2020.09.25

リアルを基点としたコミュニケーションが難しくなった今日に考えるCXのニューノーマル

新型コロナによる影響で、生活者のライフスタイルや消費行動が大きく変化しています。特に、外出控えマインドが浸透する今日において、店舗やイベントでの集客や接客を軸にした顧客体験(CX)を展開していたブランド企業は、その舞台をオンラインへとシフトするよう迫られています。 こうした変化を受け、これまでは一過性のキャンペーンで用いられてきたソーシャルメディアを、認知獲得から購買・検討、顧客のロイヤル化までの様々なフェーズをまたいでトータルなCXを実現する”ソーシャルプラットフォーム”として活用する取り組みをいち早く始めたのが、ファッション・コスメブランド業界です。 LINEやInstagram、Tiktokなどをプラットフォームとして新たな顧客接点を拡大する施策の数々は、ポストコロナのコミュニケーション戦略と今後求められるCX像を探る上で、業界を問わず、大変示唆に富む先行事例だと言えるでしょう。 では、実際にどのような優れたCXを実現しているのか? 電通アイソバー(現 電通デジタル) エクスペリエンスプランニング部のリサーチ内容を含めて、全3回にわけて丁寧に紐解いていきます。

外出自粛から外出控えへ? 新型コロナをきっかけとした生活者の行動変化

まず、新型コロナがきっかけとなって生活者の行動はどのように変化し、この先どうなっていくのか、中長期的な見通しを確認しておきましょう。

電通アイソバー(現 電通デジタル) エクスペリエンスプランニング部 プランニングディレクターの生駒知子は、「新型コロナによって様々な行動変化が起こった。それらは一時的なものではなく、例えば、不要不急の外出自粛は定着しアフターコロナでも気軽に街を出歩くことを控えるようになると考えられる。自粛期間中に利用頻度が高まったeコマースも引き続き需要が高止まりすると見通される」と全体像について解説しました。(図1)

その上で、「カテゴリ別に見ると、アフターコロナでもファッションやコスメはeコマースで購入する機会が高いままになると見通されている。

これまでも『生活者はファッションやコスメに関する情報をソーシャルメディアから得ている』と言われてきたが、今後はその傾向がより強くなると考えられそうだ」と、以下の調査データをもとに分析しました。(図2)

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図2(調査概要
調査対象:Petrelの公式Instagramアカウント「@petrel_jp」のフォロワー
フォロワー性別:女性93%、男性7%(2020.4.23時点)
調査期間:2020年4月22日(水)
回答者数:設問1 N=7,518 / 設問2 N=1,128 / 設問3 N=4,590
調査内容分析:株式会社パスチャー https://corp.pasture.biz/press/1041/


新型コロナによってソーシャルメディアへの接触時間にも変化が

他方、新型コロナの影響を受けて、生活者のソーシャルメディアへの接触時間に変化はあったのでしょうか? この点について、生駒はアライドアーキテクツ社の調査を示し、以下の傾向を指摘しました。(図3)

  • 生活者のソーシャルメディアへの接触時間は全体的に増している
  • 2-4月期にはインスタグラムの登録者数は幅広い年齢で増加した
  • ファッションやコスメブランドのアカウントを閲覧する数も増加した
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図3(調査概要
調査名称 : 新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う外出自粛に関するアンケートご協力のお願い
調査主体 : アライドアーキテクツ株式会社
調査時期 : 2020年4月8日~4月12日
調査方法 : モニプラ(アライドアーキテクツ株式会社)でアンケート調査を実施
調査対象数:4,157名(アンケート回答完了人数)https://service.aainc.co.jp/product/echoes/voices/0028

さらに生駒は、ソーシャルメディアへの接触時間が増加している傾向は年代を問わないことにも触れ、「例えば、これまで若年層がダンス動画を投稿したり閲覧して楽しむものと考えられてきた『Tiktok』は、お家でDIYやTiktokお料理教室など、プロが技術を紹介するようなコンテンツも増えるといった変化が起きている。『Tiktok』に限らず、各ソーシャルメディアがコロナ禍によって視聴者層を広げたと見られる」と解説しました。


生活者の行動変化から生じるマーケティングの課題は?

前述のように、ソーシャルメディアとの接点がより濃くなる一方でリアルでの接点が薄くなる生活者と繋がるために、企業はこれまで築いてきたマーケティングの施策を見直す必要があります。

しかし、冒頭にも示した通り、ファッションやコスメブランドを例に挙げると、従来リアルだからこそできた豊かな世界観の表現や丁寧でホスピタリティ溢れる接客体験、イベントで感じる没入感といったオフラインならではの顧客体験が主導的で、オフラインは補助的な位置付けだったため、オフラインで購買からロイヤル化までを完結するように考え直すことは「手探りの取り組みになりそうだ」とハードルの高さを感じる向きもあるかもしれません。

または、eコマースの強化やリモートでの接客を模索するなど、「できることからやってみる」というチャレンジを始めていたとしても、どこかで「これは本当に成果に繋がるのだろうか?」と疑問を感じている場合もあるでしょう。

これに対し、電通アイソバー(現 電通デジタル) エクスペリエンスデザイン本部 本部長 潮田 健一郎は、「新型コロナによる環境の変化に対し、課題に対応しようと模索する企業は増えている。しかし、その内容は断片的であるように感じられる。私たちは課題の全体像を見て、アプローチしていく必要があると考えている」とし、次のように続けました。

「これまで、ファッション・コスメ業界に限らず多くの企業にとって、オンラインの施策は来店促進などオフラインの施策をサポートする役割でしかなかった。しかし、今後はオンラインの中で完結するようカスタマージャーを描き直さないといけない。
その際には、断片的にソーシャルメディアを活用する、といった発想ではなく、オンラインだからできること、例えばソーシャルメディア上で購買できるようにし、その後にブランドを認知するといったフェーズの逆流も踏まえて最終的に顧客のロイヤル化を実現する方法を考えることが重要だ」。

続けて潮田は、「オフラインで行なっていた施策と同じスケールでマーケティングを展開することが重要だと考えている。単にオフラインの施策をオンラインに置き換えというわけではなく、オンラインにふさわしい流れを考えるべきだろう」と、指摘しました。

上述の通り、オンラインを活用することによって、これまでできなかったことや考えつかなかったような新しいCXが実現できる可能性は拡がります。そう考えると、新型コロナによる影響を過大にネガティブに捉えすぎるのではなく、改めて顧客とどう向き合うべきなのか? 考える機会とすることが状況を打開する第一歩になるのではないでしょうか。
また、実際にその可能性を見出そうとする事例が出始めています。

そこで、「オフラインで認知〜顧客のロイヤル化までを完結するには?有名ブランドの施策から見るCXのニューノーマル」では、誰もが知るファッション・コスメブランドの施策を例に挙げ、その意図やポイントなどを見ていきます。

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