2023.01.24

ヱビスファンを徹底理解し、ファンを育む 顧客とブランドが相互交流できる前例のないSNS構築への挑戦

まるで仮想の街で生活しているかのように様々なコンテンツを楽しめて、“ヱビス”をきっかけにつながり、語り、共創していく――。そんなヱビスビールのファンコミュニティサイト「ヱビスビアタウン(YEBISU BEER TOWN)」が話題を呼んでいる。ブランド運営のSNSという前例のないことに挑んだ背景、目指す世界について聞いた。

ファンマーケティングの要諦はファンの徹底理解にある

——2022年9月に本格ローンチされたヱビスビールのファンコミュニティサイト「ヱビスビアタウン(YEBISU BEER TOWN)」は会員制参加型でヱビスファン同士が交流できるのが特徴です。ブランドが運営するSNSという、ありそうでなかった発想が生まれた背景について教えてください。

サッポロビール・福吉敬氏(以下、福吉) : ヱビスブランドでは、「Color Your Time! YEBISU」をコンセプトに、これまでもメルマガやFacebook、ブランドサイト、オウンドメディアなど様々なコンテンツを活用し、情報発信を続けてきました。

 接点は数多くあるものの、「お客様がどんな想いでヱビスと向き合ってくださっているのか」をもっと知りたい。そんな思いから21年夏、メルマガでアンケートを実施したところ、数千人から熱のこもった回答をいただきまして、中でも多数挙がってきたのが「同じヱビスファン同士、交流を深めて、ヱビスの楽しみ方を共有したい」という声でした。

 こんなにも多くの方が“横のつながり”を求めていらっしゃると知り、何としてもお客様の熱量の高さに応えたい。そこで、「東京都渋谷区の恵比寿という街の名の発祥はヱビスビールにある」という歴史を背景に、「“ヱビス”を介してつながるデジタル上の街をつくったらどうだろう」と考えたのが基点となっています。

福吉 敬氏
サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ
シニア メディアプランニング マネージャー
国内酒類メーカーから外資メーカーを経て、2014年、ビール系商品のブランドマネージャーとしてサッポロビールに入社。15年9月より、宣伝室のデジタル担当に着任。21年4月より、ヱビスブランドにジョインし、ヱビスのコミュニケーションプランニングを担う立場となる。

サッポロビール・沖井尊子氏(以下、沖井) : 以前にも、リアルでお客様が交流できる会を実施したことがあるのですが、初対面のお客様同士、“ヱビス”をきっかけに楽しく盛り上がるシーンを多く目にしてきました。

こうしたコミュニティがオンラインで広がれば、既存のファンの方に加え、新たなファンとの出会いにもつながるのではないか。SNS構築という新たな挑戦に伴走してくださるパートナー企業を探す中、電通デジタルさんにお願いすることとなりました。

沖井 尊子氏
サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ
ブランドマネージャー
家庭用営業を経験した後、ビール・発泡酒・ノンアルコールビールの商品開発とリニューアルに携わる。2019年よりブランディングや商品開発・広告・販売などのマーケティング戦略の立案・実行を行うビール&RTD事業部で、ヱビスブランドを担当。20年春、ブランドマネージャー就任。

——電通デジタルとして、ヱビスブランドの新しいSNSのような場の構築というお題を聞き、当初、どのような提案をされたのでしょうか。

電通デジタル・廣田明子氏(以下、廣田) : ファンを育み、増やしていくファンマーケティングは、売り上げなどの指標に効果が反映されるまで時間がかかる中長期的な手法です。よって、急いで交流サイトやコミュニティを作っても、目的を見失ったり、中途で頓挫してしまうケースも散見されます。

そんな失敗に陥らないためには初動が肝心。まずは、リサーチを通じて、ヱビスファンを徹底して理解し、ファンの解像度をチームで上げていくというプロセスの重要性をお伝えしました。

そのフレームワークとしてご提示したのが「Fan Farming CX」です。一言でファンと言っても、様々なロール、フェーズがあります。Fan Farming CXとは、ブランドに対して、支援力が高いパワーファンを育むことはもちろん、よりファン化しやすいポテンシャルファン(種)も育み、共に事業・ブランドを成長(開花)させる“仲間”を増やしていくという考え方です。

 この手法を軸に、ヱビスのFan Farming Data Platform(FFDP)となるような新しい顧客とのコミュニケーションフィールドを作っていくことをビジョンに、実装までトータルに支援するプロジェクトデザインをご提案しました。

福吉 : ご提案を聞いて、私たちの目的は単にSNSを作ることではなく、「ヱビスブランドを愛してくださっている方、これから好きになってくださる方に向き合い、想いにしっかり応えていく」という目指すべきゴールを改めて認識しました。前例のない挑戦に向け、力強い伴走役を得たという想いでしたね。

電通デジタルが提唱するファンマーケティングの手法、「Fan Farming CX」に基づき、既存ファンとの関係性を育みながら、ファン化しやすいポテンシャルファン(種)を育成。ヱビスのFFDPとなるようなコミュニケーションサイトの構築を目指し、実装支援までサポート
Zoom

顧客の声を基に200ページに及ぶ「羅針盤」を策定

——具体的にはどのようなアプローチで進めていったのでしょうか。

廣田 : 初動として大事なのが、綿密なリサーチに基づくファンの徹底理解と併せ、ファンとの関係育成に向けた羅針盤となる基本戦略をチームメンバーと策定し、みんなの心と目線を一致させることです。

まずは自分たちのファンが何を求めているのか、ヱビスファンはどう育まれてきたのか。ファンの姿をーつひとつフリーアンサー形式で丁寧に確認し、ファンがブランドと出会った原体験からファンになった決定的な出来事までを、1つの物語のようにまとめ、ファンの理解を進めてきました。このアプローチを“ナラティブジャーニー”と呼んでいます。

加えて、このリサーチの段階でヱビスファンが、この新しいコミュニケーションフィールドにどんな価値を期待しているのか?についても把握し、コンセプト設計のヒントを抽出していきました。ちなみにYEBISU BEER TOWNのコンセプトのキーワードにもなっている“ご縁”もここから導かれています。

その内容をチームで血肉化していくべく、ワークショップ形式でチームメンバー同士、意見を交換し合い、ファンの方々のニーズ、サッポロビール様の想いの”握手点“を探し、合意を踏まえた上で、基本となる羅針盤戦略を策定していきました。

 加えて、このプロセスは、本プロジェクトへの関与度が極めて高い電通デジタルの社内チームメンバーに対しても、徹底的にファンを理解する機会とし、コンパスを体内にプラグインしてもらうためにも重要な歩みだと考えていました。

廣田 明子
株式会社電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CX戦略プランニング第1事業部 CX戦略プランニング第1グループ
チーフストラテジックプランナー
2011年電通入社。入社以来、ブランド開発・新商品/サービス開発・統合コミュニケーションまで、幅広い領域で戦略プランニングを担当。ヒット商品の開発支援にも複数従事。20年1月より電通デジタルに出向。以来、独自のコンサルティングフレームの開発を推進し、『Fu-man insight lab』『Social Pain Compass』『Fan Farming CX』等を発案・提唱。ソリューションとしての体系化を行いながら、企業の課題ごとにカスタマイズしたソリューション導入をリード。※2022年12月時点の情報

沖井 : ヱビスといつ、どこで出会い、どういうきっかけでヱビスデビューを果たし、なぜファンになったのか。お客様のご意見をうかがう中で、羅針盤戦略書は最終的に200ページ、エピソードは98個にも及び、ブランドマネージャーとして新たな気づきも多く得ました。

福吉: 羅針盤から見えてきたヱビスファンの育まれ方として、「親や親戚が飲んでいたという家庭内での継承」「会社の先輩・上司から後輩へといった、社会人生活内での継承」という2つが挙げられます。

近年、外食の機会が減少していることは、ヱビスにとってネガティブな側面もありますが、ならば、時代にフィットする継承シーンをどう探索し提案していくか。また、ヱビスビアタウンだけでなく、他のコンテンツ上でも、トリガーにつながる家庭内や会社内の“ハレの日”のタイミングで、どういったコンテンツを作り、メッセージを発信していくか。

ヱビスに関わるコミュニケーション全体の施策のヒントとなる指針ができたことも、大きかったですね。


綿密なデータ分析を基に、日々、サイトを進化させていく

——羅針盤を踏まえ、どのようにコミュニティコンセプトに落とし込み、体験設計の方針につなげていきましたか。

電通デジタル・奈良義彦氏(以下、奈良) : リサーチから見えてきた、ファンがコミュニティに期待する重要価値は、「コミュニティ活動を通じて“良縁”が紡げる」「日々を彩る“学び・気づき・発見”にここでしかない形で出会える」「新たに商品や楽しみ方を“ヱビスと一緒に創って”いける」というものでした。これらの価値を押さえながら、戦略チームと場のコンセプト、そしてコンセプトを体現する体験へと落とし込んでいきました。

実際のスケジュールとして、9月16日の本格ローンチの前に、2月にプレオープンしたいというご意向がありましたので、サイト構築チームとしては先の3つの要素、既存のコンテンツ上のデータも基に設計・企画を考えながら、戦略策定と同時進行で実装を進めていきました。

 タイトなスケジュールではありましたが、2月のプレオープンでは、まずは会員限定コンテンツやイベント情報などを公開。サイトや登録メリットの認知拡大を進め、9月には会員同士およびヱビスブランドが双方向に交流できるコミュニティスペース「ヱビスご縁横丁」を設置しました。

奈良 義彦
株式会社電通デジタル エクスペリエンスクリエイティブ部門 オウンドメディアプランニング事業部
新卒からシステムエンジニアを経験した後、電通デジタルの前身にあたる電通イーマーケティングワンに2007年入社。以降、システム開発を中心としつつCRM・オウンドメディア運用・コールセンター構築など広範囲に携わる。マーケティングテクノロジーを活用したCRM施策の企画から実行まで、一気通貫で対応できることが強み。

福吉 :「ヱビスご縁横丁」の具体的な内容としては、ヱビスファン同士が交流できる「みんなの“縁”会場」、ヱビスファンとヱビス担当者がフランクに意見を交換し合う「ヱビス担当語りBAR」、ヱビスを取り扱っている飲食店をご紹介する「絶品横丁」といった3つのコミュニティスペースを用意しています。

コミュニティスペース内では、投稿に「いいね」でリアクションすることや、コメントを返信することも可能で、私も“町長”として積極的に情報を発信しています。

沖井 : 「みんなの“縁”会場」では、「なんでもトークルーム」「ヱビス写真部」「トリップ・アクティビティ」といった様々な部屋があり、ビールの話題に限らず、自由に発信できることもポイントですね。

ヱビスファンの一つの特徴は、知的好奇心が高い方が多いこと。実際に分析をしていくと軽めの記事よりも、ある程度読み応えのあるハイコンテクストな記事が好まれるといった傾向も出ており、ヱビスやビールの文化について学べる講義スタイルの「YEBISU BEER COLLEGE(ヱビスビアカレッジ)」も人気です。

奈良 : データを見ながら、2社合同で毎週定例会議を開いているのですが、時には議論が白熱し5時間以上に及ぶことも。福吉さんご自身がデータ分析に精通されているので手ごわいですが(笑)、スピード感を重視し、サイトの活性化に取り組んでいます。

福吉 : 正解や前例のないプロジェクトなので、荒野をかき分け一歩一歩進んでいるような状況下、電通デジタルさんのやり切る力、伴走力は本当に心強いですね。

中心となったメンバー以外にも、多数のメンバーが同プロジェクトを支援。ぶれることなくゴールを目指す上で、チームで基本戦略(羅針盤)を策定、共有・合意するプロセスが欠かせないと電通デジタルの廣田氏。同じミッションを担う“仲間”としてサイト運営に取り組んでいる

——今後の展望についても教えてください。

沖井 : お客様を見ていて思うのは、「ヱビスが好きな人たちって人生楽しそうだな」ということ。そんな幸福感を広く共有できるよう、活気あふれるサイトにしていきたいですね。

福吉 : 今回のプロジェクトはデジタルからスタートしていますが、今後はリアルと融合させたオフラインのイベントも企画しています。これから先には醸造所の「YEBISU BREWERY」もオープン予定なので、多方面でお客様との接点を増やしていくことを目指しています。

奈良 : 実は今回のプロジェクトを通じて、当社のチームメンバーも図らずともヱビスファンへと育まれているんです。様々な施策、仕掛けでその流れを広げていきたいですね。

廣田 : 私は少し、毛色の異なる展望です。コミュニティは“生き物”なので、当初作った羅針盤書というコンパスが永続的に万能とは言えず、アップデートが欠かせません。一方で、羅針盤で規定した、大元の狙いや、世界観、ファンとの関係性の理想像など、ブレないポイントもあります。コンパスは、誰かが意識的に出し続けないとかばんの底に埋もれてしまいやすいので、要所要所でコンパスをチームに出し続けられる役割でありたいです。

福吉 : そうですね。ヱビスファンの方々も含め、チームの仲間みんなで面白いヱビスの未来を描いていくことが、大切にしたい目指すべき世界です。そのためにはデータ分析の精度も上げつつ、ファンの一人ひとりの興味・関心に向き合い、“町長”として熱量高く街づくりに挑んでいきます。

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