衝動買いは「偶然」ではなく「設計」できる。データから導く、偶発購買マーケティングの実践論

「衝動買いは「偶然」ではなく「設計」できる。データから導く、偶発購買マーケティングの実践論」背景は登壇者の集合写真。左から門脇、森永、草柳

SNSの浸透により、生活者の購買行動は従来モデルでは捉えきれない変化を見せています。電通デジタルはこうした動きを踏まえ、「偶発購買」という新たな視点で衝動的な購買体験の設計に着目し、偶発購買に関する独自調査を実施しました。本記事では、調査レポートから見えた最新の購買行動の特色と商品カテゴリー別の特徴を探ります。

偶発購買は設計できる?その仕組みと調査の狙いに迫る

――「偶発購買マーケティング®」とはどういうものですか?

森永:電通・電通デジタルが共同開発した生活者向けのマーケティング手法です。生活者が日常の中でふとした情報に触れ、感情が動くことで、本来予定していなかった商品やサービスを思わず購入してしまう。そのプロセスに着目しています。

従来、こうした行動は「衝動買い」など偶然のものと捉えられてきましたが、本手法ではブランド側が情報との接点を意図的に設計することで、再現性のある戦略へと昇華させることを目指します。

写真:森永 洋介
森永 洋介 (電通デジタル マーケティングプランニングセンター プランニング2部 事業部長)

――「偶発購買実態調査2026」を制作した背景を教えてください。

門脇:2025年7月に「偶発購買マーケティング®」をリリースしたところ、クライアントだけでなく社内からも「自社のブランドやサービスでも偶発購買は起きるのか」という問い合わせが多く寄せられました。

発生自体は説明できても、「どの程度起きるのか」を具体的な数値で示すことができていなかったため、実態を定量的に把握し、明確に示したいと考えたのが調査実施の背景です。

写真:門脇 聖
門脇 聖 (電通デジタル マーケティングプランニングセンター プランニング2部)

――「偶発購買実態調査2026」で調査対象としたカテゴリーと、カテゴリーの選択理由を教えてください。

森永:今回の調査では、「ラグジュアリーブランド」「カードローン」「ビール」「生命保険」「外食」「マンガアプリ」「家電」「戸建て住宅」「スマホ・PCガジェット」「自動車」「転職・求人サービス」「メイクアップ化粧品」「スキンケア化粧品」「銀行口座開設」「オンライン旅行サイト・航空券」の15カテゴリーを対象としました。

選定にあたっては、「ビール」や「外食」「化粧品」といった消費財だけでなく、「生命保険」や「戸建て住宅」「転職・求人サービス」など、一見すると偶発購買が起きにくい高価格帯・サービス領域も含め、意図的に幅広くカバーしています。

カテゴリーごとに15~30ブランドをピックアップして、偶発購買、計画購買の比率をまとめ、その差を比較することで、偶発購買がどのカテゴリー・どのブランドでどの程度起きるのか、その特性を明らかにすることを狙いました。


出会い方が購買を変える。偶発購買を生む接点デザイン

――「偶発購買実態調査2026」の結果に関して、印象的だった点を教えてください。

草柳:まず、偶発購買はあらゆるカテゴリーで起こることが分かりました。「ラグジュアリーブランド」や「生命保険」といった高関与商材でも、他と大きく変わらない割合で発生していた点は特徴的です。

写真:草柳 元裕
草柳 元裕 (電通デジタル マーケティングプランニングセンター プランニング2部)

森永:一般的には低価格帯の商品で衝動買いが起きやすいと考えられがちですが、高関与商材でも多く見られた点は意外性があるポイントだと思います。本調査でもその点は重点的に解説しています。

15商材カテゴリー別偶発購買比率。ビールが30%、生命保険とカードローンが23%、外食と漫画アプリが22%、ラグジュアリーブランドが21%、戸建て住宅とスマホやPC用ガジェットとメイクアップ化粧品とスキンケア化粧品と銀行口座開設が17%、家電と自動車が16%、転職や求人サービスが14%、旅行サイトや航空券が12%。

草柳:また、SNSの利用時間帯も分析したところ、平日の夜と休日の昼に偶発購買につながる回遊行動が活発であることが分かりました。こうした一息つくタイミングでの情報接触が、偶発的な購買を後押ししていると考えられます。

さらに、メジャーブランドよりも中位〜新興のチャレンジャーブランドのほうが、偶発購買の比率が高いという結果も得られました。これが今回の大きな発見です。

そこで本調査では、「ビール」「家電」「スキンケア化粧品」の3カテゴリーに着目し、チャレンジャーブランドの成長戦略として「偶発購買マーケティング®」が有効であることを言及しています。

――偶発購買が起きやすい法則性のようなものは見えてきたのでしょうか?

門脇:偶発購買のきっかけはカテゴリーごとに大きく異なることが分かりました。例えば「ビール」では店頭での接触が大きく影響しており、もともとは別の商品を買うつもりでも、コラボデザインなどに惹かれて購入するケースが多く見られます。

一方で「家電」では、店頭での接客が強く影響します。事前に情報収集しても決めきれないまま来店し、熱量の高い店舗スタッフのおすすめを受けて、当初検討していたものとは異なる商品を購入する、といったケースが目立ちました。

このように、「偶発購買実態調査2026」ではカテゴリーごとに偶発購買発生のきっかけや場所が異なることを明らかにしています。従来は感覚的に語られていたこうした違いを、定量的に示せた点が大きな発見でした。


電通デジタルが可能にする偶発購買マーケティング

――偶発購買に関する取り組みとして、電通デジタルならではの強みはどこにあると考えていますか?

草柳:大きく2つあります。1つは、専門の組織を持っている点です。電通デジタルには社内横断の「偶発購買マーケティングユニット」があり、戦略立案、クリエイティブ開発、メディアやプラットフォーム活用までを担っています。これにより、偶発購買を再現性のあるマーケティング施策として設計・実行できる体制が整っています。

もう1つは、独自ソリューションである「トライブドリブンマーケティング(TDM)」との掛け合わせです。Xの全量データをもとに、共通の興味関心やライフスタイルを持つ生活者群(トライブ)ごとに分析することで、より深くタイムリーに顧客を捉えることができます。これにより、SNS上での回遊や接点設計を精緻に行える点は、電通デジタルならではの強みです。

門脇:加えて、「偶発購買マーケティング®」を定義した上で、いわゆる「衝動買い」や「SNS売れ」といった現象をソリューションとして体系化している点も特徴です。実際の事例も増えており、カテゴリーごとの型化が進みつつあることも競争優位性につながっていると考えています。


“知られていない”が強みになる。チャレンジャーブランドのための逆転戦略

――「偶発購買実態調査2026」をどのような形で活用してほしいと考えていますか?

森永:本ホワイトペーパーは「チャレンジャーブランドの逆襲」というサブタイトルの通り、特にメジャーブランドに挑む立場にあるマーケティング担当者の方に読んでいただきたいと考えています。

ブランドの知名度が低いことは弱点ではなく、むしろ武器になり得る。そうしたパラダイムシフトを持ち帰っていただければ嬉しいです。

衝動買いは偶然の産物と捉えられがちですが、意図的な出会いを設計することで、ブランドの成長につなげることが可能です。こうした取り組みを再現性のある戦略として活用できるという、新たな可能性を感じていただきたいと思っています。

門脇:偶発購買と計画購買の比率はおよそ2:8と、どのブランドにとっても無視できない規模です。今後は「偶発購買は起こるもの」という認識をマーケターの共通理解として広げていきたいと考えています。

草柳:「偶発購買マーケティング®」と計画購買を組み合わせたハイブリッド型のアプローチこそが、これからのブランド成長に重要です。その設計を、ぜひご一緒できればと思います。

偶発購買マーケティング®について、詳しい資料はこちら


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多くの支援実績を持つ専門人財による、価値創造と顧客体験の統合プランニング。既存施策から予兆分析に基づく新規商品・サービス開発まで支援します。

PROFILE

プロフィール

森永 洋介

マーケティングプランニングセンター プランニング2部 事業部長

2016年の電通デジタル設立時から参画。オンオフ問わず、広告・CRM領域横断で全体最適をおこなう統合プランナーとして、戦略策定から打ち手の実行まで各種案件に携わっている。

森永 洋介

門脇 聖

マーケティングプランニングセンター プランニング2部

2017年に電通デジタルへ入社。クリエイティブストラテジストとして、コーポレートブランディングやパーパス・CIVI策定及び企業広報を得意とし、手掛けた戦略プランニング及びクリエイティブは受賞・メディア掲載歴あり。直近では「SNSを基点に商品・サービスの衝動買いを設計する、偶発購買マーケティング®」アプローチを開発し、社内外で執筆活動も行う。

門脇 聖

草柳 元裕

マーケティングプランニングセンター プランニング2部

2025年9月に電通デジタルへ入社。クリエイティブストラテジストとして、ブランドコミュニケーション戦略立案と実行の専門領域に加え、デジタルマーケティング全般にも領域を広げながら、統合的な戦略立案に取り組んでいる。

草柳 元裕

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