「違いをチカラに変え、DEIを事業の強みにする」電通デジタルの新たな挑戦

  • 電通デジタルの【想い】
写真:電通デジタルのオフィスを背景に立つ、DEI推進担当役員の伊関 淑恵

近年、多くの企業が取り組む「DEI(多様性・公平性・包括性)」。電通デジタルでは2026年の新ビジョンとして「DEIを事業の強みにする。」を掲げました。本記事では、新たにDEI推進担当役員に就任した伊関 淑恵氏にインタビューを実施。方針の背景にある思想や、目指す組織の未来像について伺いました。

2026年8月時点での所属・役職です

目次

環境・制度づくりを経て「一人一人の自分ごと化」へ

――伊関さんのミッションと、DEI推進担当役員に就任された経緯を教えてください。

伊関:私のミッションは、DEI推進担当役員として社内のDEIを前進させていくことです。それと同時にグローバルの管掌役員も兼務していまして、電通デジタルのグローバルビジネスを進化させていく役割も担っています。

推進担当役員への就任は、瀧本社長からの指名でした。なぜ私だったのかなと考えてみますと、理由は2つあると思っています。

1つは、DEIにおいて「女性活躍」は大きな要素の1つですので、女性としての目線や視点を求められたのではないかということ。

もう1つは、ここ数年注力してきたグローバルチームの存在です。このチームには、社内でも特にさまざまな国籍やバックグラウンドを持った多様なメンバーが揃っています。その現場での経験や視点を活かしてほしいということだったのではないかと受け止めています。

写真:役員就任の経緯を語る伊関

――伊関さんご自身が、DEIというテーマに関心を持たれた原体験があれば教えてください。

伊関:私自身、20年以上仕事をしてきた中で、基本的には自分らしく働いてきたと思います。それでも、局面によってはどうしてもジェンダーの違いを感じることもありました。「性別がまったくハードルにならず、誰もがしっかり仕事ができる環境は大事だ」という思いが、まず原体験としてあります。

もう1つは、先ほどもお話ししたここ数年のグローバルチームでの経験です。日本語以外が得意なメンバーや、文化やバックグラウンドが違うためにビジネスの進め方が異なる人たちと、1つの目標に向かって進む機会が増えました。

そのときに、多様な視点を受け入れて生かすこと、つまり「インクルージョン」の重要性を肌で感じました。この経験が、ここ数年で私のDEIへの関心をさらに高める大きなきっかけになりました。

――電通デジタルにおけるこれまでのDEIの取り組みと、そこから見えてきた現在の課題について教えてください。

伊関:電通デジタルは、比較的早い段階からDEIに注力してきた会社です。これまでは、多様性が重要であるという価値観の浸透や、一人一人の異なる状況に寄り添い、誰もが公平にチャンスを得られるような環境・制度づくりを積み重ねてきました。

その中で、さらにDEIを進めていくには、DEIが「一部の人たちのための施策」ではなく、社員全員に関係のある重要な施策であると捉えてもらうことが必要だと考えました。

これまでに作ってきた環境や制度を本当の意味で機能させ、一歩進んだ次のフェーズへ向かう。そのためには、制度の先にある「社員一人一人が心の底から腹落ちして、自分ごととして参加できる状態」をどう作るか。これこそが、今まさに私たちが向き合っている大きな課題だと認識しています。

そこで、単なる制度改革にとどまらず、全社で一丸となって次のステージへ進むため、新たなビジョンとして「DEIを事業の強みにする。」と、その核となるステートメント「違いはチカラ。活かすのが、私たち。」を策定しました。

統合レポート2026

ジェンダー、ファミリー、LGBTQ+、障害の4テーマを軸に、多様な人財の力を事業成長へつなげるDEIの取り組みを紹介しています。

統合レポートの表紙

「DEIを事業の強みにする。」2026年のビジョンと方向性

――2026年のビジョンとして「DEIを事業の強みにする。」を掲げていますが、この言葉に込めた想いを教えてください。

伊関:私たちの会社はマーケティングを扱っており、コミュニケーションのアイデアやクリエイティビティが何よりの原動力となるビジネスをしています。多様な生活者に届く価値をつくるプロセスにおいて、もし私たち自身が多様性に欠け、視点に偏りが生じていたら、世の中の細やかなニーズを見落としてしまう大きなリスクになります。

多様な視点があるということは、私たちの「事業のど真ん中」、まさにビジネスの品質そのものに直結しています。DEIが事業の成長と結びつくことで、一人一人が自分ごと化できるようになり、結果として事業の強みにも変えていける。そういった想いを込めています。

――「違いはチカラ。活かすのが、私たち。」というメッセージについて教えてください。

伊関:2026年に向けてDEIのステートメントを新しく更新しました。その核になるのがこのメッセージです。

単に違いがある、多様性があるというだけでは、チカラにまではならないと考えています。以前読んだ書籍のなかで、「インクルージョンなき多様性はカオスである」という言葉を目にしたことがあり、本当にそのとおりだなと納得しました。

また、多様なメンバーが集まる会議があっても、一部の人しか話していなかったり、最初から結論ありきだったり。これではせっかくの多様性が活かせません。2026年は、多様性を単なる違いに留めず、しっかり生かすためのインクルージョンに軸足を置く。その決意を強化したくて掲げたのが、このメッセージです。

――DEIの推進について、具体的にどのような施策を構想していますか?

伊関:ここが一番難しいところです。女性管理職比率などの数値目標は引き続き追っていきますが、インクルージョンをKPIにする難しさも感じています。今は、社員が臆せず発言できているかという定性的な実感値をベースに測る方法を模索しており、年1回のDEIアンケートにその指標を設けていこうと考えています。

また、多様な意見をまとめて議論を前に進める「管理職のリーダーシップ」も不可欠ですが、これは管理職の方々にとっては、大変なプレッシャーでもあります。そこで社内の管理職のフォローとして、自社開発のAIエージェント「インクルーシブマネージメント相談室」を開発しました。まだベータ版を作ったばかりですが、困ったときに客観的なアドバイスをくれるツールとして、これから社内に浸透させていきたいです。

特定の部署の活動にしない。全員がパフォーマンスを発揮できる組織へ

――DEI推進担当役員として、短期的に実現したいこと、また中長期的に目指すゴールを教えてください。

伊関:短期的には、新しいステートメントに沿って、「DEIは自分たちの事業に直結するものだ」という意識を浸透させることです。そうすることで、多様性の大切さを社員一人一人が自分ごと化できる環境を作っていきたいです。

インクルーシブな環境は一朝一夕には作れません。中長期的には、DEIを電通デジタルの文化として定着させたいです。その結果として、アイデアやクリエイティビティに自然とDEIの成果が表れていて、事業にしっかり寄与している、そんな状態を作るのが中長期的な目標です。

写真:DEI推進が目指す目標を語る伊関

――電通デジタルの社員に対して、DEIの観点からどのようなことを期待していますか?

伊関:社員の皆さまには、DEIをとにかく「自分ごと化」して、日々の業務の中で実践してみてほしいなと思います。

職場をインクルーシブにするというのは、例えば、「今日からインクルーシブにしましょう」と言って変わる話ではないと考えます。会議の場で、誰かが一度でも「あ、こんなこと言わなければよかったな」と感じてしまうと、職場の心理的安全性は急激に下がってしまいます。

だからこそ、日頃から「違う意見を歓迎する空気」を社員それぞれが当事者意識をもって作ってほしいです。「なるほど、その視点には気づかなかったな」「共有してくれてありがとう!」という言葉が、普段から当然のように飛び交う形が理想です。私自身としても、まずは率先してそういった「他者の視点を歓迎する姿勢」を体現していきたいですし、社員が安心して発言できるようなフォローの仕組みをどんどん作っていきたいです。

――最後に、DEIの推進に取り組む企業担当者や、多様性を生かした組織づくりに関心を持つ読者に向けて、メッセージをお願いします。

伊関:私が大事だと思っているのは、DEIをコーポレート部門などの「特定の部署だけがやっている活動」にしないことです。全社の課題として「自分たちのためにやるんだ」というコミットメントを持ってもらえるか、そういった推進体制をいかに構築するかが、ポイントになると思っています。

組織づくりには、さまざまな方法がありますが、本質は「全員が自分のパフォーマンスを発揮できる環境をつくる」ということ。これからDEIを推進する過程で、多様な意見が出て迷ったときや施策を考えるときには、常にこの本質に立ち返る。それを大切にしながら、一歩ずつ進んでいきたいと考えています。

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