誰もが見やすいカラーユニバーサルデザインとは?色弱者、色覚障害者の困りごとを知る

「誰もが見やすいカラーユニバーサルデザインとは?色弱者、色覚障害者の困りごとを知る」背景は登壇者の集合写真。左から千葉、西垣戸、常岡氏、高村氏、伊賀氏、植木氏

電通デジタルの「ウェブアクセシビリティプロジェクト」では、誰もが使いやすいウェブの実現に向けて、多様な声に耳を傾けています。今回の記事では、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)副理事長の伊賀公一氏に、色覚の多様性やカラーユニバーサルデザインの重要性についてお話を伺いました。さらに、伊賀氏から得た知見をもとに、色覚や発達・学習特性など異なるバックグラウンドを持つ参加者とともに、ワークショップ形式で色の使い方について対話を深めました。

色弱の世界とカラーユニバーサルデザイン

――伊賀さん、これまでのご活動について教えてください。

伊賀公一氏(カラーユニバーサルデザイン機構):私は自身が強度の色弱である経験をもとに、「誰もが見やすく理解しやすい色使いの社会をつくりたい」との思いで活動をしておりました。2004年にNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構別ウィンドウで開く(CUDO)を仲間とともに設立し、色覚の多様性に対応した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の普及に取り組んできました。

また、講演や執筆を通じて「誰も取り残さない対応」の重要性を発信し続けています。色は感性や文化を超えて人をつなぐ共通言語です。その可能性を社会全体で生かせるよう、現場で対話を重ねながら活動を続けています。

写真:伊賀公一氏
伊賀 公一氏(カラーユニバーサルデザイン機構 副理事長)

――いわゆる「色弱」の方を、どのように呼ぶのが適切でしょうか。

伊賀:医学的には「色覚異常」と呼ばれますが、CUDOでは「異常」ではなく「人類の持つ多様性の一つ」と捉えています。色の認識は、網膜にある3種類の錐体(すいたい)細胞によって担われています。CUDOでは、その機能の強弱によってC型(一般的な色覚)、P型、D型、T型、A型の5タイプに分類し、呼称することを提唱しています。

タイプ呼称(英語名) 特徴(錐体の機能) 割合(日本人)
C型色覚Common(一般的) L錐体(赤)、M錐体(緑)、S錐体(青)の3種類全てを持つ一般的な色覚 男性の約95%、女性の約99.8%
P型色覚Protan(1型) L錐体(赤)がなかったり、機能しないタイプ(強度)。または、L錐体がM錐体と似た分光感度を持つタイプ(弱度)。赤系の光を感じ取りにくい傾向がある 男性の約1.5%程度
D型色覚Deuteran(2型) M錐体(緑)がなかったり、機能しないタイプ(強度)。または、M錐体がL錐体と似た分光感度を持つタイプ(弱度)。緑系の光を感じ取りにくい傾向がある 男性の約3.5%程度
T型 Tritan(3型) S錐体(青)を持たない 10万人に1人いると言われている
A型Acromat(無色覚) 錐体を持たないまたは1種持つ 10万人に1人いると言われている

一方で、交通に「交通弱者」という言葉があるように、色覚の多様性に対応していない社会で色使いのせいで困りごとを抱える方々を「色弱者」と呼ぶのが、現状の困難さを伝える上で適切ではないかと考えています。

日本国内だけでも、色弱者は男性の20人に1人、女性の500人に1人、合計で300万人以上いると言われています。これだけ多くの方が、色による情報で困難を感じているのであれば、社会全体で解決すべき問題と言えるでしょう。

――どのような色の区別がつきにくいのでしょうか。また、解決策はあるのでしょうか。

伊賀:P型、D型色覚の方にとって判別が難しい色の組み合わせには、たとえば下記があります。

  • 赤と緑
  • 黄色と黄緑
  • 水色とピンク
  • 深緑と茶色
  • 濃い赤と焦げ茶

こうした色の違いによる情報伝達では、私たちは情報を受け取れず、困ってしまいます。

解決策としては、第一義的には情報制御に色を使うのかどうかを問うことです。色による情報制御は極めて強力で強調、分類などが極めてわかりやすいものであって、形の違いや文字を読んで理解する違いとは速度が大きく異なっていますから、色を使うならば誰にでもわかりやすい色を選択することが必要です。もし色を使わなくて良いならば白黒にした上でWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)で定められている通り、「色名を併記する」「形やパターン、テキスト、アイコンを併用する」など、色だけに依存しない情報設計をして白黒にすれば良いはずです。また、十分なコントラストを確保したり、CUDに対応した配色セットを使ったりするのも有効な方法です。

――カラーユニバーサルデザインとはどのようなものでしょうか。

伊賀:ユニバーサルデザインは「年齢、性別、文化、障害などの状況に関係なく、誰もが快適に使える環境を設計する」考え方です。これを色についても実践し、色弱者にも優しい世界の実現を目指すのがカラーユニバーサルデザイン(CUD)です。

CUDOを実践するうえで、以下の3つのポイントを定めています。WCAGで提唱されている手法とも重なり、特別難しいことではありません。

  • 見分けやすい配色を選ぶ:色の明度(明るさ)や彩度(鮮やかさ)で差をつける
  • 色以外でも情報が伝わるようにする:グラフや図形で、色の違いだけでなく形や線種(実線、点線など)の違いも活用する
  • 色の名前を用いたコミュニケーションを重視する:色名を添えることで、色覚タイプが異なる人同士の意思疎通がしやすくなる

たとえば、かつて青信号が緑色で赤や黄色と見分けづらい時代も有りましたが、1960年代には色弱者にも判別しやすい青緑色に変更されておりました。「見分けやすい配色」がいかに重要かを示す好例です。

――「見分けやすい配色を選ぶ」といっても、具体的にどんな色を選べば良いのか迷う方も多そうです。

伊賀:CUDOは推奨配色セット委員会に参加し、カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットを策定・公開しています。さまざまな色覚特性を持つ当事者による検証を重ね、塗装用・印刷用・画面表示用と用途ごとに色彩値を設定した実用的なカラーパレットです。ウェブサイトなどで配色を決める際には、ぜひこのセットを参考にしてみてください。

――作成したデザインの色が、多くの方にとって見やすいかどうかを確認する方法はありますか。

伊賀:Adobe PhotoshopやIllustratorなどのソフトウェアには、校正機能に色覚シミュレーションツールが搭載されています。これを使うことで、デザインが異なる色覚タイプの方にどのように見えているのかを簡単に確認できます。実際にシミュレーションを行い、人によって色の見え方が大きく異なることを体感することで、「その違いも考慮してデザインを作成しなければ」と意識するきっかけになるはずです。


色の使い方を再考するワークショップ

――「色の使い方を考えるワークショップ」の概要を教えてください。

千葉順子(電通デジタル):「色の使い方」をテーマに、実際のデザインサンプルを使用したワークショップ形式のディスカッションを行いました。パネリストは以下の6人です。

写真:伊賀公一氏
伊賀 公一氏(CUDO副理事長/色弱者)
写真:常岡天祐氏
常岡 天祐氏 (Ledesone 代表/学習障害の当事者)
写真:高村純一氏
高村 純一氏(Ledesone デザイナー/ADHDおよび色覚障害の当事者)
写真:千葉順子
千葉 順子(電通デジタル ウェブアクセシビリティプロジェクトリーダー)
写真:西垣戸初美
西垣戸 初美(電通デジタル ウェブデザイナー)
写真:植木真氏
植木 真氏(ウェブアクセシビリティプロジェクト監修/インフォアクシア代表)

「強調テキスト」「エラーメッセージ」「ハイライト」「赤と緑(クリスマスカラー)の配色」といった具体的なテーマをもとに、参加者それぞれの見え方や感じ方を共有しながら、色の持つ意味や役割について多角的に考察しました。単なる色の選び方にとどまらず、多様な見え方を前提としたデザインのあり方について再考する機会となり、参加者に多くの気づきをもたらす内容となりました。

ワークショップで使用した、「一部分強調する手法として赤字+太字にする」例を掲載したスライド。①Microsoft365 標準の赤色は、強調テキストを#E0000の色で示している。コントラスト比は赤:白が4.5:1。赤:黒が4.6:1。②Microsoft365 標準の濃い赤色は、強調テキストを#C0000の色で示している。コントラスト比は赤:白が6.5:1。赤:黒が3.2:1。③みんコミュデザインの赤色 は、強調テキストを#DF3232の色で示している。コントラスト比は赤:白が4.5:1。赤:黒が4.6:1。
パネリストメンバーで、赤色と太字による強調表現の見やすさや識別性について議論

――デザイナーとして、ワークショップでどのような気づきを得られましたか。

西垣戸初美(電通デジタル):デザインでは、強調や機能的な意味を持たせるために色を使うことがあります。その使用方法によって「伝わる」「伝わらない」といった差異が生じることを、改めて実感しました。「色弱」と一括りにしても、一人ひとり見え方が異なることを深く理解できました。

また、ウェブサイト制作の現場ではブランドカラーがすでに決まっていることが多く、色を変更するのは簡単ではありませんが、見やすさを考慮した“アクセシブル版カラー”を提案していくことは可能です。今後は、こうした観点をより意識してデザインに取り組んでいきたいと思います。

写真:ワークショップで話を聞く西垣戸
写真:PCで色の見え方の違いを確認する常岡氏と伊賀氏
写真:色の識別について説明する伊賀氏と、それを聞く西垣戸と千葉

アクセシビリティを「自分ごと化」するために

――これまでも様々な当事者をお招きし、困りごとを伺ってきました。アクセシビリティを「自分ごと」として捉えるために、必要なことは何でしょうか。

千葉:やはり、さまざまな人の話を聞くことが一番大切だと、改めて感じました。色弱者や学習障害のある方がいることは知識として知っていても、実際に「どう見えているのか」「どう感じているのか」は、本人の言葉を聞いて初めて分かります。場合によっては、聞いてみることで悩みがより複雑に思えてしまうこともありますが、それこそがスタート地点です。

多くの人は、自分のこれまでの経験や視点から「これが正しい」と思い込んで判断しがちですが、「本当にそれでいいのか?」と一度立ち止まって考えてみることが大切です。知識を得て他者の視点に触れることで、自分の世界が広がり、アクセシビリティを「自分ごと」として捉えられるようになります。それが、最終的には「より多くの人がハッピーになれる」社会につながっていくと思います。

西垣戸:私も「当事者の方の声を直接聞くこと」が最大の学びになると感じています。このプロジェクトを通じて、ディスレクシア(読み書き障害)の方や弱視の方など、さまざまな方にお話を伺ってきましたが、デザインに取り組んでいると、どうしても“自分の世界”の中だけで完結しがちです。その結果、伝わりにくいデザインになってしまっても、なかなか自分では気づけません。

ですが、当事者の話を聞くことで「ここが不便なんだ」と具体的な課題を理解でき、「自分のデザインにも改善の余地がある」と気づけます。当事者の困りごとを深く理解した上でデザインへ反映する――それが本当のアクセシビリティにつながると考えています。

「違い」と「困りごと」から始めるアクセシビリティ

伊賀:CUDOとして企業や団体からのご相談を受けるなかで、最も重視しているのは「なぜ変えられないのか」をしっかりと聞くことです。「この色は会社が費用をかけて決めたコーポレートカラーなので変えられません」といった事情を理解した上で、「メインカラーはそのままでも、サブカラーを明度の高い色にしたり、アクセントカラーを追加したりできませんか」といった提案をすることができます。変えることだけが解決策ではなく、さまざまな工夫の余地があるのです。21年間多くの方の話を聞いてきましたが、まだまだ聞けていない声もたくさんあります。これからも多くの人の声を聞き、アクセシビリティを「自分ごと」として捉えるきっかけを広げていきたいと考えています。

高村純一氏(Ledesone):私自身、元々これらの「違い」を「ハンデ」だと思い悩んでいましたが、現在は違いというもの自体がとても面白いと感じています。ADHDなどの話題から「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」について話すこともありますが、「多数派と少数派」といった単純な分け方では語り尽くせない、多様な個性があると実感します。人間は、私たちが思っている以上に本当に一人ひとりが異なり、多様性に満ちている。そのことに気づくと、とても面白いしワクワクします。

現代社会では「人はみんな違う」というごく当たり前の前提が、十分に浸透していないと感じます。でも、その違いを一つひとつ発見していくプロセス自体が面白い。「違いを面白がる」視点こそが、アクセシビリティを自分ごと化する第一歩ではないでしょうか。

常岡天祐氏(Ledesone):Ledesone(レデソン)として活動するなかで、私が大切にしているのは大きく2つの考え方です。1つは、多様な違いを知り、その存在に気づいていくこと。もう1つは、「障害名」ではなく「困りごと」を起点に考えることです。

たとえば、「文字が見えづらい」と一言で言っても、その理由はさまざまです。色覚に特徴がある人もいれば、読み書きに困難を感じている(ディスレクシアの)人もいます。原因は異なっていても、「情報が読み取りにくい」という共通の困りごとがある。

支援や改善を考える際には、障害や診断名で人を分類するのではなく、「どういう困りごとがあるのか」と「それをどう解消するか」という視点が重要です。このアプローチのほうが、より多くの人に届き、本質的なアクセシビリティの向上につながると考えています。

植木真氏(インフォアクシア):いろいろな人の話を聞くこと、それが「人それぞれ違う」という、ごく当たり前のことを実感として理解する最初の一歩になります。

ウェブアクセシビリティの分野では、ガイドラインがあることで「基準さえ守れば大丈夫」と考えてしまいがちですが、実際には人の見え方・聞こえ方・感じ方は本当に多様で、一つの「障害」という概念でくくれるものではありません。電通デジタルさんの勉強会に当事者のゲストをお招きする際には、必ず複数の当事者に登壇してもらうようにしています。同じ「○○障害」でも、見え方や困りごとは人によってまったく異なることが分かるのです。

多様な人に出会い、話を聞き、対話を重ねること。それが自身の思考の幅を広げ、アクセシビリティを「自分ごと」として捉えるための最も大切なことだと思います。

――2023年から続く「ウェブアクセシビリティプロジェクト」ですが、今後の進め方についてビジョンをお聞かせください。

千葉:ウェブはとても便利なものですが、誰かにとって便利なものが、別の誰かには不便に感じられることもあります。そして、誰でも将来的にケガをしたり、年齢を重ねたり、病気や障害を抱えて「不便を感じる側」になる可能性があります。そうした視点で「他人ごと」を「自分ごと」として受け止めることで、より多くの人が困らない世界をつくる――それがプロジェクトの根底にある想いです。

「さまざまな方をお招きして、じっくり話を聞く」「多様な見え方・感じ方を持つ人たちの声を、デザインや仕組みに反映する」「なぜそうするのか、理由をきちんと説明できるようにする」といった姿勢で、今後も誠実かつ丁寧に、さまざまな人の困りごと解決へ向けて取り組みを続けていきたいと考えています。


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プロフィール

千葉 順子

エクスペリエンス&コマース第1部門 オウンドメディア第1事業部グループマネージャー

大規模サイトのリニューアルやコーポレートサイト・B2Bサイトの運用、LP制作などの実績多数。ウェブデザイナー、制作ディレクター、プロデューサーなどの経験を経て、現在はアクセシビリティコンサルタントとしてウェブアクセシビリティプロジェクトのプロジェクトリーダーを務める。

千葉 順子

西垣戸 初美

エクスペリエンス&プロダクト部門 クリエイティブプランニング第2事業部

Webデザイナーとして様々な業界のプロジェクトに参画し、コンポーネントを利用したサイト設計やECサイトの構築・リニューアルなどのデザイン業務を担当。現在は社内のウェブアクセシビリティプロジェクトに参画し、アクセシビリティに配慮しつつもクリエイティブを諦めないデザインを目指して知見を深めている。

西垣戸 初美

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