若手クリエイターが創る音声広告の新境地 Spotify Hits 2025「Future Hitmakers」受賞秘話
Spotify Japanが主催する「Spotify Hits 2025」において、電通デジタルは社員有志チームによる企画案で、「Future Hitmakers(ベストイノベーティブアイディア)」のKDDI賞を受賞しました。本記事では、受賞チームのメンバーとプラットフォーム担当者に企画の内容や応募に至った背景を聞くとともに、電通グループにおけるSpotify広告への取り組みについても紹介します。
30歳以下限定。音声広告の可能性を広げる賞
――Spotify Hits 2025とは、どのようなアワードでしょうか?
日比野:Spotify Hits 2025は、Spotify広告の特性である「音声」を生かしたクリエイティブやアプローチによって、ブランドのビジネス成長に貢献したキャンペーンを表彰するSpotify主催の広告賞です。日本では今年で2回目の開催となります。配信実績のあるキャンペーンを対象とした3部門とグランプリに加え、今回は新たに公募制の部門賞「Future Hitmakers」が設けられました。
――Future Hitmakersとは、どのような賞でしょうか?
日比野:Future Hitmakersは、配信実績のあるキャンペーンではなく、Spotifyの特性を生かしたアイデアを対象としたコンペティションです。Spotifyを活用した若者向けコミュニケーションを前提に、味の素、KDDI、ファミリーマートの3社が提示したテーマに沿って、Spotify広告を使った企画アイデアが募集されました。
大きな特徴は、応募者を30歳以下のクリエイターに限定している点です。個人でもチームでも応募でき、複数案の提出も可能となっています。若い世代ならではの柔軟な発想や新しい視点を、Spotify広告というフォーマットで自由に表現してもらうことを重視した賞です。
受賞企画「一生ものプレイリスト」ができるまで
――受賞作品となった「一生ものプレイリスト」の企画意図を教えてください。
髙屋敷:KDDIの募集テーマは「UQ mobileがつなぐ、青春の瞬間」でした。募集背景として、「スマホを契約するならUQ mobile」というイメージを、18歳以下の若者とその親世代に浸透させたいという狙いがあり、これまでの「青春」や「親子に寄り添う」コミュニケーションの文脈を引き継ぎながらも、新しい切り口が求められていました。
そこで着目したのが、「レミニセンス・バンプ」(人が人生を振り返る際に、青年期の記憶が特に鮮明に思い出される)という現象です。「人は青春時代に出会った音楽を、大人になってもよく聴く傾向がある」という研究結果を踏まえ、「学生時代は一生ものの音楽に出会う大切な時期。ギガを気にしてちゃもったいない」という発想から、「一生ものプレイリスト」という企画を考案しました。
実際に応募した企画では著名人を起用し、その人の「一生ものプレイリスト」をLP(ランディングページ)やSpotifyで特集。音声広告からLP、年末まとめ機能を生かしたUGC施策まで、メディアを横断する展開によって、UQ mobileのブランドイメージを広げる提案としました。
――応募作品について、工夫した点や特に苦労した点を教えてください。
大川:一次審査は書類選考で、企画書は2枚のシートにまとめる必要がありました。限られた枚数の中で、企画の狙いや全体像、伝えたい価値をどう整理して盛り込むかが課題でした。考えた内容を取捨選択しながら、「何を残し、何を削るか」を意識して構成しています。
また、Spotifyを含めたクロスメディアでのコミュニケーション案が求められていたため、多くのアイデアを検討しました。「一生ものプレイリスト」では、音声広告からLPへと接点をつなぐ中で、ユーザーが自然と「UQ mobileは青春を応援するブランドだ」と感じられるよう、企画全体の一貫性を高めることに注力しました。
植木:私は主にビジュアル面を担当しました。一次審査では「一生もの」という形のない概念をどう表現するかを軸に、ブラッシュアップを重ねました。特にビジュアルの検証では短時間の審査の場でも印象に残るよう、あえて整えすぎない「違和感」や引っかかりのある表現を追求しました。また、最終プレゼンに向けては、LPやUGC施策など企画書2枚に収まりきらなかった要素を作り込み、企画の展開をイメージしやすいプレゼンになるよう意識しました。
さらに、ビジュアル以外の部分でもチームの力になりたいと考え、企画面でも関わりました。一次審査では「UQ mobileがこの施策を行う理由」を伝えきれなかったという反省を踏まえ、最終プレゼンでは「つなぐで、感動を。」というブランド理念を軸に資料を再構築。表面的な施策にとどまらずブランドの意義が伝わる企画へと磨き上げました。
社内ワークショップを開催し、応募を促進
――できるだけ多くの人に応募してもらうために、電通グループ内でワークショップを実施されたそうですが、その概要を教えてください。
日比野:Spotify Hits応募促進のためには、よりSpotifyを好きになってもらうことと考え、社内向けワークショップを実施しました。電通デジタルのプラットフォーム部門とSpotify社が共同で開催し、応募要項の解説に加えて、最新のSpotify機能やトレンドを共有することで、Spotifyの魅力や特色、広告への理解を深めることを目的としています。昨年の受賞作品や直近事例の紹介を通じて、活用イメージを具体的に持ってもらえるよう工夫しました。
ワークショップは2種類用意しました。ひとつは電通グループ向けのウェビナーで、約130人が参加。もうひとつは30人限定の少人数制ワークショップで、募集開始後すぐに満席となり、関心の高さがうかがえました。こちらは2日間構成で、Day1は昨年の受賞者とSpotify社による対談形式の講義を実施。Day2ではグループに分かれて企画立案を行い、電通のクリエイティブディレクターやSpotify社がレビューしながらブラッシュアップする実践的な内容としました。
「青春時代に出会った曲は一生もの」という視点の新しさ
――今回の受賞に際して、どのような点が評価されたと考えていますか?
髙屋敷:一次審査は書類選考でしたが、最も評価された点は、「10代で出会った音楽が、キミを作る。」というコンセプトを立てたことだと考えています。また音声広告、LP、プレイリストと複数のメディアにまたがる企画展開にできたことも評価につながったと思います。
最終審査は、審査員を前に持ち時間5分のプレゼン形式で実施されました。そのため2枚の企画書を再整理し、短い時間でも企画の魅力が伝わる構成を重視しました。特に一次で盛り込めなかった部分の補足として、「このアイデアは子どもには発見を、親には共感を届けられるキャンペーンである」ことを丁寧に伝えていきました。
審査後の総評では、「青春時代に聴いた音楽は一生もの」という視点はもちろん、Spotifyならではの設計と、「つなぐ」という UQのブランド理念がしっかりと企画に落とし込まれている点を評価していただきました。
電通グループ独自の取り組みで Spotifyの価値を発信
――Spotify広告に関して、電通グループ独自の取り組みがあれば教えてください。
日比野:2025年は、Spotifyの価値を社内外に広く伝える活動に注力してきました。主な取り組みの一つが、Spotify社とdentsu JapanデジタルオーディオADラボが共同で制作したホワイトペーパーの公開です。デジタルオーディオ広告の位置づけを整理し、クライアントへの提案時に活用しやすい資料としてまとめました。
もう一つが、効果計測ソリューション「SONATA」のリリースで、音声広告の成果を数値で可視化できるようになりました。こうした活動の積み重ねにより、Spotifyの出稿や事例も大きく増加しています。Spotify Hits 2025での既存案件全5部門受賞は、これまでの提案の集大成であり、今後の提案に生かせる実績が揃った象徴的な出来事だと感じています。
Spotify広告の可能性をさらに広げていきたい
――最後に、今後の展開や抱負を教えてください。
大川:Spotifyのサービス特性を生かしながらKDDIの課題解決に取り組み、両社と関係を築けたこと、そしてそれが受賞につながったことをとても嬉しく思っています。今回の経験を糧に、得られた知見を実務に生かしていきたいと考えています。
植木:授賞式後にKDDIのご担当者から、今回の企画を高く評価していただいていると伺い、とても励みになりました。今後もアイデアの魅力をさらに引き出せるようなビジュアルづくりに取り組んでいきたいと思っています。
髙屋敷:音声広告からキャンペーン全体まで横断して企画できるFuture Hitmakersのような公募賞は非常に珍しく、媒体社やクライアントと一体になって取り組めたことで、広告の可能性を広げられたと感じています。個人的にもとても刺激的で楽しい経験でした。
また、一般的に若手は自分の企画でプレゼンを行う機会が多くはないのですが、最終プレゼンに向けて準備をやり切ったことで視野が広がり、手応えを感じることができました。加えてSpotifyという媒体に対する理解も深まったので、今後はその知見を実務に生かしていきたいと考えています。
日比野:Future Hitmakersでの受賞を通じて、Spotify広告の知見が若手プランナー層までしっかり浸透していることを示すことができました。その結果、今後はさまざまな案件でご相談いただける環境が整ってきたと感じています。
Spotifyは、音楽や音声を通じて生活者の感情やモーメントに深く寄り添うプラットフォームです。今回のFuture Hitmakers受賞につながった提案も、SpotifyならではのカルチャーやSpotifyだからこそ捉えられるモーメント・ユーザーとの距離感を生かし、生活者の心が動く瞬間を捉えることでに寄り添い、ブランドの価値を自然に届けることを目指したものでした。
私たち電通デジタルは、Spotifyが持つこうした特性を踏まえながら、音声広告やSpotifyならではの体験設計を通じて、ブランドと生活者の関係性をより豊かにするご提案が可能です。Spotifyというプラットフォームの可能性を、ぜひ貴社のマーケティング課題の解決にお役立ていただければと思います。
PROFILE
プロフィール
髙屋敷 日奈子
2022年に電通デジタルへ入社。コピーライター/プランナーとして家電メーカー、化粧品メーカー、エンタメ系クライアントを中心に企業のブランディングからWeb動画・SNS上でのコミュニケーション設計まで幅広く携わる。社内ではデジタルネイティブ世代に特化した専門チーム「YNGpot.™」に所属し、若者インサイトを捉えた共感性の高いコピーや企画を得意とする。
植木 隆斗
2024年に電通デジタルへ入社。デザイナーとして、銀行、通信、保険など幅広い業界のクライアントを担当し、サービスのロゴデザイン、UIデザイン、Webデザインのキービジュアル制作などを手がけている。多様な業種の課題に向き合いながら、ブランド体験を視覚的に設計するデザインワークを得意とする。
大川 憧子
2023年に電通デジタルへ入社。入社後1〜2年目はコンサルタントとして事業課題の整理や戦略設計を担当。2025年よりクリエイティブ領域へ軸足を移し、現在はプランナーとして活動している。戦略視点と表現設計を横断したプランニングを強みに、キャンペーンの企画立案から動画・ラジオCM をはじめとするクリエイティブ制作まで幅広く携わる。
日比野 みく
2023年に電通デジタルへ入社。ソーシャルプラットフォーム部に所属し、プラットフォーム向き合いを中心とした業務に従事している。担当媒体の売上最大化をミッションに、電通グループと媒体社とのリレーション構築、社内向けイベントでのプラットフォーム紹介、さらに電通専売プロダクトの開発など、多面的な役割を担っている。
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