2022.01.11

「経済圏」活用により、デジタルとリアル両面での継続的な関係性構築

共通ポイントに代表される複数の「経済圏」が生まれ、拡大している。その中のデータを得ることで、企業はデジタル~リアルを行き来する生活者の行動を、細かく知ることができるようになった。そのことは、企業のマーケティングにどんな進化をもたらすか。デジタル、リアル両面の顧客接点の改善に日々取り組む電通デジタル、アドインテの専門家が展望する。

※所属・肩書は2021年11月時点の情報です。

株式会社電通デジタル
統合デジタルマーケティング部門
部門長

永山 悟

株式会社電通デジタル
コマース部門 コマースメディア第1事業部
事業部長

千葉 健司

株式会社アドインテ
デジタルトランスフォーメーション Div 取締役副社長 兼 COO

稲森 学

購買データの可視化で生活者理解が大きく前進する

――生活者と企業の接点が多様化し、顧客の行動も変化している中、企業は生活者とどうやって関係を築けば良いのでしょうか。

電通デジタル・永山 悟(以下、永山) 今起きている変化は、一言で表すと企業の「生活者理解」が大きく前進しているということです。企業は従来まで1つのブランドメッセージを作り、それをできるだけ多くの生活者に到達させることに力を入れてきました。広いところから絞り込んで、購買に近づけるというマーケティングの手法です。FMCG(Fast Moving Consumer Goods:日用消費財)企業を中心とする卸メーカー様の多くは、配荷による売り上げデータと、実際の流通での販売実績(=売れ筋)を全く別のデータで見ており、本当の意味で、なぜその商品・サービスを購入いただけているかを知ることができませんでした。

なぜそうしていたかというと、企業と顧客の間には距離があり、情報がつながっていなかったからです。そこが今は変わり、企業は生活者の購買データを直接知ることができるようになりました。どういう人が実際に購買しているのかが、具体的に見えるようになったのです。

その結果、可能になったのが「購買起点」による生活者理解です。生活者は、必ずしも企業が発したメッセージ通りのストーリーで商品を買うわけではありません。感じ方も異なり、使われ方も違います。その背景を知ることで、従来とは全く異なる生活者とのコミュニケーションが可能になっています。

電通デジタル・千葉 健司(以下、千葉) もう1つ、大きな変化があります。それは「経済圏」という考え方です。例えば、生活者は会員登録(ID発行)と共にポイントプログラムへ参加します。ポイントのお得さを理解した上で、経済圏に属するサービスの利用が進むことで、生活者の行動を横串で分析/把握ができる仕組みが成立します。自社の顧客と直接つながることも重要ですが、経済圏データを介することで見える生活者の姿にも、マーケティング資産として価値があると考えています。

アドインテ・稲森 学氏(以下、稲森) 経済圏データは、1つの顧客IDにひもづけられていることがポイントです。アドインテは、IoTセンサーを使ったリアル店舗の購買行動を含めた顧客分析サービスを提供しています。大手ドラッグストアチェーン様と取り組んでいる顧客データプラットフォームは、POSデータと顧客IDを結びつけ、リアル店舗のデータとアプリ、Webサイトの情報などを統合して、リテールメディアを構築することで、顧客サービスの向上を目指しています。米国でも主流になりつつある、リテールメディアはまさに経済圏の考え方と同じだと思います。


経済圏とリテール(小売)データで顧客を「アドレサブル」な存在にする

――経済圏データの活用は、とくに自社の顧客データが少ない中堅中小企業では有効なのでしょうか。

永山 企業規模が大きくても小さくても、自社だけで得られるデータの量と内容には限界があります。経済圏データ活用は、すべての企業にとって、今できることとして価値があると思います。

千葉 弊社のクライアント企業とお話していると、よく「自社で収集するファーストパーティデータと、経済圏データのどちらを重視すべきか」という質問をいただきます。ですが、この2種のデータは、補完し合いながら活用すべきものだと思います。

永山 そうですね。企業の目的は売り上げを伸ばすことです。そのために、自社のデータでは得られない、顧客の外部の行動データを生かしていく必要があります。テクノロジーの切り口だけで見ると、どちらが優れているか、という議論になりがちですが、決して対立するものではありません。

稲森 弊社では小売の経済圏データを活用した広告事業を「リテールメディア」と呼んでいますが、リアルな顧客IDに結びついた深さのあるデータに、オンライン・オフラインの活動による行動履歴を結びつけて、統合したデータプラットフォームを作っていこうという動きは今後さらに増えてくると思います。

広告配信による認知から始まる従来の顧客絞り込みとは一線を画す、購買起点による顧客体験の全体イメージ。リアル店舗での行動が把握できることで実現した
Zoom

永山 そして、データ活用の前提になるのが、「データは生活者からお預かりしているもの」という考え方です。自社が集めたものでも、経済圏のデータでも、活用の前にしっかり許諾を取る必要があります。

――経済圏データを得ることで、企業が分かることは何でしょうか。

永山 経済圏データの活用で、弊社が提唱しているのが、特定できている人という意味の「アドレサブル」という考え方です。

従来、企業は自社の商品・サービスを購入した顧客に対して、CRM(顧客関係管理)という思想を使って顧客のLTV(生涯価値)を伸ばすための様々な施策を行ってきました。しかし、市場には企業のユーザーではない生活者が多数存在します。その潜在顧客の中で、特定できている人を増やすことが、企業の売り上げを伸ばしていくためには必要です。

アドレサブルを重視するもう1つの理由が、生活者の視点です。企業の商品・サービスのユーザー全員が、必ずしもその企業に愛着を持っている、ファンであるとは言い切れません。例えば大量に洗剤を買い続ける顧客は、家族が多くて必要だから買っているだけかもしれない。ロイヤリティが高いとは限りません。ですので、顧客をひとまとめにした対応には無理があります。新たに「特定できている顧客」という軸を加えていく必要があると感じているところです。

千葉 また、決済手段の多様化とそれに伴うポイントプログラムによって、いくつかの経済圏が成立しています。それぞれ、提携店舗数や使用率が異なります。よって、企業は各経済圏の強み、弱みを知った上で、自社の課題に合わせた使い分けがとても重要になります。


生活者、企業、経済圏の3者をつなぎ、好循環を生み出す

――小売業のデータ活用に際して、電通デジタルとアドインテの強みは何でしょうか。

永山 先ほど、生活者のデータはお預かりしているものと話しましたが、許諾をいただいた場合、生活者側は、企業に預けたデータを使って、より便利なサービス、良い体験の提供を期待していると言えます。

この期待に応えるために、電通デジタルでは「クリエイティビティ」に注力しています。クリエイティブというと、制作物のデザインをイメージするかもしれませんが、弊社ではもっと広い、生活者の体験をデザインする能力のことをクリエイティビティと捉え、その強化に取り組んでいます。

千葉 具体的には、経済圏の中で生活者が何を求めているかの期待に応え、企業には顧客理解の機会と、様々なチャネルを介した顧客体験の提案を行います。さらに、弊社は各経済圏のデータ利用に関して、生活者と企業の視点でアドバイスする立場でもあります。生活者、企業、経済圏という3者の間を取り持つことで、好循環を生み出せるのが弊社の強みだと思います。

電通デジタルは、経済圏で活動する生活者の期待に応える顧客体験の設計で、豊富な実績を持つ。同時に、複数の経済圏に対してデータ活用に関する提携関係にあり、各経済圏の特徴を踏まえて最適な活用先を提案している
Zoom

稲森 弊社のクライアント企業も、経済圏データの存在を意識し始めています。リテールメディアの将来像は明確にあるものの、現在のところは自社の顧客データを質、量ともにしっかりと確保していただく取り組みを進めています。アドレサブルの考え方で言えば、「AIBeacon」やAIカメラ、NFCタグなどの技術を用いて、今までデータになっていなかったリアル店舗の顧客をデータ化することができるのは、弊社のサービスの大きな強みです。企業がいずれ経済圏データを加える際にも、この自社データの量や深さは大きな武器になると思います。

また、小売業は他と比べてデジタル化が進んでいない企業も多いと思います。その状況を変えるため、弊社と電通デジタル、電通テック、マイクロソフトの4社で「小売業のDX」というテーマで協業し、「Retail-Xing」というプロジェクトチームも発足しました。4社の得意分野を組み合わせて、小売業の成長を支援していきます。

――経済圏をはじめとした外部データ活用の際、企業が注意すべきことはありますか。

千葉 経済圏データの活用と申しますと、メーカーのご担当者の中には「その経済圏が属する特定のECモール内売り上げを最大化するためだけに利用できるもの」という印象をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし今は、それだけでなく、その経済圏で購買する生活者を知ることができるため、新しい打ち手に使えるということを知ってほしいと思います。

永山 とくに申し上げたいのは、経済圏データの活用は継続的な改善が必須だということです。1回の施策で費用対効果が悪かったからといって終わりにせず、そこからPDCAを回していく必要があります。そうすれば、成果を出しながらアドレサブルな顧客を増やしていけます。当社は、その挑戦を支援していきたいと考えています。


本記事は日経BPの許可により「日経ビジネス電子版Special」2021年12月10日公開に掲載された広告から抜粋したものです。
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