・ディレクター)、そして川上宗一(株式会社電通デジタル 代表取締役社長執行役員)の4名です。

はじめに、モデレーターを務めた川上が、トランスフォーメーションの定義を説明しました。

「トランスフォーメーションとは、何か境界線があり、それを超えて別領域にジャンプすることで構造自体が変化すること。ビジネスにおけるトランスフォーメーションとは、旧来型のビジネスモデルから新しいビジネスモデルへと飛躍し、さらなる成長をもたらすことです」

Twitterの誕生は2006年、日本語化は2008年ですが、「デジタル技術により世界中の人々の言論空間や社会を前進させてきました。T(Twitter)はまさにX(トランスフォーメーション)の旗手と言える存在です」と紹介しました。


Twitterのもたらすイノベーション

続いて、Twitter Japan永妻玲子氏が、Twitterのもたらすイノベーションについて紹介しました。Twitterとはどのような存在か、ポイントとして挙げたのは以下の2点です。

・「いま起きていること」「人々が話していること」が分かる場所

・mDAUが前年同期比で15.9%増と、成長を続けている

mDAUとは収益化可能(monetizable)なDaily Active Usersのことで、2022年第2四半期はグローバルで2億3,780万でした[2]。広告事業も成長していて、新しい広告プロダクトも続々と投入されています。


Twitterの新しい広告プロダクト

今年、米国で提供が始まり、準備が整い次第、日本でも導入される予定として、永妻氏は4つのプロダクトを紹介しました。

①Twitterショッピング
ユーザープロフィールにショッピングモジュール機能を提供する、ビジネスユーザー向けの機能です。通常のショッピング機能に加えて、ライブショッピングの機能も提供します。商品に関する会話を起きやすくする試みです。

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②プロダクトエクスプローラー
3D画像フォーマットの広告です。商品画像を回転させたり、色のバリエーションなど商品の複数のパターンを掲示可能で、ユーザーの注意を引くことで認知度を上げながら、ファネルの下流へ導くことができます。

③コレクション広告
商品コレクションを提示できる広告で、1つのプロモツイートの中に、1つのヒーローイメージと最大5つの画像と説明を掲示できます。新しい商品との出会いのきっかけを提供します。

④インタラクティブテキスト
ツイートテキスト中にリンクを埋め込める広告です。クリック可能なリンクとしてテキストを強調表示し、最大3つのユニークURLを設定できます。注意を引きつつエンゲージを促し、Webサイトへの誘導を可能にします。

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インタラクティブテキスト、プロダクトエクスプローラー、コレクション広告のテスト画面[3]


Twitterデータの活用を支援するソリューション

さらに永妻氏は、Twitterデータを活用するために、現在提供されている代表的なソリューションを3つ紹介しました。

①Twitterトレンド
過去2年間の日本語ツイートを分析した、トレンド予測を支援するレポート。「Twitterトレンド2022」[4]が、6月に発表されています。

②Twitter Data Hub Omusubi®
Twitterと電通は、長年のパートナーシップを通じて独自のソリューションを開発してきました。その1つが、Data Clean Roomの「Twitter Data Hub Omusubi」[5]です。

「これにより、Twitter広告の効果検証が、オンラインだけではなくオフラインも含めて実施できます。実際に、TwitterとテレビCMの組み合わせが効果的である、Twitter広告が購買に効果的であるといった知見が得られています」(永妻氏)

③kizuna communication®
国内電通グループが提供する、Twitterデータを利用した、リアルタイムキーワードターゲティングの広告配信システムが「kizuna communication」[6]です。ツイートされたキーワードによるリアルタイムのターゲティングのほか、過去10年以上のツイートをさかのぼってキーワードを選定し、潜在需要を予測したターゲティングなどが可能です。


CX時代のクリエイティブプランニング

続いて、佐々木康晴氏が、クリエイティブのプランニングについて解説しました。佐々木氏によると、クリエイティブのプランニングでは、トランスフォーメーションの質を高めるクリエイティビティ、そして、人の気持ちと体、社会を動かすクリエイティビティが必要です。特にCX(カスタマー・エクスペリエンス・トランスフォーメーション)のクリエイティビティには、Twitterが欠かせません。これまでTwitterの使い方は、

・あまりコストをかけずにバズらせて話題化する

・顧客窓口として使う

というのがメインでした。しかし佐々木氏は、「チャネルの1つではなく、CX全体をトランスフォーメーションするためにTwitterを活用するのがポイント」だと言います。そして、ポストコロナの時代に、Twitterと作るCXクリエイティブのキーワードとして、以下のものを挙げました。

①フォロワーの力

#社会参加装置Twitter
コロナによる外出制限などもあり、デジタル世界の自分がリアルな自分と同じくらい大きな存在になりました。デジタルの社会に参加する装置として、Twitterが非常に大きな役割を果たしています。

#コネクテッド・インテリジェンス
フォロワー同士がつながり、力を合わせて何かを調べたり議論して、そこから何かを作り上げたり成し遂げるのが、Twitterのおもしろい現象の1つです。同じように、フォロワーの力を使ってブランドを成長させ、世の中を動かすようなクリエイティブを考えるのがこれからの手法です。

#少数ファンの強さ
従来の広告は、たくさんの人に届ける(バズらせる)ことに注力していました。しかし、コアな1人のファンの「好き」を盛り上げていくことが、強いキャンペーンを作ることもあります。Twitterデータを使ってコアファンのインサイトを理解し、ファン自身が見つけて楽しんでくれるようなコンテンツやきっかけを作ることが大事です。

②リアルタイムの熱

#完成度だけでなくスピードも
リアルタイムの良い流れを見つけたら、粗削りでもいいからスピード重視でその流れに乗って、話題やコンテンツを提供するのがポイントです。

#メディアと同時に
さまざまなメディアと掛け合わせて、リアルタイムで楽しむのがTwitterの良さです。プロモーションも、Twitter上で議論してもらうと効果的です。

#会話欲
直接会って話すのが難しかった昨今、誰もが「しゃべりたい」気持ちになっています。CXキャンペーンでは、良い会話のきっかけを提供するのが成功の秘訣です。

③新しいディスタンス

#参加の余地をつくる
コロナ禍でお店に行けないなど、ブランドとユーザーの関係にもディスタンスができました。拡散の装置というだけでなく、ユーザーがブランドと関係を持てるようにして、ブランドの活動に参加する余地を作るのがポイントです。

#商品体験からブランド体験へ
ブランドが音頭を取ってみんながお祭り騒ぎに参加できるような仕掛けや、ユーザーが自分も一緒にブランドを育てていると思える仕掛けを作ると、Twitterキャンペーンが成功すると考えています。

佐々木氏は、ユーザーがさまざまなソーシャルメディアを用途に応じて使い分けている現状に触れ、広告コミュニケーションという視点でTwitterを活用するポイントを、次のようにまとめました。

「Twitterは、ニュース性、リアルタイム性、参加性がある、ポテンシャルの高い場所。キャンペーンで大事なのはジャーニー全体設計です。どのように気づいてもらい、どこで盛り上げて好きになってもらうかを設計し、Twitterを最適な場所に配置することが必要です」(佐々木氏)


「Buzzビューーン!」でツイートから見えるもの

続いて谷内宏行氏が、ビデオリサーチ社の事業で電通が技術協力している「Buzzビューーン!」という新サービスを紹介しました。Buzzビューーン!は、AI全自動分析エンジンを搭載した、テレビ番組のTwitter反応を確認するサービスです。

以下の図が、Buzzビューーン!のトップ画面です。検索窓は使わず、番組表から選ぶ作りになっています。現在開発中で今年の秋以降にローンチ予定。その際には視聴率とも連携して見られるようになるとのことです。

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今後のマーケティング分析では、視聴率とバズの反応がどのような関係になっているか見る必要があります。谷内氏は、「例えばSOB(Share of Buzz)のような、新たな指標が必要になる」と言います。

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SOB値は全投稿量を分母とし、番組への投稿を分子として割り出したその日一日内でのシェア・オブ・ボイスのようなものです。この指標は分子の値を「テレビ番組」だけでなく「ラジオ番組」や「YouTubeチャンネル」などに入れ替えても算出可能です。つまり、SNS上での様々なコンテンツへの反応度を同一指標で相対化できます。評価の目安としては、「0.0X%」以上で大きなバズ、「0.X%」以上だと特大級バズです。

「視聴率とSOBの相関は高いのですが、必ずしも一致するわけではありません。というのは、Twitter利用者は若い人が多いので、若年層や特定のファンによる反応がSOBを押し上げることがあります。逆に、高齢の方が好む番組は、視聴率はすごくいいが投稿量が伸びないということもあります」(谷内氏)

Buzzビューーン!では、投稿量以外にも、性別・年代の分布や、ポジネガ比率、共起ワードなども確認できます。また、全ツイートから、主な投稿内容をAIで全自動抽出する代表ツイート機能もあります。

その他、投稿者の趣味嗜好分類機能や、誰が拡散させたか分かる拡散ポートフォリオ分析機能もあります。分析項目は約30項目、AI全自動分析で前日分が毎日提供されるシステムです。


さまざまなXにおけるTwitterの価値

最後に、「さまざまなXにおけるTwitterの価値」をテーマに、登壇者全員によるトークセッションが行われました。

電通では、便宜上AX(広告コミュニケーションの高度化)、BX(事業全体の変革)、CX(お客様体験の変革)、DX(マーケティング基盤の変革)と分類していますが、生活者がブランドと関わる際に、その境目を意識しているわけではありません。コミュニケーションできて、さらに新しい機能で買い物もできるということは、「TwitterはABCをつなぐプラットフォームになるのではないか」と佐々木氏は言います。

谷内氏は、「単純に生活が非常に変わった」と言います。「見ていたYouTuberに引き込まれて、彼の出すポップアップ店舗へ行ってみたりする。彼と会ってみて話が盛り上がってその場で商品を買ったりする。それから彼のECサイトへも頻繁に訪れるようになって、オンラインでも常連客になったりする。すると、私が求めているのがもはや、彼の配信するコンテンツなのか、彼との交流なのか、彼の扱う商品決済なのか、よくわからない世界になっていく。そんな生活がここかしこで生まれているのが今の生活で、リアルとさまざまなSNSが重なって交流空間が形成されている。Twitterというのはその中でも特に重要な意思疎通手段、いわば生活の毛細血管のような存在になっていると思います」

買い物がECサイトだけで完結するユーザーは、あまりいません。購入前に雑誌や価格比較サイトを見るなど、いろいろと調べます。そして今のユーザーは、実際にこれを使った人はどう思っているのか、これを所有することでどう見られるのかなど、リアルな情報を求めています。

永妻氏は、「これまではオフラインの店舗だけで販売していた方も、Twitterのプロフィールにショッピング機能があるなら参入しやすい。DXへの垣根を低くすることができるのでは」と言います。

一方で、作り上げた顧客との関係性を維持し深めていく段階でも、Twitterは有用です。「しばらくご無沙汰しているとか、最近お買い物が減っているお客さまに利用を促すときに、その方の興味関心の琴線に触れながらアプローチできる点が大きな特長です」(永妻氏)

ディスカッションを終え、谷内氏は「Twitterというのは不思議なメディア。AIで自動化して大量にデータを読み込んでみて、初めてそのポテンシャルの大きさに驚いた」と率直な感想を吐露していたのに対し、佐々木氏は「クリエイティブがTwitterを使いたがる理由は、Twitterのカルチャーにある。そこを掘り下げていけたら、もっと楽しくなる」と述べました。

最後に永妻氏は、「Twitterは今後も、開かれた会話、誰もが本音で話ができて安心して利用できるプラットフォームとして展開していきたい。これからも広告プロダクトの改善やイノベーションに引き続き取り組んでいきます」と力強く抱負を述べ、基調講演を締めくくりました。


●脚注(出典)

1. ^ "#Twitter4Dentsu2022". 電通デジタル. 2022年7月12日閲覧。

2. ^ "Twitter Announces First Quarter 2022 Results". Twitter, Inc.(2022年4月28日)2022年8月10日閲覧。

3. ^ "Twitter Business (@TwitterBusiness)のツイート". Twitter.(2022年4月1日)2022年7月14日閲覧。

4. ^ "Twitterトレンド2022". Twitterマーケティング. 2022年7月12日閲覧。

5. ^ "国内初、Twitterと構築したData Clean Room「Twitter Data Hub Omusubi」を提供開始". 電通.(2021年10月28日)2022年7月12日閲覧。

6. ^ "国内初、"Twitterで今つぶやいた人"だけをターゲティングし広告配信する 「リアルタイムキーワードターゲティング」提供開始". 電通.(2021年3月2日)2022年7月12日閲覧。

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