2023.11.21

欧州サーキュラーエコノミー最前線!先進事例からヒントを探る、企業が取り組むグリーン×デジタルのビジネスの可能性

電通デジタルは2023年8月28日~9月28日、「Transformation Forum~DX戦略から現場業務まで企業の未来を創るアクション最前線」と題し、オンライン&リアルのハイブリッドにてセミナーを開催しました。※1

DAY7のセッションでは、サーキュラーエコノミーの先進的取り組みを探るべく、電通デジタルが実施したロンドン・パリ・アムステルダムの視察で出会った活動事例を紹介しながら、今後、日本企業がどのようにしてサーキュラーエコノミーをビジネスに取り組むべきか、株式会社BLOOM 代表取締役 斉藤(矢野)麻子氏、電通デジタル 安田裕美子、安東咲が紹介しました。

※本記事は、2023年9月25日に開催されたセミナーの内容を採録し、再構成したものです。
※所属・肩書は2023年9月時点の情報です。

なぜ今企業はサーキュラーエコノミーに取り組むべきか?

斉藤氏は、「一般に、サーキュラーエコノミーとはリサイクルのこと、という認識が広まっていますが、サーキュラーエコノミーとリサイクルは、イコールではありません」という説明からセッションを始めました。

下図は、サーキュラーエコノミーの基礎概念として、欧米の国々や行政のベースとなっている「エレン・マッカーサー財団のバタフライダイアグラム」です。

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左の円が生物サイクル、右の円が技術サイクルで、資源を利用したときの価値喪失を表しています。半円がたくさんありますが、内側であればあるほど、サーキュラーエコノミー的により高い価値がありますが、リサイクルは技術サイクルの一番外側の半円で、サーキュラーエコノミーの手段の1つに過ぎません。

現在、欧米を中心に、多くの国や自治体、企業がサーキュラーエコノミーに移行しています。斉藤氏はその理由を2つ挙げました。

1つ目は環境問題です。大手保険会社スイス・リーは、気候変動による世界経済損失は、2050年には金額にして23兆ドルになると試算しています。

2つ目は資源枯渇の問題です。現在、人類の自然資源への年間需要は、その年に地球が再生産できる自然資源量を大きく上回り(1.75倍)、未来への負債になっています。また、非再生資源を現在のペースで消費し続けると、石油は54年、天然ガスは49年、石炭は139年で枯渇するとされています。

「環境問題と資源枯渇問題を放置していくと、世界が安定的に成長していくにあたって、大きな阻害要因となります。資源をできるだけ少なく、長く使い、最後は再利用するサーキュラーエコノミーへの移行は、こうした理由から必然で不可欠です」(斉藤氏)

では、企業はなぜサーキュラーエコノミーに取り組むのか。斉藤氏は、サーキュラーエコノミーにいち早く取り組んでいるフィリップスの前CEOファン・ホーテン氏の「他者にやられる前に、先んじて自らのビジネスを破壊的に変革することは重要」という言葉を引きました。実際、フィリップスは2014年から事業とバリューチェーン全体を根本的に再設計するプロセスを開始。サーキュラーエコノミーモデルを拡大浸透させ、2025年にはサーキュラーエコノミー型の事業の売上は、全事業の32%を目指しています。

「大きな環境変化がリスクであるとき、様子見したり、受身で対応したりするのではなく、むしろ機会、チャンスとして捉えて、前向きに取り組んでいく。だからからこそ生き残れるという思想なのだと思いました」(斉藤氏)

2050年の「カーボンニュートラル達成」「サーキュラーエコノミーへの完全移行」は既定値です。そこから逆算すると、2040年代は新しい技術、ビジネスモデル、製品が実用化/拡大/浸透しているはずです。2030年代はそういったものの社会実装期にあたります。そうすると、2020年代の現在は、少なくとも「サーキュラーエコノミー型の発明や社会実験」に着手して、作り方や稼ぎ方のトライアンドエラーをすることにより、社内に知見を貯めていなくてはならない時期となります。

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「サーキュラーエコノミーへの変化のスピードは、思っているよりも早いです。欧州ではすでに発明・実験・実用化の様々な事例が存在し、ルール形成、知的財産権所有、再資源確保などが進行しています。日本企業の皆様も、様々な事例を参考にしつつ、できるだけ早くサーキュラーエコノミーへの取り組みを検討していただければと思います」(斉藤氏)


ヨーロッパの最先端取り組み視察の報告と学び

安東は、サーキュラーエコノミーを都市の成長戦略に定めているロンドン・パリ・アムステルダムで視察した企業・団体の活動事例を紹介しました。

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サーキュラーエコノミービジネスを日本でも成立させるために必要なことは何か。安東は4つのキーファクターと大切な考え方を挙げました。

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ルールメイキング

最初に紹介したのは、Packaging-free Networkという量り売り市場を開発・拡大してきたフランスの協会です。7年前はマーケットがなく、法律やネットワークなど体系的なものはなかったため、自分たちでルールを作り、国に訴えかけました。

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次に、オランダの建築業界で、デジタル製品パスポート事業を経営しているMadasterを紹介しました。

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建築業界は、サプライチェーンの把握やデジタル化が進んでおらず、廃棄物の排出量がかなり多い分野です。実際EU内では、廃棄物のうち3分の1以上を建設および解体事業が占めています。この課題に対しMadasterは、建築物や建材の価値を再定義し資源の循環を生み出そうとしています。

そして、イギリスのWHOLEGRAIN digitalは、サステナブルなWebサイトのコンサルティング、構築をするデザイン会社です。

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デジタル業界は、CO2排出量がかなり高い分野です。排出量が高い航空業界と同等の量が出ていると言われています。彼らは現状のサイトのCO2排出量を数値化するオリジナル計測ツールを作成し、クライアント企業と一緒に改善目標を定め、技術実装して、負荷軽減できるサイトを構築しています。

「今お話しした建築業界とデジタル業界の事例に共通しているのは、業界の常識を変えていくために、デジタルの力を使って資源の現状をまずは数値化・可視化するということ。これが最初の重要な一歩になるのではないでしょうか」(安東)

ビジネスモデルをリデザイン

次に安東は、企業の成長事業として、サーキュラーエコノミービジネスへのリデザインを支援するフランスのCirculab(サーキュラボ)というデザインファームを紹介しました。

 

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Circulabは、スキー会社が循環型素材のシューズ製作を立ち上げるのを支援したり、ボトル入りの水を売っている会社が事業をリデザインし、大きなタンクに水を入れるというシステムにサービス自体を変革するのを支援したりしています。この2つのコンサル事例から、安東は3つのラーニングポイントを挙げました。

①80%の環境負荷はデザインされる時点で決まるため、初期のビジネスデザインが非常に重要
②自社の事業がいかに環境依存をしているのか、ビジネス環境や環境資源の見直しが必要
③サーキュラーエコノミーは解決策の1つであり、顧客への提供価値を忘れてはならない

ストーリーテリング

サーキュラーエコノミービジネスやサステナビリティ系の製品やサービスは、「買いたい」と思いつつ、実際に買っている生活者は少ないという生活者データがあるように、意識と行動にギャップが存在しがちな分野です。そのため、生活者を動かすのはストーリーテリングです。

「生活者を動かすにはどうすればいいのか、ヒントを教えてくれた」として、安東が紹介したのは、パリで大人気のVEJA(ベジャ)というサステナブルシューズのメーカーです。

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彼らは、製造工程のすべてにおいて透明性のある取引や自然環境に良い素材の開発など徹底したこだわりを持っています。「VEJAのマーケティングコミュニケーション担当者が、ユーザーへの最初のメッセージとして、最初からサステナブルというキーワードは使わないと言っていたのがとても印象的だった」と安東はいいます。サステナビリティ感度が高くない生活者が商品購入をきっかけにサステナビリティへの取り組みを知り、応援に変わっていくということです。

ここでの学びとして、安東は「ストーリーテリングで重要なのは、どの順番でどう語るか」という点を挙げました。

「まず最初に製品やサービス自体の魅力を伝える。 VEJA(ベジャ)の場合は、そのシューズのデザイン性が生活者に伝わります。そして製品の購入後に、ブランドの背景を知ることになる。製造工程全てにおいて徹底した拘りを持っている VEJA(ベジャ)というブランドに対し、生活者は応援の念が湧いてきます。「サステナブル」なブランドであることが 生活者がVEJA(ベジャ)を選ぶ理由なのではなく、VEJA(ベジャ)魅力の重要構成要素の1つが「サステナブル」であるということなのです。」

市民との共創

社会を本当に変えるためには、市民を巻き込んで一緒にムーブメントを作っていくことが重要です。その考え方の例として安東は、フランスのLA RECYCLERIE(ラ・ルシクルリ)という環境配慮型複合施設と、イギリスの行政・企業・市民をつないでサーキュラーエコノミーを推進する行政機関ReLondon(リロンドン)を紹介しました。「行政民間市民が連携することが、サーキュラーエコノミーを推進する上で重要なポイントだと、この仕組みを通じて感じました」(安東)

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自然から循環のありかたを学ぶ

最後に紹介したのは、イギリスのNOTPLA(ノットプラ)というスタートアップです。彼らは海藻から「食べられる包装」を開発しています。ロンドンの市民マラソンの給水ポイントで、紙コップの代わりに「食べられる包装」で包んだドリンクを配布し、大きな反響を呼びました。

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この会社の方の「パッケージが消えるというコンセプトは、自然界からインスピレーションを得た」という言葉は、とても印象的だったと安東は振り返ります。「自然が本来持っている循環システムの中から、ビジネスの応用のヒントを得られるということも非常に面白い発見でしたし、人間も自然や動物の一部であると改めて実感しました」

ヨーロッパ視察での学びを安東は、「行政・民間・市民が連携しながら実現するのがサーキュラーエコノミー。このシステムの中で、我々電通デジタルは何ができるのか、改めて考えた」と語り、視察内容を総括しました。


日本企業でのグリーン×デジタルのビジネスの可能性

「サステナビリティ関連課題への取り組みを持続的な活動にするには、小さくても始める仲間を日本でも増やす必要がある」と語る安田は、サーキュラーエコノミーへの取り組みを進めるために、電通デジタルが考える4つのプロセスを説明しました。

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4つのプロセスの中でも、企業において重要になってくるのは、「ビジネスモデルの再設計。製品の所有を顧客にまかせないダブルIDマネジメントにより、売り切り型モデルからサーキュラー型ビジネスモデルへの転換である」と将来的な展望を語り、以下の図を提示しました。

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「サーキュラー型では、顧客IDとプロダクトIDの両方(ダブルID)を用い、顧客体験ではなくて製品自体も資源として管理し、製品ライフサイクルをマネジメントすることで、顧客にもメリットのあるサービスを提供する必要になってくる」と安田はいいます。

「新たな価値を社会実装するルールメイク活動についても、電通グループは積極的に取り組みを進めている」と安田は紹介しました。

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最後に安田は、「サーキュラーエコノミービジネスは、実現する機会がどこにあるかを可視化して自社の状況を見直してみることが初歩として大事。そのために電通デジタルで提供しているデータベース、ツール、プログラム、ワークショップを用いて、仲間を増やす活動を進めていきたい」と語り、セッションを締めくくりました。

※1
変革を担うリーダーのためのプログラム「Transformation Forum」のセッションサマリーを一挙掲載
https://www.dentsudigital.co.jp/knowledge-charge/articles/2023/1115-transformation-forum

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