グローバルで拓く次世代CX。Salesforce・Merkle・電通デジタルが描くAIエージェント時代の顧客体験

写真:電通デジタルとSalesforceとMerkleがCXとEXの価値創出を語る記事のメインビジュアル

AIの進化が加速する中、電通デジタルはSalesforce、Merkleと共に、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)の新たな価値創出を目指し、パートナーシップを強化しています。当社の国内における実行力、Salesforceの最新技術、Merkleのグローバルな知見を結集し、日本企業が直面する人口減少やDX推進の停滞などの課題解決に挑みます。本鼎談では、AIエージェントによる業務改革や、企業の未来像「エージェンティック エンタープライズ」について、各社リーダーが語り合いました。

協業による三位一体で描く顧客価値の進化

岡田祐輔(電通デジタル):3社協業の大きな特徴は、当社がグローバルネットワークを持ちつつ日本を拠点とし、日本市場に対して深い、そして包括的なケイパビリティを有している点です。グローバルネットワークとしてのdentsu(電通グループ)は、2025年 Gartner®がデジタル上での顧客体験サービス企業を評価する「Magic Quadrant™ for Digital Experience Services」において、Merkleとともに 2年連続で「Leader」に選出されています。

MerkleのグローバルなCXネットワーク、Salesforceが提供するCustomer 360による全方位的な顧客体験、そこに当社の強みが組み合わさることで、非常にユニークな三位一体の体制が実現しています。日本に根ざしたネットワークとグローバルに展開するネットワークを、Salesforceプラットフォームを活用して連携させる――そういった協業モデルを実現できれば、大変有意義だと考えています。

写真:日本拠点とグローバル網を結ぶ三社協業の強みを語る岡田 祐輔
岡田 祐輔(株式会社電通デジタル 執行役員)

ミシェル・メイヤー氏(Merkle):業界はかつてないスピードで変化しており、企業にとっては大きなチャンスである一方、多くの課題にも直面しています。1社単独で革新を進める場合、膨大なコストや人財不足といった壁が立ちはだかり、せっかくのソリューションもすぐに陳腐化しかねません。だからこそ、今回のようなパートナーシップに未来があると考えます。3社が互いの強みを補完し合うことで、クライアントに最適な価値を提供でき、それはクライアント、パートナー、業界全体にとって“Win-Win-Win”となる関係だと確信しています。

また、Merkleは日本国外において、20年以上にわたるSalesforceとの深い協業を通じ、グローバルトップパートナーとして数多くの実績を積み重ねてきました。すでに数千人規模のAgentforce人財を育成しており、グローバルで得た知見やユースケース、そして課題を乗り越えた経験を、日本のクライアントにもスピーディーにご提供していきたいと考えています。

写真:急速な業界変化に3社連携の必要性と意義を語るミシェル・メイヤー氏
ミシェル・メイヤー(Michel Mayor)氏(Merkle Inc. グローバルSalesforceプラクティスリーダー)

浦野 敦資氏(セールスフォース・ジャパン):「エージェンティック エンタープライズ」の時代が本格化する中で、今後の市場規模(TAM:Total Addressable Market)はビジネスオペレーションのアウトソーシング領域まで拡大し、数年以内に13兆ドル規模に達すると見込まれています。こうした巨大市場で、オペレーションやCX領域のクライアントを支援するには、電通デジタルが持つケイパビリティやクライアントとの強いリレーションが極めて重要だと考えています。これまでは日本国内での協業が中心でしたが、今後さらなるグローバルな連携とパートナーシップの拡大に期待しています。

写真:国内中心からグローバル連携拡大への期待を述べる浦野 敦資氏
浦野 敦資(株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長)

「人とAIが共創する時代」の新しいCXの可能性を探る

岡田:AIエージェントは、生活者向けの顧客体験(CX)だけでなく、企業内部の従業員体験(EX)にも大きな変革をもたらすテクノロジーです。生活者向けには、あらゆる接点でスムーズな情報取得や、個々に最適化されたパーソナライズ体験が実現しつつあります。

しかし、AIの真価が発揮されるのは、営業やマーケティングなど、複雑化するオペレーション領域の変革です。今後は、CXにとどまらず、企業全体の業務をAIでどう拡張し進化させるかが重要になるでしょう。

また、CXと同様にEXも非常に重要なテーマです。文化的な側面と実務的な側面の両方から、従業員の体験価値をいかに高めるかが今後の大きな課題になると考えています。

メイヤー:まさにその通りです。どこで人間がAIエージェントと協働し、どこを分担するのかは大きな業界課題です。ただコスト削減のためだけに人間の仕事をAIエージェントに置き換えるのでは、企業や顧客、ひいては社会にも良い結果は生まれません。

AIエージェントは業務プロセスの最適化や、オペレーションのギャップを埋める役割を担います。電通デジタルだけでなく、日本国内電通グループの知見との連携により、より大きな価値が生み出されます。実際に、広く導入されているAIエージェントの中にも、こうしたパートナーシップから生まれた事例が数多くあります。

浦野:AIエージェントは「自ら考え行動する同僚」のように、企業の目標達成を強力にサポートします。日本では少子高齢化と労働人口減少が進み、AIへの期待は拡大していますが、高度な顧客コミュニケーションの完全自動化はまだ現実的とは言えません。私たちが提唱する「エージェンティック エンタープライズ」は、AIを効率化手段にとどめず、人とAIエージェントが協働し、創造的かつ高付加価値な働き方へシフトさせる組織変革の中核と位置付けています。

その基盤となるのが、世界シェア20%を誇るCRM領域と、今後注力していく顧客データプラットフォーム「Data 360」です。こうしたデータは、AIエージェントが文脈理解と正確な業務遂行を担うための土台です。AIエージェントの活用は既存業務にも影響を与えるため、LLMと企業データの安全な連携が必要不可欠です。このような変革を推進する中で、電通デジタルとのパートナーシップが非常に重要だと考えています。

※出典:「Worldwide Semiannual Software Tracker」(IDC、2025 年 4 月)


グローバル視点で読み解く、日本市場のAI・CX課題とチャンス

岡田:グローバルな観点から見て、日本企業におけるAI活用やCX(顧客体験)戦略には、どのような課題や特有の傾向があると感じていますか?

浦野:日本企業には、テクノロジー自体の課題と、日本固有の構造的な課題の両方があると考えています。最大の課題は、人口減少、つまり労働人口が減少する中でどう企業成長を実現するかという点です。その答えの一つが、自律型AIエージェント(Agentic AI)の活用だと思います。

もう一つの課題は、多くの大企業がAI導入に取り組んでいるものの、十分な成果を出せている例がまだ多くないところです。私たちは、パートナー企業との連携によって「自律型AIエージェントを活用して確実な成果を出す」支援を重視しています。

そのなかで大切にしているのは、漠然とした不安を丁寧に解消しながら、従来型の1〜2年かかる大規模プロジェクトではなく、2週間から1か月程度の短期PoCによって、小さくても明確な効果=Quick Winを積み重ねていくことです。ROIが見込める領域が見つかれば、そこから一気に大きく展開していく。このようなアプローチを私たちは実践しています。

メイヤー:私もその通りだと思います。スピードこそが成功の鍵です。多くの企業は「AIを導入しないといけない」と考えてプロジェクトを進めますが、最も重要な「なぜやるのか(Why)」という本質的な問いが置き去りになってしまいがちです。そのWhyを、電通デジタル・Salesforce・Merkleの3社がともに定義できる点に、この協業の大きな価値があると思います。

写真:3社協業でAIエージェント活用を推進する方向性を語る岡田(左)・ミシェル・メイヤー氏(中央)・浦野 敦資氏(右)

Whyが明確になれば、How(どう実行するか)は格段に見つけやすくなります。また、短期間でROIを出していくことは、Agentforceへの取り組みやAIトランスフォーメーションを着実に推進するうえで非常に重要です。

岡田:私もまったく同感です。「なぜやるのか(Why)」という根本的な問いが明確であることが成功の第一歩になります。当然、実行(How)も大切ですが、Whyをしっかり定義できれば、成功への道筋は大きく近づきます。私たち3社であれば、クライアントの成功に向けて最適なアプローチは何か、そのWhyを共に見極めながら伴走できると考えています。


AI×共創が生み出す「理想のCX」と日本市場の進化

岡田:日本企業は、人口減少や労働力不足、働き方の変化などさまざまな課題に直面しています。これらの課題を乗り越えるために、Merkleと電通グループといった「グローバル×ローカル」の連携によって、どのような価値を提供できるとお考えですか?

メイヤー:電通グループの強みは、グローバルスケールで協業できる能力です。たとえば、電通グループのスペイン拠点であるOmegaではAgentforceを活用した先進的な取り組みが進んでおり、その知見をワークショップやEnablement(人財育成プログラム等)を通じて日本を含む各市場へ展開しています。ローカルの文化やニーズをそのままコピーすることはできませんが、グローバルの知見をローカルに応用することで、新たな価値を生み出せます。電通デジタルによる日本市場への深い理解と、Merkleのグローバル専門性の融合によって、単なる課題解決を超えた変革や、新しいCXの標準を生み出せると考えています。

岡田:現在、具体的なコラボレーションが動き始めています。電通デジタルがクライアント対応およびプロジェクト管理を担い、Merkleの開発力を活用して実装するプロジェクトが進行する一方で、Merkle側から「クライアント対応も行うので電通デジタルのリソースを活用したい」といった逆提案も増えています。こういった協業の芽が次第に形になってきており、グローバルから学んだ知見を日本の市場へ橋渡しできる環境が整いつつあります。今後は、こうした取り組みをさらに拡大していきたいと考えています。

岡田:ここまでの議論を踏まえて、お二人が考える「理想のCX」とはどのようなものか、お聞かせください。

浦野:私たちが目指す理想に最も近いのは、「エージェンティック エンタープライズ」だと考えています。Salesforceでは「自分たちが最初の顧客になる」という「カスタマーゼロ」の思想を重視しており、実際に私たち自身がエージェンティック エンタープライズ化を推進しながら、リアルタイムで改善し、成果を積み上げています。その実例や成果をクライアントにも実際に体験していただきたいと思っていますし、パートナーの皆さんと共にこの変革を進めていければと考えています。

メイヤー:Salesforceが「カスタマーゼロ」なら、私たちは「カスタマー1」です。実際、私たちは電通グループ内でAgentforceのユースケースを実装しており、一つは認定資格や経験に基づいて最適な人財を見つけるグローバルエージェント「Trailblazer Scout」、もうひとつは自社用のSDRエージェントです。SDRエージェントについては、Agentforce World Tour Londonで紹介予定です。このように私たち自身も、Salesforceの実践を学びつつ、同じ方向に歩み始めています。

今回のコラボレーションを通じて、Agentforceを軸にした長期的な価値創造が実現できると強く感じています。単なるパートナーシップを超えて、クライアントに確かなインパクトをもたらす存在になれるはずだと期待しています。

岡田:ディスカッションを通じて改めて感じるのは、AIエージェントが企業にとって極めて重要な存在となってきていることです。AIエージェントは単なるツールではなく、組織の成長を支えるイネーブラーであり、変革のディスラプターであり、さらには人間のバディとして機能します。しかし、単に導入するだけでは本当の価値は生まれません。テクノロジーと同じくらい、われわれ自身の実践力や運用ノウハウが不可欠です。

今後は、Salesforce、Merkle、電通デジタルの3社が生み出すスケール感や総合力を掛け合わせ、「どう技術を使い、どう運用するか」という現場視点を重視しながら、実効性のある変革を進めていきたいと考えています。技術に過度な期待を寄せるのではなく、運用と知見の蓄積を通じて、クライアントにとって本当の価値を生み出すAI活用を目指していきたいです。

PROFILE

プロフィール

岡田 祐輔

執行役員

電通グループの国内市場におけるExperience 6 Commerce領域を管掌し、電通デジタルではExperience & Commerce部門をリード。電通入社後、デジタルマーケティング部門にて、セールス・アライアンス・事業開発に従事。その後、マサチューセッツ工科大学でMBAを取得。株式会社電通グループの経営企画部門を経て、2022年から2025年まで電通インターナショナルのCXM(顧客体験マネジメント)サービス領域をリードしているMarkle / ニューヨークにて、Transformation DirecterとしてExperience & Commerce部門でクライアント開拓・アライアンスを担当。2025年4月より現職。

岡田 祐輔

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