AIの先にある「かつてない感動」へ――CAIOが語る、2026年のAI戦略
電通デジタルは、AI活用の模索から社会への実装へと進化した2025年を経て、さらなる挑戦へと舵を切りました。CAIO 兼 執行役員の山本 覚に、2026年の重点領域やAIの先に見据える思いを聞きました。
AI活用の「模索」から「実装」へと駆け抜けた2025年
――まず、2025年のAI事業の振り返りからお聞かせください。
山本:昨年は電通デジタルにとって、まさに「AIの社会実装」を具現化する1年となりました。これまでは業務にどうAIを生かせるかという可能性を模索するフェーズでしたが、昨年1年間で具体的な実装まで一通りやりきった状態へと進化させることができました。
――「一通りやりきった」という手応えは、具体的な数字にも現れているようですね。
山本:はい。特にAIコンサルティング事業では、当初の目標に対して驚異的な記録を残すことができました。広告事業においても、当社の独自ソリューションである「∞AI Ads」を活用した施策が多くのクライアントビジネスに貢献しました。また、GEO(生成エンジン最適化)コンサルティングサービスは、リリース直後から多数の問い合わせをいただいており、確かな需要を感じています。
さらに、オペレーション面での進化も見逃せません。広告出稿レポートの自動化では、直近3カ月で平均月4,000件を達成。これらの成果は、私たちが一貫して掲げてきた「生成AIマーケティング」への注力が結実し始めた結果だと捉えています。
2025年は、テクノロジーの進化スピードに対して、いかに準備を整えているかが勝負でした。たとえば、「Apps in ChatGPT」や、GoogleのAIモードの登場といった重要な技術トレンドに対しては、即座に専門チームを立ち上げて対応できる体制を整えました。このスピード感こそが、私たちの強みです。
電通グループの総力を結集し、マーケティングの「幅」を広げる
――電通グループ内での連携についても、さらなる強化が進んでいると伺いました。具体的にどのような変化が起きているのでしょうか?
山本:AIという武器を得たことで、プランニングの幅が劇的に広がりました。当社が得意としているメディアプランニングやクリエイティブプランニングの枠に加え、電通が保有する1億人規模のAIペルソナを仮想的に再現する「People Model」や専門人財(クリエイター、プランナーなど)の知見やアイデア、思考法などを学習させた「Creative Thinking Model(創造的思考モデル)」と統合して活用しています。これにより、単なる効率化だけでなく、電通グループが得意とする社会現象を巻き起こすような高度かつ幅広い提案が可能になりました。
――クリエイティブの領域でも、AIとの融合が深まっているそうですね。
山本:AIとクリエイティブとの融合によって、新しいクリエイティビティの形が見えてきました。これは決して「AIが人間に取って代わる」ということではありません。個人の才能だけに頼るのではなく、AIが学習した膨大なデータや組織に蓄積された多様なアイデアを統合し、共に磨き上げていくプロセスと考えています。これにより、これまで以上に質の高いクリエイティブを安定的に生み出せるようになっています。
2026年AI戦略における3つの重点領域
――2026年の電通デジタルのAI戦略についてお聞かせください。
山本:大きく3つの重点領域を定めています。
1つ目は、グローバルプラットフォーマーとの強固な連携です。
グローバルプラットフォーマーと密に連携し、世界中で活用可能な汎用性の高いソリューション開発を推進していきます。
2点目は、フィジカル領域へのアプローチです。AIグラスや自動運転技術などの最新テクノロジーが数多く出てきています。こういった技術を、どのように店舗マーケティング、ライブイベント、スポーツビジネスなどの電通グループが長年培ってきた分野で活用するのか、私たちの大きなチャレンジになります。
3点目は、日系企業のAPAC市場への進出支援です。電通グループが持つ広大なネットワークをフルに活用し、アジアにおけるAIマーケティングの起点となる企業としての地位を確立します。
――組織の形も大きく進化させていくと伺いました。具体的にどのような体制で挑まれるのでしょうか?
山本:まず大前提として研究開発(R&D)をこれまで以上に徹底して強化します。プラットフォーマーのAIを使いこなすのはもちろんですが、それだけに留まらず、常に「AIの先にある未来」の絵を描き続ける機能を持ちます。
ただ、未来を描くだけでは「絵に描いた餅」になってしまいます。そこで重要になるのが、描いた未来を電通デジタルの確かなソリューションとしてプロダクト開発し、それをさらに現場のワークフローへと確実に落とし込んでいくプロセスです。
そして、それらをクライアントの皆様へお届けし、成果へと繋げる組織として、AIX(AIトランスフォーメーション)チームが機能します。R&Dから始まりプロダクト開発、ワークフロー化、営業・実装へと、一気通貫で価値が広がっていく。これが2026年における電通デジタルの基本構造です。
――自社内での一気通貫体制に加えて、国内外の電通グループのつながりも鍵になりそうですね。
山本:電通デジタルの中だけで閉じてしまうと、強みを最大化できません。国内電通グループ間で深くつながることで、従来のマーケティングの枠を超えた圧倒的なサービスとソリューションをクライアントに提供できるようになります。
さらに、日本国内のクライアントが海外展開を加速させる際、私たちがその架け橋となっていくことを目指します。まずはAPAC地域との密な連携を強化し、グローバル規模での支援体制を確固たるものにしていきます。
「R&D・ソリューション・ワークフロー」を磨き上げ、それを確実にマーケットへ届ける。そして、その価値を電通グループやAPACへと繋げていく。この一連の循環こそが、2026年の私たちの大きな柱になると確信しています。
AIがあるからこそ生み出せる「かつてない感動」
――最後に、クライアントやパートナー企業の皆様へメッセージをお願いします。
山本:今、AIを活用して業務を効率化したり、パフォーマンスを向上させたりすることは、もはや付加価値ではなく、避けては通れない当たり前のフェーズに入っています。しかし、電通デジタルが真に目指しているのは、その効率化の先にある世界です。それは、AIがあるからこそ生み出せる「かつてない感動(Never-before-seen impact)」を届けることに他なりません。
AIの本質的な役割は「統合」にあると考えています。AIの登場により、各社のエージェント同士が会話することで、単なる一社ごとの最適化に留まらず、複数の企業や社会全体が高度に掛け合わさり、これまでにない新しいムーブメントを作り出していくことが、これからのマーケティングでは起こるはずです。私たちがそのハブとなり、クライアントの皆様と共に大きな「うねり」を生み出していきたいです。
電通デジタルは、これからもテクノロジーと生活者インサイトに根差したクリエイティビティを融合させ、社会に新しい価値を創造し続けていきます。2026年、私たちの挑戦にぜひご期待ください。
PROFILE
プロフィール
山本 覚
東京大学松尾豊教授のもと人工知能(AI)を専攻。AIとビックデータを活用し、広告の自動生成、広告効果の予測、CROやSEOなど、多数のデジタルマーケティングサービスを提供。『ワールドビジネスサテライト』、『NHK ワールド』など多数メディアに出演。多くのイベントをはじめとして企業や大学などでのセミナー登壇も多数。主な著書『売れるロジックの作り方』、『AI×ビックデータマーケティング』など。
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