モンゴルをグループのAI開発ハブに――DDAM新社長・鈴木初実が仕掛けるグローバル戦略

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写真:電通デジタルのオフィスを背景に立つ、DDAM社長執行役員の鈴木 初実

2026年4月、電通データアーティストモンゴル(以下 DDAM)の社長執行役員に鈴木初実が就任しました。データサイエンティストとしてAI開発・人財育成に携わりながらグローバル事業を推進してきた鈴木が、社長就任の経緯とこれから描くビジョンについて語ります。

なぜ、DDAMを選んだのか。社長就任の背景とこれまでの歩み

――鈴木さんの現在の役割と、DDAMという組織について教えてください。

鈴木:現在は電通デジタルの子会社、DDAMの社長執行役員を務めています。DDAMはモンゴルに拠点を持つ会社で、デジタル広告のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とAI開発を主要業務としており、現在のメンバーは150人規模。ほぼ全員がモンゴル人で、日本人は私を含む執行役員3人だけです。

私の役割は大きく2つあります。ひとつは経営者として数値達成の責任を担い、電通デジタル、dentsu Japan、電通グループへしっかり貢献していくこと。もうひとつは、生成AI時代に電通グループが勝っていくための武器を作る、その原動力としてDDAMを機能させていくことです。

DDAMはモンゴルという地理的な特性から、英国・シンガポール・インド・台湾・中国・インドネシアといった、グローバル拠点をつなぐハブとして機能する可能性を持っています。電通グループのAI開発のハブになる。それがこの組織のビジョンであり、私のミッションでもあります。

写真:組織と自身の役割について説明する鈴木

――DDAMに関わり始めたのはいつ頃からですか? 社長就任までのキャリアと背景を教えてください。

鈴木:2015年、新卒でデータアーティスト(現・電通デジタル)に入社した頃から、前任のCEOアグチバヤル・アマルサナ一さんや、その繋がりで入社したモンゴル人の方々と日本で一緒に働いていました。

その後、2018年にデータアーティスト・モンゴル(現・DDAM)が設立され、自然とモンゴルとの仕事に深く関わるようになっていきました。2025年4月からは、DDAMのマネージャーに就任し、現地メンバーへの直接指導や組織改善に本腰を入れ始めました。

実際に動き出すと手応えを感じ、もっと本腰を入れようと思っていたタイミングで、社長就任の打診を受けました。「こういう話があったら受けますか?」という相談に「もちろんやります」と即答し、2026年4月に現職に就任しました。

――DDAMでの業務にやりがいを感じるのはどんな瞬間でしょうか?

鈴木:違うカルチャーをもつ人たちと一緒に仕事をして、自分の世界が広がっていくことを実感する瞬間です。モンゴルのメンバーはスピード感が抜群。一方で、合意形成や組織のガバナンスといった日本式の仕事の進め方とは文化が異なります。当初はそのギャップに戸惑うこともありましたが、違いと向き合い、丁寧に対話を重ねていく中で、少しずつ組織がまとまっていくのを実感できる瞬間にやりがいを感じます。

また、入社したときから関わってきたメンバーが成長し、自分たちの仕事に誇りを持ち始める様子を目の当たりにする瞬間も大きなやりがいです。以前は定着率の低さに課題感がありましたが、「ここで働くことが誇り」と思えるような組織に変わってきています。その変化の真っただ中にいられることが、今の自分にとって何よりの刺激です。新しいことが溢れる環境で、毎日本当に楽しく仕事ができていると感じます。

現場と同じ目線に立つマネジメント哲学

――メンバーとのコミュニケーションで、苦労されたことや壁を感じた場面はありましたか?

鈴木:意思決定フローを整える点に苦労しました。関係者で合意を取ってから動くという日本式のやり方とは根本的に違ったカルチャーを持っており、関係者や上司の知らないところで大きな意思決定が進んでいる、という組織としてガバナンスが追いついていない状態もありました。そのスピード感は素晴らしいですし、メンバーも悪意があるのではなく、良かれと思ってやっているというのが難しい点です。良し悪しの価値観が違うので、頭ごなしにダメだとは言えない。

解決策として取り組んでいるのは、主に2つです。ひとつは日本で社会人経験を積んだミドルマネジメントメンバーを中途採用で入れること。彼らと「これは違うよね」というコンセンサスをまず作り、そこからメンバーに伝えてもらう仕組みを整えています。もうひとつは、目につく場面では私自身がメンバーに直接、背景から丁寧に説明すること。面倒に見えても、「なぜそうするのか」を言語化して伝え続けることが、唯一の近道だと感じています。

――社長になった今も現場と同じ視点に立つスタンスを続ける理由を教えてください。

鈴木:社長になって海外出張が増え、就任からの2カ月でモンゴルに滞在できたのはまだ2週間ほど。「あの人、どこに行って、何をしているのか」と思われているだろうなと、正直感じています。だからこそ、現地にいる時間はできるだけメンバーと話すことに使いたいと考えています。

社長室は基本的に開放していて、誰でもいつでも来ていいというスタンスを取っています。社員から1on1を希望されたときは、もちろん断りません。現場のリアルな声を聞かずして、組織の何かを変えることはできないと思っています。

マネージャー時代から、1on1は他の部門より高い頻度でやってきました。そのスタンスは社長になっても変えるつもりはありません。特に今のDDAMは、組織の土台を作っている過渡期にあります。カルチャーも制度もまだ発展途上で、メンバーの不安や疑問を拾い上げながら進めていかなければ組織は強固にならないと感じています。現場と同じ目線に立ち続けることは、今この時期だからこそもっとも重要なことだと思っています。

――グローバルメンバーと関わるなかで、ご自身のリーダーシップ観や仕事のスタンスに変化はありましたか?

鈴木:一番変わったのは、これは暗黙の了解だろうという考え方をやめたことです。英語研修の先生にも「日本を出たら、全部言葉で伝えないと通じないから、とにかく何でも口に出して言いなさい」と言われていたのですが、その通りだと感じました。

「ここまで言ったら失礼かな」と感じる場面でも、言わないと伝わらない。だから今は、インシデントのような大きな場面だけでなく、日常のちょっとした気になることも、背景から丁寧に言語化して都度伝えるようにしています。多少うるさがられても、それをやり続けるというスタンスに変わりました。

DDAMの今後の展望――想いと、これからへの期待

――「電通グループのAI開発ハブになる」というDDAMのビジョンは、どのように生まれたのでしょうか?

鈴木:山本覚CAIO(最高AI責任者)との対話の中でそのアイデアが言語化されていき、ビジョンとして結晶化していきました。

山本のグローバル活動が本格化した昨年、モンゴルに世界各国からメンバーを集めてワークショップを開いたことがありました。そのときに山本が描いてくれた図が、ビジョンの原点です。世界地図でモンゴルを見ると、中央アジアのほぼ真ん中に位置している。「ここが各拠点をつなぐハブになれるんじゃないか」というイメージが、あの図から生まれました。

実際に今、DDAMは英国・シンガポール・インド・台湾・中国・インドネシア・ベトナムといった拠点と連携しながら動いていて、電通デジタル内のグローバル部署とも密接につながっています。そのニーズはとても多くて、追いついていないぐらいのレベルです。モンゴルという拠点の可能性を、まだ全然使い切れていないとも感じています。

写真:パソコンに向かう鈴木

――「売上規模拡大と生産性の向上」という目標を掲げていますが、その裏にある想いを聞かせてください。

鈴木:売上規模はあくまで、DDAMが電通グループの中で「なくてはならない存在」になれたかどうかを測るひとつの指標です。親会社の電通デジタル、そしてdentsu Japanへの貢献を数値でしっかり示せることが、子会社としての存在意義を証明することになる。その意味で、数字に対しては真剣に向き合っています。

一方で、数字だけを追いかけても長続きしないと思っています。DDAMが今抱えている本質的な課題は、メンバーが「ここで働いていることを誇りに思えるか」という部分にある。まだカルチャーも制度も発展途上な組織から、チームとして同じビジョンに向かって走れる組織に変えていく。そこが整って初めて、生産性向上という目標も現実味を帯びてくると考えています。

売上規模を追うことと、組織の土台を作ること。この両輪を同時に回していくことが、今の私のミッションです。

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