2024.04.18

2024年、最注目のマーケティングトレンドとは? 新トレンド「CXM」の実現に必要な要素は「データ回帰」

複雑化する消費行動により、注目されている新たな概念「CXM」。2024年に注目すべきマーケティング分野のテクノロジートレンドと合わせて、電通デジタルの矢内岳史と塚本三喜が解説します。

※本記事は、2024年2月8日に開催されたセミナーの内容を採録し、再構成したものです。

複雑化する消費行動と「体験」の重要性

2023年は、Chat GPTの台頭に世界が沸き立ったまさに「AI元年」と呼んでも過言ではない年でした。そして、こうした新しいテクノロジーの台頭によって、顧客の消費行動は複雑化の一途をたどっています。複雑化した消費者の購買行動を捉えるためには「データ回帰」が必要となるでしょう。

もう一つ注目すべきは、AIによって製品の開発スピードが上がり、製品の差別化が難しくなる「AIによるコモディティ化」が進んでいる点です。その結果、多くの顧客が「体験」を重視するようになっています。企業は、「顧客接点改革」が最も優先度の高い投資対象だとし、体験重視の顧客との関係をどう深めていくかを模索しています。


AIが顧客になる未来。AIに推奨されるためには

消費行動が複雑化し、「体験」が重視される中で、顧客理解を深めるために重要な2つの概念が「AI Core」と「CXM」です。

「AI Core」とは、AIによるレコメンデーションが顧客の購買行動に重大な影響を与えることを示した電通デジタル発案の造語です。例えば、YouTube上ではAIのレコメンデーションにより、視聴者にブームを巻き起こす現象が確認されています。

私たちは、こうしたAIのレコメンドに対しての最適化(Optimization)に取り組んでいかなければなりません。すでに現時点で、5人に1人の消費者が生成AIのレコメンドによって商品を購入していると言われるほど、消費者はAIのレコメンドを好意的に捉えています。「いかにAIに推奨してもらうか」が消費者の購買の意識決定に大きく影響します。

矢内 岳史(テクノロジートランスフォーメーション統括センター TXビジネスディべロップメント部 事業部長)

ガートナー社のレポートでは、AIの公平性・中立性を担保するための枠組みである「AI TRISM」や、AIを一顧客として捉える「Machine Customer」という考え方がトレンド化しています。

今後、AIが自動的にレストランの予約や商品の注文などをするようになると考えられています。すると、AIに推奨されないサービスやプロダクトは、シェアが縮小してしまう可能性があります。

一方で「ヒト」の購買活動はどのように変化していくのでしょうか? それに対応するために重要となるテクノロジーが「CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)」です。


顧客体験をマネジメントする「CXM」

CXMは、今後顧客と企業との新しい関係を築くために注目されるテクノロジーであり、簡単に解説すると、下図となります。

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「CXM」とは、顧客の購買体験を最適化するためのアプローチです。従来のCRMは、顧客との関係性に重点を置いてデータの収集・分析を行ってきました。例えば、顧客の年齢・性別・購買履歴・過去の取引高などです。一方でCXMは、顧客自身の体験・ニーズに焦点を置き、ライフサイクル全体を通じた顧客の志向を捉えることを試みます。そのためCRMと比較し、より多岐にわたるデータ収取が必要となります。

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CXM実現のためには、既存のソリューション構成の在り方に囚われず、新たな概念を使い、データ戦略全体を見直す必要があります。


CXMを実現するために必要な分析概念「トライブ」と「ネトノグラフィー」

今、CRMに取り組む中で、マーケティング担当者は「カスタマージャーニーの限界」「デモグラの限界」を感じているのではないでしょうか。データを活用し、全社的に十分な成果を得ていると答えた企業は、3%に過ぎないという衝撃のデータもあります。

塚本 三喜(テクノロジートランスフォーメーション統括センターTXビジネスディべロップメント部 コンサルタント)

これは、従来のCRMで行っていた分析手法が、顧客の趣味・趣向を捉え、「うれしい」「楽しい」といった顧客体験を与えるまでに深いインサイトを提供できていなかったためです。

では、顧客体験を解像度高く捉えるためにはどうすればよいのでしょうか。これまでは「1人ひとり」の体験にフォーカスする1to1が主流でしたが、興味関心が同じ「グループ単位」で得られる体験データは、かなり共通しやすいということが分かってきています。これに対応する分析概念が「トライブ」と「ネトノグラフィー」です。


「トライブ」を発見・分析するために必要なデータ

「トライブ」とは、インターネット上に存在する、趣味・趣向を同じくする人々のグループを指します。例えば、同じアーティストが好きな人がいても、アーティストの歌が好きな人もいれば、ファッションが好きな人もいます。一見同じに見える属性の中にも複数の「トライブ」が存在しているのです。

では、どのようにすれば「トライブ」を発見し、分析して、マーケティングに活用できるようになるのでしょうか。必要なデータを簡単に挙げてみると、次のようになります。

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ただし、これだけの必要データを完璧に活用できている企業様はほとんどいらっしゃらないのが現実です。まずは活用できるデータの幅・種類がこれだけある、ということをご認識いただくことが第一歩です。

こうしたデータを扱えるようにするには、「データ回帰」と「CDPと周辺データの再構成」が必要です。

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未知のデータを分析する「ネトノグラフィー」

未知のデータをどのように分析していくか。ここで紹介したいのが、民俗学を活用した分析手法「ネトノグラフィー」です。民俗学を簡単にまとめると、「社会や文化といったカオスなもの」を分析する学問です。個別の出来事やその瞬間だけに焦点を当てるのではなく、SNS上での会話データなど構造化の難しい事象・未知のデータも分析しつつ、顧客との長期的な関係性を捉えていく必要があります。

「ネトノグラフィー」は、トライブの中での会話や、オピニオンリーダー(トライブの中でもより興味関心の高い、コミュニティへの貢献度の高いメンバー)の存在と他メンバーとの階層意識など、トライブ内の独自文化的な背景を分析します。

文化背景が明らかになれば、特定のトライブに刺さるコミュニケーションや体験設計が可能になるのです。このためには、トライブに自らが没入するレベルで定性情報も含めて総合的に観察を行います。

そして定性データを含む分析には、やはりCDPを含むデータベース設計の見直しが欠かせません。

「ネトノグラフィー」を用いて多種多様なデータから「トライブ」を観察し、顧客の行動に影響を与えている要素を明らかにすることで、顧客の求める趣味・趣向に沿った真に心地よい体験を提供する「CXM」が実現できるのです。


根本的なデータ基盤の見直しに有効なソリューション

「トライブ」と「ネトノグラフィー」を用いたCXMの実現は、簡単ではありません。扱うデータ量は、従来のCRMの数倍に膨れ上がります。また分析基盤も、リアルタイム性が求められるため、スケーラビリティと自由な利活用を促す「データの民主化」が求められます。

2024年に真に取り組むべき課題は、顧客理解をさらに深め、AIの恩恵を最大限に得るための、根本的なデータ基盤の見直しです。これら難易度の高い課題を解決するため、電通デジタルでは、こうしたデータ基盤の再構築に対応するソリューションのご用意や支援をしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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