日本初*の効果検証!YouTube広告でひもとく、スポーツの「熱狂」と大型コンテンツの広告効果
2025年9月、TBSテレビが放送した東京2025世界陸上において、電通、電通デジタル、Google、TBSテレビの4社が連携し、YouTube チャンネルスポンサーシップ広告を活用した効果検証を実施しました。広告視聴からブランド評価、購買行動までを横断的に捉え、大型スポーツコンテンツの熱狂が広告効果にどう寄与したのか。検証データから見えてきた次世代マーケティングの可能性に迫ります。
データで見えた大型コンテンツの「熱狂」と広告効果
――今回の検証施策の概要を教えてください。
諸橋氏(Google):施策の軸となったのは「YouTube チャンネルスポンサーシップ広告」という予約型広告メニューです。期間と方法を指定し、特定のYouTubeチャンネルの広告枠に広告を出稿することができます。今回の世界陸上のようにユーザーの熱量やエンゲージメントが高い良質なコンテンツの世界観を崩さず、限られた広告主のみが広告を配信する環境で、ブランドメッセージを深く届けられるのが最大の強みです。
安藤氏(電通):YouTube チャンネルスポンサーシップ広告という強力なメニューを軸に、大型スポーツコンテンツを持つTBSテレビ、そしてデジタル広告施策の運用や検証設計の知見を持つ電通デジタルと連携し、スポーツコンテンツの熱狂がブランド評価や行動にどう寄与するかを可視化する効果検証を設計・実施しました。Googleのチャンネルスポンサーシップにおける広告効果検証としては、日本初*の取り組みとなります。検証では、ブランド評価や行動指標において、非常に興味深い結果が確認されました。
――大会への注目は、検索行動やYouTube上の視聴にどのように表れましたか?
諸橋:大会開幕に伴う生活者の熱狂は、Google検索トレンドにも顕著に現れ、関連キーワード検索数が前年同期比で最大約70倍と爆発的に増加しました。検索キーワードも、特定選手のポーズや「ハイライト」「ライブ」「テレビ」といった視聴方法に関するものが上位を占め、会期中に関心が高まり、視聴方法や関連情報を調べる行動が活発化したことが分かります。
安藤:その圧倒的な注目度を背景に、YouTube上のコンテンツも想定を上回る勢いで視聴を伸ばしました。結果として、当初見込んでいた再生回数を大きく超え、施策全体としても高い盛り上がりを生み出す結果となりました。
――広告視聴の質や、大会期間中の公式チャンネルの変化について教えてください。
大澤(電通デジタル):広告視聴の質についても良好な結果が確認できました。例えば「完全視聴率」は、YouTube予約型広告の一般的な水準と照らしても、良好な結果だったと捉えています。良質なコンテンツを視聴しているユーザーにアプローチできたことや、広告とコンテンツの親和性の高さが、視聴態度にもポジティブに働いたのではないかと考えています。
森岡氏(TBSテレビ):公式チャンネルでは、大会の盛り上がりを背景に、登録者数が大会前比約1.2倍に増加しました。また、地上波ではアプローチしにくい25~34歳の若年層の視聴割合も約1.3倍となり、これまでとは異なる視聴層にもコンテンツを届けることができました。
大会期間中、公式YouTubeチャンネルの活用に積極的に取り組んだことで、視聴者層の広がりに加え、Google上での陸上関連キーワードの検索量やチャンネルへのアクセス数も大きく伸びました。「陸上を見るならTBS」という認知の広がりにも、手応えを感じています。
「熱狂」は人をどう動かす?データでひもとく広告効果
――こうした大会の盛り上がりを背景に、4社で検証に取り組んだ経緯や狙いを教えてください。
安藤:元々、協業ありきで決まっていたわけではありませんでした。電通のTBSテレビを担当する部門と、Googleと強固なタッグを組む電通デジタルのプラットフォーム部門との連携がきっかけとなりました。各社の課題や強みを持ち寄る中で、点と点が結びついて、有機的に取り組みが始まりました。
榎氏(TBSテレビ):TBS社内のプロジェクトで「世界陸上を社会現象化する」というミッションがあり、テレビで届かない層へアプローチするためには、YouTubeの活用が不可欠でした。また、デジタル領域での新たな収益源確保が急務な中、本メニューは従来の手法を超える新たな収益機会として期待できました。さらに、特定の広告主による限定的な出稿というメニュー設計であるため、コンテンツ毀損のリスクもなく安心してお任せできました。テレビの熱量をデジタルに拡張し収益化を目指す私たちにとって「渡りに船」の提案でした。
大澤:私自身、日頃からさまざまな広告に接触する中で、コンテンツへの没入度が高い場面ほど、広告も視聴体験の一部として受け止められる可能性が高いのではないかと考えていました。特に、スポーツ観戦のように感情が大きく動く瞬間では、その高揚感がブランドへの印象にも影響するのではないか、という仮説もありました。
そこで今回は、視聴数や視聴率といった配信指標だけで評価を終えるのではなく、外部調査も組み合わせることで、コンテンツが生み出す熱量が認知や好意度、購入意向などにどう影響したのかを可視化したいと考えました。感覚的に語られることも多かったコンテンツの価値を、ファネル全体のデータで捉えたい。その思いが、この検証スキームを設計した背景です。
――検証結果から、どのような手応えや発見がありましたか?
大澤:配信後にブランドリフト調査や独自の追跡調査を実施し、広告に接触したユーザーの意識や行動データを詳細に分析しました。まず注目したのが、「接触回数1回」のユーザー層です。広告に1回接触し、かつ広告を認知したユーザーでは、非接触者と比較してブランド好意度が+25.5pt、興味・関心が+25.8pt、購入意向が+23.3ptとなりました。接触回数が少ない段階でも、認知にとどまらず、好意や購入意向といったファネル中下層まで大きなリフトが確認された点は、非常に特徴的な結果だと捉えています。
さらに興味深かったのが、態度変容にとどまらず、実際の行動にもつながっていたことです。広告に接触し、かつ認知したユーザーの3~4割が視聴後に何らかの行動を起こしており、特にスポーツ観戦と親和性の高いフードデリバリー商材においては、実に6割もの方が行動を起こすという極めて高い結果が出ました。具体的な行動の内訳としても、「ウェブで検索した」「ホームページを見た」「クチコミや評判を調べた」 といったデジタル上での情報探索にとどまらず、「家族や友人と話題にした」といったオフラインでの会話にも行動が広がっていました。
そしてファネルの最下部にあたる実際の利用・購入についても、全体の8.8%(一部の飲料商材では15.2%)が「実際に利用・購入した」と回答しました。認知や好意形成にとどまらず、興味・関心や購入意向、さらには実際の行動に至るまで、コンテンツへの高い熱量が生まれる環境での広告接触が、フルファネルにわたって効果を発揮する可能性を示す結果となりました。
安藤:接触回数が1回のユーザー層でも、好意度に大きな差が確認されたことは非常に印象的でした。通常のデジタルキャンペーンでは、少ない接触回数で好意度まで大きく動かすことは容易ではありません。今回の結果は、コンテンツへの高い没入感が広告受容にも影響する可能性を示していると感じています。
諸橋:広告効果が良好であったことに加え、電通デジタルがその効果を丁寧に検証し、可視化してくださったことは、我々としても非常に意義深いと感じています。さらに今回は、広告効果の検証にとどまらず、公式チャンネル上の通常動画に寄せられた最新コメント最大3,000件を、AIによる自然言語処理(NLP)で分析しました。
その結果、ポジティブなコメントの中に「テレビ」や「TBS」といった言葉が頻出していました。「テレビ放送を見て、再度YouTubeで視聴した」といった、地上波視聴をきっかけとしたYouTubeへの流入や、その逆の波及効果が可視化されました。テレビとデジタルの相乗効果が生まれていたことを示す、興味深い結果だったと感じています。
こうした視聴者の声から、テレビとYouTubeがそれぞれ独立した接点ではなく、相互に作用しながらコンテンツへの熱量を高めている可能性を感じています。
――コンテンツ提供側やクロスリーチの観点からは、どのように捉えられていますか?
森岡:テレビでは可視化しにくい視聴者の反応が、YouTubeのコメントを通じて具体的に見えたことは、大きな発見でした。視聴者がどこに反応し、どのようにコンテンツを楽しんでいるのかを捉えられたことは、今後のコンテンツ制作や発信を考えるうえでも非常に有益だと感じています。
また、テレビとデジタルを組み合わせることで、これまで接点を持ちにくかった層にもコンテンツを届け、視聴者との接点をさらに広げられる可能性が見えたことは、コンテンツを制作する我々にとっても大きな財産だと感じています。
大澤:テレビCM出稿と併用したクライアントにおいて、ブランドリフトの効果検証とは別に、クロスリーチを分析したところ、YouTube広告は「テレビの視聴時間が少ない層」に対しても追加リーチを獲得できていることが分かりました。テレビCMを補完し、これまで届きにくかった層との接点を広げる手段として、YouTube広告の価値が確認されたと捉えています。
「熱狂」を価値へ。大型コンテンツから考えるこれからのマーケティング
――最後に、今回の検証で見えてきた「熱狂」の価値を、今後どのように発展させていきたいですか?
森岡:今回の世界陸上では、YouTubeを併用することで普段届かない層にまでコンテンツを届けることができました。今後の取り組みにおきましても、まずはネットで広く触れてもらい、最終的には地上波の視聴にもつなげていきたいと考えています。より多くの方に知っていただく仕組みを設計することで、コンテンツ全体の価値を高めていきたいです。
安藤:これまで大型スポーツイベントの広告施策は、「効果が見えにくい」という点が業界全体の課題でした。今回のプロジェクトは、イベントの熱狂をブランド評価や行動データから捉え、マーケティング上の価値として可視化する一つのモデルになったと考えています。今後もこの知見を生かし、熱狂を広告効果につなげる新たなマーケティングのあり方を、商品開発や協業体制を通じて形にしていきたいと考えています。
榎:改めて「スポーツイベントをYouTubeで楽しむ」という体験価値の大きさを実感しました。現在開催中のアジア大会2026でも今回の知見を生かし、視聴者を巻き込みながら、広告主にもご満足いただける施策へとさらに発展させていきたいと考えています。
諸橋:いまやライブコンテンツも、ユーザー自身が「見たいときに、見たいスタイルで楽しめる環境」が当たり前になってきていると感じます。グローバルプラットフォームであるYouTubeにとって、国際スポーツ大会のような「熱狂を生みやすい大型コンテンツ」は、ユーザーと深くつながるための非常に重要な接点だと捉えています。
今後もこうした熱狂を生むコンテンツを大切にしながら、ユーザーに最高の視聴体験を提供し、広告主とメディアが共にビジネスを成長させられる共創の輪をさらに広げていきたいです。
大澤:デジタルマーケティングでは、CPAやインプレッション単価といった定量的な効率指標が重視されますが、今回の検証を通じて、「コンテンツの熱量」のような定性的な体験価値も、広告効果を考えるうえで重要な要素の一つだと改めて感じました。
今後は、定量的な効率だけでなく、「人の感情や熱狂」といった定性的な価値にも目を向け、両面から広告施策を設計・評価していくことが重要だと考えています。コンテンツの熱量を広告効果につなげる視点も、今後の施策に生かしていきたいです。
*YouTube チャンネルスポンサーシップ広告を活用した効果検証施策として 2026年9月時点当社調べ
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プロフィール
大澤 太我
2024年、電通デジタルに新卒入社。入社以来、プラットフォーマー担当としてGoogleと協業し、Google広告や広告データを活用した分析・広告ソリューションの企画・開発、事例創出に従事。社内外の関係者と連携し、新たなプロダクト活用の企画・推進から提案・セールスまで幅広く担当。
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