属人化を超え、AIと人が協働する持続可能なマーケティング基盤をつくる
マーケティング業務の高度化・複雑化が進む一方、ツールやAIを導入しても業務・データ・意思決定が分断されたままになっているケースは少なくありません。本記事では、電通デジタルが提供するMOps(マーケティングオペレーション)支援の考え方と全体像を、担当者に聞きました。
MOpsを取り巻く環境と今起きている「ズレ」
――まず、MOps支援に取り組む背景を教えてください。今、企業のマーケティング現場にはどのような課題があるのでしょうか?
毛利:背景には大きく3つの変化があります。1つ目は、生成AIの進化によるクリエイティブ制作や広告運用の「民主化」です。技術的な参入障壁が下がったことで、業務そのもののあり方が変わり始めています。
2つ目は、GDPR(EU一般データ保護規則)や改正個人情報保護法をはじめとするプライバシー規制の強化です。Cookieや広告識別子では認識できないユーザーが増えており、1stパーティデータを適切に収集・蓄積し、マーケティングに生かす重要性が高まっています。
3つ目は、市場変化のスピードが上がったことで、意思決定の俊敏性とコスト構造の変革が求められるようになったことです。
――そうした変化の中で、企業ではどのような「ズレ」が生じているのでしょうか?
毛利:ツールやAIは導入されているのに、業務プロセス・データ・意思決定がそれぞれ分断されたまま、というケースが非常に多いです。例えば、配信後に数値は出ているけれど、その数値をどう読み解いて、媒体ごとにどう比較して、次のアクションにつなげるか――ここが属人化していたり、膨大な工数がかかっていたりします。
また、経験者を雇用して内製化を進めても、暗黙知や経験値に依存した業務遂行が常態化し、人の異動や離職によってノウハウが失われてしまうリスクが内在しています。
こうした「ズレ」は、現場の肌感覚としても顕著に表れています。例えば、配信自体は行っているものの、クライアント社内で「振り返る」ことが業務フローの中に組み込まれておらず、迅速な施策実行を最優先に動いているケースがあります。また、ツールやAIを導入したものの、求めていたアウトプットが得られず、気づけば利用頻度が低下している、というケースも少なくありません。「導入すること」が目的化してしまい、業務との接続が設計されていないことが根本的な原因です。
AIを中核に据えた「持続可能な成果創出基盤」
――電通デジタルのMOps支援では、どのような考え方を大切にしているのでしょうか?
毛利:まず前提として、私たちが目指しているのは「人を送り込む形のインハウス支援」ではありません。クライアントの中にAIを導入して、データ基盤やノウハウを整理する。そのうえで、クライアントの業務に沿ったAI構築を行い、人の手を介さなくても支援できる環境・体制をつくっていく。これが私たちの内製化支援の基本的な考え方です。
なぜAIを前提にするかというと、人を送り込んでフローや仕組みをつくっても、その人が抜けたら何も残らない状態になりがちだからです。人の異動や業務フローの変化があったときに使えなくなってしまうケースが多い。これに対してAIを基盤として入れておけば、業務フローが変わっても新しいフローを学習させることができます。人が変わっても、ノウハウはそこに溜まっていく。非常に持続可能な取り組みになると考えています。
つまり、内製化とは「人や技術の変化に揺るがない、持続可能な成果創出基盤(OS)をつくること」であるというのが、私たちの基本認識です。
MOps支援の3つの柱
――具体的に、どのような領域をカバーしているのでしょうか?
櫻井:電通デジタルのMOps支援は、大きく3つの柱で構成されています。
- データドリブンな環境構築(データ基盤活用/高度化)
マーケティングの分析活動に必要なデータを、必要な人が、必要なタイミングで即時に抽出・分析できる環境を整備します。プランニング専門チームとデータ・AI専門チームがワンチームで支援を行い、マーケティングゴールから逆算したデータマネジメントの要件定義を行うのが特徴です。SQLを書けなくても活用できるダッシュボード構築なども含め、マーケティングPDCAの質とスピードを向上させます。
また、電通デジタル内で開発を進めているAIエージェント「Execution Agent」を基盤に、各社のデータ環境に合わせたカスタマイズが可能です。数値の可視化から、現状に対するコメント、次に取るべきアクションまでを一連で出せる仕組みを構築しています。 - 社内外のステークホルダーを含めた業務設計
広告運用の内製化においては、属人化されたプランニング知見の横展開、複雑な入稿項目の事故リスク低減、頻繁な媒体アップデートへの対応など、さまざまな課題を包括的にカバーします。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)チーム、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)チーム、ワークデザインチームといった専門チームが、クライアントの体制・業務の全体像に応じたドキュメント作成やプロセス設計を行います。
さらに、人財要件の定義からスキルマップの可視化、ポートフォリオ管理まで、組織パフォーマンスの最適化に向けた支援も提供しています。 - With AIの業務プロセス構築(AI伴走型のマーケティング戦略推進)
この領域では、メディアプランニングの高速化・高度化を実現するAIエージェントの構築が中核になります。電通デジタルが独自開発した「∞AI」を基盤に、各社のプランニングプロセスやデータに合わせてカスタマイズします。もちろん、 Canvaや他プラットフォーマー基盤を含めて提供が可能です。
例えば、メディアプランニング領域では、与件整理からターゲット深掘り、媒体選定、セグメント提案、ボリューム推定、最終結論の提案まで、一連のプランニングプロセスをAIエージェントが支援します。利用者の平均作業時間が、導入前の6.5時間から導入後の2.8時間へと大幅に削減された実績もあります。
また、運用ナレッジの属人化を解消するAIナレッジマネジメント基盤も提供しています。電通デジタル社内で月間数百人が活用している基盤をベースに、クライアント向けにカスタマイズ。ビジネスチャットツールなどから呼び出し可能な対話型基盤として、過去の類似案件のベストプラクティスや、プラットフォーマーのアップデート情報に即座にアクセスできる環境を構築します。
3つの柱のうち、特に注力しているのは「3. With AIの業務プロセス構築」を見据えたうえで逆算した「1. データドリブンな環境構築」の支援です。今後さらに加速するAI・テクノロジーの進化の恩恵をスムーズに享受するためには、データ整備が今まで以上に重要な基盤になります。AIを最大限に活用できる土台を先に整えておくことが、持続的な競争優位につながると考えています。
「自社」と「外部」の最適な組み合わせ
――すべてを自社でやりきる、ということではないのですね。
櫻井:はい。持続可能な成果創出基盤の構築は、自社単独でやり切ると、かえって市場から取り残されるリスクがあります。「自社でやり切る業務領域」と「外部パートナーを活用する超専門領域」を組み合わせる――戦略的ハイブリッド体制の構築が重要です。
具体的には、予算の増減判断や広告のオン・オフといった意思決定はクライアント社内で完結させる。一方、プラットフォーマーと連携した先端ソリューションの実行や、業務のWith AI化については外部パートナーを活用する。この役割分担が、スピードと専門性を両立させるうえで有効です。
電通デジタルは設立当初からさまざまなクライアントへの支援を実施してきた知見に基づき、安全かつ迅速なデータ活用基盤の構築や、国内外のプラットフォーマーの市場トレンドを踏まえたソリューション開発が可能です。この伴走型の体制で、クライアントのマーケティング組織の内製化を支援していきます。
MOps支援がフィットする企業とは
――MOps支援は、どのような課題やフェーズの企業に向いているのでしょうか?
櫻井:典型的なのは、次のようなケースです。
- ツール導入は進んでいるが、運用・判断が属人化している企業:配信後のレポート読み解きや改善判断が特定の担当者に依存しており、再現性がない
- AI活用を「点」ではなく「業務全体」で考えたい企業:個別のAIツールは試しているが、マーケティングプロセス全体を横断した設計ができていない
- 外部パートナーへの委託から自社運用へ移行したい企業:委託していた業務を社内に取り込んだものの、業務負荷が急増し、適切な業務設計ができていない
また、相談のきっかけとして多いのが、役員など社内の上位層から「内製化を進めるべき」というオーダーが下りてきたものの、何から手をつければ良いかわからない、というケースです。方向性は決まっているが、具体的な進め方が見えていない段階で相談に来られる企業が多い印象です。
こうした企業の中でも、特にフィットしやすいのは、1stパーティデータの取得がすでに進んでいる企業です。データの素地があることで、AIや分析基盤との接続がスムーズになり、支援の効果が出やすくなります。弊社では Tobiras Shared Gardenをはじめとした1stパーティデータ整備のご支援例もあります。
――MOpsを「仕組み」として捉えることで、何が変わるのでしょうか?
櫻井:最近、メディアプランニングの高速化・高度化や、レポートの読み解き、改善判断の属人化をどう解消するか、という相談が非常に多いです。こうした課題にAIエージェントを導入することで、数値の可視化から、現状に対するコメント、次に取るべきアクションまでを一連で出せるようになります。
このやり方は、クライアントにとっても持続可能ですし、私たちとしても長く伴走し続けられる関係性をつくれると考えています。だからこそ、AI型のインハウス支援をもっと広げていきたいという思いがあります。
インハウス支援自体は各社が取り組んでいますが、AIを前提にした支援で、定量的な成果やコメントまで含めて出せている例は、まだ市場に多くは出ていません。この領域で先んじて発信し、マーケティングオペレーションを人とAIが協働する基盤として再設計する――この視点を、一つでも多くの企業に届けたいと考えています。
毛利:市場にはまだ少ない「AIを前提としたインハウス支援」の先駆者として、私たちは定量的な成果から具体的なネクストアクションまでをAIが提示する新しいスタンダードを確立し、一つでも多くの企業に届けていきたいと考えています。
私たちが提供するのは、担当者が抜ければ終わってしまう一過性の仕組みや、導入しただけで使われなくなるツールではありません。目指すのは、業務フローが変わっても学習し続け、人や技術の変化に決して揺るがない、クライアントの長期的な「資産」となる「持続可能なマーケティングOS(成果創出基盤)」の構築です。
内製化とは、決してすべての業務を自社で抱え込むことではありません。広告のオン・オフや予算の増減といった、ビジネスを左右する最も重要な『意思決定』に貴社が集中できるよう、複雑な業務のWith AI化や先端ソリューションの実行といった超専門領域は、私たちが外部パートナーとして強力に伴走します。
自社と外部パートナー、そして人とAIが最適に掛け合わさる「戦略的ハイブリッド体制」を通じて、持続可能な成果創出基盤をともにつくり上げませんか。今は「何から手をつければいいか分からない」という状態でも構いません。変化の激しい市場を共に勝ち抜く最強のチームとして、ぜひ一度ご相談ください。
本件に関するご質問やご相談は、ぜひ以下のアドレスまでお気軽にご連絡ください。
dd_st_mkdx@group.dentsu.co.jp
関連サービス
データ・AI
AI前提のMOps支援により、可視化から改善アクションまでを一気通貫で実現。人とAIが協働する持続可能な成果創出基盤をご紹介します。
PROFILE
プロフィール
毛利 光太郎
外資系コンサルティングファーム、事業会社のプロダクトオーナー、メディアのストラテジーを経て現職。データ活用したソリューション企画とコンサルティングを主に担当。
櫻井 康人
2015年より電通グループに在籍し、電通デジタルではマーケティングコミュニケーション領域を中心に、クライアント支援から媒体社との協業まで幅広いプロジェクトを牽引。現在は、クライアント企業の内製化支援をはじめ、AIエージェントの開発および活用コンサルティング、さらにデータ×マーケティング領域における価値創出をミッションとして担当している。
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