NFCがもたらすCXの未来とは?電通デジタルとLINEヤフーが語る可能性
CX におけるNFCと二次元コードの違い
――NFCとはどんな技術で、どのような場面で活用されているものなのか教えてください。
電通デジタル・河:NFCは「近距離無線通信技術(Near Field Communication)」の略で、数センチの距離でスマートフォンなどの機器同士がデータをやりとりできる仕組みです。
日常生活だと、地下鉄やバスの改札で使う交通系ICカード、クレジットカードのタッチ決済、オフィスの入退館証や社員証などで幅広く利用されています。最近では、アプリと連動するスマートロックなど、IoTの分野でも活用が進んでいます。それ以外にもアプリを立ち上げたり、ウェブページを表示したりするなど、幅広い機能に対応しています。
――スマホをかざして情報を受け取るという意味では、二次元コードが普及しています。NFCの優位性は何ですか?
河:まずは、不正使用のリスクが低いことが挙げられます。二次元コードは印刷して掲出するため、誰かに撮影されてSNSなどで拡散されてしまったり、上から偽造コードを貼られて詐欺サイトへ誘導される懸念がありますが、NFCは物理的に設置されたNFCタグにタッチしないとアクセスできません。
もう1点がワンタッチでアクセスできるシームレスさです。二次元コードは、スマホを起動し、カメラで読み込む必要がありますが、NFCはスマホがオンになっていれば、かざすだけでアクセス可能です。この手軽さはユーザーにとっても、企業やブランドにとっても大きなメリットといえます。
NFCタグで実現したシームレスな顧客体験
――電通デジタルで実施したNFCの活用事例を教えてください。
電通デジタル・飯村:ある企業のイベントで、カード型やシート型など、薄くて扱いやすいNFCタグを活用したサービスを導入しました。展示物の横にNFCタグを設置し、スマートフォンをかざすだけでイベント限定のプレミアムコンテンツにアクセスできる仕組みです。極薄のNFCタグを採用することで、空間デザインに自然に溶け込み、イベント全体の世界観を損なうことなくシームレスでフリクションレスな体験を提供しました。この取り組みは、企業価値を高める革新的な手法として、今後さらに展開できる大きな可能性を秘めていると考えています。
――NFCを使ったメリットは、他にどんなものがありましたか?
飯村:ワンタッチでアクセスできるフリクションレスな仕組みを導入したことで、来場者の動線が大幅に改善され、滞留を防ぐことに成功しました。さらに、スタッフがカード型NFCタグを携帯しながら会場を巡回することで、イベント限定のプレミアムコンテンツを積極的に案内できるため、利便性と体験価値を同時に向上することができました。
結果、来場者の過半数がコンテンツを利用しており、会場全体の回遊性が向上しました。会場運営側からも『新しいツールのため利用に対してのハードルの課題はあるものの、アクセスまでが瞬時で導線は非常にスムーズ』と高評価で、オフライン体験からのオンライン体験への流れを強化する革新的な施策として大きな成果を残しました。 この仕組みはオフライン体験とオンラインコンテンツをシームレスにつなぐフリクションレスなO2O体験を実現し、企業とのエンゲージメントを深め、新しい価値を提供をすることができる可能性があると実感しました。
NFCタグを活用した「LINEタッチ」を提供開始
――LINEヤフーでは、2025年11月17日に、NFCタグを利用した「LINEタッチ」をリリースしました。これはどのようなサービスなのでしょうか?
LINEヤフー・金谷氏:「LINEタッチ」は、LINE公式アカウントの新機能として提供するサービスで、
- NFCタグ本体
- 管理画面での遷移先設定
- 管理画面でのタッチ回数など利用データの可視化
などの機能 をセットにしたサービスです。専用のNFCタグにスマホをタッチするだけで、簡単かつスピーディにLINE公式アカウントやLINEミニアプリへ遷移できる仕組みです。これにより、友だち追加、クーポン取得、会員証の表示、モバイルオーダーなど、LINE上のさまざまなサービスを瞬時に利用できます。
――どこで購入できますか?
金谷:LINE公式アカウントの管理画面から購入し、遷移先を設定するだけで、すぐに利用を開始できます。
タグは「スタンドタイプ」と「ステッカータイプ」の2種類があり、価格はスタンドタイプが2,000円(税別)、ステッカータイプが300円(税別)です。NFCタグは買い切りのため、必要なのは初期費用のみで、ランニングコストはかかりません。
誘導先は、①LINE公式アカウントのビジネスプロフィール、②LINE公式アカウントのクーポンリスト、③ショップカード、④LINEミニアプリの4種類。それに合わせてNFCタグのデザインを6種類用意しているので、目的に合わせて使い分けられるようになっています。
LINEヤフー・近藤氏:LINEタッチに期待していることとして、まずオフラインデータの取得量を大幅に促進させるという点があります。店舗に足を運んでくださるお客様は、ブランドへのロイヤルティが高い傾向があります。一方で、従来のQRコードではカメラを起動して、スキャンして、遷移画面を待って、とサービスを開始するまでのラグがあり、せっかく来てくれたお客様を取りこぼしてしまう場面もありました。そういった心理的ハードルを下げ、質の高い顧客接点から確実にデータを得られるのは、LINEタッチならではの強みだと思います。
また、LINEタッチを介して得た貴重なオフラインデータはその後のLINE公式アカウントへの配信へ活用が可能です。例えば今月来店したお客様に対しては「来場者限定クーポン」、まだ来店されていない方には「お試し初回特典」など、個々の状況に合わせた最適なアプローチができます。
オフラインユーザーを確実に捉え、その後のコミュニケーションの精度を高めていける。この一連の流れが、ブランド側にも利用者側にも大きなメリットを生むと考えています。
――二次元コードに慣れたユーザーに新たな習慣を根付かせるのは難しそうですが、何かお考えはありますか?
近藤:そこはまさに、月間9,900万人(2025年9月時点)が利用するLINEというブランド力が発揮できる部分だと思っています。今回NFCタグを他社様と比較して低価格で提供しているのも、まずは多くの人に気軽に触れてもらうことが目的です。
決済の場面だけでなく、サービスにアクセスする入口として「タッチする」という行動が当たり前になる世界をつくっていきたい。そのために、料金体系や使いやすさにも徹底的にこだわって設計しています。
今後は、LINEヤフーとしても消費者認知拡大や利用促進に積極的に取り組んでいく予定です。LINEタッチに限らず、NFCという体験そのものを日常に浸透させていきたい——そんな思いで取り組んでいます。
――先行導入した企業からはどんな反応がありましたか?
金谷:全体的にポジティブなお声を多くいただいています。強いて挙げるとすれば、「シックなトーンのデザインもあると嬉しい」、「企業オリジナルのデザインで発注したい」といったデザイン面でのご要望があるくらいです。それ以外は非常に評価が高く、コミュニケーションの入口となる導線としてご期待いただいています。こうした反応を見ると、LINEとしてこのサービスを展開する意義をあらためて強く感じています。
NFCは顧客体験のゲームチェンジャー
――電通デジタルとして、NFCの今後の可能性をどう捉えていますか?
河:私たちは、NFCはOMO(オンラインとオフラインの融合)施策における顧客体験のゲームチェンジャーになると考えています。ワンタッチでアクセスできるシームレスな操作感は、ユーザーにとっては圧倒的に便利で楽です。「LINEタッチ」という形でNFCが多くの人に認知されれば、「スマホをかざす」という行動がより一般化し、企業での活用も一気に進むはずです。私たちもその流れに合わせて、CX設計やコミュニケーションプランニングをさらに進化させていきたいと考えています。
――LINEヤフーとしては、今後LINEタッチをどのように展開していくお考えですか?
金谷:LINEタッチの遷移先として、特に重要だと考えているのがLINEミニアプリです。LINEミニアプリはLINEヤフーが単独で開発・提供するものではなく、電通デジタル様をはじめとするパートナー企業に開発いただき、広告主の皆さまが利用していくプロダクトです。
そのLINEミニアプリの可能性をさらに広げてくれるのが、LINEタッチとの連携です。NFCによるスムーズな導線が加わることで、LINEミニアプリを起点とした新しい体験設計が一気に広がります。今後も電通デジタルと一緒に、LINEタッチとLINEミニアプリを組み合わせた価値ある体験を広げていきたいと考えています。
――NFCの導入に際して、LINEタッチと既存サービスのどちらを導入すべきか迷う企業もいると思います。
飯村:NFCの可能性を追求する中で、今後のO2O体験を最大化するためには、LINEタッチと既存のNFCプロダクトの両方を戦略的に導入することが重要だと考えています。LINEミニアプリへの誘導など、LINEプロダクトの強みを最大限に生かす導線はLINEタッチで実現。一方、自社サイトでの購買促進、SNSへの誘導は、既存のNFCタグで構築可能になり、それぞれの特徴に合わせて、両方を導入することもできると考えます。
特に、LINEを運用する企業にとっては、用途別に使い分け、この2つを併用することで、「フリクションレスなタッチ体験のジャーニー」を提供し、顧客接点を拡張することが可能です。このアプローチは、エンゲージメントを高める次世代マーケティング戦略として、大きな可能性を秘めています。
金谷:私たちは「LINEのサービスをより使いやすくする入り口」としてLINEタッチを展開しています。ですので、自社サイトへの誘導や他社媒体への遷移と使い分けていただくのは、良い使い方だと思っています。
NFCという体験がもっと当たり前になる世界を目指しているので、LINEタッチと既存NFCが共存しながら生活者体験が広がっていく形は、ぜひ推進していきたいですね。
――最後に、NFCおよび、LINEタッチに興味を持った方へのメッセージをお願いします。
金谷:イベントなどでLINEタッチのNFCタグを見かけたら、ぜひ一度タッチ体験をしてみてください。便利さやスムーズさを実感していただけるはずです。今後、多くの方に日常的に使っていただけるプロダクトへ育てていきたいと思っていますので、ぜひ皆さまからのフィードバックもお待ちしています。
近藤:LTV向上は、多くの企業にとって重要なテーマです。お客様と継続的につながるための仕組みとして、LINE公式アカウントやLINEミニアプリは非常に相性が良いと感じています。特にオフラインでお客様と接点を持つ企業の皆さまには、ぜひ一度LINEタッチをお試しいただきたいと思います。
河:顧客接点をつくる手段としてLINEタッチは最適なプロダクトだと感じています。MAU9,900万人以上(2025年9月時点)の巨大なLINE基盤と組み合わせることで、リアルとデジタルを一気につなげることができますし、新しい体験づくりのきっかけにもなるはずです。
飯村:NFCは、企業とユーザー双方に「ちょっとした驚きと喜び」をもたらすテクノロジーです。NFCを前提にイベントやキャンペーンを設計することで、エンゲージメントを高め、記憶に残る体験価値を創出できると考えています。また、NFCが実現する遊び心あふれる仕掛けは、オフラインとオンラインをシームレスにつなぐO2O体験を可能にし、データ活用によるマーケティング最適化にも貢献します。
今後は、日本ならではの「ワクワクする」CXを、国内のみならず世界のオーディエンスへ広げ、革新的な体験を提供していきたいと考えています。
PROFILE
プロフィール
飯村 玲香
ニューヨークに拠点を置く出版社で、デジタルファッションエディターとして2014年よりキャリアをスタート。編集・PRの経験を積んだのち、2017年1月にソーシャルメディアプランナーとして当社に参画。外資系企業を中心に、ラグジュアリーブランドや大手航空会社のコンテンツマーケからデジタルコミュニケーション設計を中心に幅広く従事。
河 翔
韓国の大学を卒業後、2022年に新卒で電通デジタルへ入社。SNS(LINE, X, Instagram)を中心にしたCX設計やコミュニケーションプランニングを担当。顧客体験を起点に、ブランドと生活者をつなぐ最適なコミュニケーション設計が強み。SNSを通じて、企業の想いとユーザーのニーズが重なり合う自然なコミュニケーションの実現を目指している。
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