「BEAUTY ONE」が3つの事例で示す、美容マーケティングの課題と伴走のかたち
電通デジタルのアドバンストクリエイティブセンター ブランデッドダイレクトクリエイティブ事業部を中心に2026年6月に始動した、美容業界向け横断クリエイティブ研究チーム「BEAUTY ONE」。その発足を伝えたプレスリリースと記事は想定を超える反響を呼び、化粧品メーカーにとどまらず、製薬やヘルスケア、電通グループ内からも多くの相談が寄せられました。本記事では、主要メンバー3人に、寄せられた声や実際に案件化した3つの事例、ラボラトリーとして美容業界に知見を還元していく「BEAUTY ONE」の姿勢と今後の展望を聞きました。
求められていたのは「答え」ではなく「一緒に考えてくれる相談相手」
――6月に「BEAUTY ONE」始動のプレスリリースと、チーム発足の背景を紹介する記事を公開しました。反響はいかがでしたか?
伊藤:想像以上の反響でした。リリース直後から10媒体以上のニュースメディアに取り上げていただき、2週間で20件弱のご相談が寄せられました。4カ月経った今も、お問い合わせは続いています。
何より印象的だったのは、「まさにこういう相談相手を探していた」「自分たちだけでは整理できない課題を一緒に考えてほしい」という声です。前回、BEAUTY ONEは、「戦略・広告・ソーシャルが三位一体となってブランデッドダイレクトを体現するチーム」とお話ししましたが、まさにその力に期待してくださる方からのご相談が多く、とても嬉しく思っています。
――どのようなご相談が多かったのでしょうか?
伊藤:多かったのは、「ターゲットと訴求方法を一緒に考えてほしい」というものです。若年層の伸び悩みにどう向き合うか、商品をどう売るか。現在の制作チームだけでは解決できない課題を一緒に考えてほしい、という声もありました。
相談者も、化粧品ブランドのマーケティングやクリエイティブの担当者に限らず、製薬、ヘルスケア、健康食品など美容と隣接する領域に広がっています。いずれも提案や制作物を求めるよりも、まず課題を整理し、方向性を一緒に考えてくれる相手を求めていると感じます。
大川:グローバル企業からは、「海外では日本と異なるアプローチを取るべきだと思うが、どうすればいいか」という広い視点のご相談もありました。
伊藤:電通グループ内からも、国内の営業やビジネスプロデューサーに加え、海外グループ会社から声がかかりました。特に多かったのは、「クライアントへの提案が従来の切り口にとどまり、新たな打ち手を見いだしにくい」といった課題感や、「美容領域に詳しいメンバーを交え、クライアントと一緒に新たな可能性をディスカッションしたい」というニーズでした。
私たちは営業や担当者に代わって前に出るのではなく、彼らがより良い提案ができるよう後方から支えたいと考えています。BEAUTY ONEの知見を囲い込まず、グループのフロント担当者と共有し、より多くのクライアントに還元する。それも私たちの大切な役割です。
内製、ハイブランド、薬機法。3つの事例に見る伴走のかたち
――既にいくつか事例も生まれているそうですね。
伊藤:前回の記事を見てご相談をいただいた大手化粧品ブランドでは、クリエイティブ領域のコンサルティング支援へと発展しました。
同社は制作を内製で行ってきましたが、長く同じ体制が続いたことで、外部の視点を取り入れにくいことや、施策を数値と結びつけて評価しにくいこと、改善のスピードを上げたいという課題を抱えていました。
私たちは、内製チームの底上げこそがクライアントへの還元につながると考えました。対話を重ねるなかで、支援の範囲はバナーから動画、さらにワークショップへと広がっていきました。
現在は、同社グループ内の他ブランドにも知見を共有する動きが生まれています。案件の拡大以上に、クライアントの中で継続的な改善の動きが生まれたことに、大きな価値を感じています。
福井:別の大手化粧品メーカーのハイブランドコスメでは、社内のデザイン部がクリエイティブを制作し、電通デジタルが運用を担当していましたが、数字が伸び悩んでいました。
ハイブランド全般に言えることですが、ブランドを守る意識が強く、獲得型のアプローチを取りにくい。デザインは崩せず、スタイルやメッセージも限られる。その制約のなかでどう成果を出すか、というご相談でした。
私は長年ハイブランドを中心に担当し、こうした相談に何度も向き合ってきましたが、まず大切なのはユーザーインサイトを改めて深掘りすることです。ブランド側はどうしても自社の魅力を前面に押し出したくなりますが、生活者には「すごい」と一方的に訴求しても響きにくい。ブランドを守りながら、生活者の関心を引くにはどうすればいいか。最初にそこを一緒に考えました。
伊藤:インサイトを見つけるため、BEAUTY ONEのメンバーでディスカッションを重ねながら、新たに調査・分析を行いました。各種リサーチや競合調査、3C分析、ヒューリスティック分析に加え、BEAUTY ONE BOOKに蓄積された市場の傾向や過去の知見も参考に、生活者のインサイトや打ち手の仮説を導き出しました。
調査や分析自体は基本的なものですが、異なる専門性を持つメンバーの知見を持ち寄り、多角的に検討することで、私たちとクライアントが同じ視点で現状を捉えられるようになります。なぜ成果が出ないのか、どうすれば打破できるのか。課題感を共有し、ともに解決策を探っていく第一歩になります。
大川:さらに別の化粧品メーカーのスキンケアブランドは、当社内と担当する電通のBP局から相談を受けた事例です。新商品の目玉となる効能を、薬機法の制約でストレートに打ち出せない。どうすれば商品の魅力を広く伝えられるか、というご相談でした。
まず競合調査を行い、その結果を踏まえて、薬機法に抵触せずに魅力を発信する方法をメンバーで議論し、結論をお伝えしました。
知見や成果を還元し、美容業界の未来を一緒に創りたい
――改めて、BEAUTY ONEとはどのようなチームなのでしょうか?
伊藤:BEAUTY ONEは、美容領域の案件を受注するためだけの組織ではありません。美容業界の知見を集め、異なる専門性を持つメンバーが研究やディスカッションを重ね、その成果をクライアントや業界に還元していく「ラボラトリー(研究室)」です。
私がこのチームを立ち上げた出発点は、愛する美容業界を盛り上げたいという思いでした。業界の再活性化に寄与し、業界とともに成長したい。その思いに賛同した仲間で結成したのがBEAUTY ONEです。
正解を教える専門家ではなく、同じ目線で悩み、考え、ときには率直な意見を伝えるパートナーでありたい。将来的には、企業やブランドの垣根を越えて信頼されるラボとして、美容業界の未来をけん引していきたいと考えています。
――知見の蓄積や共有はどのように行っているのですか?
大川:中心となるのは、前回もお話しした、美容マーケティングの知見や事例を集約したナレッジ集「BEAUTY ONE BOOK」です。市場のトレンド、広告、戦略、SNS、実務で得た事例などについて、ブランドとダイレクトの両方の視点を持つメンバーが議論し、再現性のあるノウハウとしてまとめています。
また月1回、特定の商材をテーマに、広告会社の担当者と一人の生活者という、両方の視点からディスカッションしています。その商品にどんなイメージを持っているか、成分や効能を知っているか、買う・買わない理由は何か、今の広告からどんなメッセージを受け取るか。こうした議論が、寄せられたご相談にどう応えるかを考える材料になっています。
――最後に、美容・ヘルスケア業界のマーケティング担当者へメッセージをお願いします。
大川:ブランドを長期的な視点で捉え、その価値や魅力を的確に伝えられることがBEAUTY ONEの強みです。メンバーは美容への関心が高い人を中心に構成されていますが、ハイブランドやデパコスに詳しい人もいれば、ドラッグストアコスメが中心の人、美容にそれほど関心がない人もいます。年齢層もさまざまで、生活者の実像を映したような構成です。ちょっとしたご相談からでも、気軽にお声がけください。
福井:美容業界は多様なビジネスモデルを内包し、変化も激しい業界です。医薬部外品が増える一方で、承認を待つ間は効能をマーケティングに使えないという事情もあります。購買の流れも大きく変わり、今や化粧品は女性だけのものではありません。インバウンドやグローバルを見据えた戦略も必要です。こうしたトレンドをいち早く捉え、最速・最適な提案をしていきます。「BEAUTY ONE BOOK」に加え、電通デジタルのリサーチツールを生かした提案ができるのも私たちの強みです。
伊藤:一番お伝えしたいのは、私たちの知見をクライアントと美容業界に還元したいということです。課題が明確でなくても、発注が決まっていなくても、ぜひ一度お話を聞かせてください。短期的に何かを売るのではなく、信頼関係を築き、ともに学び、ともに成長していく。美容業界をもっと盛り上げるために、ぜひ一緒に考えていきましょう。
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ブランドを守りながら、成果も出す。戦略・広告・ソーシャルを横断し、美容業界をはじめとする多様な業界のクリエイティブ課題に一気通貫で応えます。
PROFILE
プロフィール
伊藤 めぐみ
2018年、電通デジタルに中途入社。外資系化粧品ブランドの美容部員としてキャリアをスタートし、化粧品事業会社、外資系広告会社を経て現職。電通デジタル入社後は通信、金融など幅広い業界を担当しながら、近年は化粧品領域を中心に担当。ブランドとダイレクトを横断した統合クリエイティブを強みとし、戦略設計からコミュニケーション開発まで幅広く手掛けている。
大川 憧子
2023年に電通デジタルへ入社。入社後1〜2年目はコンサルタントとして事業課題の整理や戦略設計を担当。2025年よりクリエイティブ領域へ軸足を移し、現在はプランナーとして活動している。戦略視点と表現設計を横断したプランニングを強みに、キャンペーンの企画立案から動画・ラジオCM をはじめとするクリエイティブ制作まで幅広く携わる。
福井 麻紀子
広告制作会社を経て2014年に電通イーマーケティングワン(現・電通デジタル)へ入社。コピーライター/プランナーとして化粧品を中心に輸入車・通信など幅広く担当。ブランドとダイレクトを横断したコミュニケーション設計を強みに、近年は高級化粧品ブランドのプロモーションや顧客獲得を牽引する。
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