心理の変化
- コロナは「健康」だけの問題ではない
- 「からだ」「こころ」「さいふ」の不安が発生
需要・行動の変化
「在宅時間の増加」と「不安の増加」によって、需要も変化
(1)増加した需要・行動
- 在宅での仕事・学習・娯楽・生活に関わるもの
- 非接触サービス(「デリバリー」「テイクアウト」「オンライン〇〇」)
- 医療・健康に関わるもの
- 生活必需品
- 教育
(2)減少した需要・行動
- 「外出」が必要なもの
- 「接触」が必要なもの
「コミュニケーション不全」の発生
- 発信した情報が、届くべき人に正確に届かない可能性が増加
- インフォデミック(情報過多)
- 営業情報の伝達不備
こうした状況下で商品・サービス・情報などを提供し、発信するためには、これらの変化に応じて「転換」すべき発想や手法と、変化後にも「維持」すべき本質的な価値の見極めが必要です。本稿では、そのためのアプローチを、以下の点から解説します。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
3.1「不可逆の変化」を見分け、顧客とのコミュニケーションを維持する
コロナは、人々の心理・需要・行動に大きな影響をもたらしています。その中での打ち手を考えるときには、その変化が短期的なものか、長期的なものかを考える必要があります。
例えば、2020年4月現在では「旅行」「外食」に関する需要は大幅に減少しています。しかし、こうした傾向は永久に続くのでしょうか? 私は、決してそうではない、と考えています。
人間の「美味しいものを食べたい」「旅先で新鮮な体験をしたい」「友人と楽しい時間を過ごしたい」などの希望は、決して消えないものです。こうした状況下でも「デリバリー」「テイクアウト」「オンライン飲み会」などの需要が伸びているのは、そうした心理の表れでしょう。
現在は「コロナをうつす・うつされる不安」が、こうした希望を抑制しています。コロナがコントロール可能な状態になれば、こうした根源的な需要は復活するでしょう。
一方で、人々の行動や、それを支えるシステムには多くの「長期的な変化」が起きると考えます。コロナによる行動の変化は「実は不要だったこと」や「実は非効率的だったこと」をあぶりだします。
ビジネス・学業・コミュニケーションがオンラインで実施されることで、「対面での会議・商談・授業・サービス提供・交流会」や「通勤・通学」、ひいては「中心地へのオフィス集中」などの存在意義が問い直されています。
また、衛生意識の強化は「現金を対面で手渡しする、従来の小売り」から「接触せずに決済できるペイメント」「不特定多数との接触を避けられるEコマース」への移行を促進すると見られます。特に後者は、「2003年(SARS流行時)のAlibabaの躍進」[1]という前例もあります。
こうした「オンラインファースト」化と、それに伴う行動・システムの変化は不可逆のものとなるでしょう。整理すると、以下の通りです。
- 「維持」すべきもの:ブランドとして伝えたい、本質的な価値。顧客・読者などとの信頼関係
- 「転換」すべきもの:価値の提供手法
それでは、これらの変化にはどのような向き合い方があるのでしょうか。
3.1.1 手法1:「悩み」に直接対処する
まずは、コロナによる悩みの中心である健康・精神・経済の悩みに対して、直接的に支援を行うという方法です。以下のような事例があげられます。
3.1.2 手法2:「商品・サービスの提供方法」を変える
ビジネスの維持には、キャッシュフローの維持も欠かせません。そのためには、「提供するコアバリュー」を変えず、その提供方法を変えることで、需給関係を維持する手法です。例えば、このような変わり方があります。
ビジネスの維持には、キャッシュフローの維持も欠かせません。そのためには、「提供するコアバリュー」を変えず、その提供方法を変えることで、需給関係を維持する手法です。例えば、このような変わり方があります。
オンライン対応 | 診療[10]、トレーニング指導[11]など |
---|---|
接触機会減少 | 宅配・テイクアウト対応、ペイメント導入など |
需給の非対称化 | クラウドファンディング、飲食店の先払いサービスなど |
上記の例はいずれもBtoCのものですが、こうした変化は、BtoBの領域でも同じです。当社のコンサルティング・クライアント折衝においても「高品質な提案・サービス」というコアバリューを維持しつつ、対面・往訪を原則禁止し「オンラインでのサービス提供」の充実に取り組んでいます。
3.1.3 手法3:「発信方法」の最適化
コロナは、ビジネスのあり方を大きく変化させます。これまでに述べた「悩みへの直接対処」「サービス・提供方法の変化」のようにサービスの形を変えるものもあります。また、一時休業・営業時間変更などの「臨時対応」も、国・自治体の規制方針に従ってたびたび発生するでしょう。
これらの変化を顧客に正しく届けるには、「顧客のいる場所(チャネル)に、正しい情報を届ける」ことが必要です。以下の表に、オンラインで対処すべき主なチャネルと、注意点をまとめました。
種別 | 主なチャネル | 対象ビジネス | 注意点 |
---|---|---|---|
検索 | ・Google 検索 ・Yahoo!検索 | Webサイトを持つビジネス全般 | 公式サイト・オウンドメディアでのSEO。営業情報などをプル型で配信。 情報の正確性に注意。出典・参考文献などは明記し、リンクする。 臨時休業・営業時間変更などがある場合、他のチャネルにも注意する。 |
営業情報 | ・Googleマイビジネス ・Facebookビジネス ・業界別情報サイト | 小売店・レストランなどのBtoCサービス | NAPO(名前・住所・連絡先・営業時間)を正確に反映する。 臨時情報の更新に注意。GoogleマイビジネスやFacebookには臨時情報の掲載が可能。投稿機能で、詳細の補足もできる[12]。 |
SNS | ・Twitter | アカウントを持つビジネス全般 | 既存顧客との接点維持や、各種打ち手のプッシュ発信に有効。 フェイク・ヘイト等の拡散に寄与しないように注意。 |
動画 | ・YouTube | アカウントを持つビジネス全般 | コロナ関連では、特に「健康法」「レシピ」などのノウハウ系需要が増加している。 そうしたコンテンツを出す場合、Webサイトと動画の連携施策を推奨。 |
また、発信するメッセージの内容にも注意が必要です。以下のグラフは、2020年6月現在の、コロナの感染者増加率です。2020年4月時点の水準と比べると、5月末以降に再度増加に転じつつあるとはいえ、安定しつつあります。都道府県別のトラジェクトリー解析[13]結果でも、大半の都道府県が減少傾向にあることがわかります。
しかし、人心はまだ落ち着いたとは言い切れません。コロナへの不安や生活スタイルの変化は、今でも多くの人々に不満・不安をもたらしています。
コロナ初期(2020年3月ごろ)の不満・不安については「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する分析 -心理・需要の変化-」でお伝えした通り。コロナ感染者数が減少に転じた2020年6月の当社調査でも、依然としてどの世代でも9割以上が「コロナ下の暮らしに不満を抱えている」と回答しています。
Withコロナ社会における、不満意識調査[15]
このように人々の不満が高まり、インフォデミックも蔓延する状況では、普段なら許容できるメッセージが許容されず、炎上やコミュニケーションの途絶を招くことがあります。発信者に悪気はなくても、特定グループ(民族・性別・信条・年齢層など)に身を置いて受け止めると不快なメッセージであることは多々あります。
そうしたことを避けるためには、発信する前に「他人チェック」をすることが大事です。さまざまな属性の「自分以外の受信者」(民族・性別・信条・年齢層など)の立場を想像し、身近にいれば相談し、「誰かが不快にならないか」を再確認することで、より適切なメッセージを発することができます。
脚注
1. ^ "How Alibaba survived the 2003 SARS crisis under Jack Ma's leadership". Business Insider.(2020年3月27日)2020年6月24日閲覧。
2. ^ "サントリーが消毒用アルコール提供開始、製造費用を自社負担、医療機関向けに". 食品産業新聞社.(2020年4月16日)2020年6月24日閲覧。
3. ^ "水族館でつくった消毒液、医療機関などに販売 三重". 朝日新聞デジタル.(2020年4月14日)2020年6月24日閲覧。
4. ^ "ルイ・ヴィトンのアトリエに勤める職人300人が、医療用マスクを製造". OCEANS Web.(2020年4月10日)2020年6月24日閲覧。
5. ^ "銀河鉄道のらくらく通勤バス". 銀河鉄道. 2020年6月24日閲覧。
6. ^ "コロナめぐる無料法律相談 日弁連、20日から予約開始". 朝日新聞デジタル.(2020年4月18日)2020年6月24日閲覧。
7. ^ "経産省 新型コロナで医師による遠隔健康相談開始 LINEヘルスケアとMediplatが相談窓口に". ミクスOnline.(2020年3月12日)2020年6月24日閲覧。
8. ^ "銀の鈴社、『電子書籍約500冊、無料開放』の期間を1ヶ月延長 およびオンライン授業での無償利用を推奨 ~コロナ休校継続や自粛期間の長期化を受けて~". アットプレス.(2020年4月10日)2020年6月24日閲覧。
9. ^ "パソコン決裁Cloud 6/30まで無料開放中!". 電子印鑑・決裁・署名のシヤチハタクラウド. 2020年6月24日閲覧。
10. ^ "オンライン診療に関するホームページ". 厚生労働省. 2020年6月24日閲覧。
11. ^ "【新型コロナ対策 / Stay Homeでトレーニング!】自宅でパーソナルトレーニングできる新サービス「MY TRAINERSオンライン」開始". PR TIMES.(2020年4月18日)2020年6月24日閲覧。
12. ^ "日本のローカルSEO (MEO) ガイド". iSchool.(2020年3月31日)2020年6月24日閲覧。
13. ^ MinutePhysics(2020年3月27日). 新型コロナウイルス(COVID-19)を倒したかを知る方法[Video file]. Retrieved from https://www.youtube.com/watch?v=54XLXg4fYsc [2020年6月24日]
14. ^ "【都道府県別】人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移". 札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門.(2020年6月26日)2020年6月28日閲覧。
15. ^ "Withコロナ社会での顧客体験変革サポートに向け、高まる不満への察知力を強化する「Fu-man insight lab™」発足 ー第1弾「Withコロナ社会における、不満意識調査」を実施ー". 電通デジタル.(2020年6月18日)2020年6月24日閲覧。
PROFILE
プロフィール
この記事・サービスに関するお問い合わせはこちらから
TAGS
タグ一覧
EVENT & SEMINAR
イベント&セミナー
ご案内
FOR MORE INFO