AIは使用禁止!戦略思考の伸長に特化した超実践型研修「Strategy BOOT CAMP 2025」とは?

戦略思考を身につけるための社内研修「Strategy Boot Camp」が、今年も開催されました。3年目となる今回は、全社員を対象とした「マーケティングマインド醸成編」と、若手選抜社員を対象とした「戦略思考実践編」の2本立てで構成。本記事では、4~8月にかけて行われた「戦略思考実践編」の概要と、最終プレゼン演習で優勝したチーム5人のインタビューをお届けします。

※2025年9月時点での所属・役職です

目次

Strategy Boot Camp運営メンバー:森永 洋介、寺田 茜、東 美歩、行方 沙絵、大橋 厚志
Strategy Boot Camp運営メンバー:森永 洋介、寺田 茜、東 美歩、行方 沙絵、大橋 厚志

戦略から実行プランの策定までを1人で完遂する超実践型プランナー育成研修

――「Strategy Boot Camp」とはどのような研修ですか?

:「Strategy Boot Campは、電通デジタル ストラテジー部門が主催する、若手プランナーを対象とした実践型研修で、2023年から開催しています。

対象となるのは、広告コミュニケーションにおける戦略設計のスキルを体系的に学びたい方、業務では実行プランをメインで担当しているが戦略とのブリッジ精度を上昇させたい方、競合プレゼンでの戦略差別化のヒントを得たい方など様々で、実際の現場で直面する課題に即してスキルを体系的に身につけられるのが特徴です。

――「Strategy Boot Camp 2025」の概要を教えてください。

:2025年は、昨年の内容を深化させ、クリエイティブとの連携強化と事業会社視点での課題解決スキル伸長を目指す「マーケティングマインド醸成編」と戦略立案からエグゼキューション(実行)までを実践形式でプランニングする「戦略思考実践編」の2本立てで構成しました。「マーケティングマインド醸成編」は希望する全社員を対象にオンラインで実施しました。「実践編」はマーケティングコミュニケーション領域とグローバルセンターの社員から、本人の希望または上長の推薦によって選抜されたメンバーを対象に、汐留本社でのリアル講義を中心に行いました。

特に「戦略思考実践編」では、1つの商材を題材に、市場分析、顧客分析、競合分析、課題設定、クリエイティブブリーフ作成、メディアプラン作成、企画書の一本化、プレゼンテーションまで、コミュニケーション提案に必要な一連のプロセスを実践形式で学びます。プランニングにおける個々のステップが実務さながらの流れで学べる内容になっています。

この研修ではあえてAIの使用を禁止しました。前提として普段は実務でAIを活用する場面は多岐にわたって増えています。一方で、戦略策定においてAIを効果的に活用するためには、プランナーとしてのキャリアの初期段階で「自分の頭で考え、手を動かし、実際に書く」という経験が欠かせないと考えています。その経験をこの研修で得てほしい、というのが意図です。

東 美歩(電通デジタル ストラテジー部門 統合プランニング2部 第1グループ グループマネージャー)
東 美歩(電通デジタル ストラテジー部門 統合プランニング2部 第1グループ グループマネージャー)

1つの商材を通して分析からプレゼンに至るステップを各講義で習得

――「戦略思考実践編」はどのような内容ですか?

:今回の研修プログラムは、次の7つのステップで構成しています。

  1. 1.
    「0次分析」
    戦略立案の最初に行う基本の分析方法を習得します。電通グループが保有する大規模調査分析ツールなども用いながら、定量・定性の観点で市場分析、顧客分析、競合分析を行います。参加者の中には分析経験がない方もいるため、まずは分析のやり方を学ぶ第一歩として設定しました。
  2. 2.
    「課題を見極める」
    分析で見えてきた事実を基に商材の課題を言語化し、チームに共有する資料に落とし込むことにトライします。分析から課題の本質を導き出す方法を身につけます。
  3. 3.
    「クリエイティブへのブリッジ」
    設定した課題をクリエイティブ表現に落とし込む際、どのようにクリエイティブチームに橋渡しを行うかを学びます。表現を担うチームに戦略を伝える重要なプロセスです。
  4. 4.
    「メディア接着」
    クリエイティブチームが制作した表現案を、どのメディアで展開することで、ターゲットの意識行動変化を起こせるかという戦略から戦術へのブリッジ手法を学びます。
  5. 5.
    「メディア具体プラン」
    ④で立てたメディア戦術方針を具体的なメディアプランへと落とし込んでいきます。
  6. 6.
    「企画書の流れを作る」
    ①〜⑤で作成した内容をまとめ、一連の企画書に仕上げます。ここまでの流れを研修を通して一人で担うことで、戦略に基づいた戦術の計画力とアウトプット力を習得します。
  7. 7.
    「プレゼン演習」
    総決算となるステップです。事前に5人1組のチームに分かれ、提示された課題をもとに4週間かけて戦略・企画・メディアプランを盛り込んだ企画書を作成。最後に審査員の前でプレゼンテーションを行い、優勝を決定します。

――この7つの講義の中で、特に制作に力を入れたものはありますか?

:あえてひとつ挙げるなら②「課題を見極める」です。AIに依存しないための地力を身につけるうえで、もっとも重要な部分だと考えています。

普段の業務で分析そのものはAIに任せることもできますが、「なぜその問いを立てるのか」「分析結果のどのポイントがクライアントの事業課題解決につながるのか」AI分析の前提となるプロンプト作成と結果を読み解くセンスは、人間が磨くしかありません。

この講義を通じて、そうした問題提起視点の重要性を理解してもらいたいと思っています。AIの提案をただ受け入れるのではなく、最適な結果を選び取る力、さらに望ましいアウトプットを引き出すためにプロンプトを設計する「先読み力」を養ってもらうことも狙いとしています。

――受講者からの反響はいかがでしたか?

:全体的にとても好評で、参加者ほぼ全員がスキル向上実感があったと回答してくれました。市場分析や戦略骨子を策定する自信度なども飛躍的な向上が見られています。講義別では「クリエイティブへのブリッジ」にて受講者が作成した「戦略骨子シート」に対して、講師であるクリエイティブディレクターから45人の参加者に直接フィードバックを受ける機会を設けましたが「表現へのブリッジという目的における戦略骨子へのフィードバックが非常に具体的で、どう書けばクリエイティブが表現を膨らませやすくなるのか、非常によく理解できた」「普段の業務ではクリエイティブディレクターから直接フィードバックしていただく機会はなかなかないので貴重な体験になった」などの声が寄せられ、特に高い評価を得られたと感じています。

――来年の「Strategy Boot Camp」開催に向けて、抱負をお聞かせください。

:戦略プランニングにおいてもAI活用は喫緊のテーマであり、現場ではどんどん活用が進んでいます。一方で前述の通り、AIを効果的に活用するためには、プランナー一人ひとりの地力を伸長させることが欠かせません。その力を高めていくことこそ、この研修の大きな意義だと考えています。

1つの商材を題材に、企画書を最初から最後まで作りきる講義形式は、参加者の集中度や最終プレゼンでのアウトプットの質の高さを見ても非常に有用でした。だからこそ、来年も基本的には今年の内容を継続し、その成果を電通デジタル全体に広げていきたいと思います。


優勝チームインタビュー

優勝チームインタビュー画像

――優勝おめでとうございます。まずは「戦略思考実践編」に参加した動機をお聞かせください。

井口:戦略から戦術まで一連のプロセスを実践で学べると知り、経験を積みたいと思ったのが一番の理由です。参加条件を完全には満たしていなかったのですが、志望理由を評価してもらえると聞き、自分よりも経験豊富で、熱量の高いメンバーと刺激し合えるのではないかという期待もあり、応募しました。

滝口:私は実務の中で戦略立案にも関わる機会があり、戦略から戦術に落とし込むプロセスを体系的に学びたいと考えました。戦略の専門家がどのように考え、作り上げているのかを理解できれば、実務でのディレクションもスムーズになると思い応募しました。

磯川:大きく2つ理由があります。1つ目は、過去に参加した方から「満足度が高く評判が良い」と聞いていたことです。2つ目は、戦略からメディアプランまで一貫した企画書を書けるようになりたいと思ったことです。普段はメディアプランニングが中心で、分析力が不足していると感じていたので、研修を通じてその力を高めたいと考えました。

――ブートキャンプに参加して、身についたスキルや知識にはどのようなものがありましたか。

滝口:もっとも大きな学びは、戦略を立てる際に「インサイト」「コミュニケーション」を「コンセプト」でしっかり接続することの重要性です。プレゼンテーションを通じてそこが肝になると実感しました。行き詰まった場面では、メンターや仲間からのフィードバックを受けて、方向性を定めて進めることの大切さを改めて認識できました。

桝中:私はこれまでメディアプランニングツールやインサイト分析ツールを使った経験がなかったので、その使い方を学べたのは大きな収穫です。さらに、資料作成の段階で「ストーリーをどう描くか」「説得力をどう持たせるか」といった点も学びました。数字の見せ方や資料の構成によって説得力が大きく変わることを実感し、とても身についたと思います。

――研修では「AIを使ってはいけない」という制約がありました。AIを使わないプランニングを行ってみて、どのように感じましたか?

峰田:普段の業務でもAIを使っていますが、どちらかというとルーティン業務の工数削減や補助的な役割にとどまっています。一方、競合プレゼンでは「競合と、どこを同質化させ、どこを差別化するか」が重要になります。オリジナリティを出す部分は、自分自身の経験や考えからしか生まれないと改めて感じました。

滝口:ユーザーの生の声を聞き、そこからインサイトを抽出してコンセプト化するプロセスは、AIが出すものよりも納得感がありました。「やっぱりそうだよね」と腹落ちできるのは、自分たちが実際に経験し、直接聞いた声から得たインサイトだからだと思います。私自身、プランニングをすべてAIに任せたことはありませんが、今回自分たちでゼロから取り組んだことで、今後AIを活用する際に「どんな問いを立て、どう引き出せばよいか」をより明確にできたと思います。

――このメンバーで優勝できた一番大きな要因は何だったのでしょうか?

井口:直前の1週間は競合コンペ並みに時間を使い、頻繁に集まり、内容を練り上げたことで、一次審査では3位でしたが、二次審査で逆転できました。最後まで諦めずに、提案の肝となるコンセプトを考え抜き、企画書に落とし込めたことが大きいと思います。

磯川:共通していたのは「優勝したい」という強い思いです。コンセプトを考えるところには特に多くの時間をかけました。全員が強いモチベーションを持ち続けられたことが、最終的に優勝という結果につながったのではないかと思います。

――今回の研修で得た学びを、今後の業務にどう生かしていきたいですか?

桝中:改めて振り返ると、既存業務の中で説得力の高い新規提案や自主提案があまりできていませんでした。今回得た知識を生かして、既存クライアントに対しても納得感の高い新しい提案を積極的にしていきたいと思います。

峰田:学びはすべて業務に生きると思いますが、特に優勝できた経験が大きな自信になりました。AIは正しい”風”の答えを出してくれますが、面白さやワクワク感は欠けがちです。「正しくて、おもしろい」提案こそ人を動かすのだと実感しました。マインドセット的な気づきですが、この姿勢を持って日々の業務に臨んでいきたいです。


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