近年、コマース業界では、顧客や顧客の体験に対する認識を大きく変えなけれ ばならない、との発想が主流になりつつあります。特に、「企業は商品を売ることよりも良質な顧客体験を提供することで、事業収益拡大への商機を見いだそう」との考えのもと、顧客をビジネスの中心に置き、カスタマージャーニーを再検討したうえで、顧客体験をマネジメントする「顧客起点でのマーケティング」に力を入れようとする動きが増えています。
そうした流れを受けて、これからのコマース体験をどのように演出するべきか、その際どういったマーケティング・テクノロジーを活用すればいいのか、について事例とともに紹介するカンファレンス「Marketing Nation Kansai 〜CXMで実現する顧客中心マーケティング〜(主催:アドビシステムズ株式会社)」が、10月3日(木)、大阪で開催されました。
ここでは、「顧客に選ばれるコマース体験とは?Adobe Commerce Cloudの機能や事例を交えてご紹介」と題して行なわれた、プラットフォームソリューション部バイスプレジデント坂祥明のセッションの内容をお送りします。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
日本におけるEコマースビジネスの現状
冒頭、「世界市場の動きと同様、GDP成長が低調な中、日本のEC規模は堅調に推移している」と紹介した坂。しかし一方で、日本のコマースビジネスにはいくつか海外市場には見当たらない特徴がある、と次の例を挙げました。
「たとえば、実店舗を持つBtoC企業のEC化率は世界的には10%を超えているが、日本では6.22%と実は低い。また、日本人はEC経由で購買する方が実店舗より安く購入できると考えている向きがあるが、このような“常識”は日本とブラジルだけの珍しい例だ。ほとんどの国ではECでも実店舗でも価格が同じ、と考えられている」。
では、こういった意識の背景にあるものは何か? 坂は次のような見方を示しました。
「日本のコマースビジネスを展開する企業は、まだネットビジネスと実店舗を別の世界として捉えており、消費者も同様の認識でいると考えられる。これは、日常生活の導線上に実店舗が非常に充実している、という日本の環境が起因しているのかもしれない。
大都市圏はもとより、各地方都市においても生活環境内に小売店が充実し、地域によってレベル差はあれど、通勤や通学の導線に購買の楽しさを体験できる環境がある事は大きな強みだと言える。この特徴を活かして、実店舗とECの購買体験をうまく融合することが重要だ」。
では、まだまだ伸びしろがあると考えられる日本のEC市場において、日本市場独自の特徴を活かしながらこの分野を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか? 坂は、「これからは、オンライン・オフラインを意識させない自然な購買体験をいかに提供できるかが鍵。オンライン・オフラインどちらで買ってもらってもいい。もはやEC化率はKPIでは無い!」と断言しました。
OMO=オンラインとオフラインが溶け合った世界を創る
オンライン・オフラインを意識させない購買体験を考えるにあたり、改めてこれまでの購買体験の変遷と、それらとOMOとの違いについて押さえておきましょう。
まず、2000年代。「クリック&モルタル」と呼ばれ、実店舗とEコマースがまったく別の世界に展開されてきました。続いて2010年代には、「O2O」や「オムニチャネル」といったEコマースと実店舗の相互送客を実現できるよう、各社が取り組みを進めました。このように簡単に整理しただけでも、ここまではオフラインとオンラインがまだ別次元の存在として位置付けられていたと分かります。
では、これからのOMO(オンラインとオフラインを意識しない新しい購買体験)とはどのようなものでしょうか?
坂は、「OMOは、Online Merges with Offline または Online Merge Offline の略で、『オンラインとオフラインが溶け合った世界』と表現されます。消費者が欲しいと思ったその瞬間その場所で、オンライン・オフライン関係なくどちらでも同じように購入でき、ストレスなく手元に届く、という体験がOMOの世界です」と解説し、実際にそれを行なっている日本や中国の事例も紹介しました。また、間近に迫った5G時代には、よりリッチコンテンツの配信が簡単になるとし、VR技術を活用したコマース体験も可能になる、と見通しました。
OMOの実現に重要な3つのポイント
では、オンラインとオフラインが溶け合った世界を創るには、どういった条件があるのでしょうか? ここでは3つのポイントをご紹介します。
1. CX Design
お客様にどのような購買体験をしてもらうか? 最適なCX(顧客体験)デザイン
OMOの実現には、オンラインとオフラインを融合させた最適なCXの実現が重要。顧客・競合・市場を調査の上、オンライン・オフライン関わらず様々なステークホルダーで深く議論すること。さらにKPIを明確に定め、一度設計したCXを繰り返し検証していくことが重要。
2. Touchpoints
360度あらゆるチャネルで顧客を囲む。顧客とのタッチポイントチャネル充実
顧客はさまざまなメディアを回遊する今日。顧客が「買いたい!」と思った時にストレスのない購買体験を実現するためには、CXデザインに基づいた最適なタッチポイントチャネルを準備することが不可欠。
3. Platform
顧客をマネジメントするための、マルチチャネルに対応したプラットフォーム
たとえば、お客様が各チャネルでどういう行動をしているのか知り、統合管理できるようなソリューションを活用し、CXデザインに基づいた最適なチャネルの準備と運営が欠かせない。
OMOを展開するにあたってのひとつの選択肢として、坂は、次世代高機能ECパッケージとして注目されている「Adobe Commerce Cloud ( Magento )」を例に、このソリューションの6つの特徴を挙げました。
次世代高機能ECパッケージ『Adobe Commerce Cloud ( Magento )』6つの特徴
- 大規模コマース対応のエンタープライズコマースパッケージ
- 充実の機能構成
- B2C・B2Bコマースへの対応
- マルチチャネル在庫・受注管理
- 外部システムとの連携容易なヘッドレス構成
- Adobe製品との連携シナジー
たとえば、ECで十分な情報を配信するには、当然ながらコンテンツを準備する必要があります。「Adobe Commerce Cloud ( Magento )」は、これを容易にしてくれます。特に、ドラッグ&ドロップでページを生成できるなどの機能は、予定されているプロモーションが展開された時にTOPページをどのように変更するかを試しながらプレビューで確認することもでき、web運営の経験が少ないスタッフでも簡単に施策を運用する助けになるでしょう。
売上を最大化させる柔軟なマーケティング機能も充実しており、「特定の顧客グループに」「決済直前にカゴ落ちしている顧客に」「カート内が〇〇円以上の顧客に」など様々な条件で対象を切り分けて、プロモーションを展開することも可能なので、カゴ落ち対策や売上UPにつながる施策をこれまでよりアグレッシブに実施できるようになります。
また、「グループ商品」や「バンドル商品」等の商品の種類や「カラーピッカー」「容量」「奥行き」等の属性を柔軟に設定できるので、それをもとに最適な購入方法を顧客に提案することも簡単です。
このほか、「ECと店舗の連動」「メールやLINEでのアプローチ」「越境ECに欠かせない多言語対応や多通貨対応」などもシステム連携によって低コストかつスムーズに実現が可能です。
上記のほか、坂は「コマース事業を推進するのに欠かせないOMS(Order Management System:受注管理システム)を有している点も特徴として挙げられる。これにより、複数チャネルの受注情報を一元管理できることからOMOの実現が叶う」と付け加えました。
このように、「Adobe Commerce Cloud ( Magento )」を活用することで、企業は膨大な開発費用をかけずに、事業の成長に合わせてOMO実現への一歩を踏み出しやすくなることでしょう。
坂は、「OMSを統合したソリューションはまだ数が少ないと言える。しかし、これをうまく活用すれば、いままではサイトごとやチャネルごとに管理していた受注情報や在庫情報を一元管理できるため、在庫切れリスクなどの“よくない購買体験”を防ぐことにもつながる」とし、「Adobe Commerce Cloud ( Magento )」がAPI連携を前提に構築されている“良さ”についても述べました。
OMOをともに実現するパートナーとして
では、前述のようなことを社内のリソースだけで完結することが可能なのかというと、時間やリソース不足、ナレッジ不足のため、難しいとの判断が下るかもしれません。そこで求められるのは、OMOをともに実現するパートナー企業でしょう。現在、「Adobe Commerce Cloud ( Magento )」のグローバルエリートパートナーとして認定されている企業は世界で7社ほど(2019年10月現在)。そのなかには、isobarも含まれています。
坂は、OMO実現の道筋において電通アイソバー(現 電通デジタル)が実施するコンサルティングのプロセスを次のように説明しました。
「ユーザーエクスペリエンスデザインやソーシャルメディアマーケティング、クリエイティブ全般を担当するUX デザインチーム、『Adobe Commerce Cloud ( Magento )』の導入から運用ほか、テクノロジー一切を取り仕切るテクノロジーチーム、そして、ビジネスデザインやデータデザイン&マネジメントを司る戦略&データチームといった社内のプロフェッショナルチームがそれぞれの得意分野をかけ合わせて企業のサポートにあたっている」。
加えて、様々なチャネルとそれを統合マネジメントするプラットフォームの構築体制をグローバル企業に向けて行なってきた強みとして、
「isobarでは、グローバルネットワーク全体でベストプラクティスを共有できるようにと、海外に専門の開発拠点を立ち上げている。そのため、グローバルレベルのサービスを日本市場に提供できる」とし、最後に、「現在、日本でもデジタルからリアルにまたがった魅力的なコマース体験の提供が重要視されている。そうしたニーズを受け、私たち電通アイソバー(現 電通デジタル)はクライアント企業の状況などを理解した上で最適なソリューションを選択し、それを基盤に企業が取組むべきコマース体験の改善をサポートし続けていく」と締めくくりました。
御社のEコマースやコマース全体の戦略設計、ビジネス推進などの課題について電通アイソバー(現 電通デジタル)に相談してみませんか?
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