電通デジタルが協賛 次世代のデジタル人財を育むデータビジネス創造コンテスト

電通デジタルは、次世代を担うデータ/AI人財の育成を目指し、慶應義塾大学が主催する「データビジネス創造コンテスト」にビジネスパートナーとして協賛しました。本記事では、審査員や社会人コンシェルジュとして参加した電通デジタルの3人に、コンテストに込めた思いと、データ×AI時代に求められる人財育成のヒントを伺いました。

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目次

学生たちの熱意に胸を打たれ、ビジネスパートナーとして参画

――まず、「データビジネス創造コンテスト」の目的について教えてください。

越智:「データビジネス創造コンテスト」は、高校生・高専生・大学生・大学院生が、実際の企業データを活用して社会課題の解決や新しいビジネスアイデアを競う、全国規模の実践型コンテストです。

2014年から年1~2回実施されていて、今回で19回目になります。電通グループは、第1回から協力企業として支援してきましたが、今回は電通デジタルがビジネスパートナーとして参画し、電通デジタル賞も設けました。

山本:私は昨年の第18回に審査員として参加し、学生の皆さんの発表を拝見しました。発表後に涙を流す姿もあり、その真剣さと熱量に本当に感動しました。あまりに心を打たれたので、懇親会で「もっと深く関わりたい」とお話ししたところ、今回ビジネスパートナーとして参加させていただくことになりました。また、弊社のクライアントであるサントリーホールディングス株式会社様にも快くご協力いただき、「水のサステナビリティ」をテーマにした情報発信チャネル「水タイムズ」の動画データなど、さまざまなデータをご提供いただきました。

――今回のテーマ「人と自然と響きあう データ×AIが推進するサステナブル購買」は、どのような経緯で決まったのですか?

山本:このコンテストの直前に、サントリー様と一緒に電通データアーティストモンゴル(DDAM)でトレーニングキャンプを行い「サステナブルな購買体験をどう実現するか」をテーマに議論しました。その場では、環境負荷をかけながら利便性を優先してしまっている現在の購買のあり方をどう変えていくかという問いに、明確な答えを出しきれませんでした。だからこそ、この重要なテーマを、これからの社会を担う学生の方々にも考えてほしいと思ったんです。「お金のためだけに働くのではなく、人の幸せのために働く」という意識を持ってもらいたい。そうした思いから、このテーマを設定しました。

――協賛を通じて、どのような期待を寄せましたか?

越智:学生時代に、企画の立案から実行、さらにビジネスとしての収益設計までを一通り体験できるのは、社会人になるうえでとても貴重な機会だと思います。どのチームも時間をかけて議論を重ねながら、一つの成果物を作り上げていく。そのプロセス自体が、一人ひとりの大きな成長につながると感じています。そのうえで、このコンテストを通じて学生の皆さんに電通デジタルのことを知ってもらうきっかけになればと思いました。

山本:社会課題にしっかり向き合ってほしい。そして、ただアイデアを考えるだけでなく、「実行しきる力」「どうすれば人に伝わるのかを考える力」を身につけてほしいと思いました。そこで今回は、決勝に進んだ全チームに提案内容のCM動画を制作してもらいました。自分たちの思いを、どうすれば最も効果的に伝えられるかを考えてもらう取り組みです。高い志と実行力の両方を身につけてほしい、そんな思いで企画しました。

山本覚(電通デジタル CAIO 執行役員)
山本覚(電通デジタル CAIO 執行役員)

日常の気づきから社会課題解決へ。学生たちが見せたデータ活用の可能性

――今回、どのようなデータが活用されたのでしょうか?

越智:各チームが活用したデータは、サントリー様が提供する「水タイムズ」の動画情報データ(定量・定性)の他、外部の調査データを使っているチームもありました。たとえば、専修大学のキャラメルリボンチームは、「1年間に捨てられているビニール傘が約8000万本」というデータを調べてきて、審査員の先生方も「そんなデータ知らなかった」と驚かれていました。そうしたデータを含め、どのチームも10本前後のデータを組み合わせて、しっかりとプレゼンしていました。

山本:データの組み合わせ方も面白かったですね。慶應義塾大学・慶應義塾大学大学院Ymosチームは、今の若者のリアルな興味である「推し活」を切り口にして、「推し活の普及度」に関するデータを集めて、それを「私の推し水源―若者の共感で広がるサステナブル購買」という企画に落とし込んでいました。ああいう発想のジャンプをちゃんとデータで支えるやり方は、本当に見事でした。

――印象に残ったチームはありますか?

越智:専修大学のカレーパン探偵チームのアプローチがとても印象的でした。普段、私たちがクライアントワークで企画を考えるときは、クライアントの課題から出発して提案を組み立てます。しかしこのチームは、「道端に咲く花がきれいだなと思って、思わず写真を撮りたくなる」という、日常の小さな気づきから企画を始めていたんです。花に水をあげることで街を美しくしていこうという、とてもシンプルで温かい発想で。課題起点ではなく、純粋な発見から生まれた企画という点が新鮮でしたし、自由な発想力にとても刺激を受けました。

小林:私は社会人コンシェルジュとして、ゲーミフィケーションをテーマにした高校生チームを担当しました。彼らには「自分は何が好きなのか」「何を面白いと思うのか」といった自分自身のインサイトを掘り下げることで、アイデアを考えてみるのがよいのでは?というアドバイスをしました。

実際、私も日々の仕事の中で「もっとこうだったらいいのに」という気づきからビジネスアイデアが生まれることがあります。日常の中にこそ発想の種はたくさんある。今回の高校生チームも、今はまだその意味に気づいていないかもしれませんが、数年後に「あのときの経験が今につながっている」と思う瞬間がきっと訪れると思います。そうした意味でも、このコンテストは大きな学びと成長の機会になっていると感じます。

山本:社会人コンシェルジュのメンバーも皆さん本当によくがんばってくれました。動画の中には思わず涙するようなものも多く、歴代の中でも群を抜いて胸を打つプレゼンが多かったと思いますし、「電通グループらしさ」をしっかり打ち出せた大会になりました。

「電通デジタル賞」を受賞した関西学院大学MJAN2025チームのみなさん
「電通デジタル賞」を受賞した関西学院大学MJAN2025チームのみなさん

AI時代に必要なのは、「正解を出す力」ではなく「問いを立てる力」

――今回の協賛を通して得られた手ごたえや感想を教えてください。

越智:手応えとしては、2つあります。

ひとつは個人的な話ですが、私は中高の教員免許を持っていて、教員の道は選ばなかったのですが、いつか学生さんと関わる仕事がしたいという思いがずっとありました。だから今回「生成AIとは?」という基本的なレクチャーをしたり、「これからの時代のキャリアとの向き合い方」について講演したりと、本当に貴重な経験をさせてもらい、教育に関わる夢を、別の形で実現できたという充実感がありました。

もうひとつの手応えは、学生の皆さんの「AIネイティブぶり」です。今回、Googleの動画生成AIツール「Veo3」を使ってもらったのですが、驚いたのは特に使い方を教えなくても皆さんスルスルと使いこなして、とても魅力的な動画を作っていたこと。抵抗感がまったくなくて、次世代の力強さを感じました。

越智 菜々子 (電通デジタル データ&AI部門 AIイノベーション事業部)
越智 菜々子 (電通デジタル データ&AI部門 AIイノベーション事業部)

小林:私は学生の時に、このコンテストに2回出場しました。本戦までは進んだのですが、入賞には届きませんでした。それでもその経験は今の仕事に本当に生きていて、参加したことが電通デジタルに入社する一番のきっかけになりました。

実際にコンテストに参加して、データを使って人のインサイトを形にするというプロセスに強く惹かれ「こういうことがしたい」と心から思いました。いまは実際に定量調査などのデータ案件に携わる仕事をしていて「まさにこれがやりたかった」と思っています。

また、2年前に出場したときに、アクセンチュアの方が登壇してデータ活用の未来について語っていたのですが、今回その方と同じコンシェルジュとして再会しました。その瞬間は本当に胸が熱くなりました。あのときの憧れの人と、今は同じ立場で学生を支援できている。それが一番の感動でした。

山本:一番強く感じたのは「こうした取り組みをきれいごとで終わらせてはいけない」ということです。少し心残りなのは、学生の皆さんが生み出したアイデアを、実際に形にするところまで進められなかったこと。今後は、学生の皆さんにも継続的に関わってもらえる環境をつくり、アイデアを「出して終わり」にせず、「社会に届けるところまで」しっかり支援していきたい。それが次の課題だと思っています。

小林 莉緒(エクスペリエンス&プロダクト部門 ビジネスバリュープロデュース事業部)
小林 莉緒(エクスペリエンス&プロダクト部門 ビジネスバリュープロデュース事業部)

――電通デジタルとして、今回のような活動を含め、どのようにデータ/AI人財育成に取り組んでいきますか?

山本:「データ/AI人財」というのは、AIを開発するエンジニアだけを指す言葉ではありません。データやAIを活用し、ビジネスや社会の中で価値を生み出していく“使いこなす人”も含めて、電通デジタルの全員がその対象だと考えています。

これまでの学びは、誰かが過去に見つけた「正解」を正しく再現することが目的でした。しかし、そうしたことは今後AIが担うようになります。だからこそ、これから人に求められるのは「与えられた問いを解く力」ではなく、「問いそのものを立てる力」です。問いの立て方ひとつで、見える世界も、導き出せる価値も大きく変わります。

この「問いを立てる力」を持つ人が、電通デジタルの中にも、そして社会全体にも増えていくことが大切だと思っています。その力があれば、未知の領域にも踏み出せるし、AI時代にこそ必要とされる人財になれる――私はそう信じています。

――最後に、電通デジタルがAI領域で注力していく領域について教えてください。

山本:これから特に注力すべき分野は3つあると考えています。

まず1つ目は、Google AIモードのような「新しい体験空間」における広告開発です。これは喫緊の課題で、取り組みが遅れれば広告ビジネスそのものの構造が変わってしまう可能性があります。

2つ目は、エクスペリエンス領域へのAI実装です。マルチモーダルAIやエージェントモデルの進化によって、ようやく体験設計そのものをAIが支援できる時代が到来しました。これを本格的に形にしていくことが、今後の鍵になります。

そして3つ目は、AI・グローバル・クリエイティブの3領域を統合することです。AIを本気で推進するということは、必然的にグローバルと向き合うということ。海外のプラットフォーマーとの連携も避けて通れません。

そしてそのうえで重要なのは、AIに尊敬されるほどクリエイティブな人間であること。この3つの軸――AI、グローバル、クリエイティブ――を一体として強化していくことこそが、これからの電通デジタルの進むべき方向だと考えています。

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