2022.08.10

マーケティングテクノロジーは「世界観を消費する」生活者に対応できるか

コモディティ化や生活者の意識の変化により、生活者が求めるものが「ベネフィット」から「意味」へとシフトしています。本記事では、マーケティングテクノロジーを用いて、変化する生活者に対するCRMアプローチについて、電通デジタル 橋本綾と株式会社セールスフォース・ジャパン 中谷卓洋氏が解説します。

※この記事は、2022年4月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。

なぜ、今「世界観」なのか

電通デジタル 橋本綾(以下、橋本) : 現在、あらゆる商品やサービスにおいて、「ベネフィット(製品の便益)のコモディティ化」が起きています。社会が物質的に豊かになり、ニーズを満たす手段が多様化した結果、企業が製品のベネフィットだけでは差別化できない時代が来ています。

また、ソーシャルメディアの発達によって、容易に企業の実情が拡散されるようになりました。例えば、「この企業は環境を破壊している」「従業員に対して優しくない」といったことです。その結果、生活者は、自分が購入する商品に対する倫理や是非を考えるようになりました。

これらの変化から、“生活者は消費に「ベネフィット」だけではなく、「意味」をも求めるようになった”と言えます。

「ベネフィット(製品の便益)のコモディティ化」と「消費に対する是非意識の芽生え」
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「意味」を重視する消費のキーポイントの一つが、「世界観」への共感です。「意味」にお金を払うということは、「私はこの商品やサービスが提供する「世界観」に共感し、賛成している」という意思表示を行っているとも言い換えられます。これが、「世界観の消費」です。


「世界観」を形作っているものとは

この「世界観」を形づくっているものが何なのか、少し深掘りしてみましょう。

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』でマーケティングの権威・コトラーが提唱しているのが以下の「プロダクト3層モデル」です。

コトラーのプロダクト3層モデル
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「プロダクト3層モデル」では、製品を中核・実体・付随機能の3層に分けて考察しています。

この3要素はそれぞれ独立したものですが、顧客の満足を生み出すという意味では、本来不可分なものです。例えば、パッケージでは高級感のある印象を与えているのにも関わらず、アフターサービスが充実していないようでは、顧客の期待に応えることはできません。

言い換えれば、この3要素が連携してこそ、「世界観」が形成されると言えるでしょう。

「世界観」とは、製品・サービスにおいて、この中核・実体・付随機能の3層が有機的に連携して形成される、一貫した振る舞いのこと、とも表現できます。


「世界観の消費」に対応するデジタルマーケティングとは

ここからは、世界観の消費に対応するデジタルマーケティングの具体的な手法について考えていきます。

世界観を作るマーケティングで重要なことは、お客様の各フェーズにわたってつながりを作り続ける、「デュアルファネル」でのアプローチです。デュアルファネルとは、「新規顧客獲得のためのファネル」(上部)と「既存顧客のためのファネル」(下部)の2つから構成されています。

「新規顧客獲得のためのファネル」(上部)と「既存顧客のためのファネル」(下部)の2つから構成されているデュアルファネル
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どちらで実施する施策も重要ですが、今回は「既存顧客のためのファネル」で実施する「CRM的アプローチで世界観を作る手法」について説明します。

ポイントは以下の3つです。

①「顧客理解」で世界観に没入させる

「CRM的アプローチ」を行ううえで大切なことは、「お客様と深くつながり、お客様を深く理解する」ことです。

「世界観を作る」ことを企業→生活者への一方向のコミュニケーションと捉えると、このことは少々奇妙に思えるかもしれません。

しかし、企業が発信する「世界観」も、最後は生活者の頭の中、「生活者の認知」で作られています。「何を発信するか」も大切ですが、同時に「どのように受け止められるか」にも留意する必要があります。

したがって、「世界観を作る」ためには、生活者を深く理解する必要があります。生活者を理解するためには、データが不可欠です。そのため、現状、顧客と直接つながり、データを多く有している企業は大きなチャンスにあると言えます。

②世界観の中で「Good Surprise」を生む

世界観作りには、「統一感」が必要不可欠です。しかし、「統一感」はともすれば「単調さ」に転じてしまいます。例えば、Webサイトでもメルマガでも、同じ服ばかり勧めるのは「統一感のあるコミュニケーション」ではなく、生活者を退屈させてしまう「単調なコミュニケーション」です。しかし、お勧め商品の中に、お客様を理解したうえで、いい意味でお客様の予想を裏切るテイストの服があると「Good Surprise」と受け止められます。

統一感を維持しつつ「Good Surprise」を生むことの大切さは、キャンペーンであれ、CRMであれ、マーケティングコミュニケーションに共通しています。これにより生活者をより深く世界観へ没入させることができます。

③お客様と「ちょうどいい関係」を作る

「世界観を作る」ことと同じくらい大切なのが「世界観を壊さない」ことです。

お客様に適切な「コンテンツ」「チャネル」「タイミング」でコミュニケーションを行わないと、お客様との「ちょうどいい関係」が損なわれ、世界観はあっという間に壊れてしまいます。

いかにお客様一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行い、お客様とのちょうどいい距離感を作ることができるかが世界観作りの成否を左右します。


ループを回してちょうどいい距離感を作る

株式会社セールスフォース・ジャパン 中谷卓洋氏(以下、中谷) : お客様に「ちょうどいい距離感」で最適な顧客体験を提供し、世界観を作るマーケティングとは、以下の図のようなループを回し続けることだとも言えます。

「顧客理解を深めるためのデータを貯めるシステム」と「顧客へクロスチャネルでコミュニケーションをするシステム」で顧客体験を提供する
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このようなCRM的アプローチを実現するために必要なのは、「顧客理解を深めるためのデータを貯めるシステム」と、「顧客へクロスチャネルでコミュニケーションをするシステム」です。また、この2つがしっかり連携して機能することが重要です。

「顧客理解を深めるためのデータを溜めるシステム」はCDP(顧客データ基盤)と呼ばれるもので、具体的な製品としては「Treasure Data CDP」が有名です。

一方、「顧客へクロスチャネルでコミュニケーションするシステム」ですが、Salesforceではこれを「統合コミュニケーションプラットフォーム」と呼び、「Marketing Cloud Personalization」[1]と「Marketing Cloud Engagement」[2]というソリューションを提供しています[3]

・Marketing Cloud Personalization:レコメンデーションやWeb接客を通じた商品提案

・Marketing Cloud Engagement:クロスチャネルの配信基盤

統合コミュニケーションプラットフォーム
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これらを緊密に連携してリアルタイムに顧客情報を収集、蓄積し、AIも駆使して最適なアクションを判断、実施します。さらに、企業内にCDP(以下の例では「Treasure Data CDP」)があれば、その情報も取得して活用します。


統合コミュニケーションプラットフォームで実現する世界観

 

「Marketing Cloud Engagement」「Marketing Cloud Personalization」と「Treasure Data CDP」を組み合わせることで、以下のように、世界観を大事にする顧客へのアプローチで大切な3つのポイント(顧客理解、Good Surprise、ちょうどいい距離感)を押さえることができます。

①顧客軸データによる顧客理解

「Treasure Data CDP」で蓄積された、顧客属性、顧客クラスタ/セグメント、ポイントやロイヤリティフラグ、平均購入金額などの顧客軸データを活用し、顧客の求める世界観に合わせたコミュニケーションを判断します。

②商品軸データによるGood Surprise

購入履歴や申し込み履歴から、相性のよいサービス/商品の組み合わせを判断します。例えばアパレルブランドの場合、お勧めコーデなど現場の知見が「Treasure Data CDP」にデータとして蓄積されていれば、着合わせ提案に活用できます。

③お客様とのちょうどいい距離感を作る

「Marketing Cloud Engagement」「Marketing Cloud Personalization」で実現できる施策により、タイミング、提案内容、チャネルを最適化します。

「Marketing Cloud Personalization」では、顧客の過去ならびに直近の行動を検知し、それに基づくアクションを実施できます。例えば、前回購入から3カ月追加購入なし、サイト来訪が過去2週間に3回以上、購入せず離脱、といった購入機運の高まったお客様に対し、サイト上でのレコメンドだけでなく、メールやアプリ側からクーポン送付と共に購入を後押しするメッセージをお送りすることも考えられます。

また、お客様の興味関心の高い商品などの情報も蓄積されるので、以下のような情報提供も可能です。

・以前から閲覧を繰り返している商品の同カテゴリーで、新商品が追加されたというお知らせ

・過去の閲覧時に在庫がなくて買えなかったお客様に、在庫復活のお知らせ

・迷って買わなかったお客様に、「お手頃価格になりました」というお知らせ

ただしこのような情報も、データをバッチ処理で分析して、1週間後にお知らせするのでは意味がありません。つまり、リアルタイムに情報をお届けし、タイムリーで気の利いたコミュニケーションで喜んでいただくことが、お客様の評価を得るうえでは重要です。

一方で、いくら有益な情報でも、やたら頻繁に届くようでは顧客体験を損ねることになります。これについて、「Marketing Cloud Personalization」では、アクションの連携前にフィルターをかけて頻度を一定数に制限したり、価格帯を絞り込むといったコントロールも可能です。


まとめ

CDPと連携して「Marketing Cloud Personalization」「Marketing Cloud Engagement」を活用することで、

・CDPに蓄積された顧客軸/商品軸データを活用

・顧客のモーメントを捉え、リアルタイムアクション

・顧客が今使いやすいチャネルに、求める情報をPush/Pull双方で発信

といったことが可能です。世界観を大事にする顧客が求める「ちょうどいい」関係を構築できることがイメージしていただけたのではないでしょうか。

「Marketing Cloud Personalization」「Marketing Cloud Engagement」を活用し、世界観を大事にする顧客が求める「ちょうどいい」関係を構築
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橋本:今回紹介したような「ベネフィット」から「世界観」の消費という生活者の変化に対応するために、マーケティングテクノロジーの導入、コミュニケーションプラットフォームの構築を検討しているご担当者の方は、ぜひ電通デジタルへお気軽にお問い合わせください。


脚注

1. ^ 「Marketing Cloud Personalization」は、以前は「Interaction Studio」と呼ばれるツールでした。2022年4月にリブランドされて、名称が変わりました。

2. ^ 「Marketing Cloud」のマーケティングオートメーション部分は、2022年4月にリブランドされ、「Marketing Cloud Engagement」という名称に変わりました。

3. ^ 内容には、将来提供するサービスや機能が含まれることがありますので、ご了承ください。

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