2019 Agency Mugen Award MVA受賞インタビュー

2年連続で最高賞受賞 高度な運用力とパフォーマンスを提供できるビジネスパートナーを目指す

Google Agency Partnership Teamが日本で主催するMugen Award 2019において、電通デジタルは、2019 Agency Mugen Award MVA(Most Valuable Agency)を受賞別ウィンドウで開くしました。今回の受賞を記念して、プラットフォーム部門でGoogle 検索広告に携わる担当者3名に、Google 検索広告の運用に関する電通デジタルの取り組みを聞きました。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

プラットフォーム部門
グループマネージャー

荻島 裕樹


プラットフォーム部門

田中 朝樹

プラットフォーム部門

佐藤 翔太

Agency Mugen Award MVA受賞と電通デジタルのGoogle 検索広告の運用力について

──今回受賞したAgency Mugen Award MVAは、どのような賞ですか?

荻島 : まずMugen Award 2019は、検索広告の効率化と広告機会の最大化を行ってクライアント企業のビジネス拡大に貢献する"Mugen" を、代理店が管理するクライアント企業のアカウントに対して、高い導入率を達成した代理店を表彰するアワードです。

2019 Agency Mugen Award MVAは、このアワードの最高賞で、電通デジタルはMost Valuable Agency(最優秀代理店)として表彰されました。昨年のGORIN Award 2018で2018 Agency GORIN Award MVAを受賞したのに続き、2年連続の最高賞受賞となります。

荻島裕樹(電通デジタル)

──2年連続の最高賞受賞の裏には、どういう取り組みをされたのでしょうか?

荻島 : 昨年の受賞後、社外ではクライアント企業の皆さまからお祝いのお言葉をいただき、どういう取り組みをしているのかと聞かれる場面が増えました。

社内でもいろいろな方に声をかけていただき、Mugenに対して注目度が高まったのは、受賞効果のひとつだと感じます。

その高まりを受けて、昨年は、Mugenに関する社内コンテストを実施しました。マネージャー以外、全メンバーがコンテストに参加しました。幸いなことに、最終プレゼンに3人残りましたが、うち1人はなんと入社2年目の若手社員。このまま下克上していくんじゃないか! と部内が盛り上がったのも、いい思い出です。

こうした社内コンテストを通じて、運用メンバーたちが改めてクライアント企業のビジネス課題を意識し、課題解決のために自分たちには何ができるのかということに向き合い、意識づけができたことが、2年連続の大賞受賞である、今回の2019 Agency Mugen Award MVAの受賞につながったのだと思います。

──今回の受賞ポイントとして、電通デジタルは、どのような体制で、どういうソリューションを提供しているのでしょうか?

佐藤 : 電通デジタルでは、クライアント企業のビジネス課題を把握し、KPIの見直しと、それを運用に活かす専門性、ソリューションを持っています。

それに対応した具体的なソリューションとして、1stパーティデータを用いてモデリングを行い、収益やLTV (Life Time Value:顧客生涯価値)を予測し、Google 広告 のtROAS(目標広告費用対効果)として運用に活かす「X-Stack(クロススタック)」があります。オンラインとオフラインのギャップを埋める予測LTV(pLTV:predicted Life Time Value)スコアを活用することで、LTV向上に直結した広告運用が提供できます。

X-Stackの実施には、クライアント企業のビジネス課題の把握やKPIの見直しを得意とするアカウントプランニング部門、データのモデリングや分析を得意とするデータ/テクノロジー部門、そしてプラットフォームの知識に優れたわれわれプラットフォーム部門が一丸となってソリューションを提供します。

X-Stack実施の前提となるのが、Mugenに代表される「Google 検索広告が推奨するアカウント設計」です。Mugenの思想が反映されたアカウントほど、その成果が出やすい傾向があります。

佐藤翔太(電通デジタル)

Google 検索広告運用について

──Google 検索広告の運用で、多くのクライアント企業が共通して抱えている課題は何でしょうか?

佐藤 : 大もとのビジネス目標と、検索広告で設定しているKPIにズレが生じているケースが多々見られます。

たとえば、ビジネス目標としては収益やLTVの最大化を追っているにも関わらず、検索広告ではコンバージョン数の最大化(商品単価や成約率などは加味しない)としているケースなどがそうです。

田中 : これだけ変化の激しい世の中ですので、それに対応して変わっていかなければならないわけですが、どのクライアント企業も本能的に持っている「変化に対する恐怖」が変革のスピードを落としている点は否めません。特に検索広告は事業の売り上げを支えているケースも多く、変革の「最初の一歩」を間違えれば、致命的なダメージにもなり得ます。

「ビジネスの成長」と口にするのは簡単ですが、実際に達成するためには、それなりの準備と投資を伴いますし、100%の成果が保証されているわけでもありません。その中で、「リスクをとって踏み出す最初の一歩」は、後回しにされがちです。

これは同時に、クライアント企業の貴重な予算をお預かりしているわれわれにとっても、ボトルネックではありました。

目先のことだけを考えるのであれば、既存の枠組みの中のチューニングだけで短期目標を達成し、クライアント企業にご満足いただくことは比較的容易です。しかしながら、ビジネスパートナーとしてわれわれが意識している視点は「長期的ビジョン」です。現時点では全く意識していない競合が、数年後には脅威となって立ちはだかるかもしれません。さらに言うと、市場自体が変化する可能性だって誰にも否定できません。われわれは、こういった長期スパンでのビジョンを大切にしています。そして繰り返しになりますが、このビジョンを具現化するには相応の覚悟が必要になります。

企業・事業レベルで見た場合の真の成長とは何か。その成長をもたらすためにわれわれがお手伝いできることは何か。こういったことを考えながら、時にはチャレンジ「したほうが良い理由」だけでなく、チャレンジ「しなければならない理由」をもってクライアント企業へ説明に上がります。

田中朝樹(電通デジタル)

──順番に伺います。まず、「Google 検索広告で推奨するアカウント設計」とは、どういうものでしょうか?

佐藤 : Google 検索広告を運用する上で推奨されるアカウント設計とは、「機械学習が機能しやすいシンプルなものにする」ということです。訴求ごとに広告グループをまとめることで、データを蓄積しやすい構造にします。

機械学習とは、ひと言で言えば、「事例(データ)を集め、モデルを作り、そこから予測する」仕組みのことです。Google 広告では、過去の配信実績やユーザーデータをもとに機械学習を実施し、ユーザーに合ったクリエーティブの出し分けやユーザー確度に合わせた入札調整が行われます。この機械学習をうまく機能させられるかどうかが、Google 検索広告の配信効果に大きく影響します。

商品訴求やユーザーニーズを考えながら、推奨設計である、「事例(データ)を集めやすくする設計」をどう実現させるかが、われわれ広告運用者の腕の見せ所でもあるのです。

──では次に、Mugenを簡単に説明すると、どのようなものなのでしょうか?

田中 : Mugenとは、Google 検索広告の運用指針に関する基本思想です。

Google はこれまでも消費者の生活環境の変化、デジタルテクノロジーの進化に伴い、検索広告の運用に関する指針にアップデートを重ねてきました。

そのさきがけとなったのが、"Hagakure"(2015年)という概念と、Hagakureをアップデートした"GORIN"(同)になります。

Hagakure以前は、人間が力技で管理することで、複雑なアカウント設計を維持していましたが、Hagakure以降は、機械学習しやすいシンプルな設計に改められました。機械学習の効率化を進めることで、これまで以上に、検索機能を活用する人々にとって最適な情報を最適なタイミングで提供することができるようになったわけです。

Hagakure以前/以降で、アカウント設計や運用指針が大きく異なるため、Google ではここ数年はとりわけ推奨設計の浸透を目的とした取り組みを進めています。その活動は、クライアントのビジネスにとって非常に大切なものでわれわれもクライアント企業への案内などを通じて、代理店として最大限のお手伝いをしてきました。

この積み重ねの上に、2019年に示された運用指針がMugenです。Hagakure、GORINの思想の延長線上に出てきたものですが、「機械学習の効率化」という部分にフォーカスしていた前2者に比べ、Mugenではさらに「ビジネスパートナーとしての価値提供」というキーワードが加わり、視座が1つ上がったのがポイントです。

Mugenは、以下の3つの要素で構成されています(2019年時点の指標)。

要素内容
Triggering Excellence(リーチ)広告表示機会を精査・拡大すること
Bidding Excellence(入札戦略)目的に応じた入札戦略で、その表示機会を勝ち取ること
Relevance Excellence(広告品質)ユーザーニーズに即した広告を表示すること

この3つの要素を複合的に運用することによって、リーチを拡大し、価値のあるインプレッションをとりに行き、Mugenの大きなテーマである「絶えず変化・拡大している検索広告市場において、ユーザーのニーズを的確に捉え、適切なコミュニケーションをとることで、クライアント企業のビジネスの成長を促すこと」を実現していきます。

Google 検索広告をめぐるエージェンシーとクライアント企業との関係は、これまではメディア目標・キャンペーン目標の達成を目的とする「運用代理型」でしたが、Hagakure、GORIN、と変化を重ねる中で、「ビジネスパートナー型」へ、すなわちビジネス目標・マーケティング目標を設定し、それをクライアント企業とともに達成していく形へとシフトしつつあります。Mugenへのアップデートは、このムーブメントをさらに加速させたいというGoogle の意思であり、われわれもその実現へ向けて、さらに邁進していきたいと思っています。

Mugenの詳細に関して、この場で説明することはむずかしいので、ご興味のある場合は、ご連絡いただければ、さらに詳細なご説明をさせていただきます。

──クライアント企業のアカウントに、Mugenを導入する際に心がけているポイントは何ですか?

田中 : Mugenの導入は、クライアント企業にとっては大きな変革になります。変革をスピーディに実践し、勝算を1%でも多く積み上げるためには、リスクあるチャレンジだということをクライアント企業に伝え、入念な準備・コミュニケーションを行う必要があります。その手間を惜しまないからこそ、クライアント企業からの信頼が得られていると自負しています。

──具体的にはどのような意識で取り組みを行っていますか?

田中 : 取り組みの大きな流れとして、クライアント企業ごと、アカウントごとにフェーズを整理し、想定されうる課題を1つ1つクリアしていくことを意識しました。

当然、Mugenの思想に沿った推奨設計や想定シナリオはありますが、実際にはそれぞれのクライアント企業のケースによってコンディションは異なります。アカウント設計という大もとから見直していくケースが多いため、今日明日でパッと課題が解決するということはまずありません。基本は地道な確認作業が大半を占めます。数百あるアカウントを集約し、課題を分類することによって、とるべきアクションや検討課題に優先順位をつけます。

広告表示機会の拡大を図る前に、それに耐えうるだけの構造になっているかを確認したり、どのようなクエリ(検索語句)軸から拡大を図ったりしていくのが最善なのかを検討します。その上で、Google のソリューションと電通デジタルの集合知を活用していきます。

──Mugenの導入を推進するにあたり、電通デジタルは、Google からどのようなバックアップやサポートを受けていますか?

荻島 : 定例会を実施し、得られた情報や改善事項を基に社内で密に連携を取り合い各アカウントの改善運用を行っています。情報鮮度を保ち一つひとつ のアカウントに還元することが非常に重要だと思っています。


今後の抱負について

──今回の受賞を受けて、今後の努力目標は何でしょうか?

荻島 : 「ビジネスパートナーとしての価値提供」というのが、Mugenの大きなコンセプトです。

クライアント企業の課題は何か、どうすれば課題を解決できるのか。そこから得られた成果をベストプラクティスに昇華し、他業種や他クライアント企業にもスケールするにはどうすればいいのか。われわれが考えるべきこと、やるべきことは、まだまだたくさんあります。

今後も、運用メンバー一人ひとりが、クライアント企業と生活者との接点をより強固なものにするために、Google の広告テクノロジーを活用してどういったことができるのか、考えていきたいと思っています。

PROFILE

プロフィール

荻島 裕樹

プラットフォーム部門 部門長

2011年電通入社。新卒より営業のフロントラインに立ち、コンセプト開発、TVCM制作、イベント、プロモーション、メディアプランまで広告における川上から川下までをプロデュース。大手外資系飲料メーカー、製薬会社に従事。2017年4月よりデジタルプラットフォーマーとのアライアンス部署に異動し、2024年1月より統括する部門長に就任。

荻島 裕樹

佐藤 翔太

ソーシャルエンゲージメントデザイン部門 LINEプランニング部

2018年電通デジタル入社。入社後、ダイレクト系クライアントの広告運用・分析・改善に従事。特に金融・保険業界に専門性・知見を持つ。現在は主にLINE公式アカウントを活用したコミュニケーション設計を担当しており、フルファネルでのプランニング・コンサルティングに強み。

佐藤 翔太

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